年収が少ないと貯金ができない、というイメージをお持ちの方は少なくないかと思います。しかし、それは大いなる幻想です。年収が250万円程度であっても、工夫次第で30代のうちに年収の数倍、もしくはそれ以上の貯蓄をすることが可能です。
逆に年収が1000万円あっても、お金の管理ができないといつまで経っても貯蓄は増えません。なんとなく生活していると、お金はどんどん手元から逃げていきます。
とはいえ、貯蓄を増やすために生活費を極限まで切り詰めるというのはおすすめできません。そんな無理が長続きするはずはないからです。貯蓄は楽して行うべきです。
今回はなるべく努力せず、労力もかからない、半自動的にお金が溜まっていくシステムの構築方法をお教えいたしますので、貯金ができなくて困っている、という方は参考にしてください。
年収が少ない世帯は貯蓄率が高い
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」によれば、年収750万円以上の世帯の貯蓄率は11.5%~13.5%であるのに対して、年収300万円以上500万円未満の世帯の貯蓄率は20.0%~31.6%となっています。
貯蓄率とは、可処分所得に対する貯蓄額の割合です。可処分所得とは所得から税金や健康保険料などの支払い部分を覗いた、いわゆる「手取り収入」の部分です。
年収が低い世帯の方が、手取り収入に対する所得の割合が大きい、つまり手取り収入を堅実に貯蓄に回せているというわけですね。もちろん年収が低い世帯は手取り収入自体が少ないので、貯蓄の絶対額は少ないのですが、年収が低いから貯蓄ができない、と言うのは単なるイメージに過ぎないことがわかります。
年収が同じでも貯蓄額は世帯によって大きく異なる
一方でこのようなデータもあります。以下の表は、世帯年収別に貯蓄額の平均値と中央値をまとめたものです。
年収 | 平均値 | 中央値 |
収入なし | - | - |
300万円未満 | 165万円 | 10万円 |
300~500万円未満 | 394万円 | 150万円 |
500~750万円未満 | 542万円 | 320万円 |
750~1,000万円未満 | 729万円 | 496万円 |
1,000~1,200万円未満 | 1414万円 | 1100万円 |
1,200万円以上 | 2085万円 | 1574万円 |
ここで注目すべきは平均値と中央値の差です。平均値とは(皆さんも御存知かと思いますが)、全世帯の貯蓄額を合計し、世帯数で割ったものです。
一方、中央値とは全世帯の年収を高い方から順番に並べたときに、ちょうど真ん中に来る数字です。(世帯数が偶数の時は真ん中に2つの値が来るので、その2つを足して2でわります)。
試しに、以下のような5世帯の貯蓄額の平均値と中央値を出してみたいと思います。
- 世帯A:貯蓄額100万円
- 世帯B:貯蓄額200万円
- 世帯C:貯蓄額400万円
- 世帯D:貯蓄額1000万円
- 世帯E:貯蓄額:100万円
この5世帯の貯蓄額の平均値は(1000万円+400万円+200万円+100万円+100万円)÷5=360万円です。
一方、この5世帯の中央値は、上から3番目に貯蓄が多い世帯Bの貯蓄額、つまり200万円です。
同じ統計データであっても、平均値は360万円、中央値は200万円とかなりの差がついています。
実際の統計データも、すべての年収帯で「平均値>中央値」となっています。一部の貯蓄額の多い世帯が平均値を押し上げているため、このような現象が起こります。
1200万円年収があっても10%は貯蓄なし
次に、30代で貯蓄がない人の割合を見てみましょう。
年収 | 貯蓄なし |
収入なし | - |
300万円未満 | 46% |
300~500万円未満 | 38% |
500~750万円未満 | 16% |
750~1,000万円未満 | 22% |
1,000~1,200万円未満 | 0% |
1,200万円以上 | 10% |
年収が少ないほうが貯蓄なしの割合も高くなっていますが、一方で300万円未満でも54%は貯蓄があること、1200万円以上あっても10%は貯蓄がないことがわかります。やはり年収が少なくても貯蓄できる人はできるし、年収が多くてもできない人はできないのです。
楽に貯蓄を増やすための「5つのルール」
繰り返しになりますが、極限まで生活費を切り詰めるというのはおすすめしません。いずれ反動が来て無駄遣いするか、体調不良を起こすかして終わりでしょう。
たまにテレビに何から何まで切り詰めて貯蓄を増やしたという人が出演することがありますが、あれはかなり極端な例です。おそらくああいう人は生活を切り詰めること自体を楽しめる人なのでしょう。
それはそれで素晴らしいことかと思いますが、一般的な感覚の人が真似ても多分うまくいかないでしょう。普通の人はむしろ、いかに楽して貯蓄を増やすかを考えるべきなのです。苦しいことはどうせ長続きしません。
では、楽して貯蓄を増やすためには、何をすれば良いのでしょうか。明確な答えはありませんが、以下の「5つのルール」にしたがって行動すれば、かなり楽に貯蓄が増えていきます。
- 自動的に貯金を積み立てるサービスを利用する
- 固定費を優先的に削減する
- 人付き合いは適度に留める
- ポイントを集めない
- お金で時間を買う
自動的に貯金を積み立てるサービスを利用する
普段皆さんが給料の受け取りに利用しているであろう普通預金口座にあるお金は、いつでも自由に引き出して使えます。これは普通預金の便利な点でもあるのですが、一方で無駄遣いの原因にもなります。自由に使えるお金があると自由に使ってしまうのが人間という生き物です。
お金を効率的に貯めたい場合は、お金を「自由に使えない、使いづらい口座」に移動させるのがおすすめです。
現在、多くの銀行は自動的に預金を積み立てるサービスを提供しています。このようなサービスは「定期積立」と呼ばれることが多いです。
所定の手続きを行うと、毎月指定した金額が自動的に普通預金口座から積立用の口座に移管され、自動的に積み立てられていくというシステムです。
一度最初に手続きを済ませてしまえば、後は何もしないでも自動的に貯蓄が溜まっていきます。僅かではありますが、利息というおまけも付いてきます。このような自動化は貯蓄を作る上で非常に有用です。
中途解約は可能だが、抑止力が働く
金融機関によって多少ルールは異なりますが、大抵の場合定期積立は即座に中途解約が可能です。ただし、解約には手間がかかる上、満期を迎えた場合と比べて利率が低くなります。これらの事柄が抑止力となるので、実際に中途解約をしてしまうことはめったにありません。
積立日は給料日直後に設定するのがおすすめ
自動積立の引き落とし日はなるべく、給料日直後に設定するのがおすすめです。普通預金口座にお金がないと積立ができなくなるからです。
お金を使った余りを積立に回すのではなく、最初に積み立てて残ったお金で生活するという意識を持ちましょう。
会社員・公務員・パートは財形貯蓄が使えることも
財形貯蓄は、被雇用者の雇用先である企業や自治体などが、金融機関と連携して給料やボーナスの一部を自動的に積み立てる制度です。サービスの内容自体は定期積立とほぼ一緒ですが、こちらは勤務先が仲介役となります。勤務先が制度を導入していなければ利用できません。
財形貯蓄は一般目的用の「財形一般貯蓄」、マイホーム購入資金を貯めるための「財形住宅貯蓄」、老後資金を貯める「財形年金貯蓄」の3つがあります。このうち、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は、合計550万円までの部分は利息が非課税になります。
また、企業によっては財形給付金制度・財形基金制度を導入していることもあります。
前者は財形貯蓄をしている被雇用者に対して事業主が定期的に金銭を拠出するシステム、後者は被雇用者が財形基金を設立して事業主から金銭の拠出を受け、それを運用するシステムです。どちらも被雇用者にとってはメリットしかない制度です。
固定費を優先的に削減する
毎月の出費は固定費と変動費に分けることが出来ます。固定費は変動しない費用で、例えば家賃、駐車場代、保険料、プロバイダ料金などが該当します。一方、変動人は毎月変動する費用で、食費、水道代、ガス代、ガソリン代などが該当します。
この両者のうち、優先して削減すべきなのは固定費です。理由は簡単で、固定費のほうが楽に削れるからです。
例えば、家賃を減らす場合は、より家賃が安いところに1回だけ引っ越してしまえば、後は一切の努力・労力なしで勝手に出費が減っていきます。保険も1回安いところに切り替えれば、後は自動的に出費が減っていきます。
一方、変動費を削るのには継続的な努力が必要になります。例えば食費を減らす場合は毎日安いスーパーを探したり、外食する場合はなるべく安いお店を探したり、といった努力をしなければなりません。
手間がかかるためストレスを感じやすく、大抵の場合は長続きしません。変動費はもともとの絶対額が小さい場合も多く削れる余地も少ないため、まずは固定費から減らしていくのが良いでしょう。
家賃や最優先で削減する
固定費の中でも最も金額が大きい、言い換えれば削れる余地が大きいのは家賃です。毎月8万円の家賃を7万円にすれば、それだけで年に12万円も固定費を削減できます。解約や新居探しには手間と費用がかかりますが、長い目で見ればかなりの節約につながります。
ただし、解約する時期によっては違約金が発生するケースもあります。また、解約したくてもすぐにできるとは限りません(契約で「●●ヶ月前に連絡しないと解約を認めない」などと定められていることが多いです)。契約書を確認するか、管理会社に連絡してください。
引っ越ししない場合は毎月の携帯電話料金を見直す
現時点ですでに十分家賃が安い、あるいは今の家を非常に気に入っているという場合は、毎月の携帯電話料金を見直してみると良いでしょう。
例えば、会話時間が長くて通話料金が高くなっている場合は、カケホーダイプランに入るといいでしょう。あるいは、スカイプなどの無料通話アプリを使うという手もあります。逆に通話時間が極端に短いのにカケホーダイプランに入るのは無駄なので、解約した方がいいでしょう。
データ通信量が高い場合は、適切な料金プランに切り替えましょう。自宅に居る最中はWi-Fiも有効活用してください。格安SIMもおすすめです。
人付き合いは適度に留める
人付き合いが人生を豊かにしてくれることは確かですが、一方で余計な人間関係は人生に悪影響を与えるのもまた確かです。
皆さんの頭のなかにも、できれば付き合いたくない人、関わりたくない人というのが何人かいるかと思います(逆にあなたの周りの人の中にも、できればあなたとは付き合いたくない人、関わりたくない人が居る可能性が高いです)。
お互いに関わり合いになりたくないと思っているのならば、関わらないに越したことはありません。どうしても切れない縁もあるでしょうが、お互いに不要で切っても構わない縁はいつまでも残しておくべきではありません。
無駄な付き合いでお金と時間を神経を減らすことがないよう、人付き合いは適度にとどめておきましょう。
ポイントを集めない
ポイントのに執着していると、なかなか貯蓄がはかどりません。ポイントを貯めることに主眼がうつってしまい、本当に欲しいものと、実は大していらないものを見極める眼力が養えなくなってしまうからです。
どうせポイントなどいくら頑張って貯めても大した額にはならないのですから、これを機に財布の中のポイントカードは捨ててしまいましょう。
お金で時間を買う
時間はお金で買えます。例えばスーパーで野菜を買うのは「自分で野菜を育てる時間を省く権利をお金で買う行為」と言えますし、不動産屋に物件売買の仲介を頼むのは「自分で取引相手を見つけ、不備のない契約書を用意する時間を省く権利をお金で買う行為」と言えます。
お金で時間を買えば、自由に使える時間が増えます。自由な時間を使って副業を始めたり、勉強したりすれば、将来得られるお金が増え、それに伴って貯蓄も増やせるようになります。
むろん、誰でもできるようなことを大金積んでやってもらうのは正しいとはいえませんが、自分でやるのは難しいことは積極的にお金を払って他人にやってもらうべきです。
世の中には何でもかんでも自分でやりたがる人というのがいます。チャレンジ精神を持つのは結構なことですが、貯蓄を優先するのならばこの考えは捨てたほうがいいでしょう。
貯蓄ができたら次に何をする?
上記のことを実践してある程度貯蓄ができたら、次に何をするべきでしょうか。貯蓄の目的が明確だった場合はそれに使えばいいですが、余り明確な目的なく貯めていたという場合は、一部を欲しいものに回し、また別の一部を投資に回すことをおすすめします。
欲しいものを貯蓄で買うというのは非常に素晴らしい行為です。借金して買った場合と違って余計な罪悪感を感じることもありませんし、あとでたんまり利息を請求されることはありません。貯蓄という目的を達成したのですから、少しぐらい自分に優しくしてもバチは当たりません。
ただし、せっかく貯めたお金で買ったものを対してうまく使いこなせないと非常にがっかりします。購入前に、それが本当に欲しいものであるのかよく考えるようにしましょう。
投資をすると世の中の仕組みがちょっとだけ分かる
投資は怖い、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、投資は適切にリスク管理ができる人にとっては大して危険なものではなく、むしろ貯金以上に高い利回りを実現できる可能性が大きいものです。
投資で多額の借金を背負って自己破産、と言うのは非常にインパクトが大きいのでよく話題になりますが、実際にそんな羽目に陥る人は限られていますし、彼らの判断能力のなさが問題なのであって、投資の仕組み自体の問題ではありません。
初心者が安全に投資をすすめる上で大切なのは分散投資です。分散投資とは投資する対象、時期などを分散させることによってリスクを分散する手法です。
集中投資と比べて大きく儲かることは少ないですが、代わりに大きく損することも少ないです。書籍なども参考にして、堅実に貯めていきましょう。
まとめ
- 貯蓄はなるべく楽して、手間の掛からない方法で行うと良い
- 定期積立の制度を使うと自動的に貯蓄ができる
- 会社員や公務員の場合は財形貯蓄が利用できることも
- 節約は固定費の削減から行う
- 無駄な人間関係はなくしてしまって良い
定期積立と固定費の削減は、今からでもすぐに取り組める簡単かつ効率的な貯蓄法です。楽してお金を貯めたい人は、さっそく始めてみましょう。