住宅ローンが返せないという状況になったとき、早めに対策を練らないと、自宅が競売にかけられてしまいます。
自宅が競売にかけられることには、メリットはほとんどありません。住宅ローンが返せなくなると競売にかけられるしかないと考えている人もいますが、実は競売になることを回避する方法もいくつかあります。
まずは住宅ローンの借り換えを検討してみる
住宅ローンを返せないという状況になったとしても、なるべく契約違反はしたくないところでしょう。一番良いのは、契約を守ったままローンの問題を解決できる、住宅ローンの借り換えです。
アベノミクスの影響で、住宅ローンの金利は空前絶後の低金利状態が続いていました。2015年の夏ごろには、金利が徐々に上昇していくだろうという予想がありましたが、2016年にマイナス金利政策が実施されたことで、さらに金利が下がった銀行もあります。
今後も、しばらくは金利が低い状態が続くと予想されています。金利が高い時期に住宅ローンを借りた人は、借り換えをすることで大きく利息の負担を減らすことができるかもしれません。
住宅ローン借り換えのもう1つのメリット
住宅ローンの借り換えのメリットは、金利が下がるということだけではありません。返済期間を調節できるということもメリットです。
例えば、負担が大きめの25年のローンを組んでしまって、月々の負担をもう少し減らしたいと思っていても、後から契約内容を変更することは難しいです。
借り換えをすれば、もう一度新しい住宅ローンを組むことになるので、返済期間を自由に調節できます。返済期間を長くすれば利息の負担が大きくなりますが、せっかく購入したマイホームを失うことになるよりはマシでしょう。
住宅ローン借り換えの返済期間は?
住宅ローン借り換えの返済期間は、元の住宅ローンに合わせるのが通常です。例えば、元の住宅ローンの返済期間が残り25年なら、借り換え先の住宅ローンの返済期間も25年になります。
しかし、場合によっては返済期間を30年、35年といったように延ばすことができます。金融機関によってはこれは認められていないので、まずは相談をしてみましょう。
債務整理をしてもマイホームを失わない方法がある
債務整理をすると、マイホームを失ってしまうと考えている人は多いです。しかし、マイホームを失わずに債務整理をする方法もあります。
任意整理では住宅ローンを対象から外せる
整理をする対象を自由に選べるということが、任意整理のメリットの1つです。
銀行カードローン 300万円
消費者金融 100万円
自動車ローン 200万円
上記の借金があったとします。住宅ローンを任意整理の対象に入れてしまうと、抵当権を実行されてしまう可能性が高いので、これは外さなければなりません。
自動車ローンについても、担保に入れている自動車を没収されてしまうので、対象から外します。
また、住宅ローンや自動車ローンは金利が低いので、任意整理をして金利をゼロにするメリットはそれほど大きくありません。
このケースでは、銀行カードローンと消費者金融からの借入れの、合計400万円を任意整理の対象とすることになるでしょう。400万円の借金の金利をゼロにしてもらい、3年~5年で返済をしていく和解契約を結ぶことになります。
そうすることで借金問題が解決できるなら、任意整理をすることがおすすめです。住宅ローンには影響しないので、マイホームは残せます。
個人再生では住宅ローンの特別条項がある
個人再生では、原則としてすべての借金を対象にしなければなりません。金融機関からの借金はもちろん、奨学金、家族や友人からの個人的な借金などもすべてです。
しかし、住宅ローンについては特別条項があり、住宅ローンだけを個人再生の対象から除外することができます。
銀行カードローン 300万円
消費者金融 100万円
自動車ローン 200万円
任意整理のところであげたケースで考えてみます。住宅ローン特別条項を利用すると、住宅ローンだけは除外することができます。
残りの銀行カードローン、消費者金融、自動車ローンの合計600万円を個人再生の対象とします。600万円の借金がある場合には、5分の1まで減額ができますので、借金は120万円となります。
さらに、弁護士費用などで40万円~60万円程度はかかると見ておきましょう。しかし、個人再生の手続き中のおよそ6ヵ月間は、借金の返済から開放されますので、その間に弁護士費用を用意することができます。
このケースでは600万円の借金を120万円まで減額できるので、月々の負担を大きく減らせて、住宅ローンを返済していけるようになる可能性が高いですね。
自己破産をするとマイホームを失う
自己破産をすると、資産はすべて失います。借金はすべてゼロになりますが、マイホームは必ず失います。しかし、住宅ローンを払えないという人は、自己破産を考えなければならないこともあります。ここでも、
銀行カードローン 300万円
消費者金融 100万円
自動車ローン 200万円
のケースで考えてみます。病気や失業、転職をして給料が落ちたなどの事情で、任意整理や個人再生をしても借金問題が解決できない状況であると仮定します。
自己破産を考える前に、まずは不動産査定を受けてみましょう。不動産査定の結果、マイホームが3,000万円で売れるという結果になったら、借金をすべて返済できて、さらに400万円が手元に残ります。
競売になる前に不動産売却をする
ここで注意をすべきなのは、競売になることを待っていてはいけないということです。競売になると、マイホームの価値が3,000万円だとしても、その4割程度の値段で競売にかけられてしまうからです。
最悪、3,000万円の価値があるマイホームが1,500万円くらいの安価で売られてしまう可能性もあります。そうなると、多額の借金が残ってしまい、自己破産をするしかないという状況になってしまいます。
絶対に競売になる前に、不動産査定を受けておき、その結果に応じてベストな選択肢を考えるようにしましょう。
実際には借金が残る可能性が高い
住宅ローンが2,000万円残っているケースでは、不動産査定の結果、マイホームの価値が2,100万円などと査定されてしまうことも多いでしょう。
この場合、不動産売却をしても500万円の借金が残ってしまいます。任意整理や個人再生でも解決ができないなら、自己破産をするしかありません。
自己破産をすることが決定している場合には、不動産を売却するという手間をかけるより、競売になったほうがメリットがあるかもしれません。しかし、素人で判断をすることは危険なので、必ず専門家に相談をしておきましょう。
オーバーローンとなっていたら
不動産査定を受けてもマイホームの価値が1,800万円などという結果になり、オーバーローンとなってしまっていることも多いと思われます。
この場合には、通常の方法で不動産を売ることはできません。
オーバーローンとなっている不動産をほぼ市場価格で売却する方法として、任意売却という方法が用意されています。
しかし、任意売却をして1,800万円で家を売ったとしても、800万円の借金が残ってしまうというこの状況では、自己破産をするしかないかもしれません。
自己破産をするしかないと考えている場合でも、専門家ならもっと良い方法を見つけられるかもしれませんので、必ず専門家のアドバイスも聞いておきましょう。
マイホームを売るしかないなら、できるだけ高く売却することが重要
ここまでは、住宅ローンを返せないという状況になったら、まずは住宅ローンの借り換えを検討して、それでもダメなら任意整理や個人再生をすることで、マイホームを残して借金問題を解決する方法があると解説しました。
場合によっては自己破産をするしかないが、自己破産をすることが決まっていても、競売になるより不動産売却をしたほうが良いケースもあるので、専門家のアドバイスを受けるべきであることも解説しました。
ここからは、マイホームを売るしかないという状況になったときに、競売になることを避けて、できるだけ高く売却をする方法を紹介します。
競売になるまでの流れ
まずは催促状が届く
住宅ローンを払えなくなると、まずは銀行から催促状が届きます。通常は、ハガキが送られてくるだけでなく、銀行の担当者から電話での催告もあります。ここではきちんと誠意のある対応をしておきましょう。
何度か催促状が届きますが、滞納を続けていると、より警告の意味合いが強い督促状が届きます。督促状が届くということは、かなりギリギリの状態ということです。
期限の利益を喪失し、保証会社が代位弁済を行う
滞納を続けていると、期限の利益喪失予告通知が届きます。この通知に書かれている期限までに滞納分を支払わないと、有無を言わさずに期限の利益が喪失してしまいます。
期限の利益というのは、住宅ローンを分割払いで支払うことのできる権利のことですので、期限の利益が喪失したら、それ以後は残高を一括で支払うしか方法がなくなります。
住宅ローンを滞納して、期限の利益を喪失するまでの期間は、銀行によって異なりますが、早いところですと3ヶ月滞納をした時点で期限の利益を喪失してしまいます。
その後、金融機関によっては「任意売却意志の確認通知」が届くこともあります。
また、「競売申し立て予告通知」が送られてくることもありますが、これも金融機関によります。
期限の利益を喪失すると同時に、保証会社が銀行に対して代位弁済を行います。
競売開始決定通知が届く
そして間もなく、保証会社が競売の手続きを開始します。裁判所から競売開始決定通知書が届きます。
競売開始決定通知書が届いた段階で、マイホームが差し押さえされます。
競売入札の開始
競売開始決定通知書が届いてから3ヶ月~6ケ月くらい後に、競売入札が開始されます。競売入札の2ヵ月前には、期間入札通知が届きます。
まとめ
簡単にまとめると、次のようになります。
—-3ヶ月~6ケ月の期間—
期限の利益が喪失する
—1ヶ月程度の期間—
競売開始決定通知書が届く、不動産が差し押さえられる
—3ヶ月~6ケ月の期間—
競売入札が開始(2ヶ月前に期間入札通知が届く)
競売のデメリット
競売は、なにもしなくても裁判所がすべて手続きをやってくれるというメリットがあります。その反面で、不動産がかなり安く売られてしまう可能性があるという大きなデメリットがあります。
普通に不動産売却をすれば、3,000万円で売れるような家でも、競売ではその4割の1,200万円くらいの値段が付けられて、競売が開始されます。最終的には、8割~9割程度の値段がつくことも多いですが、最悪のケースでは1,200万円で売られてしまうこともあるということです。
裁判所による強制売却なので、売値が気に入らなくても、やり直しはできません。
不動産を差し押さえられていないなら、通常の不動産売却もできる
まだ延滞をしていない状態、もしくは延滞をしているが、不動産を差し押さえられていない状況なら、通常の方法で不動産売却をすることができます。
複数の業者に査定をしてもらう
不動産査定を受けるときは、最初から1社に絞らず、複数の会社を比較してみましょう。なぜなら、不動産の査定額は、「このくらいの価格なら売れるだろう」とプロの査定士が判断した金額になりますが、人の手による査定なので、当然結果は異なってくるからです。
不動産会社に実力があるかどうかによっても違ってきます。宣伝力・アピール力が高い不動産会社なら、本来売れない物件でも、高い値段で売ってくれるかもしれません。
オーバーローンとなっていても売る方法がある
住宅ローンの残高が2,000万円なのに、査定の結果が1,800万円などとなっていたら、不動産を売却してもローンが完済できません。
この場合でも、差額の200万円を貯金から出したり、親から借りたりして、なんとかすることができれば、不動産売却が可能になります。
オーバーローンの状態を解除できない場合でも、任意売却をすれば、ほとんど市場価格で不動産を売ることができます。弁護士や任意売却の専門業者に相談をしてみましょう。
住宅ローンを延滞する前に、売却や債務整理を考えるべき
住宅ローンを払えなくなっても、延滞をすることはなるべく避けましょう。延滞をして、不動産が差し押さえられてしまうと、とれる方法が減ってしまいます。
住宅ローンの他に借金があるのなら、弁護士に相談をしてみて、債務整理を検討してみましょう。
期限の利益を失ってしまったら?
住宅ローンを滞納を続けると、早ければ3ヶ月で期限の利益を失ってしまいます。そうなると、不動産が差し押さえされてしまうので、不動産売却ができなくなります。
しかし、まだ競売になるまでは3ヶ月~6ケ月程度の猶予があります。その間に、弁護士に相談をして個人再生をしたり、任意売却をするという方法が残されています。
任意売却をするには、3ヶ月程度の期間がかかると言われています。競売開始決定通知が届いてしまった段階では、あまり猶予がないと言えるので、早めに弁護士や任意売却の専門業者に相談をしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?住宅ローンを払えなくなって放置をしていると、デメリットの大きい競売になってしまいます。以上の説明からは、対策や行動が早ければ早いほど、できることが増えることがわかってもらえたかと思います。