おまとめローンは総量規制の対象外!一本化で借金が増えるケースも

近年人気を集めている、借金を一本化できるいわゆる「おまとめローン」。うまく使えば毎月の負担はもとより、総返済額も減らせる便利な商品であることは間違いありません。

しかし、使い方を間違えると却って負担を増やしてしまうことにもなりかねません。今回はおまとめローンを使う際の注意点と審査のポイント、賢い使い方を紹介したいと思います。

おまとめローンは低金利のローンで一本化する金融商品

おまとめローンとは簡単に言えば、複数の債務位を一本化するための金融商品です。

例えば、消費者金融A,B,Cの3社からそれぞれ金利15%で50万円ずつ借金をしている場合、銀行aで150万円を金利12%で借りて、既存の3つの消費者金融のローンを完済します。その後、残った銀行aへの借金を返済していく、という仕組みになっています。

おまとめローンは総量規制の対象外

総量規制とは、貸金業者は顧客に対して年収の3分の1以上の額を融資してはいけないという規制のことです。例えば、年収600万円の人に対しては、200万円までしか貸せません。すでに他の貸金業者が150万円貸している場合、その顧客に対しては50万円までしか貸せません。

この規制を破った場合、貸金業者は罰則を受けます。当然罰則など受けたくないので、すでに年収の3分の1を借りている人に対しては融資を行いません。

しかし、銀行は貸金業者ではないので、そもそも総量規制の対象になりません。また、消費者金融の場合も、顧客に一方的に有利となるおまとめローンは総量規制の対象外となります。

つまり、銀行でも消費者金融でも、おまとめローンは総量規制の対象外となるわけです。もちろんこれは誰でもいくらでも借りられるというわけではなく、審査はあります。

おまとめローンの利用には3つのメリットがある

おまとめローンは借金を単に借り換えるだけにしか見えないかもしれませんが、実はメリットが3つもあります。

金利が低くなるため、返済が楽になる場合が多い

おまとめローンは複数の債務を一本化する金融商品なので、必然的に借金の額が大きくなります。借金の額が大きくなれば、その分金利も低くなります。金利が低くなれば毎月発生する利息も小さくなるので、毎月の返済が楽になり、返済総額も減らせます。

特に銀行のおまとめローンは金利が低く設定されていることが多いので、借り換えができれば毎月の負担が減らせることが多いです。

お金の管理がしやすくなる

複数の金融機関から借金をしていると、返済期日や毎月の返済額がバラバラでお金の管理がしづらいですが、おまとめローンで借金を一本化すると返済期日は毎月1回になるのでお金の管理がしやすくなります。

信用情報に傷がつかない

われわれがどこから借金をしているとか、返済事故を起こしたとか、あるいは債務整理をしたとか言うような情報は、全て信用情報機関という民間企業に集約されます。

信用情報機関は各債務者の借金に関する情報(信用情報)を集め、データベース化し、必要に応じて金融機関や債務者に対して開示します。

金融機関は融資の審査を行う際に、必ず信用情報を確認します。当然、信用情報に傷がある、つまり過去に返済が大幅に遅れていたり、債務整理をしている人に対しては融資を行いません。

信用情報は通常5年~10年程度で消えますが、残っている限りは原則として新しい借金はできません。

しかし、おまとめローンはあくまでも借金であり、返済遅れや債務整理には該当しないため、行っても信用情報に傷がつくことはありません。

おまとめローンを滞りなく返済することができれば、その直後に住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどを組むことだって可能です。

おまとめローン利用の際の注意点

おまとめローンはこのように優れた金融商品ですが、一方でデメリットもあります。

返済はそこまで楽にはならない

おまとめローンは複数の借金を一本化する金融商品です。大抵の場合は金利がより低いところで借り換えるので、返済は楽にはなります。

しかし、元本が減るわけでもなければ、金利もそこまで極端に低くなるわけでもないので、返済が楽になる度合いはそれほど大きくありません。おまとめローンに過度な期待をするのは禁物です。

返済期間を伸ばすと返済総額が増えることも

おまとめローンの利用に合わせて、返済期間を伸ばしたいという方もいらっしゃるかもしれません。

返済期間を伸ばすとその分毎月の返済負担は小さくなりますが、その分返済がなかなか終わらないため利息が多く付きます。余り伸ばしすぎると、総返済額は大きくなってしまうこともあるので注意が必要です。

借り換える前には必ずシミュレーションを行い、おまとめローンで総返済額が増えないか確認しましょう。総返済額が増えそうな場合は、返済期間を短くしてください。

借り換え後に借金を増やせてしまう

例えば、年収600万円の人が消費者金融3社から合計200万円を借りているとします。消費者金融は総量規制の対象ですから、これ以上借りることはできません。

しかし、この人がおまとめローンで借金をまとめてしまうと、その全てが総量規制の対象外になってしまうため、また借金ができるようになってしまうのです。

そんな馬鹿なことをする人がいるはずない、と思われるかもしれませんが、実際にはこういうことをする人が少なくないのです。自分の意志力に自信がない人は、おまとめローンを利用すべきではないのかもしれません。

審査が厳しい

おまとめローンは融資額が大きく、金利も低くなりやすいため、その分審査は厳しいです。おまとめローンが優秀な金融商品であっても、借りられなければ意味がありません。

では、おまとめローンの審査では具体的にどのようなポイントがチェックされるのでしょうか。

おまとめローンの審査で重視されるポイントTop5

おまとめローンは多角的な支店から審査が行われますが、特に重視されるポイントは以下の5店です。

他社からの借入件数

おまとめローンでも特に重視されるのが、他社からの借入件数です。借入件数よりも借入額のほうが重視されそうな気がするかもしれませんが、実際はその逆で、借入件数が少ないほど審査に通りやすく、多いほど審査に通りにくくなります。

借入件数が多く、一件あたりの借入額が少ない人は、各金融機関から信用されていない、限度額が低い人ということになります。

一方、借入件数が少なく、一件あたりの借入額が多い人は、各金融機関から信頼されている、限度額が高い人ということになります。

おまとめローンを提供する金融機関としては、当然他の金融機関からも信頼されている顧客に対して貸したいため、借入件数が少ないほど審査では有利になるのです。

具体的に何件以上から借りていると審査で絶対落とす、といったような指針は公表されていないのでなんとも言えませんが、一般的には借入件数が3社以内ならば問題なし、4社だと黄信号、5社だとアウトと言われています。

借入件数が多い場合は、まとまったお金を用意し、残債が少ないところの借金を完済し、借入件数を少なくしてから申し込むといいでしょう。

他社への申込件数

おまとめローンは審査が厳しい金融商品なので、幾つもの申込みをしたくなる気持ちはわからないでもありませんが、短期間に複数のおまとめローンを申し込むのは危険です。

まず、おまとめローンの審査基準はどこの金融機関も似たり寄ったりです。つまり、ある金融機関で審査に通る人は他の金融機関の審査にも通る可能性が高いですし、逆にある金融機関で審査に落ちる人は他の金融機関の審査にも落ちる可能性が高いです。

数打てば当たる、という性質のものではないので、1社に申し込んでも3社に申し込んでも審査に通る確率はほぼ変わりません。

また、金融機関へのローンの申込み履歴は信用情報として6ヶ月記録されます。短期間に複数のおまとめローンを申し込んでいる場合、そのことは金融機関にバレてしまうわけです。

あまりにも審査をたくさん受けていると、借金したくて必死であると思われ、審査に受かる可能性が低くなってしまいます。とりあえず1社に申し込み、それで落ちてしまった場合は別の対策を考えたほうが良いでしょう。

事故情報

過去に返済事故を起こしている場合、おまとめローンを組むのは非常に難しくなります。返済事故とは延滞、債務整理などのことです。

延滞は数日の遅れを1回ぐらいならば問題になることはありませんが、何ヶ月も返済が遅れたり、あるいは数日の遅れでも複数回繰り返している場合はそれだけでアウトな場合が多いです。

将来おまとめローンを利用したいと考えている方は、返済事故を起こさないように誠実に返済していきましょう。

年収の安定性

年収についてはもちろん低いよりは高いほうがいいのですが、金額自体はそこまで重視されません。むしろ大切なのは年収の安定性です。

例えば、過去3年間の平均年収が500万円という場合は、200万円→900万円→400万円のような人よりも、490万→500万→510万と言った人のような方が審査で高く評価される傾向にあります。

年収がある程度の水準で安定している人は、今後もその年収が続くケースが多く、返済してくれる可能性が高いからです。

必然的に、自営業者や経営者よりも、会社員や公務員のほうが信頼されやすいです。

勤続年数

勤続年数は1年以上が目安とされています。それ以下の場合は審査で低く評価されることになります。なお、ここで言う勤続年数とは、現在の会社に勤務している年数です。前の会社に10年勤めて、その後転職してから3ヶ月しか立っていないという場合、勤続年数は3ヶ月になります(10年3ヶ月にはなりません)。したがって、転職する予定がある場合は、その前に審査を受けたほうが良いということになります。

なお、自営業者の場合は開業からの年数が勤続年数になります。こちらも1年以上はほしいところです。

おまとめローンの審査に受かるコツは?

借入件数を減らす

前述の通り、おまとめローンの審査で特に重視されるのは借入件数です。したがって、借入件数を減らせば、それだけで審査に通りやすくなります。

例えば、それぞれ80万円、50万円、10万円、5万円の債務がある時は、10万円と5万円の債務をまとめて返済してしまえば、借入件数が4件から2件になるので審査に通る確率がぐっと高くなります。

勤続年数が1年に満たない場合は、それまで待つ

勤続年数は1年と3年ではほぼ評価はおなじになりますが、6ヶ月と1年では後者のほうが評価が高くなります。

勤続年数が1年に僅かに満たない場合は、早急に申し込まずに1年経過するまで待ったほうが良いかもしれません。その間に借入件数を減らしておけば、さらに審査に通りやすくなります。

年度末に申し込む

おまとめローンの審査はいつも同じ基準で行われるわけではありません。季節によって通りにくい、通りづらいの差があります。1年の中でも最も審査に通りやすいのは年度末、つまりは2月~3月です。

金融機関に限った話ではありませんが、民間企業はどこも決算時の売上を多く見せたいため、年度末になると値下げを行います。金融機関の場合は審査基準を少し緩和して、融資を増やすことによって売上を確保します。

もちろん、そこまで大きな差がつくわけではありませんが、審査に通る確率を少しでもあげたいという場合は、年度末に申し込むことをおすすめします。

仮審査で大雑把な診断が可能

ちなみに、おまとめローンの審査には、本審査とは別に仮審査が行われることもあります。

仮審査は年収や債務の額など、いくつかの情報を入力するだけで、大まかな審査結果を返してくれるサービスです。多くの金融機関がウェブサイトで完結する仮審査を提供しています。仮審査に合格した場合は、本審査でも通る可能性が高いと考えていいでしょう。

おまとめローンの選び方

おまとめローンは様々な金融機関が提供しています。そして、その金融機関は大きく銀行と消費者金融に分類することができます。

大まかな傾向として、銀行は金利が低い代わりに審査が厳しく、消費者金融は金利が高い代わりに審査が比較的ゆるい傾向があります。

もちろん、選べるならば金利が低い銀行を選びたいものですが、選びたくても選べない場合もあります。その場合は仕方がないので消費者金融で借りるしかないでしょう。

その場合は、金利が以前より高くなっていないか、総返済額が前より膨らまないかなどを事前にシミュレーションする必要があります。ウェブサイト上の口コミなども参考に、利用するおまとめローンを決めましょう。

おまとめローンの返し方

おまとめローンの返し方は基本的に通常のローンと代わりありません。毎月一定の額を返済していくのが基本となります。

ただし、銀行の場合は、ローン残債に応じて返済額が変動することも多いので注意が必要です。

例えば、東京スター銀行のおまとめローン「スターワンバンクローン」は、毎月の返済額をローン残高もしくは利用限度額のいずれか高い方の1/120を下限とした金額、と定めています。

このような方法を採用している金融機関で借りた場合、最初は毎月の返済額が大きくなりますが、その後徐々に返済額が少なくなっていきます。

そのため、返済が進めば進むほど楽になるのですが、一方で毎月一定額を返済するよりも返済期間が長くなるため、利息の支払いが増えてしまうというリスクもあります。

せっかく金利が安いところで借り換えたのに、返済期間が伸びてしまっては意味がありません。

このような方式を採用している金融機関から借りる場合は、繰上返済を積極的に活用するなどして、早期に返済を終えるように心がけましょう。

おまとめローンに通らない時は債務整理をしよう

おまとめローンの審査に通らない場合は、すでに債務が危険水準に達している可能性が高いです。その場合は無理して何件もおまとめローンの審査を受けても落ち続けるだけですので、早急に債務整理をした方がいいでしょう。

現在、日本で使える債務整理には任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4つがあります。消費者金融や銀行のカードローンの利用が原因で、債務の総額があまり大きくない場合は、任意整理が最も良いでしょう。

任意整理はデメリットが一番少ない債務整理

任意整理とは任意、つまりは金融機関との話し合いによって借金を減らす手続きのことです。他の債務整理は原則として裁判所を通すため強制力がありますが、任意整理にはそのような力がありません。そのため金融機関に拒まれたら終わりなのでは?と思われるかもしれませんが、実際に金融機関が任意整理を断ることは殆どありません。

任意整理を断って債務者に借金をチャラにする自己破産をされたら、金融機関としても困るからです。ただ、素人が金融機関と話し合おうとしてもまともに応じてもらえないことが多いため、通常は弁護士や司法書士を立てて交渉を行います。

任意整理は借金の減額を目指す手続きです。将来の利息はカットされますが、元本自体が減ることはあまりありません。そのため、借金の元金額が少なく、なおかつ利息が高いカードローンの整理には最適です。反面、住宅ローンなどの債務額が大きいローンの整理には向いていません。

任意整理の良いところは、他の債務整理についてくるデメリットが殆どないことです。例えば自己破産の場合、原則として20万円以上の資産は没収される、官報という国の機関誌に名前が載る、一部の借金だけを選んで整理することはできないなどのデメリットを受け入れなければなりませんが、任意整理にはそのようなデメリットはありません。

ほぼ唯一のデメリットは信用情報機関にそのことが登録され、原則として5年間は借金ができなくなることですが、新たな借入のリスクを減らせるという点ではむしろ長所とすらいえます。任意整理についてもっと詳しく知りたいという方は、こちらもご参照ください。(参考:借金を任意整理するデメリットってあるの?

まとめ

  • おまとめローンは借金を一本化するための金融商品
  • 総量規制の対象外なので、年収の3分の1以上借りられる
  • 金利が低くなれば総支払額を減らせる
  • 銀行のおまとめローンは消費者金融のそれよりもさらに低金利だが、審査はかなり厳しい
  • おまとめローンが使えない場合は任意整理も選択肢に入る

おまとめローンは上手に使えば債務を大きく減らせますが、審査が厳しく簡単には使えません。事前の準備を十分に行った上で望みましょう。