もし、あなたが他人にお金を貸しているなら、ある日突然「受任通知」という書類が届くかもしれません。受任通知なんて言葉自体、初めて聞くでしょうから驚いてしまうかもしれませんね。
受任通知とは簡単に言うと、あなたがお金を貸している人(債務者)が債務整理を弁護士に依頼したことを通知します、という文書です。
受任通知が届いたからといって、訴えられたりするわけではありませんからまずは安心してください。
ただ、受任通知を受け取ったその瞬間から債権者、つまりあなたは借金の取り立てをできなくなってしまいます。
この記事では受任通知について詳しく解説していきますね。
受任通知とは?
上述したとおり、受任通知とはあなたがお金を貸している相手が債務整理をスタートしたことを知らせる書面です。
多くの場合、債務者名義で届くのではなく、債務整理を依頼した弁護士名義で届き、「内容証明郵便」という配達方法で郵送されてきます。
内容証明郵便とは配達物の内容を郵便局が証明してくれるもので、このオプションが付いていると「そんなものは受け取っていない」というしらばっくれができなくなります。
どうしてわざわざそんなオプションをつけるのか?と疑問に思うかもしれませんが、これは法的にとても重要な措置で、第三者からの有効な証言になるためです。
受任通知を受け取ったからといって、債権者がなにか手続きを行わなければならない、というわけではありません。
ただ、受任通知には非常に厄介な効力があります。それは「受任通知を受け取った瞬間から債務者への借金取り立てができなくなる」というものです。
受任通知を受け取ると借金の取り立てができなくなる?
お金の貸し借りに関する法律に「賃金業法」というものがあります。そして、その第21条に、
債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において,正当な理由がないのに,債務者等に対し,電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は訪問する方法により,当該債務を弁済することを要求し,これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず,更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
という文言があります。これは債務者が債務整理を弁護士に依頼したことがわかったら、債権者は債務者に直接取り立てを行ってはいけませんよ、という内容です。
賃金業法は主に消費者金融や銀行など、法人の賃金業者や金融機関を対象にした法律ですが、個人の債権者にも同様のことが言えるようになります。
つまり、受任通知を受け取ってしまうと、お金を貸した本人に直接借金の返済を迫ることができなくなるのですね。
ただ、本人には請求できませんが、債務整理を依頼された弁護士相手になら返済交渉が可能です。
しかし、弁護士は交渉のプロですし、法律の専門家なので、交渉したところで体よくかわされてしまうでしょう。
そもそも債務整理ってなに?
債務整理とは借金が膨らみすぎて、返済が困難になった人が行う手続きで、代表的なものには「自己破産」があります。
他にも「任意整理」や「個人再生」などがあり、いずれも債務の減額、もしくは帳消しを期待できます。
債権者にとっては厄介なものですが、債務整理は債務者の権利ですから止めることはできません。
また、債務整理は原則的に弁護士や裁判所に依頼することになります。債務整理手続きが始まれば債権者は債務者本人への借金の取立てができなくなり、弁護士や裁判所からの連絡を待つことになります。
受任通知が届いたあとの流れは?
基本は弁護士や裁判所からの連絡待ちとなります。債務者が任意整理を依頼すれば弁護士から、個人再生や自己破産を依頼すれば裁判所から連絡がきます。
任意整理や個人再生の場合は、借金の減額や返済期日の延長を交渉されることが多いです。納得いかないかもしれませんが、上手く折り合いがつくポイントで妥協することになるでしょう。
その代わり、債務者は確実に返済することを約束してくれるので、交渉で決定した金額はしっかり回収できるはずです。
債務者が自己破産を選択した場合は、債務者が持っている財産を債権者で分配することになります。
とはいえ、自己破産するほど追い詰められている状態なわけですから、多額の財産は所有していないでしょう。
そのため、回収できる借金は数%程度になってしまうことも少なくありません。非常に辛いですが自己破産手続きを止めることはできないため、どうしようもできません。
本人への請求は無理でも保証人への請求は可能
受任通知を受け取ると債務者への取り立てはできなくなりますが、もし借金の契約時に保証人を設定しているならば、保証人への請求は可能です。
ただ、保証人も同じく債務整理の手続きを開始した場合、取り立てはできなくなるので注意しましょう。
まとめ
受任通知を受け取ったら、多くの場合弁護士や裁判所からの連絡待ちになります。ちなみに債務者への直接的な取り立ては禁止されますが、裁判所を介して訴えることは可能です。