不動産投資用に購入した賃貸物件は、解体するまで持ち続けることもできますが、途中で売却することもできます。しかし、賃貸物件を売却したほうがいいのかしないほうがいいのか、する場合はいつ売却するのがベストなのかの判断をするのは簡単ではありません。
適切なタイミングで売らないと、利益を減らしたり、損失を増やしたりすることになってしまいます。
今回の記事では、購入した賃貸物件を途中で売却することのメリットとデメリット、売却価格を決める要素、売却以外の出口戦略などについてお話させていただきます。
目次
賃貸物件を途中で売却することの5つのメリット
賃貸物件を途中で売却する主なメリットは以下の5つです。
- 保有リスクをなくせる
- 費用負担をなくせる
- 手持ち資金を増やせる
- 売却ノウハウが得られる
- 取引実績を作れる
保有リスクをなくせる
賃貸物件を保有することは、実は思った以上にリスキーな行為です。たとえ現状どんなに収益性が高い物件であっても、将来収益性が落ちる可能性は否定できません。また、地震や台風、火災などの災害で資産が消滅する可能性も考えられます。売却してしまえば、これらのリスクから逃れることができます。
絶対に失ってはいけない虎の子の資産を作りたい場合は、不動産よりも安全性が高い先進国の国債や大手銀行の預貯金といった形で運用したほうが良いでしょう。
費用負担をなくせる
賃貸物件を保有し続けるのにはコストがかかります。賃貸物件は老朽化していきますので、それをカバーするための修繕や設備入れ替えなどが必須ですし、建物の評価額に応じて固定資産税や都市計画税なども支払わなければなりません。日々の管理は通常管理会社にお願いするため、彼らに支払う管理委託報酬も必要になります。
さらに、建物を買いたいまで持ち続けた場合は、解体費用も自分持ちとなります。安い木造アパートの場合はともかく、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の場合は解体費用も馬鹿になりません。売却してしまえば、これらの負担は一切なくなります。
手持ち資金を増やせる
当たり前の話ですが、賃貸物件を売却すればそれに応じた現金=資金が得られます。資金が得られれば別の賃貸物件に再投資することもできますし、預金や株式、債券、FXなど他の投資を始めることもできます。
不動産投資よりも見通しが明るそうな投資対象がある場合は、不動産を売却してて資金を作り、それを元手に新たな投資を始めるといいでしょう。
売却ノウハウが得られる
賃貸物件を売却するのは思った以上に手間がかかるものです。特に初めての売却は慣れない手続きをさせられることになるため、ストレスも溜まるでしょう。しかし、一度売却を経験しておけば、次回以降の売却が格段に楽になります。
また、最初の売却で得られたノウハウを活かせるため、より自分に有利な形で売却しやすくなります。ノウハウは書籍やセミナーで明文化されている部分も多いのですが、細かい部分については自分で体験してみないとなかなかわかりません。
取引実績を作れる
不動産会社を通じて賃貸物件を売却すると、不動産会社にお金が入ります。つまり、不動産会社にとって、あなたは「お客さん」になるわけです。
不動産会社にとってお客さんは自身に利益をもたらす存在であり、逃したくない存在です。そのため、有用な物件情報を優先的に送るなどして、繋ぎ止めようとします。こうしたパイプができるのも、売却の良いところです。
賃貸物件を売却する主なデメリット5つ
賃貸物件は不動産投資家に大きなメリットをもたらす一方で、少なからずデメリットももたらします。売却の前にはメリットのみならずデメリットもきっちりと把握し、両者を比較した上で売却する必要があります。賃貸物件の売却で発生する主なデメリットは以下の5つです。
- 譲渡益課税が発生する
- 譲渡費用がかかる
- 家賃収入が得られなくなる
- 損失が確定することがある
- 時期によって売却額が変動する
譲渡益課税が発生する
不動産を売却して収益が発生した場合、その金額に応じて納税すべき税金が増えます。収益が発生すること自体はとても望ましいことですが、税金を支払うのは余り楽しいことではありません。
同じ金額の収益が発生しても、経営主体(個人か法人か)、保有期間などによって税額は異なります。また、他の損失と上手に通算することによって、税金を安くできます。このあたりの仕組みは非常に複雑なので、収益が多い場合は税理士に相談するといいでしょう。報酬よりも高い節税効果が期待できます。
譲渡費用がかかる
建物を売却する際には、思った以上の費用がかかります。特に高いのが仲介手数料です。仲介手数料は、物件金額がある程度高くなった場合は契約価格の3%+6万円です。
例えば契約価格が1000万円の場合は1000万円×3%+6万円=36万円となります。これ以外にも印紙代、抵当権の抹消費用、登記を代行する司法書士へ支払う報酬などが発生します。
家賃収入が得られなくなる
当たり前の話ですが、投資用物件を売却してしまえば、家賃収入は得られなくなります。まだ十分に稼げる見込みがある物件は、必ずしも焦って売る必要はありません。
ただ、その物件もいずれは収益力が低くなっていきます。収益力が低くなってから売るのは簡単ではないため、ある程度まだ物件に稼げる力が残っている状態で早めに高く売却してしまうのも戦略の一つです。
譲渡損失が確定することがある
物件が高く売れなかった場合、譲渡損失が発生することが有ります。譲渡損失が発生すること自体は珍しいことではありませんが、多額の譲渡損失が生まれれば銀行の融資も受けづらくなります。
ただし、だからといって売却をズルズルと先延ばしにしてしまうと、ますます損失が膨らんでしまう可能性もあります。譲渡損失は他の利益と相殺することも可能ですので、上手に利用して節税しましょう。
時期によって売却額が変動する
賃貸物件には大まかな相場はありますが、具体的にその物件がいくらで売れるかを事前に完璧に予想することは不可能です。不動産の価格はその建物自体の品質のみならず、お客さん側の都合(その人の投資の熟練具合や買いたい度合い)、経済情勢などにも左右されるからです。
今高く売れない物件が将来高く売れる可能性もありますし、今高く売れる物件が将来二束三文になる可能性もあります。この不確定要素が不動産売却を難しいものにしています。
賃貸物件の売却額に影響を与える5つの要因
賃貸物件の売却をしたい人にとっての一番の関心事は、その物件がいくらで売れるのかということでしょう。しかし、前述の通り、賃貸物件の売却額は時期によって変動します。どうしても早急に売らなければならない事情がある場合は話が別ですが、そうでない場合はなるべく高い時期に売るように心がけたいものです。
賃貸物件の売却額がどのような要因に影響されるのかを知れば、高く売れる可能性が高まります。賃貸物件の売却額に影響を与える主な要素は以下の5点です。
- 築年数
- 修繕履歴の有無
- 税制度
- 季節
- 市況
築年数
賃貸物件の売却価格に大きな影響を与えるの要素の代表格が築年数です。一般的に賃貸物件は、築年数が浅いほうが高く貸し出せるため、それにつられて売却価格も高くなります。逆に築年数が深くなると売却価格は安くなります。
しかし、売却価格は築年数のペースに合わせて、毎年一定のペースで減少してくわけではありません。
例えば、公益社団法人東日本不動産流通機構がまとめたデータによれば、5年単位でのマンションの1m2あたりの平均成約単価は以下のとおりです。
- 0〜5年:74.37万円
- 6〜10年:61.17万円
- 11〜15年 :56.46万円
- 16〜20年 :46.73万円
- 21〜25年 :31.55万円
- 26〜30年 :29.97万円
- 31年以上〜:29.79万円
0年~5年の平均成約単価を100とした場合の、それぞれの平均成約単価は以下のとおりです。
- 0〜5年:100
- 6〜10年:約83
- 11〜15年 :約75
- 16〜20年 :約62
- 21〜25年 :約42
- 26〜30年 :約40
- 31年以上〜:約40
5年毎の下落幅を見ると、17→8→13→20→2→0となります。最初の下落幅が比較的大きいのは、新築マンションには新築というプレミアム感があるためです。
一度人が入り新築でなくなってしまったマンションは大きく価格が下落するので、1年~5年の価格は大きく下がります。一方、6年目以降は、その前の大下落の反動で下落の勢いががゆっくりになります。
しかし、築15年当たりをすぎると一気に価格が急落します。下げ止まりが来るのは築21年目以降で、その後はほとんど価格に変化がなくなります。
これらのことを考慮すると、平均成約単価で売ることを前提とするならば、売り時は値崩れが起こる前の6年目~15年目辺りということになります。築21年目を過ぎた場合は、それ以降価格が下がることは殆どないため、そのマンション単体で利益が上がっている限りは持ち続けたほうが基本的には得です。
修繕履歴の有無
修繕履歴が残っていない賃貸物件は、借り手から忌避されがちです。全国宅地建物取引業協会連合が消費者と不動産会社を対象に行なった調査によれば、中古住宅購入選考時に必要と思うことの割合は以下のようになりました。
- 履歴情報が残っていること:65.0%
- 建物診断が付されていること:63.1%
- 瑕疵保険が付されていること:60.9%
- とにかく安いこと:10.5%
- その他:2.1%
履歴情報はその他の選択肢を上回ってトップに来ています。履歴情報とは主に修繕履歴のことであるため、修繕履歴は特に消費者や不動産会社から重視される項目であると言っても過言ではないでしょう。
修繕履歴があることは大して問題にはならず、むしろ好意的に捉えられることが多いですが、修繕したことがあるのかないのか、あるいはどこを修繕したのかわからない賃貸物件は間違いなく嫌われます。修繕をした場合は、その履歴をキチンと残しておきましょう。
税制度
前述の通り、賃貸物件の売却で利益が発生した場合は譲渡益課税が発生します。実はこの譲渡益課税、譲渡のタイミングによって税率が異なります。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下だった場合は、「短期譲渡税」がかかります。短期譲渡税の税率は所得税30.63%(復興所得税0.63%を含む)、住民税9%で合わせて39.63%です。
一方、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていた場合は、「長期譲渡税」がかかります。長期譲渡税の税率は所得税15.315%(復興所得税0.315%含む)、住民税5%で合わせて20.315%です。売却した時期によって、税率に19%以上の差が発生するわけです。これらのことを考慮すると、基本的に5年以内での売却は不利であるといえます。
築年数のところでも、1年~5年は建物単価は大きく下がることがわかっており、売却に適さないタイミングです。新築マンションを比較的短期で売却することを前提としている場合でも、よほどのことがない限りは最低5年間は保有したほうがいいでしょう。
季節
賃貸物件のニーズは1年中同じというわけではなく、季節によって変化します。当然、ニーズが多い時期に売却したほうが高く売れます。
日本で多くの人が新居を探すのは、進学や就職、転勤などが発生する4月です。この時期を見越して、2月~3月に物件を探す人が多いため、その少し前、1月ごろに売却をすれば最も高く売れます。
逆に4月を過ぎてしまうとニーズが一気に減少してしまうため、価格は下落します。年度末の売り手市場に調子に乗っていると、4月に痛い目を見ることになりますので、あまり深追いせずに早めに売ってしまいましょう。
市況
市況、世の中の景気も賃貸物件の価格に大きな影響を与えます。同じ物件であってもリーマンショック前と後、あるいはバブル景気中とバブル崩壊後では価格が全く違っています。現状、地価は基本的に上昇傾向にあります。この地下上昇基調は東京オリンピック頃までは続くと考えれていますが、その保証はありません。
リーマンショックみたいなことがまた起こる可能性もありますし、逆に期待以上に価格が上昇することも考えられます。
東京オリンピック後に価格が上昇するかしないかもわかりません。大きな利益は求めないので、とりあえず現時点で利益を確定させるというのは選択肢としては十分にありです。
自身の都合から考える売却のタイミング
資金や時間に十分な余裕がある場合は、最も利益が大きくなるタイミングを待ってから売却するのがいいのですが、時にはそんな悠長なことを行ってられないこともあります。
例えば何らかの事情があって今すぐにまとまった現金を確保したいという場合は、今後待てばさらに価格が上昇する可能性が高くても売らざるを得ません。売却益が十分望めないでも、以下のような場合には売却をすることになります。
- 所有資産のバランス見直しをしたい時
- 赤字物件の損切をしたい時
- 減価償却期間が来た時
所有資産のバランス見直し
全所有資産に占める不動産資産の割合があまりにも多すぎる場合は、一旦不動産を少し売却し、得られた資金を株式や債券などに回したほうがいいかもしれません。一つの資産に過度に資金を集中させるのは、資産を守る上では必須と考えられる「分散投資」の考え方に反するからです。
不動産にはマンション、アパート、商業施設、医療施設などがありますが、基本的には皆似たような値動きをします。
マンションは高騰したのに商業施設は暴落、といった現象が起こることはそれほど多くありません。不動産に資金を集中させすぎると、不動産価格全体が下がるような出来事が起きた場合にその影響をモロに受けてしまいます。
株式や債券、投資信託、仮想通貨など別の対象に資産を分散しておけば、そのような自体が発生しても受ける影響は限定的なものになります。
投資の世界においては資産を増やすこと以上に資産を守ることが重要です。不動産に限らず、一部の対象に過度に資金が集中している場合は、バランス見直しをしたほうが良いでしょう。
赤字物件の損切
不動産投資に失敗して赤字が出ている場合、それを放置して自体が改善されるケースは殆どありません。判断を引き伸ばして傷口を広げていくよりは、早めの損切で傷口を最小限に抑えるほうが合理的です。赤字が●●円になったら売る、などのタイミングを事前に決めておけば、いざという時の判断で迷わなくなります。
減価償却期間の到来
減価償却とは、物件の購入費用を1年間にまとめて計上せず、何年かに分けて計上することです。減価償却を行うことによって、毎年の黒字を減らすことができ、節税につながります。減価償却期間は購入時点での築年数、構造、建物の用途などによって変わります。
例えば、新築の木造住宅の場合、減価償却期間は22年です。新築の鉄骨・鉄筋コンクリート造住宅の場合、減価償却期間は47年です。木造のほうが減価償却期間が短いのは、木造住宅のほうが寿命が短いからです。
減価償却期間が終了すると、毎年費用を計上できなくなるため、利益が大きくなり、それにともなって所得税・住民税も高くなります。
減価償却期間が終了したタイミングで売却するというのは一つの選択肢として非常に有力です。特に税金対策がメインの目的である場合は、減価償却期間を終えたらさっさと売却してしまったほうがいいケースが大半です。
不動産投資の出口戦略の考え方
不動産投資には入口と出口があります。入り口は建物購入、出口は建物売却(もしくは解体、建て替え)です。入り口については熱心に考える方が多いのですが、最初から出口まできちんと考えている方はそれほど多くありません。
しかし、不動産投資をする上で出口について考えること、すなわち出口戦略を持つことは非常に重要です。優良物件で投資初期は高利回りを維持していても、その後の建物の劣化やそれに伴う修繕費増加・空室率増加、金利上昇などによって利益が減少することはままあります。
すべてのリスクを事前に把握することはできませんが、それでも出口戦略を入口の前から考えておけば、想定外の事態をある程度防ぐことが可能です。では、具体的にどの時期に売却チャンスがやってくるのでしょうか。基本的には購入から6年後を筆頭に、それから概ね5年に1度のペースでやってくると考えるのがいいでしょう。
最初の売却チャンスは「購入後6年目」
賃貸物件を上手に手放せる最初のチャンスは物件購入後から6年目です。理由は簡単で、5年目と6年目では譲渡税が大きく異なるからです。前述の通り、短期譲渡税の税率は約39%、長期譲渡税の税率は20%と、倍近い差が有ります。
また、多くの不動産投資ローンは3年~5年程度の短期固定金利を採用しているものが多く、6年目から変動金利になるものも少なくありません。変動金利は金利が安くなる可能性もある反面、高くなる可能性もあり、安定性を優先させる人には余り向いていません。変動金利になったことをきっかけに売却を意識するのも有力な戦略です。
売却によって利益が出る場合は、購入後6年目が売却チャンスになります。
2回目の売却チャンスは「購入後11年目」
最初の売却チャンスを見送った場合、次のチャンスは11年目にやってきます。ちょうどのこの時期は、大規模修繕を意識しなければならない時期です(中古物件の場合はもっと前にそのタイミングがやってくることもあります)。もちろん、建物によっては15年間、あるいは20年間大規模修繕が不要なケースもありますが、平均的なクオリティの物件の場合は11年目辺りから考えなければなりません。
大規模修繕は外壁塗装や建物のコーティングなど多額の費用がかかるため、この時期、あるいはこの時期の直前に売却を考える人が少なくありません(大規模修繕をしてから売却するのはおすすめできません。大抵の場合、大規模修繕にかかった費用ほど売却額が上乗せされることはないからです)。
3回目の売却チャンスは「購入後15年目」
2回目の売却チャンスもスルーした場合、次のチャンスは購入後15年目頃にやってきます。この頃になるとローンの返済もだいぶ進んでいるはずです。ローンの返済が進んでいると、それだけ利息の支払いも減ります。
利息は経費として計上されますから、利息が少なくなれば経費が少なくなり、経費が少なくなれば利益が増え、利益が増えれば税金が増えます。
建物を1棟しか持っていない場合は、購入後時間が経てば賃料収入も減っているため税金が大きく増えることはありませんが、収益性の高い他の物件を複数持っている場合は、経費の減少が税金を急増させる可能性があります。節税メリットが少なく、収益性も少ない物件は売却してしまったほうがいいでしょう。
4回目の売却チャンスは「購入後20年目以降」
3回目の売却チャンスも見送った場合、次の売却チャンスは購入後20年目以降になります。この時期以降は物件売却価格はほぼ横ばいになるため、いつ売ってもいいでしょう。
このチャンスは要するに、減価償却期間が終わる時期です。減価償却期間が終わると毎年の経費が急激に減少し、それが利益を増やし、税金を増やすことにつながります。前述の通り建物の構造や用途によって減価償却期間は異なります。
なお、中古物件は新築物件と比べて減価償却期間が短いです。そのため、5年~10年程度の間、大きく経費を増やしたいという場合は、減価償却期間が短い中古の木造物件を購入するといいでしょう。もちろん、その物件に全く人が入らないようでは本末転倒なので気をつけましょう。
建物売却以外の選択肢は?
賃貸物件経営の出口は売却以外に解体や建て替えがあります。
解体・建て替えのメリット3つ
長年保有していた物件を解体、あるいは建て替えることによって得られる主なメリットは以下の3つです。
- 建物を管理する手間や費用がかからなくなる
- 土地を売却しやすくなる(解体)
- 新築物件が建てられる(建て替え)
建物を解体すると、建物を管理する手間がかからなくなります。実際に管理業務を行うのは不動産管理会社である場合が大半ですが、解体すれば彼らに払う報酬ががかからなくなります。
また、建物がなくなることによって、土地を売却しやすくなります。古い物件が上に乗っかっている土地は、多くの人にとって手が出しづらいものです。
また、建物がなくなれば、当然その上に新たな当物を自ら建てることも可能になります。「立地は良いけれど建物がフルすぎて入居者が集まらない」というような問題を抱えている場合は、思い切って一度建物を解体してしまったほうがいいかもしれません。
ただし、今は建物を持ってさえ居れば自動的に利益が上がるような時代ではありません。その土地が本当に立地のいい土地なのか、事前に十分調査する必要があります。
解体・建て替えのデメリット3つ
一方、長年保有していた物件を解体、あるいは立て替えることによって生じる主なデメリットは以下の3つです。
- 解体費用がかかる
- 固定資産税や都市計画税が増える
- 解体によって土地が売れにくくなる場合がある(解体)
建物を解体するには、当然解体費用がかかります。解体費用は依頼する業者や建物の構造などにも左右されるので一概にはいえませんが、100万円単位の費用は見積もっておいた方がよいでしょう。基本的には建物が頑丈(鉄骨造・鉄筋コンクリート造)で、なおかつ建物の規模が大きいと解体費用が高くなります。
中には比較的安い費用で請け負ってくれる業者もありますが、後で突然追加費用の支払いを求めてくるような悪質な業者もあるので注意しなければなりません。解体は周囲にも影響を及ぼす可能性がある作業なので、価格だけで業者を選ぶのは避けたほうがいいでしょう。
また、建物を解体して更地にすると、固定資産税や都市計画税が増えます(賃貸住宅の場合)。
建物がなくなるのだからその分これらの税金は安くなるようにも見えますが、実はこれらの税金には「土地に住宅用建物が建っている場合、土地の税金は最大6分の1、都市計画税は最大3分1まで減る」というルールがあります。
上に乗っていた賃貸住宅を解体してしまうとこのルールが適用されなくなってしまうため、トータルでは税金が高くなってしまいます。なお、特定空き家と呼ばれる周囲に悪影響を与える空き家はこのルールがもともと適用されないため、解体すれば建物の分だけ税金が安くなります。
また、土地によっては建物を解体することによって却って売れづらくなってしまう可能性もあります。例えばその土地が市街化調整区域の場合、原則として新たに建物は建てられないため、解体してしまうとそこで賃貸物件経営ができなくなります。
投資家の中には、古い物件を安く買い、大規模修繕で価値をアップさせて入居率と賃料を上げることを好む人も居ます。そうしたニーズを汲み取るのは容易なことではありませんが、暫くの間は建物付きで売却に出し、それがだめだとわかってから解体したほうがいいかもしれません。
まとめ
- 賃貸物件を売却すると様々なリスクがなくなり、資金も手に入るなどのメリットが得られる
- 一方で家賃収入が少なくなったり、売却額が季節に左右されるなどのデメリットもある
- 売却額は築年数のほか市況や税制などにも左右される
- 売却に適したタイミングは5年に1度のペースでやってくる
- 建物を売却ではなく解体・建て替えした方がいいこともある
- 解体すると土地の固定資産税が急激に高くなることがある
賃貸物件経営は購入して終わりではありません。最初のことしか考えていないと、後で泣きを見ることになります。実際に物件を購入する前から出口戦略についてよく考えておきましょう。