友人にお金を貸したけど、期日を過ぎても全く返してもらえない。よくあるお金の貸し借りのトラブルの1例ですね。特に相手が親しい人の場合、強く借金の返済を迫ることもできず。どうすればいいかわからなくなる人も多いでしょう。
とはいえ、お金はとても大切なものです。少額ならともかく、大きな額になってくるとたとえ友人であっても踏み倒されるわけにはいかないでしょう。
今回は、個人間の借金の返済を迫る方法についてまとめました。お金の貸し借りのトラブルで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
目次
お金のトラブルは互いの信用を失う恐ろしいもの
まず最初に伝えておかないといけないことがあります。貸した相手が友人などの場合、事を荒立てずできるだけ穏便に済ませたいと考えている人が大半でしょう。しかし、それが成功するかどうかは全て貸した相手次第です。
なぜなら、説得や交渉などで返済してくれなかった場合、貸したお金を取り返すにはどうしても法の力が必要になるからです。法の強制力で借金を返済させるわけですね。そのための手続きには裁判などが必要になります。
こうなってしまうと、もうその相手とは親しい間柄でいることは困難でしょう。悲しい話ですが、お金のトラブルはそれまで積み上げてきた信用を、全て無に帰す可能性のある恐ろしいものなのです。
このことを承知したうえで、借り手に返済を迫ってください。では、借金の返済を迫る方法を、段階を踏んで説明していきます。
また、個人のお金の貸し借りで借用書などを作成していることはまれでしょうから、口約束で返済の期日などを設定した、という前提で書いていきます。
1 メールなどで催促をする
一番簡単な催促方法は、メールなどを用いて返済を迫るものです。これなら、相手の顔も見えず、声も聞こえないので精神的な負担は少ないでしょう。
しかし、これだけで借金を返してもらえるならそもそもこのページを見ていないでしょうし、もう試したけれど駄目だったという人が大半だと思います。
それでもメールの文中などに、「○日までに返すよ」のような一言があれば、それだけでこの方法を行った意味はあります。後述しますが、この言葉は「債務の承認」に当たる可能性があるからです。そのメールは削除せずに、後のために保存しておきましょう。
また、「もう少し待ってくれ」といった返事がきた場合は、できるだけ具体的に何日までかを指定するようにしましょう。具体的な日付を決めることで、相手に心理的なプレッシャーを与えることができ、返さなくてはならないという気持ちを起こさせることができます。
債務の承認とは?
なんだか難しい言葉ですが、簡単に言うと「私はあなたからお金を借りていることを認めます」という意味です。これが認められると借金の時効が一旦ストップし、再度その日からのカウントとなります。
悪徳な業者などでは、不法な金利で貸付を行った際、時効で踏み倒されないように少額だけでも返済を迫ります。たとえ1円でも支払ってしまった場合、債務の承認が認められるからです。
これだけ聞くと悪い制度のように聞こえてしまいますが、真っ当なお金の貸し借りの場合、むしろ貸し手側を救う制度です。
このように債務の承認があれば、いざ裁判になったとき貸し手側に有利に働きます。
2 電話で催促する
メールでは駄目だった場合、次に効果のある催促方法は電話で直接伝えることです。電話ならリアルタイムで話をすることができるので、相手に言い訳などを考えさせる余裕を与えなくて済みます。
電話でも、今は返せないと言われた場合には、具体的な返済期限を設定するようにしましょう。理由はメールのときと同じですね。
ただ、お金を貸している側だからといって、あまり高圧的な態度で返済を迫ることはお勧めしません。その態度が原因で口論になってしまった場合に、相手の態度がますます硬化してしまい、借金の返済がさらに難しくなってしまうことがあるからです。
下手に出ろ、とは言いませんが、あくまで相談の形で話し合ったほうがいいでしょう。そのほうが相手も話しやすいでしょうし、スムーズに話が進むはずです。
また、電話の際もその会話内容が後になんらかの証拠になりうることがあるので、できるなら録音を行っておきましょう。
3 直接会って催促する
人によっては1と2を飛ばして3から行う人もいるでしょう。直接会って催促するメリットは、その場で相手の事情などを聞いて、臨機応変に返済日を設定できることと、借用書などを作成できることです。
また、この場で多少でも返済を迫ることはとても有効です。なぜなら前述したように、少額でも返済を認めた、行った場合、「債務の承認」に当たるためです。借り手側の債務の承認があれば、いざ裁判沙汰になったときに、貸し手側に有利に働くのです。
これを証明するために領収書を作成し、内訳欄には「一部支払」である旨を記入し、相手に渡しておきましょう。また、控えも自分で保存しておきます。
他にも、借用書の作成を約束できればベストです。ちなみにお金の貸し借り後に作られる借用書は、正しくは債務承認弁済契約書といいます。これを作成しておくと、法的な効力こそないものの、裁判で非常に有力な証拠になります。
借用書や債務承認弁済契約書は、お金の貸し借りを行いましたという契約書にあたるものです。両者の合意が必要になるため、作成には少し手間がかかるかもしれませんが、借金の事実を証明するためにとても重要な書類です。
友人などとのお金の貸し借りは、口約束だけで行う場合が多いと思います。しかしこれだけでは、そんな約束はしていないとシラを切られると、お金の貸借を証明する方法がありませんからね。後になって困らないように、借用書などはしっかり作成しておきましょう。
債務承認弁済契約書の作成方法は?
債務承認弁済契約書は裁判で重要な証拠になりうるとお話しましたが、これは当然正しく作成されているものに限ります。
でたらめな内容であったり、肝心な内容が抜けていると証拠として承認されない場合があるので、十分に内容を吟味して正式な書類を作成しましょう。
ただ、正しい書面の内容がお金の貸し借りの状況などで変わることも多いので、素人では正式な書類の作成は難しいでしょう。行政書士や弁護士に依頼して作成してもらうほうが確実です。作成費用は1万5千円程度が相場です。
ちなみに借用書は借り手が署名し、貸し手が保管するのに対し、債務承認弁済契約書は両者が署名し、双方が1通ずつ保管します。
4 催促状・請求書を送付する
この辺りから、個人間で行う一般的な催促ではなくなってきますね。催促状には互いの名前や、請求金額、請求日、支払期限、振込先などを記入します。
この際も注意したいのは、強い物言いで相手を怯ませるのではなく、相手に支払い期限が過ぎていますよ、と伝える程度の文面にするべきということです。この段階なら、まだ穏便に済ませられる可能性がありますからね。
また、催促状や請求書を送付する際は、必ず配達証明付きの内容証明郵便で送るようにします。内容証明郵便で送ると、日本郵便がこの文書を確かに宛先に送りましたと証明してくれます。また、配達証明は確かに相手方が文書を受け取ったことを証明するものです。
もし、相手がそんな文書は受け取っていないと後からゴネても、配達証明や内容証明を行っておけば、第三者が証明してくれるので安心というわけです。
内容証明郵便で送るには、自分が保管する分、日本郵便が保管する分、相手方に送る分の計3通が必要になります。3通とも同じ内容、文書であると認められないと、内容証明郵便で送付はできないので注意しましょう。
不用意に訴えるなどとは言わないようにしましょう
催促状や請求書には、期限を守らない場合には訴えます、といった内容の文面が書いてあるイメージがありますが、今回はそういった言葉は使わないようにしましょう。
なぜなら、現時点で裁判を起こしたとしても決定的な証拠がないためです。借用書がない、債務承認弁済契約書もないといった状況では、裁判で勝てる確証はないでしょう。
また、そのような法的手段に出ますとはっきり相手に伝えると、相手も不利になる文書は作成したくありませんから、債務承認弁済契約書などに署名しなくなるかもしれません。
もし、裁判を起こすことになってもそれは十分な証拠が揃ってからにしましょう。裁判費用も無料ではありませんから、裁判を起こした挙句、借金も回収できなかった、では大損になってしまいます。
5 裁判所を通して請求する
裁判所を通して借金の返済を迫る方法ですが、実はあまりお勧めできません。その理由は、債務者(借り手)が異議申し立てをした場合、通常の民事裁判を行う必要があり、費用も手間もかかってしまうためです。
そのため、裁判所を利用するのは本当に最終手段を考えておいたほうがいいでしょう。裁判所を通して返済請求を行う方法は主に3つあります。
支払督促をする
裁判所に督促支払を申し立てると、あなたに代わって裁判所が借金の返済請求を行ってくれます。手続きも書類のみで済むため、手間も費用もあまり掛からずいいことづくめの方法に見えますね。
しかし、支払督促にはネックもあります。まず一番大きなネックは、借り手がこの支払督促に異議申し立てをした場合、通常の民事裁判に移行します。裁判を行えば当然費用が掛かりますから、借金の額によっては収支がマイナスになってしまう場合があります。
異議申し立てをしなければ、借金の返済請求は強制執行となるので、借り手が異議申し立てをしない理由はありません。高確率で通常の裁判に移行してしまうでしょう。
他にも、相手の住所がわからなければ支払督促はできないといった制限もあります。支払督促は書類の送付により行われるため、送付先の住所がわからなければ当然執行はできません。
少額訴訟
少額訴訟とは、60万円以下の支払いの際にのみ行うことができる簡易的な裁判のことです。通常の裁判はお互いの意見をぶつけあい、状況などを鑑みてどちらが理にかなっているかを裁判官が十分に審査します。そのため、数回に渡って裁判を行うことが多いです。
それに対して、少額訴訟なら1回の審理で決着がつきます。1回だけなら裁判を行う費用も安く済みますし、なにより体力的、精神的な負担も少ないですよね。
しかし、少額訴訟の場合も相手に通常の裁判に移行するよう求められたら、それに従わなければなりません。さらに、少額訴訟とはいえきちんとした裁判ですから、相手を負かす十分な根拠がなければ裁判に勝つことはできません。
個人間のお金の貸し借りの場合、あらかじめ借用書など証拠品を用意していないことが多いでしょうから、おいそれと少額訴訟を起こすわけにはいきません。敗訴した挙句、裁判費用も払うことになっては目もあてられませんからね。
また、少額訴訟の手続きは書類を介して行うため、相手の住所がわからない場合は裁判を行うことはできません。注意しましょう。
民事調停
ここまで紹介した2つの方法は法の強制力を用いて、相手に返済を迫るものでした。それらに対して、民事調停は話し合いによって問題を解決する、より穏やかな方法と言えます。
民事調停では、裁判官と一般市民から選ばれた調停委員で構成される調停委員会の前でお互いの主張をします。そして、第三者の意見やアドバイスを聞き入れ、お互いが歩み寄った解決策を模索していくのです。
必要な費用も裁判を起こすよりも格段に安く、数千円で済む場合が多いです。また、お互いに話し合いで解決しようとして民事調停を行うので、スムーズに話が進むことが多いです。
しかし、民事調停にもデメリットが存在します。民事調停には出頭の義務、つまり借り手を参加させる強制力がないのです。そのため、例えば借り手が断固として借金を支払う気がない、そんな態度だったら最初から出頭に応じないでしょう。
また、民事調停の場合も、話し合いで解決できず、相手が通常の裁判を求めてきたらそのまま裁判へと移行してしまいます。
このように裁判所を通して借金の返済を迫る方法は、法の強制力を利用できるメリットもありますが、その分デメリットも大きいです。本当に裁判が必要なのか、そもそも裁判になったときに確実に勝訴できるのかなどを天秤にかけ、じっくり考えたうえで決定しましょう。
個人間でのお金の貸し借りはトラブルの元!
お金の貸借によるトラブルは本当に厄介なものです。たとえ親友同士であっても、一度お金のことで揉めてしまえば、もう二度とその関係には戻れないかもしれません。
このようなお金の貸し借りのトラブルを回避する一番の方法は、やはり最初からお金の貸借を行わないことです。
また、どうしてもお金を貸す必要がある場合には、借用書などをあらかじめ作成しておきましょう。いざというとき契約書があれば、そんなことは言っていない、いやあの時はこう言っていた、といった揉め事を回避することができるからです。
お金の貸し借りはくれぐれも慎重に行いましょう。後になって後悔しても遅いですからね。