任意売却ならローン残債がある家も高く売却できます!

住宅ローンの返済が苦しいので、持ち家を手放したい……と考えている方は少なくないかと思います。

売却代金や手持ちの貯金で住宅ローン残債が支払える場合はともかく、支払えない場合は住宅の売却はできないのでは……?と思われるかもしれません。

しかし、そのような場合でも、任意売却という手段を用いれば家を相場とほぼ同じ価格で売却できます。残債は月に1~2万円づつ返済していけるので、負担も多くありません。

もちろん任意売却にもデメリットはありますが、競売と比べれば遥かに少ないため、安心して取り組めます。ローンが残りそうな場合は、必ず任意売却を選びましょう。

住宅ローンが残っていても売却代金と現金で埋め合わせられれば何の問題もないが……


住宅ローン返済中の物件を売却する場合は、原則として家の売却が完了し、代金が銀行口座に振り込まれた時点で、残債を全額一括返済しなければなりません。

住宅の売却代金が、ローンの残債を上回っている場合は当然全額返済できるので全く問題ありません。また、住宅の売却代金がローンの残債を下回ったとしても、その差額を貯金などで穴埋めできる場合もやはり問題ありません。

しかし、実際に住宅ローンが残っている住宅がローン残債以上の金額で売れるケースはそう多くありません。貯金で穴埋めができればいいのですが、住宅ローン返済中に住宅を売りたいと考える人の多くはあまり貯金がない事が多く、それも余り現実的ではありません。

では、売却直後に住宅ローンの残債が一括返済できない場合は絶対に売却できないのかというと、そうとはありません。任意売却、もしくは競売という抜け道があるからです。

任意売却の競売にはないメリット6つ

任意売却とは、債権者(銀行など)の同意を得た上で、ローン残債が残ったまま相場に近い価格で売却する手続きです。残った債務は債権者と債務者が話し合った上で毎月の返済額を決めて返していきます。売却は専門業者や不動産業者、弁護士などに任せることができます。

一方、競売はローンの支払を滞納し続けた結果、債権者が裁判所に申し立てを行い、裁判所が強制的に物件を売却するという手続きです。

任意売却は債権者、債務者のどちらにとっても競売よりも都合のいい制度であり、選べるのならばこちらを選ぶべきです。

物件が高く売れる

任意売却の最大のメリットは、物件を高く(相場とほぼ同価格で)売れることです。任意売却は債務者(売り主)、債権者、そして買い主が話し合った上でお互いに納得した条件で売却するため、結果的に相場と同価格で売れることが多いのです。

一方、競売は物件をオークション形式で処分するため、最終的な落札価格が任意売却よりも安くなることが多いです。どのくらいの価格で処分されるかは物件によって異なるので一概には言えませんが、概ね相場の60~70%程度で売却されることが多いです。つまり、任意売却の30~40%程度も安くなってしまうわけです。

競売になった物件は購入の際に銀行のローンが組みにくかったり、不法占有者が現れたりするリスクが高いため、買い主には余り人気がないのです。

自宅に住み続けられる可能性がある

任意売却であれば、売却した自宅に住み続けられる可能性があります。家を売ったら住めなくなるに決まっているじゃないか、と思われるかもしれませんが、売却する相手を選べば可能です。

例えば、比較的経済力のある親戚や知人に任意売却で自宅を買い取ってもらいます。次にその親戚や知人と借家の契約を結び、毎月家賃を支払っていきます。これならば自宅を売却しながら、自宅に住み続けることが可能です。このような仕組みをリースバックと言います。

一方、競売の場合は話し合いではなくオークションで買い主が決まるため、債務者が買い主を指名することはできません。落札した買い主がたまたま理解のある人で借家契約に応じてくれる可能性がないとはいえませんが、実質的にはその可能性は0になると考えたほうがいいでしょう。

引越し費用を債権者から出してもらいやすい

リースバックが望めない場合は、仕方がないので出ていくことになります。その際にばかにならないのが引越し費用です。競売の場合は、裁判所から明け渡しの命令が出るため、引っ越し代金が債権者からもらえる可能性は殆どありません。

それに対して、任意売却の場合は債権者との交渉次第で引越し費用の一部、もしくは全部を支払ってもらうことが可能です。任意売却のほうが物件が高く売れるぶん、債権者が引っ越し代金を捻出する余地があるためです。

ただし、任意売却なら絶対に引越し費用が出るのかというともちろんそんなことはなく、最終的には交渉次第です。任意売却の経験が十分にある不動産会社に依頼すれば、十分な引っ越し代金を引き出せる可能性が高いです。

周囲の人にバレづらい

自宅が競売にかけられる場合、その物件の情報が裁判所などのウェブサイトや新聞に掲載されます。情報が掲載されると、落札を考えている業者が訪問営業に見たり、あるいは周辺を観察しに来たりすることがあります。

彼らは別に周辺の人に「この家が競売にかけられるらしいので見に来ました」などと言いふらすわけではありませんが、いきなり近隣を知らない人がうろつくようになったら不審に思う人がいるかもしれません。

一方、任意売却は一般的な不動産の売却とほぼ同じ手順で行われるため、周囲の人にバレることはまずありません。差押えや競売開始決定通知が届いている状況でも、早急に任意売却を進めれば間に合わせることは可能です。

残債を分割払いにできる

競売でも任意売却でも原則的に残債が残ることになりますが、その残債の処分方法は全く異なります。競売の場合、残債は原則として一括返済を求められることになります。

しかし、自宅が競売になるほど困窮している人が残債を一括で支払えるわけはありません。ましてや競売は売却価格が低くなりやすいので、残債自体も大きくなりがちです。交渉の余地がないわけではありませんが、基本的には個人再生や自己破産などの債務整理が必要になるでしょう。

一方、任意売却の場合は、残債を分割払いで返していくことが可能です。大抵の場合は月々1万円~2万円を返済していけばいいということになるため、残債が払えなくて困るということは余りありません。

立ち退き日がある程度自由に決められる

競売の場合、立ち退き日は裁判所が決めます。債務者が関与する余地は一切ありません。一方、任意売却の場合は、立ち退き日は債権者と債務者、買い主が相談の上決めることができるため、ある程度のこちらの意向をくんでもらえることが多いです。

任意売却の流れ

任意売却のメリットがわかったところで、次に具体的な任意売却の流れを見ていきましょう。

債権者に連絡し、住宅ローンを滞納する

任意売却をするためには、住宅ローンを滞納する必要があります。「今は大丈夫だがこれから滞納しそう」という段階では通常、任意売却は認められません。任意売却はあくまで実際に住宅ローンが払えなくなった人向けの制度なのです。

しかし、だからといって何の断りもなくただ滞納し続けるのも得策とはいえません。いきなり何ヶ月も住宅ローンを滞納しておいて、いきなり一方的に任意売却をしようとするのは社会人として正しい態度ではありませんし、債権者の心象も悪くなります。

連絡を放置し続けるのはもっと悪く、競売になってしまう可能性が高まります。現実から目をそらしたい気持ちはわかりますが、逃げ続けても自体は悪くなるばかりで、解決することは決してありません。覚悟を決めて早めに連絡しましょう。

滞納しそうになった段階で債権者に連絡し、今は大丈夫だが近い将来滞納する可能性が高い事、任意売却を考えていることなどを事前に伝えておきましょう。そうすれば誠意ある対応をしたとみなされ、後々発生する様々な手続きで債権者の協力が得られる可能性が高いです。

仲介業者を探し、査定を受けて専任媒介契約を結ぶ

任意売却は通常、業者に任せます。一般的な不動産会社に任せることもできますが、任意売却は債務整理がからみ難易度が高いため、より慣れている任意売却専門の業者に任せたほうが安心です。任意売却専門の業者を幾つかピックアップしてみましたので、参考にしてください。

また、業者ではなく弁護士や司法書士などに依頼することもできます。弁護士や司法書士はそれぞれ得意分野が違うので、必ず任意売却に強い弁護士に依頼しましょう。

弁護士はインターネットから探せる他、法テラスや弁護士会を通じて紹介してもらうこともできます(参考:弁護士費用の相場(相談料)は?無料で相談できる?)。

任せる相手が決まったら物件の価格を査定してもらいます。査定の判断を謝ると債権者から合意が得られなかったり、買い手が見つからなかったりすることもありますが、信頼できる業者ならば適切な価格をつけてくれるため心配ないでしょう。

査定が終わったら、専任媒介契約を結びます。専任媒介契約とは、一つの業者にだけ仲介を任せる契約です。一般売却の場合は複数の業者に仲介を任せる一般媒介契約が結べますが、任意売却の場合はそれができないので注意してください。

債権者から同意を得て、販売活動を開始する

債権者から合意を得るのは債務者ではなく仲介業者であるため、債権者が特別に何かする必要はありません。売買価格の調整や残債の返済方法などについても、業者に任せられます。販売活動はインターネット広告や新聞折込などを活用しながら行います。

売却、決済

売却が決まったら決済を行い、買主から支払いを受け、そのお金を残債の返済に当てます。

売却額が残債を下回った場合は、その差額は原則として分割で支払うことになります。毎月の支払額は業者と債権者の交渉次第ですが、毎月1万円~2万円程度になることが多いです。

任意売却と一般売却はどう違う?

任意売却は競売比べれば遥かに優れた処分方法ですが、それでも一般売却と全く同じという訳にはいきません。任意売却ならではの注意点もしっかりと確認しておきましょう。

ある程度滞納をしないと任意売却の手続きができない

任意売却はいつでも無条件にできるものではありません。繰り返しになりますが、ある程度住宅ローンを滞納しなければいけません。必ず滞納前に連絡しておきましょう。

住宅ローンを滞納するとブラックリストに掲載される

住宅ローンを滞納すると、ブラックリストに掲載されます。正確に言えばブラックリストというリスト自体は存在しないのですが、ともかく住宅ローンを滞納すると一定の期間(通常は5年)新たにローンが組めなくなることは代わりありません。

これは任意売却を利用する上では避けられないデメリットなので、受け入れるしかありません。任意売却にしろ競売にしろブラックリスト入りは避けられないのですから、どうせなら高く売れる任意売却を選んだほうがお得です。

任意売却の契約は債権者の同意が必要

一般売却は、売り主が売りたいと思えばいつでも可能です。一方、任意売却の場合は、債権者の同意が必ず必要になります。

問題は債権者が任意売却に同意してくれるのかどうかということですが、大抵の場合は問題なく同意が得られます。

競売には手間も時間もかかりますし、債務者が競売後自己破産した場合、債権者は残った債務を回収できなくなってしまいます。そんなリスクを追うくらいならば、任意売却に応じたほうがよっぽどマシだからです。

売買金額について、債権者の同意が必要

一般売却の場合、買主と売主が合意に達すれば、どのような金額で売買することも可能です。しかし、任意売却の場合は債権者の合意がない限り売却はできません。

実質的に債権者が売買金額を決めることになります。債権者としては、勝手に二束三文で売り払われたら困るからです。競売で期待される落札価格以下のの売買価格になりそうな場合は、まず同意は得られません。

ただ、実際の売買の現場では、この仕組はむしろ有利に働くことが多いです。債権者は少しでも多くの債権を回収したいがゆえに、債務者の住宅が高く売れるように働きかけてくれるからです。

任意売却には期間がある

任意売却にはタイムリミットが定められています。任意売却ができるのは、競売の入札開札日です。この日までに債権者から同意を得ないと、競売になってしまいます。

競売の入札開札日は通常、住宅ローンを滞納し始めてから12~16ヶ月程度になることが多いです。早く動き出せば出すほど時間に余裕を持って債権者や買い主と交渉できるようになり、精神的にも余裕が生まれます。

滞納を無視し続けるとどうなるか

最後に、滞納を無視し続けるとどのようなことが起こるかを箇条書きにしました。

  • 競売予告通知(債権者から来る、これ以上滞納を続けると競売になりますよ、という文面の通知。送られないこともある)
  • 代位弁済予告通知(債権者から来る、これ以上滞納を続けると保証会社に建て替えてもらいますよ、という文面の通知。滞納から3ヶ月~6ヶ月で届く)
  • 期限の利益の喪失通知(債権者から来る、ローンを分割で支払うという契約に違反したため、一括で返済しなくてはならないという文面の通知。滞納から3ヶ月~6ヶ月で届く)
  • 代位弁済通知(保証会社から来る、建て替えを行った旨を伝える通知。期限の利益の喪失通知から数日中に届く。)
  • 担保不動産競売開始決定通知(裁判所から来る、競売の予告通知。代位弁済通知から約1ヶ月で届く)
  • 物件調査の開始(裁判所から派遣された執行官が競売のための資料を作成する。担保不動産競売開始決定通知から約2ヶ月で届く)
  • 入札期間通知(入札期間を知らせる通知。物件調査の開始から約2ヶ月で届く)
  • 入札開始(入札が開始する。任意売却のタイムリミット。入札期間通知から約2ヶ月後に始まる)
  • 落札(落札者に所有権が移る。もう所有者ではないので、家から追い出される。入札開始から約2ヶ月後)

このように、滞納を無視し続けていると、最終的には家から追い出されてしまいます。そうならないように、早めに手を打ちましょう。

まとめ

  • 住宅ローンが残っていて、売却価格よりも残債が多い場合でも、任意売却や競売なら売れる
  • 任意売却のほうが競売よりも高く売れる上、様々なメリットがあるのでこちらがおすすめ
  • 任意売却には期間がある
  • 滞納をひたすら無視し続けると自宅が競売にかけられ、家から追い出される

任意売却ではとにかく早めに動き出すことが大切です。現時点で滞納している方、もしくはこれか滞納しそうな方は、一刻も早く債権者に連絡するところから始めてください。