今現在、マンションの売却を検討中だという方に忘れてほしくないのが、税金のこと。マンションを売却すると「不動産売買によって譲渡所得を得た」ということになるので、得られた収入に対してさまざまな税金がかかります。
これら、マンション売却に伴う税金がどのようなものか知っておかないと、思わぬ出費で「売却益が思っていたほど手元に残らなかった…」という事態に陥ってしまうかもしれません。
そこで今回は、マンションを売却する際に支払う必要がある税金の種類をご紹介したいと思います。また、税負担を抑えられるお得な節税方法も合わせご紹介するので、マンション売却で少しでも利益を増やしたいと考えている方は必見です!
マンション売却時にかかる税金とは?
まず、マンション売却にあたって具体的にどのような税金が必要になるのかご説明しましょう。
マンションなどの建物は、必ず何らかの土地の上に建っています。土地は国にとって限りある資源なので、「どの土地を誰が所有しているのか?」といった情報を管理しておかなければなりません。そのため、不動産取引などによって所有者が移転する際には、税金を負担する必要があるのです。
売却時にかかる税金は、マンション購入の「目的」により異なる
マンションの売却時に支払う必要がある税金の種類は、売却したマンションが「投資用」か「居住用」かによって異なります。投資用マンションとは、賃貸経営などマンションを利用して事業活動を営むためのもの。
一方、居住用マンションとは、購入する人がもっぱら自分や家族が住む自宅用として購入するもののことです。
今回は、特に言及がない限りは基本的に居住用マンションに関する内容をご紹介したいと思います。
マンション売却時に必要になる税金の種類
印紙税
印紙税とは、不動産売買を行う際の「売買契約書」に貼り付ける印紙の代金です。「印紙の購入を持って税金の支払いをしている」と考えるとわかりやすいでしょう。印紙税の額は、契約金額によって異なっており以下のようになります。
「印紙税額の一覧」
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え、100万円以下 | 1000円 | 500円 |
100万円を超え、500万円以下 | 2000円 | 1000円 |
500万円を超え、1000万円以下 | 1万円 | 5000円 |
1000万円を超え、5000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5000万円を超え、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
ちなみに、「本則税率」とあるのが本来の税額ですが、平成26年4月1日から平成30年3月31日までは、右端にある「軽減税率」が適用されます。
すでに述べたとおり、印紙は売買契約書に貼り付けるものなので、本来であれば売買契約書の枚数だけ印紙税を支払わなければいけません。
しかし、不動産売買において売買契約書は買主が持っていればよく、売主の方はそのコピーなどをもらっておくだけでも大丈夫です。
従って、買主・売主がそれぞれ売買契約書の原本を持ち、それぞれに印紙を購入して貼り付けるのではなく、売買契約書をひとつ作成し、原本は買主に、売主はコピーを貰うようにすれば印紙税を節約することができます。
登録免許税
登録免許税とは、さまざまな登記、登録、免許、認可などに課せられる税金のことです。マンション売却の際は、「不動産ローンの抵当権抹消登記」、「新居に移り住むための住所変更登記」の2つについて税が課せられます。
不動産ローンの抵当権抹消登記
通常、マンションの購入に住宅ローンを利用している場合、契約している金融機関はローンの返済が滞ったときに備えてマンションに抵当権を設定しています。マンションを売却する際には、この不動産ローンに伴う抵当権の抹消を行わなければいけません。
抵当権を抹消するためには住宅ローンを完済する必要があります。マンションの売却を行う場合は、売却で得られる利益を利用してローンの支払いを行うことが可能です。
簡単にまとめると、まず「売却代金で残存している住宅ローンを完済」、次に「マンションの抵当権抹消登記を行う」という手順になります。
抵当権抹消登記で支払う登録免許税は、土地と建物を合わせて2,000円です。
新居に移り住むための住所変更登記
世の中の不動産は、所有者の氏名と住所が登記簿に記録され法務局によって管理、保管されています。マンション売却に伴い、登記簿に記載されている所有者の氏名と住所が変更されるため、登録免許税を支払う必要があります。
住所変更登記で支払う登録免許税は、不動産の数×1,000円なので、売主は自身の住居移転分1件=1,000円の支払いが必要です。
所得税
マンション売却で発生する利益を「譲渡所得」と呼びますが、この譲渡所得には所得税がかかります。譲渡所得税の対象となる譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
売却価格とは、譲渡価格とも言い、実際にマンションが売れた価格のこと。取得費用とは、最初にマンションを購入したときにかかった費用の合計のことです。不動産会社に支払う仲介手数料など、売却時に発生するほかの費用は売却費用に含まれます。
減価償却費については、少し丁寧に説明しておきましょう。建物は時間とともに朽ちていくため、「購入から一定の年月が経過したら、価値がゼロになる」とみなします。現時点において「購入時と比べてどれだけ価値が減ったのか」を表すのが減価償却費で、求め方は次の通りです。
償却率とは価値が目減りするペースを表すための率で、建築方法と建物利用の目的によって異なります。例として、鉄筋コンクリート造のマンションの場合の耐用年数と償却率をご紹介しておきましょう。
「鉄筋コンクリート造マンションの耐用年数・償却率」
利用目的 | 耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
居住用マンションの場合 | 70年 | 0.015 |
事業用マンションの場合 | 47年 | 0.022 |
簡単にいえば、鉄筋コンクリート造の居住用マンションであれば、「1年ごとに1.5%ずつ価値が下がっていく」ということです。
マンション売却に伴い譲渡所得にかかる所得税率は、「所有期間」によって異なります。所有期間が「譲渡の年の1月1日で5年以下」の場合、所得税率は30%となります。5年を超える場合は、所得税率は15%と半分になるので覚えておいてください。
ちなみに、「マンションを購入時の価格よりも安く売却した」といったケースでは、確定申告の必要はあるものの所得税は非課税になります。
また、「マンションを売却したが、譲渡益は得られず損失が出た」というケースもあるはずです。このような場合、「譲渡損失の繰越控除」という仕組みを利用することができます。
譲渡損失の繰越控除とは「マンション売却の年とそれから最長3年間、給与など所得の合計から譲渡損失の分を控除できる」というものです。
たとえば、年間の給与所得500万円の人が、マンション売買で1000万円の譲渡損失を被ったとしましょう。マンション売却を行った年の確定申告では、「1,000万円-500万円」分の控除が受けられるので、「所得ゼロ」とみなされ所得税はかかりません。
ちなみに、所有していた期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つに分けて税金の計算を行うことになります。
住民税
住民税(市民税・都道府県民税など)は自治体へ支払う税金ですが、基本的な考え方は所得税と同じです。所得税と同様に所有期間5年以内の場合は9%、5年を超える場合は5%の住民税を支払う必要があります。
所得税同様、所得金額によって課税対象額が決まるため、もしマンション売却で譲渡損失が出ている場合は「譲渡損失の繰越控除」を利用することが可能です。税率が異なるだけで、控除の仕組みは所得税の項目で紹介したものと変わりません。
事業用マンションの場合の税負担
居住用ではなく、事業用のマンションを売却した場合、上記の費用に加えて消費税がかかります。一緒に土地の売却を行ったとしても、消費税がかかるのはマンション部分の値段に対してのみです。
また、所得税の項目で説明したように、減価償却率が居住用と異なるので注意してください。
マンション売却に伴って発生するその他の費用や、得られる利益、あるいは利益と費用がいつ発生するのか具体的なタイミングを知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
マンション売却時に節税する方法
以上が、マンション売却にかかる税金です。続いて、これらの税金をできるだけ抑える、節税に役立つ方法をご紹介しましょう。
3,000万円の特別控除
自宅用マンションを売却する場合、「3,000万円の特別控除」という仕組みがあります。これは「譲渡所得が3000万円を超えない限り、税金がかからない」というもので、適用を受けるためには以下の条件をクリアしていなければいけません。
②前年、前前年に「3,000万円の特別控除」、もしくは買い換え特例、繰越控除の特例を受けていない。
③ほかの特別控除、特例を一緒に受けていない。
④居住しなくなった日から3年目の12月31日までに売却する。
⑤親子、夫婦等特別な関係にある人に売ったものでない。
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、「購入後10年を超えた自宅用マンションを売却する場合、軽減税率の適用を受けられるというものです。軽減税率は、譲渡所得が6,000万円以下の場合、「所得税10%、住民税4%」。譲渡所得が6,000万円を超える場合は以下の計算式によって税率が出せます。
住民税 = ( 課税譲渡所得 – 6,000万円 ) × 5% + 240万円
軽減税率の特例を適用するためには、以下の条件を満たしていなければいけません。
②前年、前前年に同じ特例の適用を受けていない
③買い替え特例、繰越控除の特例等、ほかの特例の適用を受けていない。
④居住しなくなった日から3年目の12月31日までに売却する。
⑤親子、夫婦等特別な関係にある人に売ったものでない。
ちなみに、この軽減税率の特例は3,000万円の特別控除と併用できるので覚えておくと良いでしょう。
買い換え特例
「自宅用マンションを売って、別の物件を買い換える」という場合、「譲渡所得にかかる課税を将来の新居売却時まで先送りにできる」のが買い換え特例です。買い換え特例を利用するためには、「売却したマンション」が以下の条件を満たしていなければいけません。
②売却価格が1億円以下である。
また、同時に「新しく購入した住居」が以下の条件を満たしている必要があります。
②築25年以内である。もしくは、耐震住宅である。
③元のマンションを売った年の前年から翌年までの間に購入する。
ちなみに、「買い替え時の譲渡所得」とは以下のような式によって表されます。
②譲渡所得 = ① − (以前のマンションの購入費用 + 売却時の諸経費)×(① ÷ 売却価格 )
譲渡所得が発生していた場合、それに対する課税は今回引っ越す新たな住居から、さらに別の住居へ移り住むまで支払いを先送りにできます。また、もし新しい住居の購入費用が、以前のマンションの価格がよりも高い場合、譲渡所得は発生しません。
まとめ
今回は、主に居住用マンションを基本に、マンション売却時にかかる税金の種類と、税金の支払い額を抑えるための節税方法をご紹介してきました。
マンション売却時にかかる税金は、印紙税、登録免許税、所得税、住民税があります。また、事業用マンションを売却する際はそれらに加えて消費税の支払いも必要です。
これらの税負担を抑える方法として、3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、買い換え特例をご紹介しました。
どの方法も適用を受けられる条件が定められているので、自身のマンション売却がどの控除、特例の適用を受けられるのか、必要書類も含めよく確認してから制度を利用するようにしましょう。
税負担を少しでも軽減できれば、その分マンション売却で得られる利益は多くなります。新しい住居での新生活を気持ちよくスタートするためにも、マンション売却に伴う税負担について一度落ち着いて考えてみてはいかがでしょうか?