借金取り立てのガイドラインとは?

パンチパーマにサングラスで金のネックレスをかけた怖いおじさんがドアを足で蹴破って、関西弁でまくしたてながら恫喝する……ちょっと古いドラマではよく見られた展開ですが、現代日本においてこのような光景が見られることはまずありません。

現代においては、借金の取り立てには厳しいガイドライン(ルール)があからです。

なぜ借金の取り立ては紳士的なのか?

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闇金はともかく、テレビで見かけるような大手消費者金融の取り立ては決して怖いものではありません。

何億円ものお金をかけてテレビCMを打ってイメージアップに努めているのに、たかだか数百万円程度の借金回収のためにヤクザまがいの行為をしてそれが知れ渡ってしまったら本末転倒ですからね。

もちろん取立人も人間ですから、内心では「借りた金返さんとはいい度胸しとるやんけコラ」と思っているのかもしれませんが、少なくともそれを態度に出すことはありません。そんなことをしたら自分が損することがわかっているからです。

ただ、金融機関の人間にも様々なタイプの人がいるので、中には会社にばれないようにそっと圧力をかけてくる人がいるかもしれません。また、闇金はそもそもルールを守らないのでこうしたガイドラインはすべて無意味です。

今回はそんな人や金融機関に当たってしまった時の対策を考えてみたいと思います。

借金の取り立てにおける10のルール

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借金の取り立てにはルールがあります。無制限に取り立てを認めてしまうと債務者にとって不利益が発生するかもしれないからです。債務者を守ることは、結果として債権者を守ることにもつながります。借金取り立てのルールは、双方が損をしないための決まり事といえます。

ルールは金融庁が定めており、このルールを破った場合は金融機関に罰則が与えられます。

ルール1:威圧的な態度を取ってはいけない

暴力的な態度を取ったり、あるいは脅すような発言をすることは禁止されています。また、多人数で債務者の元に押し掛けることも禁止されています。

どこまでが「暴力的な態度」「脅すような発言」「多人数での訪問」に含まれるかは判断が難しいですが、たとえばある消費者金融では「自宅訪問をする際は2名まで」「物を殴って音を立てるなどの示威的な行動はしない」とマニュアルで定められています。

ルール2:早朝、深夜に押し掛けてはいけない

取り立てができるのは午前8時から午後9時までとされています。これ以外の時間に取り立てをするのは禁止されています。なお、ここでいう取り立てには訪問だけでなく、電話や電報なども含まれています。

ただし、正当な理由がある場合(債務者が雲隠れした場合、債務者が昼寝て夜働くライフスタイルの場合など)においては例外的に、時間外の取り立てを行うことができるとされています。

ルール3:債務者から退去を命じられたら、退去しなければならない

ドラマなんかでは「あんたが金払うまで今日はここから動かないからな」なんて座り込むシーンがありますが、あれを現実でやったらアウトです。帰れと言われたら、債権者にどんな都合があろうと帰らなければいけないということです。

ルール4:職場に電話したり、訪問したりしてはいけない

借金の取り立ては基本的に自宅、もしくは電話で行わなければならないとされています。職場への訪問や電話はトラブルを生む可能性がありますし、最悪の場合債務者が解雇されて債権者も損をしてしまう可能性があるからです。

ルール5:自宅周囲にビラなどを貼ってはいけない

ドラマなんかでは謝金がある人の家の周りに「金返せ」「泥棒」「約束を守れ」などの張り紙が張られ、借金があることが晒されるシーンがありますが、これももちろん現実世界でやったらアウトです。

張り紙にかかわらず、債務者に借金があることを周りの人に通知すること自体が違反とされています。

たとえその相手が親や兄弟、配偶者や子供であってもです(もちろん債務者本人が周囲に借金があることを話すのは自由です)。お金の貸し借りはあくまでも債務者と債権者の問題である、ということですね。

ルール6:債務者本人と保証人以外に返済を要求してはいけない

前述の通り、借金はあくまでも債務者と債権者の問題ですから、それ以外の人間に請求をしてはいけないということです。ただし、保証人への取り立ては認められています。

よく「どんなに仲がいい友達からの頼みであっても、保証人にだけはなってはいけない」といいますが、これは他人の借金を肩代わりさせられる可能性があるからです。

ルール7:債務者の家族や親せき、友人などを無理やり手伝わせようとしてはいけない

繰り返しになりますが、借金はあくまでも債務者と債権者の問題です。たとえ債務者や保証人が雲隠れしてしまったとしても、その家族や知人、友人にしつこく居場所や連絡先を問い合わせることは禁止されています(家族や知人が自分から進んで話した場合は問題ありません)。

ルール8:ほかの債務を作って返済しろと迫ってはいけない

他の消費者金融から借りて、その金でうちの借金を返せと迫ってはいけないということです。取り立てる側の人間もバカではないのでこのようなことを直接言うことはないかと思いますが、間接的に持ち出すことは結構あります。

そのようなときには「それってガイドライン違反なんじゃないんですか?」と問いただせばそれ以上しつこく迫られることはまずないものと思われます。

なお、このルールで決められているのは「ほかの消費者金融から借りろと言ってはいけない」ということだけなので、「友人や知人から借りろ」ということは言ってもよいと解釈されています(もちろん債務者がそれに従う必要はありませんが)。

ルール9:繰り返し返済を迫ってはいけない

何度も繰り返し訪問したり、電話をしたりすることは禁止されています。何度連絡してまでいいかと法律で明確に決められているわけではありませんが、大手の消費者金融の場合では電話は多くても1日3回までと決められていることが多いようです。

ルール10:債務者が債務整理の手続きを始めた後に取り立てをしてはいけない

債務者が弁護士などを通じて債務整理の手続きを開始した場合、それ以降は取り立てをしてはいけない決まりになっています。債務整理をしたらぴったりと督促が止んだ、という経験をしたことがある人は少なくないかと思いますが、このようなルールがあるためです。

現実的には、このような取り立てが行われることはまずない

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なんだか延々と脅かすような内容になってしまいましたが、現実的には大手の消費者金融、銀行、クレジットカード会社がこのような違法な取り立てを行うことはまずありえません。

大手の消費者金融などはイメージを大切にします。もし違法な取り立てを行っていたことが明るみになったら、その業者は大変な痛手をこうむります。そんなことをするくらいならば、回収不能に陥ったほうがまだましだ……というわけですね。

実際のところ大手の消費者金融や銀行、クレジットカード会社などはあらかじめある程度貸し倒れがあることを見込んで金利を設定しています。たとえば、消費者金融における貸倒率は毎年変動していますが、高い時では10%程度になることもあるようです。

しかし、消費者金融はあらかじめ10%の貸し倒れがあることを見込んで高めの金利を付けているので、回収できないお金があってもまあ何とかなるというわけです。

もちろんその上乗せ分の金利を払っているのは真面目に返済を行った人たちであり、こうした人たちがちゃんと返さなかった人のしりぬぐいをするのはいささか理不尽にも思えますが、消費者全体を保護するためにはこうするしかないのです。

ルールを守らない闇金が来た場合は、即座に警察に連絡を

当然ですが、闇金には以上のようなルールは一切当てはまりません。ルールを無視して金を貸している人間にルールを守れと呼びかける行為には意味がありません。万が一上記のような違法な取り立てを受けた場合は、すぐに警察に相談しましょう。

相談すべきかどうか迷ったという場合でも、とりあえず相談することをお勧めします。火種は小さい時に食い止めるのが鉄則です。もし警察が居合わせていたときに違法な取り立てが行われれば現行犯逮捕してもらうことができます。

警察に言うのは気が引ける場合は相談窓口へ

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とはいえ、警察に相談するのはなかなかハードルが高いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。相談するということは、借金があるということを明かすのと同義ですからね。そのような場合は公共の相談窓口に連絡するのもいいでしょう。

たとえば、国民生活センターでは多重債務に関する相談を受け付けています。(多重債務の相談窓口)。そのほか、法テラスや日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会、日本貸金業協会などにもそれぞれ窓口が設置されています。

いきなり警察はちょっと……という方は、まずはこちらに相談してみるといいでしょう。

違法な取り立ての記録はどうやって残す?

たとえ違法な取り立てが行われたとしても、その証拠がなければ業者を訴えることはできません。では、いったいどうやって証拠を残しておけばいいのでしょうか。

一番いいのはその時の映像を残しておくことです。映像を残すのは難しいのでは……と思われるかもしれませんが、非常に安いビデオカメラなら1万円ぐらいで買うこともできます。

ビデオカメラが難しいという場合は、録音機でもいいでしょう。こちらは安いものならば数千円程度で買うことができます。また、暴力を受けた場合は、病院に行って診断書を貰っておきましょう。これが証拠になることがあります。

闇金では絶対に借りてはいけない

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借金は基本的にしないに越したことはありませんが、やむにやまれないケースもあるでしょう。しかし、そうした場合でも、絶対に闇金だけからは借り入れてはいけません。大手の消費者金融など、信頼が置ける業者から借りるようにするべきです。

闇金でお金を借りなければ生活が成り立たないという場合は、無理をせず債務整理を行うのも一つの手段といえます。債務整理をすれば借金が少なくなったり、チャラになったりするので第二の人生をやり直すことができます。

苦しい場合は一人で悩まず、身近な国民生活センターや法テラスに相談するところから始めましょう。