借金を任意整理するための費用はどれくらい?

債務整理の中でも最も多く使われているのが任意整理です。

任意整理は自己破産と違って借金がチャラになるわけではありませんが、借金の額自体は大幅に減るため毎月の返済がうんと楽になります。

しかし、任意整理を行うのには費用が掛かります。任意整理の行い方によって減額できる金額がまちまちなのも悩みどころで、あらかじめいくら用意しておくべきなのかが難しいところです。

ここでは任意整理にはいったいどれくらいの費用が掛かるのか、おおざっぱに計算してみたいとおもいます。

任意整理を行う時の参考にしていただければ幸いです。

任意整理は私的な話し合いで借金を減額する制度

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任意整理とは、その言葉の通り「任意で借金を整理する」制度です。自己破産などと違って、裁判所(公的機関)を通さず、債権者(金融機関)と債務者が直接話し合って借金を減額したり、金利を下げてもらいます

現状のままでは返済が厳しいけれど、一定額の収入があり、毎月の負担が少なくなれば無理なく返済できるという人向けの制度といえます。

これだけ聞くと「金融機関が借金の減額なんかに応じてくれるわけないじゃないか」と思われるかもしれませんが、実際には金融機関も快く(?)借金の減額に応じてくれるケースが大半です。債務者を絞めつけ過ぎて、自己破産されると困るからです。

自己破産は借金が全くチャラになる制度です。もし債務者が自己破産すれば、債権者はそれ以上1円も返してもらうことができなくなってしまいます。

そんなことになるくらいならば、借金を減額するとは言えいくらかは返してもらえる任意整理をしてもらったほうがまし……というわけですね。

債権者側も初めからある程度の人間が任意整理をすることを念頭に置いていて、それでも十分な利益が出るように金利を設定しているので、債務者は別に気後れする必要はありません。

任意整理には弁護士の力が必要

任意整理は債務者本人でも行うことができますが、債権者側は任意整理の交渉に慣れています。百戦錬磨の相手に素人が一人で突っ込んでいっても、大した減額は勝ち取れないでしょう。

したがって、交渉に当たっては債務者の方も実力のある専門家、つまりは司法書士弁護士などを雇う必要があります。

おすすめは弁護士です。司法書士の仕事は不動産や会社などの登記手続きがメインです。任意整理の話し合いは彼らにとってはおまけのようなものであるため、任意整理自体に慣れていない司法書士も少なくありません。

また、交渉できる金額についても140万円以下という制限があるため、債務額が大きい場合は依頼できないという欠点もあります。

それに対して弁護士は裁判と法律の専門家であり、金額に制限もないため、ありとあらゆるタイプの任意整理を任せることができます。もちろん、弁護士の方が依頼にかかる費用は高いという欠点もあるのですが、それを差し引いても弁護士に依頼したほうがいいでしょう。

というわけで、ここからは弁護士に任意整理を依頼することを前提に話を進めていきたいと思います。

弁護士に支払う費用には「着手金」「基本報酬」「過払い金報酬」「減額報酬」がある

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弁護士に支払うべき費用は大きく「着手金」「基本報酬」「過払い金報酬」「減額報酬」があります(弁護士事務所によって多少呼称が異なることがあります)。

また、この4つの費用が絶対にあるというわけではない(たとえば着手金がない弁護士事務所も存在する)ことも留意しておいてください。

着手金はとっかかりの費用

着手金とは、弁護士に仕事を受けてもらうための費用です。弁護士が引き受ける案件は基本的に長期のものばかりです。弁護士としても長い時間をかけたうえに報酬が0では困るため、成功報酬とは別に仕事を受けた時点で発生する着手金を設けている事務所が多いです。

ただし、最近は顧客を囲い込むためにあえて着手金を無料に設定している弁護士事務所も少なくありません。着手金の相場は0円~3万円といったところです。

基本報酬は任意整理を行うことに対する費用

基本報酬とは、弁護士に任意整理を行ってもらうための費用です。任意整理が成功した場合にのみ、支払う必要があります。相場は1社につき2万円~3万円程度です。たとえば、1社に月3万円で、5社の任意整理を行った場合は、3万×5=15万円が基本報酬となります。

過払い金報酬は過払い金返還があった場合の報酬

過払い金報酬は、過払い金の返還があった場合の報酬です。過払い金とは、これまで利息制限法を上回る利息の支払いを行っていた場合に、その払い過ぎていた利息を返してもらえる制度のことです。過去7年間にわたって払い過ぎていた利息を返してもらうことができます。

相場は返還額の20%といわれています。たとえば、返還額が10万円だった場合、過払い金報酬は10万円×20%=2万円となります。

なお、裁判になった場合は手続きが面倒になるのでその分報酬が高くなるケースが多いです(25%程度)。

減額成功報酬は債務が減額になった場合の報酬

減額成功報酬とは、基本報酬に上乗せされる報酬です。減額された額に応じて報酬額が決まります。相場は減額となった金額の10%です。たとえば、もともとあった債務100万円が任意整理によって60万になった場合、減額成功報酬は(100万-60万)×10%=4万円となります。

弁護士に支払う報酬はどこでも同じ?

試しにいくつか弁護士事務所のウェブサイトを見るとわかることですが、弁護士に支払う報酬というのはどこも似たり寄ったりです。極端に高かったり、安かったりする事務所というのはほとんどありません。

債務整理の弁護士費用については日弁連の発表する「債務整理事件処理の規律を定める規程」で決められているためです。

もしこうした規律がないと、ある事務所が顧客の囲い込みのために報酬金を安くして、それに対抗するためにほかの事務所も報酬金を安くする……という無限の値下げ合戦が行われてしまいます。

日弁連がこうした規定を定めているのは、弁護士の生活を守るためであり、不透明な弁護士報酬体系を解消するためでもあります。

実際に計算してみよう

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aさんは債務がA社に対して50万円、B社に対して30万、C社に対して120万あるとします(合計200万円)。また、C社に対しては100万円の過払い金もあるとします。

その後aさんは弁護士事務所に対して相談、その結果A社の債務は20万、B社は10万、C社は70万(合計100万円)まで減額になりました。また、C社の過払い金を訴訟することなく全額回収することができました。

この場合、aさんは弁護士事務所に対していくら成功報酬を支払う必要があるか計算してみましょう。なお、着手金は3万円、基本報酬は1社につき3万円、過払い金報酬は20%、減額成功報酬は10%とします。

着手金:3万円
基本報酬:3万円×3社=9万円
過払い金報酬:100万円×20%=20万円
減額成功報酬:100万円×10%=10万円

従って、合計金額は3万円+9万円+20万円+10万円=42万円となります。債務の減額額が100万円で、過払い金の返還額が100万円なので、差し引き158万円のプラスとなります。この計算だけでも、任意整理がいかに大きな力を持っているかがわかると思います。

弁護士費用が払えない!そんな場合は?

任意整理をしたいけれど、弁護士に支払う報酬が用意できない……そんな場合は、後払いや分割払いに対応している弁護士事務所を探すといいでしょう。

最近はそうした弁護士事務所も少なくありません。というか、弁護士側は債務整理をする人がお金に困っていることは百も承知ですので、ほとんどのケースにおいて後払い若しくは分割払いに対応してくれます。

多くの弁護士事務所では分割払いに対応しています。任意整理を行えば借金の支払いが少なくなるので、その分を弁護士費用に廻せばいいだけです。分割回数は3回~12回程度のところが多いようです。

もちろん12回でもきついという場合は、弁護士と相談の上さらに回数を伸ばしてもらうこともできないわけではありません。このあたりはそれぞれの話し合いで決めてください。

弁護士報酬以外の費用について

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任意整理には弁護士費用以外にも実費がかかります。ただし、この実費というのは要するに郵便費用および交通費のことなので、実費が多額になることはまず考えられません。弁護士費用に3万円も上乗せしておけばまず十分でしょう。

任意整理に強い弁護士の選び方

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弁護士事務所のウェブサイトに「任意整理に強い弁護士」と書いてあったからと言って、本当にその弁護士が任意整理に強いとは限りません。任意整理に強い弁護士は誰でも名乗ることができるからです。

弁護士にはそれぞれ得意分野があります。我々素人がその弁護士がどの分野に強くてどの分野に弱いかを調べるのは簡単なことではありません。そこで活用したいのが法テラスです。

法テラスは正式名称を「日本司法支援センター」といいます。法律相談ができる大きな窓口であり、弁護士を相談してもらうことができます。

ただし、法テラスで紹介される弁護士は当たりはずれの幅が比較的大きいという欠点もあります。

そのようなリスクを避けたい場合は、自治体などが開催している無料の法律相談会に参加してみるといいでしょう。また、法学部や法科大学院でも無料相談窓口が設けられていることがあります。

いきなり知らない人に相談するのはちょっと……という場合は、友人や知人、特に任意整理を行ったことがある人に紹介してもらうのもいいかもしれません。

「コネ」「つて」「口利き」によって紹介してもらった弁護士は、目の前の顧客を取り逃がしたくないと思い丁寧な態度を取ることが多いので、快適に相談することができます。

任意整理では足りないときは

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任意整理は借金を減額する制度なので、無職の人や極端に借入金額が多い人にはあまり向いていません。そうした場合は、任意整理ではなく借金をチャラにする自己破産制度を活用するといいでしょう。

こちらは任意整理と違って職業制限などのデメリットがありますが、借金をチャラにできるので新たに人生をやり直すのには最適です。状況に応じて、様々な債務整理の制度を使い分けていきましょう。