カードローンの過払い金はなぜもらえる?初心者にもわかりやすく解説

2007年くらいまでにカードローンやキャッシングでお金を借りていた人は、過払い金を取り戻せる可能性があります。

しかし、素人が個人で金融機関に電話をして聞いてみても、ほとんどの場合に「弁護士に相談をしてください」などと言われてしまうでしょう。

過払い金請求をする時には、まずは「なぜ過払い金を取り戻せるのか」という理由を知っておくことが大切です。その後で、弁護士に請求をするのか、個人で請求をするのか、どちらのほうがメリットがあるのかを考えましょう。

過払い金が発生している理由

過払い金請求とは、民法で言うところの、不当利得返還請求の一種になります。不当利得返還請求では、10年の時効にかかりますので、過払い金請求も10年の時効にかかります。

なぜ過払い金が発生するのか?

なぜ過払い金が発生するのかという理由ですが、金融機関が利息制限法を守っていなかったということが大きな理由となります。

2010年に貸金業法と一緒に出資法も改正されましたが、改正前出資法の上限金利は29.2%と設定されていました。出資法に違反すると重い刑罰の対象となってしまうので、どこの貸金業者も出資法は守っていました。

利息制限法では、

10万円未満の借入・・・20%
10万円以上100万円未満の借入・・・18%
100万円以上の借入・・・15%

という上限金利が設定されていました。しかし、利息制限法には罰則がなかったので、貸金業法はこれを守っていませんでした。

すなわち、年20%~29.2%というグレーゾーン金利が設定されていました。

貸金業法がグレーゾーン金利を設定していた理由には、もう1つあったようです。

改正前貸金業法では、「みなし弁済」の規定がありました。「みなし弁済」とは、簡単に言うと、「債務者が自由意志のもとで支払いをしたならば、利息制限法を超えた金利をとっても合法となる」という規定です。

多くの貸金業者は、みなし弁済を主張して、グレーゾーン金利で利息をとることを合法だと主張していたわけです。

仮にみなし弁済が認められなかったとしても、利息制限法には罰則がないので、刑罰を受けることはなく、過払い金を返還すればよいだけですので、貸金業者にとっては大きなデメリットとはなりません。

2006年の最高裁判決でみなし弁済が否定される

過払い金請求に関する裁判はそれまでたくさん行われていましたが、みなし弁済を全面的に否定する判決はありませんでした。

しかし、2006年1月13日の最高裁判決が決め手となり、みなし弁済は実質的にほぼ完全否定されたと言えます。

この裁判では、「期限の利益喪失特約がある場合には、支払いの強制がされるので、みなし弁済は適用されない」ということが明らかになりました。

期限の利益喪失特約というのは、借金の滞納を続けていると、期限の利益が喪失して、分割払いの権利を失いますよという特約のことですが、貸金業者との契約でこの特約がつけられてないということは、ほとんどありません。

この特約があると、債務者は「返済をしないと分割払いの権利を失って、一括請求がされてしまう」という恐れから、借金の返済を強制されていることに近い状態になってしまいます。これは自由な意思に基づく弁済とは言えないとしたのです。

すなわち、カードローンやキャッシングでは、ほとんどすべてのケースで、みなし弁済が否定されるという結果になりました。

2010年に貸金業法が改正された時には、この「みなし弁済」の規定自体がなくなっています。

グレーゾーン金利で借金をしたら、過払い金が発生する

みなし弁済が否定されたことによって、過払い金が発生するための条件は1つとなりました。

すなわち、利息制限法の上限を超えた、グレーゾーン金利で借金をしていたら、過払い金が発生しているということです。

2016年の12月には、貸金業法の一部が改正されており、それを受けてほとんどの貸金業者は、2007年~2008年に金利の引き下げを行っています。

そのため、2007年くらいまでに貸金業者から借金をしていた人は、過払い金が発生している可能性が高いということになります。

法定利息もつけて請求ができる

利息制限法に違反をしていても、罰則規定はありませんが、違法な行為であることに変わりはありません。

しかし、契約そのものが無効となるわけではなく、払いすぎた部分だけを後から請求できるという扱いになっています。

会社が倒産したら自動的に一部が戻ってくることはありますが、基本的には請求をしなければ戻ってくることはありません。

例外的に、貸金業者が自主的に返還をしてくることがあります。これは、非常に多額の過払い金が発生している場合などです。実際よりもはるかに低い金額を提案して、示談をしてしまおうという考えですので、安易に応じないようにしましょう。

過払い金は、法定利息の5%もつけて請求をすることができます。

不当利得返還請求では、「悪意の受益者」は法定利息の5%をつけて返還しなければならないことになっています。

貸金業者は、過払い金があったことについて基本的には「悪意の受益者」と言えるので、ほとんどの場合に5%の法定利息付きで返還請求ができます。

2017年中にほとんどの過払い金は時効で無くなるの?

大手の消費者金融は、2007年に金利引き下げを行っています。

アコム・・・2007年6月 最高金利18%へ引き下げ
プロミス・・・2007年12月 最高金利17.8%へ引き下げ
アイフル・・・2007年8月 最高金利18%へ引き下げ

その他の貸金業者でも、2007年~2008年にほとんどが金利引き下げを行っていますので、グレーゾーン金利で借金をするということ自体がなくなっています。

CMなどの影響で、「2017年を過ぎたら過払い金請求ができなくなる」と誤解をしている人もいるようですが、借金を完済してから10年が経過するまではまだ時効にかかっておらず、過払い金請求をすることができます。

具体例で説明

2000年にアコムで300万円を借りたとします。

2007年に金利が引き下げられるまではグレーゾーン金利がとられていたので、多額の過払い金が発生しているでしょう。

その後、借金をすべて完済したのが2010年5月ならば、2010年5月が時効の起算点となりますので、2020年の4月まではまだ時効にかからず、余裕があります。

会社が倒産したら取り戻せない?

会社が倒産してしまったら過払い金は取り戻せなくなる可能性が高いですが、アコムのような大手が倒産してしまう可能性はほとんどないので、それほど心配する必要はありません

アイフルの場合にはやや不安がありますが、それでも大手なので、よほどのことがない限りな倒産することはないと思われます。

しかし、会社が倒産してしまう可能性はゼロではないですし、弁護士に依頼をしたら手間もかからないので、早めに請求をして、過払い金を取り戻しましょう。

過払い金は不法行為となることもある

過払い金は、不当利得返還請求の一種ですので、「最後の返済日から10年」の時効にかかります。

しかし、最後の取引日から10年が過ぎていても、請求ができる可能性はまだ残っています。

それは、不法行為を理由とする損害賠償請求権として請求をするケースです。

不法行為を理由とする損害賠償請求権の場合、「損害を知った時から3年」が経過するまでは時効消滅しません。損害を知った時は、取引履歴を開示してもらった時と考えます。

これは専門的な問題となりますので、弁護士や司法書士に相談をしてみましょう。

デメリットはないの?

現在は、過払い金請求ををしても特にデメリットはありません。

よく誤解がされていますが、過払い金請求をするだけならば、ブラックリストにのることがないどころか、個人信用情報にいっさい記録は残りません。

カードローンは解約されてしまいますが、他社のカードローンで新規で借りることは問題なくできるので、これはデメリットとは言えないでしょう。

ただし、過払い金請求をした後も借金が残ってしまった場合には、任意整理をすることになり、デメリットが発生してしまいます。

クレジットカードでも過払い金請求は可能

クレジットカードのショッピング枠は貸金業法や利息制限法の対象ではないので、過払い請求はできません。

しかし、クレジットカードのキャッシング枠は貸金業者との借金とほぼ同じなので、過払い請求ができます。

過払い金があるクレジットカード会社は意外と多い

過払い金が発生していた可能性があるクレジットカード会社としては、

・セゾンカード

・オリコカード

・エポスカード

・ニコスカード

・セディナカード

・アプラス

・ニッセン

・イオン

など、かなり多いです。2007年以前にクレジットカードでキャッシングを利用していた人も、過払い金が発生している可能性が高いので、調べてみましょう。

クレジットカードで過払い金請求をする場合の注意点

クレジットカードで過払い金請求をする時にも、基本的には消費者金融に対する過払い金請求と同じです。

しかし、場合によっては思わぬ不利益を被ることがあるので、次のポイントをチェックしておきましょう。

(ショッピング枠残高+キャッシング枠残高)<過払い金

となっていることが重要です。例えば、過払い金を計算してみたら、50万円になったとします。キャッシング枠での借入残高が30万円ならば、過払い金のほうが大きいので、20万円のお金が返ってきて、デメリットはないと考えてしまいがちです。

このとき、ショッピング枠のリボ払いや分割払いの残高が、30万円あれば、合計すると60万円となるので、クレジットカード会社に対する債務のほうが大きいということになります。

マイナスの10万円は任意整理をすることになるので、デメリットが発生してしまいます。

また、過払い金請求をすると、その時点でクレジットカードは解約されてしまうのが一般的ですので、それ以後同じ会社でクレジットカードが契約できなくなるかもしれないということは理解しておきましょう。

あくまで同じ会社でクレジットカードやカードローンが利用できなくなるというだけであり、別の会社では問題なく利用ができるので、よほど気に入っている会社でなければ、デメリットはないでしょう。

カードローン過払い金請求の流れ

カードローンで過払い金が発生していることに気が付いていも、きちんとした手続きをふまないと回収はできません。

貸金業者の側からすれば、できることなら支払いたくないお金です。

電話で「過払い金を返してもらえませんか?」と言ったところで、素直に支払いをしてくれることは基本的にありません。

「弁護士に相談をしてください」と言われたり、「2割で和解をしましょう」などと不利な条件で和解をさせられたりしてしまう可能性もあります。

仮に2割の条件で和解を成立させてしまった場合でも、一度契約書にサインをしてしまったら、それ以後は弁護士に相談をしても、取り戻すことはできません。和解契約を結ぶ時には慎重になっておきましょう。

まずは取引履歴を取り寄せる

個人で過払い請求をする場合には、貸金業者に取引履歴を請求するところから始めます。

貸金業者には取引履歴の開示義務がありますので、必ず応じてくれるはずです。ただし、帳簿の保管義務は10年間ですので、10年よりも前の取引履歴については、残っていない可能性もあります。

本人確認がありますが、基本的には生年月日、住所、契約者番号などを電話で聞かれるだけとなります。

電話一本で簡単に取引履歴開示請求ができるケースが多いので、弁護士に依頼をしたほうが良いのかで迷っている人も、まずは取引履歴を請求してみると良いかもしれません。

電話で請求をしたら、およそ2週間~3週間くらいで取引履歴が自宅に届きます。

弁護士や司法書士に依頼をすると、この取引履歴開示請求からすべて代理でやってくれます。

過払い金の計算は慎重に

カードローンの過払い金の計算は意外と難しいです。何回も追加融資をしたり、随時返済を行っている場合には、計算はとても複雑になります。

計算で間違いがあっても、貸金業者は指摘してくれませんので、しっかりと正確な金額を計算するようにしておきましょう。

コストはかかりますが、過払い金の計算だけをやってくれる専門家に依頼をするというのも1つの手です。

貸金業者と交渉をする

過払い金の金額が出せたら、電話で貸金業者と交渉をすることになります。このとき、

借金の残高<過払い金の金額

となっていることをしっかりと確認しておきましょう。

過払い金を引き直し計算しても、なお借金が残っていたら、任意整理をすることになってしまいます。

クレジットカードの場合には、

ショッピング枠とキャッシング枠を合わせた残高<過払い金の金額

となる点に注意が必要です。すでに借金を完済している場合には、任意整理になる心配はありません。

貸金業者によって対応が異なる

個人で交渉をした場合、戻ってくる過払い金の金額は2割~8割くらいになります。

アコムやプロミスの場合、個人で交渉をしても6割~8割くらいの過払い金が戻ってくる可能性があります。

アコム・・・三菱東京UFJグループ

プロミス・・・三井住友銀行グループ

であり、バックに銀行がついていますので、資金力は十分です。

それに対して、どこの銀行グループにも属していないアイフルなどは、独立系消費者金融などと呼ばれていますが、資金力に不安があります。

アイフルの場合、個人で交渉をしたら2割~4割くらいの不利な条件での和解になってしまうようです。

裁判までやれば、基本的には100%の過払い金を取り戻せますが、時間と手間がかかるという問題があります。

裁判をやる

交渉によって和解ができない場合には、裁判をやることになります。

この段階に来たら、個人で過払い金請求をしてしまおうと考えていた人も、もう一度弁護士に依頼をすることを検討してみましょう。

素人が裁判をやると、多大な労力をかけることになります。

裁判を始めたとしても、必ずしも判決まで行く必要はなく、途中で和解をしてしまうことも可能です。

裁判になったら、業者側が良い条件で和解をしてくれる可能性が上がりますので、もう一度交渉を試みてみましょう。

過払い金はいつ振り込まれる?

和解もしくは裁判で判決が出たら、1ヵ月~3ヶ月後くらいに指定の口座に約束された金額が振り込まれているはずです。

資金力があるアコムやプロミスでは1ヵ月くらいで振り込まれることが多いでしょう。

資金力に不安があるアイフルなどでは、なるべく引き伸ばそうとしてくるので、2ヶ月~3ヶ月くらいはかかると思っておいたほうが良いでしょう。

基本的には、弁護士に依頼をしたほうがメリットがある

過払い金請求を弁護士に依頼したほうが良い理由としては、次のようなものがあげられます。

・手間と時間が節約できる

・良い条件で過払い金を回収できる

・裁判になっても最後までまかせることができる

逆に、デメリットとしては、コストがかかるということがあげられます。

100%の過払い金を請求するためには裁判をやる必要がありますが、忙しい社会人にとっては負担が大きいです。

また、裁判をやる場合には、手続きで失敗しないために、ある程度は勉強をしておかなくてはなりません。勉強にかける時間ももったいないと考える人がいます。

弁護士費用の相場は?

過払い金請求を弁護士にした場合の費用相場としては、

着手金 1件あたり2万円~4万円程度

成功報酬 20%程度(訴訟になった場合は25%程度)

となっています。個別の過払い金の金額が140万円以下の場合には、司法書士に依頼をすることもできますが、司法書士に依頼をしたほうがいくらかコストの節約になるでしょう。

弁護士に依頼をしたほうが良いケース

弁護士に依頼をしたほうが良いのは、金額が大きい方、時効が近づいている方、対象機関が過払い金請求に厳しいというケースなどになります。

3社から合計200万円の過払い金があるケース

アコムで70万円、プロミスで60万円、アイフルで70万円の過払い金が発生していたとします。

自分で過払い金請求をした場合、アコムとプロミスでは6割~8割、アイフルでは2割~4割くらいの悪い条件での和解となるでしょう。

裁判までやれば100%の過払い金を取り戻せる可能性が高いですが、3社に対して裁判をやることはかなりの負担です。

このようなケースでは、弁護士報酬を支払ってでも弁護士もしくは司法書士に依頼をしたほうが、トータルではメリットが大きくなると思われます。

時効が間近であるケース

最後に返済をしたのが2007年の5月であり、現在は2007年の4月である場合には、もうすぐ時効が来てしまいます。

内容証明郵便で請求をすることで時効を6ヵ月間延長することができますが、なにか不備があれば、時効にかかってしまうかもしれません。

相手が時効の援用をしなければ時効は成立しませんが、金融機関はほぼ100%時効の援用をしてくるでしょう。

時効にかかってしまうと回収できる過払い金はゼロになってしまうので、専門家に相談をしておいたほうが安全です。

対象の期間が過払い金請求に対して厳しい場合

アイフルなどの独立系消費者金融では、バックに銀行がついていないため、資金面で不安があります。

個人で請求をしても2割程度の悪い条件となる可能性が高く、それどころか1円たりとも回収できないということもあるようです。

さらに、裁判をやってもあらゆる手をつくして争いを長引かせようとしてきます。

裁判で判決が出ても、支払いまでは2ヶ月~3ヶ月程度かかる傾向があります。

相手が厳しい態度を取っている場合には、手間と時間がかかるばかりか、精神的にも疲労することがありますので、弁護士に依頼をしたほうが良いでしょう。

弁護士の選び方

弁護士を選ぶ時には、料金が安いということも1つのポイントですが、人柄なども重要になります。

最近では貸金業者側は過払い金請求に対して厳しい態度をとることが増えてきていますので、裁判をやる可能性についてもしっかりと説明してくれる弁護士ですと安心できるでしょう。