農地の固定資産税は地域によって大きく違う!高い場合の対処法はどうする?

土地や物件は所有しているだけで税金がかかります。固定資産税や都市計画税がそうですね。これは日本国内で不動産を持つ人なら、全員が支払う義務がある税です。

ただ、同じ大きさの土地であっても、その利用用途(地目)によって課税額は大きく変わってきます。一般的に「宅地」と呼ばれる、住宅を含む物件が建てられている土地には高額な税が課せられ、対して「農地」は全ての地目の中で一番安くなるよう設定されています。

ただ、一言に農地と言っても、その立地によって課税額の計算方法や実際に課税される金額は全く異なり、場所によっては宅地と同様の税金が課せられることもあるのです。

どうしてこのような違いが生まれるのでしょうか?また、農地の固定資産税の支払いが高すぎて辛いときにはどのような対処法があるのでしょうか?この2点について主に解説していきますね。

どうして農地は固定資産税が優遇されている?

農地の固定資産税は宅地のそれと比べると圧倒的に安くなります。農村部の農地であれば、10アールあたり1,000円程度しかかかりません。その理由は、農地からはそこまで収益を生み出せないと判断されているためです。

農地の使い道はかなり限られていますよね。米や野菜を育てることにしか使えず、そこから上がる利益は他の土地活用法に比べると微々たるものです。

対して、一般的な土地であればさまざまな土地の使い道があります。駐車場にして貸し出したり、マンションを建てたりして収益化できますよね。この場合、土地が生み出す価値は農地とは比べ物にならないはずです。

それなのに農地と一般的な土地に同じ税金を課してしまうと、農地所有者は大きな損をしてしまいます。税金は国民全員に公平性を持って課せられるべきものですから、両方に同じ税を課すとこの理念に矛盾してしまいます。

そこで、農地は他の土地と比べて安い税額にすることで、税の公平性を確保しているのです。

ただし、これが全ての農地で適用されるわけではありません。農地はその立地によって区分され、場所によっては結局一般的な土地とほぼ同額の税金がかかることになります。

農地の固定資産税は立地によって大きく異なる

農地は立地によって大きく4つの区分に分類され、それぞれで固定資産税の評価額や計算方法が変わってきます。区分は以下の通りです。

・一般農地
・生産緑地
・一般市街化区域農地
・特別市街化区域農地

生産緑地と一般市街化区域農地、特別市街化区域農地はまとめて「市街地区域農地」とも呼ばれます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

一般農地

一般農地は、農村部に分布している、ある程度の広さがある農地のことを指します。この4つの中でも生産緑地と並んで最も安い税額となり、先述したように10アールで1,000円程度しか税金がかかりません

また、周辺地域が発展し、その土地の評価額は急激に上がったとしても、実際に課せられる税金は緩やかにしか上昇しません。これを「負担調整措置」といい、土地の評価額の変動によって税金が大きく上昇するのをセーブしています。

逆に土地の評価額は下がったときには、それに合わせた分だけ固定資産税も安くなります。ですから、私たちにとっては得であっても損にはなりません。

そして、土地の評価方法は「農地評価」と呼ばれる方法で計算されます。これはたとえば、立地的に駐車場にしてしまえば大きな利益が上がると判断される土地でも、評価額の計算はあくまで農地として計算される、というものです。

農地の評価額は他の地目と比べて半分程度になるのが一般的ですから、その土地を農地として利用し続けるうちは税金が優遇されるということですね。

農地がある場所によっては、農地として利用しているにも関わらず宅地として評価されてしまうこともあるので、一般農地は農地の中でも最も優遇されていると言えるでしょう。

生産緑地

生産緑地は一般農地よりも市街地に近い場所にある農地を指します。ただ、固定資産税の計算方法は一般農地と全く同じで、土地の評価方法もやはり農地評価となっています。

それでも一般農地と比べると市街地に近い分、土地自体の評価額はやや高めになる傾向です。

一般市街地区域農地

東京や大阪の大都市ではないけれども、それに準ずる都市周辺にある農地は一般市街地区域農地として区分されます。

この区分では、たとえ農地であっても宅地とほぼ同じ評価方法で固定資産税が計算されるため、一般農地や生産緑地と比べると遥かに高い税額となります。これを「宅地並み評価」といい、先述した2つの区分と大きく異なるポイントであると言えるでしょう。

ただ、宅地と全く同じ計算方法で算出されるわけではなく、「造成費」と呼ばれる費用に相当する金額が免除されたものが実際の評価額になります。

造成費とは、その農地を宅地にしようとした場合にかかるであろう費用を仮想的に計算したもので、盛土や土地の整形費用がこれに当たります。

また、一般農地や生産緑地と同じく、土地の評価額の変動に対して負担調整措置が適用されるのもポイントの一つですね。

たとえ土地の価値が1年間で2倍になろうとも、翌年からの固定資産税は最大で前年の1.1倍にしかなりません。これを「農地に準じた課税」と呼びます。

さらに、農地の固定資産税を計算する際は、特例として評価額を3分の1にして計算します。これにより、実際に課せられる税額は、評価額に対して相当に低いものになるでしょう。

このように、評価方法は宅地のそれと同じであっても、実際の税額は抑えめになるようさまざま工夫がされています。ただ、負担調整措置によって税金の上昇幅が緩やかであっても、最終的に到達する評価額は宅地のそれと変わらないことに注意してくださいね。

特定市街化区域農地

特定市街化区域農地とは、東京や大阪の市街地周辺に存在する農地のことで、4つの区分の中では固定資産税や都市計画税は最大額となります。

土地の評価方法も宅地と同じ方法がとられ、負担調整措置も宅地のそれと同じになってしまいます。固定資産税の計算時は「本来の評価額の3分の1」が適用されますが、それでも高額になることは変わりないでしょう。

農地の区分は変更されることがある

ここまで農地の4つの区分について解説してきました。一つ注意すべきポイントは、農地の区分は周辺地域の開発や発展によって変化することがある、という点です。

税金の面では一般農地が最も優遇されていますから、現在一般農地であるならば、なるべくずっとそのままにしてもらいたいと考えるのが普通でしょう。

しかし、周辺地域に大規模な開発予定があったり、発展が進んでいけばいずれは生産緑地や一般市街区域農地として見直されることもあります。

仮に変更されたとしても、負担調整措置のおかげで急激に税額が上がることはありませんが、じわじわと固定資産税は上がっていってしまうでしょう。

こればかりは自分の手でコントロールできない部分なので、諦めるしかありません。

実際に耕作していないと農地としては認められない

最近、農業をやめて土地を休耕地にしている人は注意すべきポイントです。土地が農地として認められ、それに応じた評価がなされるのは、土地を実際に農地として利用している場合に限ります。

利用していない土地は「耕作放棄地」と呼ばれ、固定資産税の計算の際も農地以外の地目として取り扱われます。

でも、農地として使っているかどうかなんてこちらから報告しなければわからないのでは?と思うかもしれませんね。

確かに土地の登記手続きをした際に、農地として登録し、それの変更手続きを行っていないなら地目はずっと農地のままです。このように登記手続きの際に登録した地目を「登記地目」と呼びます。

しかし、固定資産税の評価は登記地目によって行われるとは限りません。実は1年に1回、自治体の職員が管理地域を見て回り、実際の利用状況はどうなっているかを調査しているのです。この調査により決定される地目を課税地目と呼びます。

そして固定資産税の計算は、この課税地目に則って行われるのが一般的です。ですから、土地を農地として使っていないと調査員に判定されてしまうと、翌年からは農地以外の地目で固定資産税が算出されてしまうのですね。

最も税金が優遇されている地目は農地ですから、それ以外の地目で税額を計算されてしまうと税金が高くなってしまいます。

農業をやめたら突然固定資産税が高くなった場合は、課税地目が変更されている可能性があります。

そもそも、土地の利用用途が変わり、地目が現状と異なっているならば、役所に行って変更手続きを行わなければなりません。忘れずに行っておきましょうね。

使わなくなった農地の固定資産税を安くするには?

土地は所有しているだけで税金がかかります。使っていようがいまいが固定資産税は発生するので、農地を持っているけれども農業は辞めてしまった人には辛いですよね。

さらに、農業をしていなければ農地として認められず、税額がさらにアップしてしまうのですから、なにかしら対策したいところです。

自分で使わなくなった土地の有効な使い道としては、他の農家さんに貸し出す、売却してしまうといった方法が挙げられます。

現在は「農地バンク」と呼ばれる、国を挙げての農地貸し出し事業がスタートしているので、それを使ってみるのも一つの手です。農地バンクを利用すれば、貸し出した土地の固定資産税が大きく軽減されるというメリットもあります。

農地の売却は厳しく規制されているため、なかなか難しいのが現状です。とくに一般農地や生産緑地に該当する農地は売却できない可能性も高く、売却できたとしても一般的な土地の数%程度の売買価格になってしまうこともあります。

逆に固定資産税が高くなりがちな市街地周辺の農地であれば、売却や転用が可能であることが多いので、土地を手放すことを検討しているならぜひ選択肢に入れておくとよいでしょう。

まとめ

区分によって農地の税額は大きく変わるということでした。もし最近、固定資産税が大きく変動したなら、区分や課税地目が変化していないか確認してみてください。

また、農地の固定資産税は比較的安いとはいえ、ただ遊ばせているだけの土地に毎年税金を払うのはもったいないですよね。

自分で農業をしたり、何も使い道が思い浮かばない場合は、いっそのこと売却してしまうのも賢い方法です。

農地の売買には農業委員会の許可が必要で、一般的な土地と少し違う手続きになりますが、不動産屋や専門家のアドバイスを受けながら進めていけば、問題なく手続きできるはずですよ。