自己破産の時の予納金は必ず支払わないとダメ?分割は可能?

自己破産の手続きに必要となる予納金。これは、裁判所に支払うためのお金です。
破産手続きのための手数料や、官報に公告するための費用、郵便切手の添付など、破産するにもお金が必要になることはご存知でしたか?

ここでは、予納金についての基本的な知識をお話していきます。

自己破産は支払い不能の状態で行う債務整理です

自己破産制度は債務を帳消しにする債務整理です。自己破産申立てを行う条件は他の債務整理とは違い、債務者がどうやっても債務を支払うことができない時です。

具体的な基準で言えば返済額が手取りの3割を超え、かつ5年以内の返済ができないと任意整理での対応がまず不可能となります。

自己破産は債務が全てなくなる代わりに官報に名前が載ることや10年間ブラックリストに載るといったデメリットがあります。

他の債務整理に比べて被る破産者の不利益も重いので、できれば自己破産以外の選択肢がある状態で弁護士に相談すると良いでしょう。

自己破産は本人申立てもできますが、書類作成や裁判所での手続きが難しいため弁護士に相談して行うことが主です。弁護士に依頼をすると債権者に受任通知という自己破産することを伝える書類が弁護士事務所から送られます。

すると、債務の督促がストップするため、心理的な負担は非常に軽くなるでしょう。

お金がなくても自己破産の費用はかかる!

自己破産はお金がない人のための債務整理ですが、自己破産をする費用、所謂破産手続費用・破産費用を払わなくてはいけません。自己破産で支払うべき費用はこちらです。

弁護士費用

まず、弁護士に依頼をする以上弁護士費用を払わなくてはいけません。自己破産の手続きは時間がかかるため弁護士費用も任意整理に比べて高くなります。

その金額はおよそ40万円が相場で、これから自己破産する人にはなかなか払えるお金ではありません。そこで、弁護士費用は自己破産が終わった後に分割で支払うことになります。

もし、弁護士費用の支払いが大きな負担に感じる場合は法テラスに頼るのも一つの手です。

法テラスは国が支援する法律相談機関で、当番となった弁護士等が出張しています。弁護士費用を一般的な相場の半額以下に抑えることができます。

ただし、法テラスを利用できるのは年収が少ない人に限られています。

裁判費用

そして、弁護士報酬の他に裁判費用も払わなくてはいけません。裁判費用は自己破産を申立てるための印紙代や切手代、そして破産管財人の報酬として支払われる予納金です。

予納金の額は自己破産の金額や資産によって変動しますが、多くの場合は1万円台で収めることができます。その一方で資産がある場合や免責不許可事由が重い場合は少なくとも20万円以上の予納金を必要とします。

【予納金】である以上、分割は難しい

自己破産に必要な費用である予納金は読んで字のごとく予め納めるお金ですから、自己破産手続開始前に支払わなくてはいけません。

しかし、自己破産が必要なくらいお金がないのですから何とか分割してもらえないのでしょうか?

自己破産の予納金は分割できるけど、基本的には一括払い

予納金は原則として一括払いです。つまり、予納金を支払う余地があれば分割することは不可能です。

しかし、どうしてもお金がない場合は分割払いを認めてもらえることが多いです。

ちなみに、予納金の支払いは分割でも破産申し立ての前に全額支払います。よって分割が長引くほど破産申し立ても後ろ倒しになっていきます。

分割払いの相場は4カ月ですが長い時は半年程度まで延ばしてもらうことができます。

予納金は同時廃止の場合は1万5000円と格安ですが、少額管財事件の場合は最低でも20万円、一般管財事件の場合は最低でも50万円と高額になります。

また、少額管財事件として扱ってもらえる案件も弁護士が付いていないと一般管財事件(特定管財事件・通常管財事件とも言われる)として扱われるので注意してください。

法テラスでも立て替えてもらえない

予納金が高いなあ...と思った時に考えられる選択肢と言えば法テラスでしょう。確かに、法テラスは収入が少ない人が格安の弁護士費用で法的な手続きを行うことができます。

しかし、よく考えてほしいのは予納金が弁護士費用ではないということです。印紙代や切手代は立て替えてもらえますが、自己破産の予納金は生活保護受給者を除き立て替えてもらえません。

ちなみに、個人再生の場合は生活保護受給者でも予納金を立て替えてもらえません。

このように予納金の支払いは避けることができないので、破産申し立て前にお金を集めましょう。弁護士に自己破産の代理人を依頼すると、債権者に受任通知がされて取り立てが止まります。

数か月の余裕を持つこともできるためその間に収入の一部を予納金に充てられる状態にします。とりあえずは分割で支払える状態になればOKです。

6割の自己破産は同時廃止で終わっている、つまり予納金は非常に安い

このように、予納金を支払えない場合はなんとしてもお金を集めなくてはいけませんし、もし予納金を支払えなければ破産手続きは停止します。

しかし、多くの人は予納金で悩まなくても良いと考えられます。

基本的には予納金で悩むことは無い

実は、自己破産する人の6割が予納金の安い同時廃止で終わっています。

同時廃止とは破産申し立てと同時に財産がなく破産手続きが廃止されるものでした。財産がない状態と言われるものの、予納金が払えないと過度に悩む必要はないでしょう。

一方20万円以上の資産がある場合は破産管財人が財産の調査及び債権者への分配などを行う管財事件になります。

ちなみに、同時廃止でも破産管財人の報酬である予納金が発生するのは「財産の調査は行われている」からです。

管財事件になった場合でもすべてが差し押さえられる心配はありません。100万円に満たない現金をはじめ、生活に欠かせない衣類や食料、家電なども手元に残すことができるのです。

債務総額が増えるごとに予納金も増えていきますが、それでも債務の1%かそれ以下に定められています。一般人が破産する分にはよほどの資産がない限り少額管財事件の20万円を用意すれば良いという認識で構いません。

資産がないのに管財事件になるってどういうこと?

原則として自己破産は差し押さえられる資産がない場合は同時廃止になり予納金も非常に安く収めることができます。

ところが、同時廃止になるべき案件でも管財事件として扱われる場合があります。それが免責観察型管財手続です。

これは、自己破産の申し立てをした時に、免責不許可事由に当たるものが見られ、かつ重大だと判断された場合になされるものです。

そもそも、「ギャンブルで借金をつくったら自己破産できない」などと言われていますが免責不許可事由が軽度である場合は訓戒を受けるだけ、あるいは収支表や反省文を提出することなどをすれば自己破産ができます。

また、免責不許可事由が重度の場合に免責観察型管財手続きに移行するということは重い免責不許可事由があった時でも自己破産はできるわけです。

しかし、免責観察型管財手続きの場合は少額管財事件と同じ予納金20万円を支払わなくてはいけませんし、自己破産が終わった後も一部の債務を支払わなくてはいけません。もちろん、弁護士費用も支払います。

どうしても予納金が払えない時は裁判所に上申書を提出する

しかし、分割しても予納金が払えないという人も間違いなくいます。そのような場合は絶対に自己破産できないのかというと、まだ可能性はあるようです。

どうしても予納金が払えない時は、裁判所に上申書と呼ばれる書類を提出します。具体的な書式は決まっていませんが、その内容は予納金の分割あるいは同時廃止での処理をお願いするものです。

もちろん、そのようなお願いに正当性を持たせるためにいかに生活に困っているかも合わせて書きます。