病気になって借金が返せないときはどうすればいいの?

借金があるのに大きな病気にかかってしまい、しばらく働けなくなってしまった・・・。こういった状況に置かれたとき、どうすればいいのでしょうか?

十分な貯蓄や資産があるのなら、それを切り崩しながら返済、生活していけるでしょう。また、生命保険に入っていたなら、その収入をあてにしてしばらくの間は暮らしていけるかもしれません。

しかし、まとまった貯金もなく、収入も完全に途絶えてしまった場合、毎月の借金の返済がとても大きな負担になってしまいます。そんなとき、どうすればいいのかを以下で見ていきましょう。

病気で働けなくなったからといって、借金に関する救済措置はない

残念ながら、病気でしばらく働けなくなったからといって、借金がチャラになったり減額になったりするといった救済措置はありません。

働けない期間、誰かが代わりに返済を立て替えてくれるならいくぶん助かりますが、そういったあてがない場合、なんとか自力で返済していくしかないのです。

返済が滞ると、債権者(お金を借りている人や会社)から連絡がきます。多少の遅れなら期日や次回分の返済額を融通してもらえますが、本格的に延滞となると、それも難しくなってきます。

最終的には訴えられてしまい、財産を差し押さえられてしまうかもしれません。これを回避するには少しずつでも返済していくしかないのですが、収入がない以上、どうしようもありませんよね。

じゃあ八方ふさがりなのかというと、決してそうではありません。借金の返済ができなくなった人に対する救済措置として、債務整理という制度があります。

債務整理とは?

債務整理とは、債権者と交渉したり、裁判所を介して債権者と和解したりすることによって、借金を減額してもらう制度です。

自己破産という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?自己破産も債務整理の一つで、手続きを行うことによりほぼ全ての債務(借金)をチャラにすることが可能です。

債務整理と一言に言ってもその手段はいくつかあり、それぞれメリット、デメリットが大きく異なります。今回は、債務整理の中でもメジャーな手段である、任意整理と個人再生、そして自己破産について詳しく解説していきますね。

任意整理について

任意整理は債務整理の中でも比較的手続きが簡便で、手続きにかかる期間も短くて済みます。やり方としては、債権者と直接交渉し、借金の減額をお願いするのですが、借金や法律に関する知識が乏しい素人にはやや難しいでしょう。

そのため、ほとんどのケースで弁護士に依頼することになります。ただ、一度弁護士に依頼してしまえば、そのあとはほぼ任せっきりにすることができるのが嬉しいポイントです。

どれだけ減額されるかは借金の状況によります。過払い金がもし存在していた場合、かなりの減額が期待できますが、そうでない場合はあまり大きな減額は期待できないかもしれません。

しかし、それでも任意整理を行うメリットはあります。というのも、多くのケースで利息や遅延損害金(※)の支払いをカットできるためです。

※遅延損害金とは、返済が滞った際に利息の代わりに発生するもので、本来の利息より高めに設定されているので、返済が遅れるほど借金は以前よりハイペースで膨らんでしまいます。

利息や遅延損害金がカットされることで、借金返済の負担が軽くなる

借金の元本が減らないならあまり意味がないのでは?と思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。利息や遅延損害金は毎月の返済額はもちろん、返済期間にも大きな影響を与えます。

たとえば、金利が18%の消費者金融で50万円を借りたと仮定しましょう。18%という数字は、多くの消費者金融で設定されている平均的な金利です。この場合、1年間でなんと9万円の利息が発生することになります。

もし借金を延滞してしまったら、遅延損害金が発生するので、支払う利息はこれ以上になります。毎月の返済額のうち、7,000円近くが利息分として消えてしまうのですね。

しかし、任意整理により利息が消滅すれば、この7,000円を元金の返済に充てることができます。また、家計のやり繰りが厳しいのなら、毎月の返済額を減らしてもらうよう交渉することも可能です。

このように、利息が消滅するだけでも非常に大きなメリットがあるのですね。

任意整理にかかる費用はどれくらい?

任意整理を弁護士に依頼すると弁護士費用がかかります。依頼費用は事務所によって異なりますが、ある程度相場が決まっているので、ぜひ知っておきましょう。

支払う弁護士費用は主に着手金と報酬金に分かれています。着手金とは、依頼時に支払うお金で、手付金のようなものだと考えておくとよいでしょう。1社あたり3万円前後が相場で、2社目からは2万円程度に割引してくれる事務所が多いです。

報酬金は、依頼によって借金の減額に成功したときに発生する費用です。報酬金はさらに成功報酬と減額報酬に分かれ、任意整理の場合は成功報酬の上限は1社あたり2万円まで、減額報酬は減額に成功した金額の10%までと定められています。

たとえば、2社から合計100万円の借金をしていて、40万円の減額に成功したとしましょう。この場合、着手金はおよそ5万円、成功報酬は4万円、減額報酬は4万円程度で、弁護士費用の合計は13万円ほどということになります。

もちろん、これはあくまで簡単なシミュレーションなので、実際の金額は借金の状況や依頼する弁護士事務所によってある程度変わります。まずは弁護士に相談してみて、見積もりを取ってもらうとよいでしょう。

また、費用を一括で支払えない場合は、分割払いに対応してくれる事務所も多くあります。相談時にその旨を伝えるとよいでしょう。

任意整理の手続きにかかる期間は?

手続きにかかる期間はまちまちです。というのも、債権者がどういった対応をするかで手続きがスムーズに進むかどうかが決まるからです。

例外もありますが、だいたい4ヵ月から5ヵ月ほどかかると考えておきましょう。ただ、この期間中にしなければならないといったことはほとんどないので、弁護士からの連絡を待っているだけでOKです。

また、一度手続きが開始すれば債権者からの催促の連絡も止まります。これは賃金業法という法律の中で、債務整理をスタートした債務者(お金を借りている人)には取り立てを行ってはならない、という一文があるためです。

個人再生について

個人再生では、裁判所に仲介役として入ってもらい、借金の減額手続きを進めていきます。借金の状況や現在の資産額を参考に、どれくらいなら返済できるかを裁判所に判断してもらい、それに従って借金が減額される仕組み、と言えばイメージしやすいでしょうか。

法的な書類の作成、提出が必要になるので、やはり弁護士の協力が不可欠です。ただ、個人再生の場合も依頼さえしてしまえば、あとはほぼ任せっきりにできるのがありがたいですね。

どれくらい減額される?

個人再生による減額率は、現在の借金残高によって大きく変わります。基準が決まっているので、それを以下に示します。

借金が合計で100万円未満:減額なし
100万円以上500万円未満:100万円
500万円以上1500万円未満:5分の1まで減額
1500万円以上3000万円未満:300万円
3000万円以上5000万円未満:10分の1まで減額

この基準に合わせて、所有している財産についても加味されること注意しましょう。必ずしもこの通りになるわけではない、ということです。

個人再生では減額後の借金を3年、もしくは5年で支払っていくことになります。返済期間は裁判所によって決定されてしまうので、こちらで決めることはできません。

個人再生にかかる費用はどのくらい?

個人再生の手続きを弁護士に依頼すると、おおよそ40万円から60万円程度の費用がかかります。どこの事務所で依頼してもだいたいこのくらいはかかると考えておきましょう。

任意整理と比較するとかなり高額に感じますね。その分、減額率が大きくなることも多いので、どちらを選択すべきは弁護士と相談しながら決定しましょう。

個人再生の費用についても、一括で支払えない場合は分割で対応してくれる事務所が多いです。

個人再生の手続きにかかる期間は?

半年程度が目安です。ただ、この期間中は債権者からの取り立てを受けることはないので、借金返済のプレッシャーからは一時的に解放されるでしょう。

自己破産について

自己破産については知っている人も多いかもしれませんね。ほぼ全ての借金をチャラにできる、債務整理の中でも最も強力な手段です。

しかし、見返りが大きい分、デメリットも存在します。まず一つに、所有している財産をある程度手放さなければならないという点です。

自己破産の手続きを行うと、生活に必要な家具、家電以外は没収されます。車はもちろん、マイホームを所有しているならそれも競売にかけられてしまいます。

現金についても制限がかけられ、99万円を超える分についてはやはり没収対象になってしまうので、借金こそなくなるものの、日々の生活で一杯いっぱいになってしまうでしょう。

もう一つのデメリットとして、手続きからしばらくの間は一定の職業に就けなくなります。といっても、制限される職業は弁護士や税理士などの「士業」と、ごく一部の公務員だけなので、影響がある人はそこまで多くないはずです。

自己破産についても、やはり弁護士に依頼することになります。法的な手続きが必要になるためですね。

自己破産を行っても消滅しない借金がある!?

自己破産を行えば、全ての借金から解放される、こんなイメージを抱きがちですが、実は借金をした理由、借金の種類によっては自己破産を行ってもその借金が消えない場合があります。

代表的なものは、ギャンブルのための借金です。ギャンブル資金を調達するために借入したと考えられる借金については、自己破産を行ったとしても免責(消滅)になることはありません。

また、自己破産をする前提で借入した分についても免責されないことがあります。どうせ自己破産するから今のうちに借金して、パーッと使っちゃおう、なんて思惑で借金をした分は自己破産の対象にならないということですね。

自己破産にかかる費用はどのくらい?

自己破産の手続きを弁護士に依頼すると、やはり費用がかかります。相場は30万円から40万円程度で、借金の状況や必要な手続きによってある程度上下します。

任意整理や個人再生の場合と同じく、支払いが厳しい場合には分割払いを認めてくれることもあるので、まずは相談してみましょう。

また、自己破産を行うと99万円を超える現金は没収されてしまいますが、自己破産の費用はこの99万円のうちに入りません。

つまり、自己破産の費用とは別に、99万円が残るというわけです。もし自己破産費用も99万円のうちに含んでしまうと、実質50万円ほどしか手元に残らなくなってしまいますから、これは当然の措置と言えます。

自己破産の手続きにかかる期間は?

自己破産にかかる期間は、所有している財産によって大きく左右されます。99万円以上の現金を所持しておらず、さらに高額な物産を所有していない場合は、「同時廃止」と呼ばれる手続きになり、これは2ヵ月程度で完了するケースが多いです。

ただ、一定以上の財産を所有している場合は、「少額管財」と呼ばれる手続きを行うことになり、完了までは半年程度の期間を要します。

いずれにせよ、弁護士に自己破産の手続きを依頼した時点で債権者からの取りたては止まるので、その点については安心してくださいね。

債務整理を行うと数年間はローンを利用できなくなる

債務整理は借金を大きく減額してくれるとてもありがたい制度ですが、残念ながらメリットばかりではありません。デメリットもいくつかあります。

代表的なものは、債務整理を行うと、以後数年間は各種ローンの利用やクレジットカードの作成ができなくなる、というものです。

これは、信用情報機関という団体に債務整理の履歴が残ってしまうことが原因で、履歴が消えるまでは5年、もしくは10年かかるので、その期間は金融に関するサービスを利用できなくなってしまうのですね。

お金を返してくれない人に貸す義理はありませんから、これはある意味当然の対応だと言えます。

信用情報機関にはほぼ全ての金融機関が所属しており、機関に保存されている情報は全て共有されているため、今までに利用したことがない業者であっても門前払いされてしまいます。

ただ、履歴さえ消えれば以前と変わらず利用できるので、この制約については数年間我慢すればOKです。

まずは弁護士に相談してみよう

借金について悩んでいるのなら、まずは弁護士に相談してみましょう。もちろん、相談=債務整理の依頼というわけではありませんから安心してくださいね。

相談だけなら1時間あたり5,000円程度で済みますし、最近は相談無料の弁護士事務所も多くなってきています。

どうすれば無理なく借金を返していけるのか、債務整理は必要なのか、もし債務整理を行うならどの手段が自分にとってベストなのか・・・、これらについて的確なアドバイスをもらえますよ。

一人で思い詰めると、どんどんマイナスな方向に考えが進んでいってしまいますから、誰かに相談することは非常に大切です。弁護士は借金返済についてのプロですから、必ずあなたの力になってくれるはずです。

まとめ

大きな病気にかかって働けなくなると、今まではとくに負担に感じていなかった額の返済でも途端に厳しくなってしまうでしょう。

そして返済が遅れれば遅れるほど利息は大きくなり、いずれはとても返しきれない金額にまで膨らんでしまいます。そうなる前に弁護士への相談や債務整理の検討などを行い、しっかり対処していきましょうね。