いくらパチンコが大好きな人であっても、借金してまでやる人はいないだろうというのは、パチンコ依存症と縁のない人の考え方です。依存というのは恐ろしいもので、実際のパチンコ依存症患者は借金をしてでもパチンコをやろうとしますし、実際にやります。
そして、パチンコというのは長期的には必ず店が勝つ、つまり客が負けるように出来ていますので、借金はどんどん膨らんでいきます。パチンコの事ばかり考えているので仕事には集中できず、スキルアップも出来ず、必然的に収入増も望めまず、借金は返せません。
時計の針が進むごとに借金は膨らみ、やがてどこからも借りられなくなり、行き着く先はよくて個人再生や自己破産、もっと悪いケースでは借金を返すために犯罪に手を染めます。このような人生を望むというのならば止めはしませんが、そんな人はまず居ないでしょう。
今回はパチンコを辞めたくても辞められない人のために、パチンコ依存症の脱出方法をお教えします。
パチンコ依存症の最も根本的な解決方法は「病院に行くこと」
パチンコ依存症は依存症です。依存症を完全に自分の意志だけで治すことはほぼ不可能です。本人の努力や忍耐でどうにかなるものではないのです(そんなに簡単にやめられるものならば、そもそもパチンコ依存症という言葉すら生まれなかったでしょう)。そんな依存症を治療するためには、病院に行って治療を受けるのが一番です。
パチンコ依存症なんかで病院に通うのは恥ずかしい、とおっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、パチンコ依存症はそんな贅沢な悩みが言っていられるほど気楽な状況ではありません。パチンコ依存症のままで居続けるほうがもっと恥ずかしいです。言葉は要らないので、早く治療をすべきなのです。
なぜパチンコは依存症になりやすいのか?
日本にはパチンコ以外にも競馬や競輪、あるいは宝くじなどのギャンブルがありますが、いずれもパチンコと比べると依存症患者数は少なめです。逆に言えば、ギャンブル依存症患者の多くを作り出しているギャンブルパチンコです。
社会学博士の谷岡一郎の著書「ギャンブルフィーバー」によれば、ハマりやすい(≒依存症になりやすい)ギャンブルランキングは以下のとおりです。
- ビデオポーカー
- パチンコ/パチスロ
- スロットマシン
- バカラ
- 競馬などの公営競争
- ナンバーズ
- ブラックジャック
- クラップス
- 麻雀
ビデオポーカーはマシンで遊ぶ1人用のポーカー、バカラとブラックジャックはトランプを使ったゲーム、クラップスはサイコロを使ったゲーム、ナンバーズは数字選択式の宝くじです。
パチンコは自分で台を選択できるからハマりやすい
これらの上位にランクインしているギャンブルに共通して言えることは、プレイヤー側に選択の余地が大きいことです。例えばビデオポーカーの場合はどのカードを残してどのカードを捨てるかという選択をしますし(スタッドポーカーという、カードの交換ができないものもありますが)、パチンコやスロットマシンでは大選びがあります。
クラップスは出目を操作できないサイコロを使ったギャンブルですが、賭け方が多種多様です。実際にはどのカードを残しても、あるいはどの台を選んでも、どの掛け方をしても長くやれば胴元が勝つのですが、プレイヤーに選択の余地があるとなかなかそのことに気がつけません。
一方、ここにランクインしていないギャンブル、例えば日本の宝くじのようなギャンブルには、プレイヤーの選択の余地は殆ど残されていません。宝くじ売り場の店員が渡してくれた宝くじの番号を自分で確認するだけです。
パチンコはそこそこ勝てるからハマりやすい
これらのギャンブルは比較的「勝ちやすい≒短期的な収支がプラスになりやすい」物が多いです。
したがってのめり込みやすく、回数を重ねるうちに依存症になってしまうのです。宝くじはもともと還元率が低い上、大量の人から少しずつ集めたお金をごく少数の運のいい人にまとめて支払うスタイルを取っているのでほとんど勝てず、したがってハマりづらいです。
パチンコ屋は数が多いからハマりやすい
パチンコ屋は競馬場や競輪場、競艇場などと比べると圧倒的に数が多いです。日本のパチンコ屋の多さは異常と言わざるを得ません。これだけアクセスしやすければ、依存症になる人が多くて当然です。ただ、最近はパチンコ屋も数を減らし続けています。
平成5年頃には約2万4000あったパチンコ店数は、今は約1万1000店舗にまで減ってきています。まったくもってめでたいことです。
パチンコ依存症治療の手順
パチンコ依存症は通常、以下のような流れで治療していきます。
まずは病院に行く
パチンコ依存症の治療は兎にも角にも病院に行くことから始まります。よく「パチンコ依存症は自力で直せる!」といったようなことを謳っているサイトが有りますが、実際には自力で治すのはほぼ不可能です。そんな簡単に治るのだったらそもそも社会問題化しません。
パチンコ依存症を治療するために行くべき病院は以下の2つのうちのどちらかです。
- パチンコ依存症治療を専門に掲げている病院
- 様々な症状を広く受け付けている心療内科や精神科
おすすめは断然1ですが、パチンコ依存症専門の病院は絶対数が少なく、地方だとなかなか見つからないこともあります。そういった場合は2でもいいでしょう。少なくとも何もしないよりはずっといい結果が偉える可能性が高いです。その場合はパチンコ依存症のような新しい概念にも対応できる若い医師のいる病院を選ぶことをおすすめします。
病院はパチンコ・ギャンブル依存症回復相互支援ネットワークの「リデイズサポートネット」のホームページから検索できます(ここに名前のある病院で歯科治療できないというわけではありません)。
治療は通院が一般的だが、症状が重い場合は入院することも
ギャンブル依存症は通常通院で治療します。通院頻度は週に1~2回になることが多いです。治療内容は各種プログラムの実行がメインで、場合によっては薬を使います。重症の場合は入院し、集団生活の中で集団プログラムを実施します。
各種プログラムというのは、ギャンブル依存症を治療するために作成された講座や練習などのことです。パチンコ依存症だけではなく様々なギャンブル依存症、あるいはうつ病や統合失調症、強迫性障害などの治療によく使われるのが認知行動療法です。
認知行動療法とは、現実の状況を噛み砕き、適切な「認知」ができるようにする治療法です。
我々は普段、自分自身が置かれている現実の状況を「主観的に」判断しています。例えば「私は周りから明るい人間だと思われているだろう」といった感じです。
この主観的な判断と実際の現実の状況は、通常はそう大きくずれることがないのですが、パチンコ依存症患者は現実から大きくハズレた過剰に悲観的な、または楽観的な見方をしがちです。
例えば「借金まみれでもう死ぬしかない」というのは過剰に悲観的な物の見方ですし(実際には個人再生や自己破産などの債務整理をすれば死ぬ必要は全くなくなります)、「ここまでお金をつぎ込んだのだから次はあたりが来るはずだ」というのは過剰に楽観的な物の見方です(ここまでつぎ込んだ額とこれから当たるかどうかは全く別の事象です)。
こうした歪んだ認知をできる範囲で修正し、以前のように概ね適切な主観的な判断ができるように戻していくのが認知行動療法です。
認知行動療法では、自動思考と呼ばれる、ある状況を与えられたときに自動的に思い浮かぶ考え方に目を向けて、それがどの程度現実と食い違っているかを検証し、修正していきます。
認知行動療法は1人で出来ないわけではありませんが、より確実な効果を得たいのならば医師の指導のもとに行うべきです。
ギャンブル依存症の薬
「ギャンブル依存症を直接治療する薬」というのはまだ存在していませんが、併発症状がある場合、あるいは治療を始めてから併発症状が現れた場合は薬を使います。ギャンブル依存症患者は躁鬱病を併発しやすく、その場合は抗うつ剤で症状を緩和します。
また、ギャンブルを我慢することは患者にとっては非常に辛いことであり、ストレスを感じるため、胃潰瘍などの胃腸病を発症することもあります。あるいは精神的に不安定になることもあります。
そのような場合は、状況に応じて胃薬、抗不安薬、睡眠薬などを使います。もっとも、これらの薬はあくまでも治療のサポートに使うものであり、薬さえ使っていれば治るわけではありません。治療中に身体的・精神的な症状が現れた場合は、包み隠さず医師に相談しましょう。
ギャンブル依存症患者の自助グループに入ろう
現在、日本にはギャンブル依存症患者のための自助グループが幾つかあります。自助グループには自らと同じギャンブル依存症患者がたくさんいるため、自身の体験を包み隠さず話すことが出来ます。
グループのメンバーと助け合うことができるので、一人で治療をすすめるよりも効果的です。もちろん、自助グループに所属するだけではなく、病院での治療も求められます。
ギャンブル依存症患者の自助グループは、ギャンブラーズ・アノニマスのウェブサイトから探すことが出来ます。一緒に助け合える仲間を探したい場合は積極的に活用しましょう。
治療に関するQ&A
パチンコ依存症の治療を始めるにあたって、多くの患者が疑問に思うことと、それに対する答えをQ&A形式でまとめました。
治療が周囲にバレることはない?
ありません。治療に携わる医療従事者が当然持っているべき職業倫理を持ち合わせていれば、という条件はつきますが、実際には患者の病気をべらべら外部に話すような馬鹿な医療従事者はめったにいません。
医療従事者には守秘義務があり、職務上知った情報は法的に外部に話してはいけないということになっています。守秘義務に違反した場合は医師にも損失があります。
近年は
- 患者が同意した場合
- 患者や他の者に対して現実に差し迫って危害が及ぶおそれがあり、守秘義務に違反しなければその危険を回避することができない場合
においては例外的に守秘義務違反が例外化されますが、それでも情報を教えていい相手は主に他の医師、看護師、検査技師などに限られています。勝手に会社や保険事務所などに教えられる可能性は事実上0%と言っていいでしょう。
パチンコ依存症の治療中に気をつけるべきことは?
いくつかありますが、いちばん大切なのはパチンコを思い出すようなものとの接触を徹底的に避け続けることです。パチンコ店のチラシは見ないで捨てる、テレビを見ていてパチンコ店のCMが写ったらチャンネルを変える、パチンコ店の前は通らない、などです。
しかし、パチンコ店がやたらと街中にある現代日本において、これを実行するのはなかなか難しいものです。競馬場や競輪場などは数えるほどしかないので避けて暮らすことは難しくありませんが、大して大きいわけでもない駅の前にすら存在するパチンコ店は本当に厄介なものです。
あまりにもきついという場合は、引っ越しまで視野に入れたほうがいいかもしれません(大げさだと思われるかもしれませんが、ズルズルとパチンコ依存症を引きずるよりはずっとマシです)。
もう一つは、不必要なお金、あるいはクレジットカードやキャッシュカードなどを持ち歩かないことです。誘惑に負けてパチンコ店に入ってしまっても、不要なお金がなければ傷は浅くて済みます。医師に尋ねれば更に具体的な注意点を教えてもらうことができますので、早急に治療しましょう。
借金がある場合はどうすればいい?
借金の額が問題なく返せそうな場合はそのまま変えした方がいいですが、返済が難しい場合は債務整理を行うことをおすすめします。
パチンコ依存症の治療中は治療費もかかりますし、返済に回すお金が用意できないことが珍しくありません。無理して返済と治療を両立しようとすると治療そのものに悪い影響を及ぼすおそれがあります。
返済が厳しい時は、まずは弁護士に相談してみましょう。弁護士費用以上の債務圧縮メリットを得られることがほとんどです。
弁護士費用を用意するのが難しいという場合は、法テラスの利用をおすすめします(参考:自己破産するお金がない時は法テラスの建て替え制度を利用しよう)。法テラスは弁護士事務所を通じて依頼するより安く済むうえ、分割払いなどにも対応してもらえます。
まとめ
- パチンコ依存症を根本から治療するためには病院に行くべき
- パチンコはその他のギャンブルと比べて依存症になりやすい
- 治療はできればギャンブル依存症を専門とする病院で行うべきだが、近くにない場合は通常の心療内科・精神科でもOK
- ギャンブル依存症の治療の中心は認知行動療法
- 補助的に薬を使うこともあるが、「ギャンブル依存症を治療する薬」は現状存在しない
- ギャンブル依存症患者の自助グループに入ると仲間ができて心強い
- 治療中はとにかくパチンコから距離を取る
- 借金がある場合は別途弁護士にも相談する
パチンコ依存症の治療は兎にも角にも病院に行くことから始まります。まずは電話でもメールでもいいので、相談することから初めてみてください。