「グレーゾーン金利」という言葉を聞いたことがありますか?では、「過払い金請求」はどうでしょうか?前者はあまり知らなくても、後者には聞き覚えのある人が多いのではないでしょうか?
2010年過ぎあたりからこの過払い金請求という言葉をよく聞くようになりました。CMでも法律事務所が声高々に主張していますね。
2010年に借金に関する新しい法律が制定され、それに伴ってグレーゾーン金利で違法な融資を行っていた金融業者に対する過払い金請求ブームともいうべきものが起こりました。
しかし、過払い金請求という言葉はよく聞くけれど、どのような内容かは知らない、という人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、グレーゾーン金利や過払い金請求とは何かを詳しく解説していきます。また、2010年以前に借金をしていた人は過払い金請求を行うことで、余計に支払っていた利息を取り返すことができる可能性があります。
グレーゾーン金利とは?
まずはグレーゾーン金利について説明していきます。一言で言うと、グレーゾーン金利とは「利息制限法と出資法の間で設定されていた違法な金利帯」のことを言います。これだけを聞いてもよくわからないので、さらに詳しく見ていきましょう。
借金の際の金利の上限額は国が法律でしっかりと定めています。ただ、金融業者から借金をする場合、適用される法律が2つあったんですね。
それが「利息制限法」と「出資法」です。そして、この2つの法律では定めている金利の上限が異なるのです。
例えば、利息制限法なら元本に対しての金利は、10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満なら年18%、100万円以上なら年15%までと上限が決められています。
対して、出資法では金額に関わらず金利の上限は29.2%と定めていました。
どちらもきちんとした法律ですから、もちろん守らなければいけません。しかし、ほとんどの金融業者(主に消費者金融)は金利の上限を29.2%に設定していました。
これでは出資法の上限は守れているものの、利息制限法の上限は大きく超えてしまっていますね。それなのに2010年の賃金業法、出資法の改正を受けるまで、なぜ多くの業者が違法な金利で営業できていたのでしょうか?
利息制限法には罰則がなかった
出資法には違法した場合、明確な罰則があります。それは5年以下の懲役または1000万円以下の罰金という厳しいものです。
しかし、利息制限法にはこのような罰則がありませんでした。さらに、利息制限法で定められている上限金利を超えていても、債務者が任意のもとでその利息を支払った場合、この金利は認められたものになるという条件がありました(これを「みなし弁済」と言います)。
債務者はそこまで法律に詳しくありません。そのため、言われた通りに支払っていた利息が実は違法だなんてほとんどの人は知らなかったでしょう。
そこで賃金業者はそれを逆手にとり、あくまで任意として違法な利息を債権者に支払わせていたのです。
これなら利息制限法も出資法にも違反していませんし、もし債務者に指摘されても違反していたのは利息制限法だけですから、法律違反としての罰則が課せられることはありません。
まさにローリスク・ハイリターンですから、多くの消費者金融などがこの手口を使っていました。これがいわゆるグレーゾーン金利であり、この金利が金融業界にはびこっていた理由なのです。
2010年の賃金業法改正によってグレーゾーン金利は撤廃
ここまでまさに法律の抜け穴ともいうべき違法金利が常識化していましたが、2010年の賃金業法改正によりその状況は一変します。
2006年のみなし弁済についての最高裁判決を受けて、政府は出資法の上限金利を20%に下げる法改正を行いました。改正法では借金の額に関わらず、20%以上の違法金利には罰則が適用されるようになったのです。
2006年の最高裁判決とは、違法な金利で利息を支払っていた債権者に対して、グレーゾーン金利で支払っていた分の過払い利息の返還を認める、というものです。
この賃金業法の改正、最高裁の判決を受けてグレーゾーン金利は撤廃され、さらに過払い金請求の動きが活発化します。
今までに借金をしていた人の多くが違法な利息を支払っていたわけですから、この動きは当然ですね。そして、弁護士や司法書士事務所が続々と過払い請求のCMを出し、より大きなブームに近い流れになっていったのです。
過払い金を取り戻すには?
過払い金を支払っていた可能性があるのは、「2010年以前に消費者金融で借金をしていたことがある」人です。完済が2010年以後であっても過払い金を支払っていた可能性は十分あります。
また、過払い金を請求できる期間は借金完済後10年までとなっています。これを過ぎてしまうと請求はできなくなってしまいます。注意しましょう。
過払い金の請求方法ですが、弁護士や司法書士に依頼する方法と全て自分で行う方法の2つがあります。また、任意整理や個人再生の債務整理の際に同時に行うことも可能です。
弁護士や司法書士に依頼した場合は、報酬を支払わなければいけません。報酬の相場は取り戻せた過払い金の10%から30%程度でしょうか。
ただ、弁護士や司法書士は法律のプロですから、一旦任せておけば複雑な手続きなどは全て行ってくれるというメリットがあります。また、交渉術にも長けていますから、高い確率で全額に近い過払い金を取り戻すことができるでしょう。
対して、全て自分で行う方法には報酬金などを支払う必要がない、という金額的なメリットがあります。その分、手続きや金融業者との交渉も全て自分で行わなければいけませんし、実際の過払い金額も自分で計算を行う必要があります。
弁護士などに依頼する場合の詳しい手順は?
では実際に過払い金請求をするときは、どのように専門家に依頼すればよいのでしょうか?また、必要な書類などはあるのでしょうか?
まず、正式に依頼する前に電話で弁護士事務所などに無料相談してみましょう。過払い金請求の報酬金などは事務所によってまちまちで、かなり高額な報酬金の支払いが発生することもあるからです。
電話で過払い金請求について相談をし、具体的な報酬金額などを聞いておきましょう。納得できる報酬金額であれば、実際に会う約束を取り付けます。
もちろん、いきなり事務所に直接訪問してもOKですが、弁護士との予定が合わないこともあります。前もって電話でアポを取っておいたほうが確実でしょう。
必要書類ですが、極端な話何も必要ありません。もちろん契約書などがあれば、よりスムーズに手続きが進み、返還までの期間が短くなるかもしれませんが、何もなくても過払い金請求は可能です。必要な書類は全て専門家が用意してくれます。
ただ、本人確認ができるものだけは必ず必要です。運転免許証や健康保険証、住民票などを準備しておきましょう。どのタイミングで必要になるかはあらかじめ弁護士などに聞いておきましょう。
正式に依頼すれば後はもう任せてしまってOKです。その後、何度か確認の電話などが入るかもしれませんが、基本的に専門家が全て行ってくれます。
返済にかかる期間は人それぞれですが、半年から1年程度の場合が多いようです。また、業者側が返還に応じない場合は訴訟が必要になることもあります。が、ほとんどの場合は全額に近い金額が返還されるようです。
返還後、担当の専門家に報酬を渡し、過払い金請求は終了となります。
過払い金請求ができないケース
全ての借金に対して過払い金請求ができるわけではなく、請求ができないケースもあります。以下に記していきます。
過払い金請求の時効が成立していた場合
上述したように、過払い金の請求の時効は10年となっています。この時効の起算日は借金完済後翌日からとなっています。
また、借金のケースによっては時効の計算が複雑になる場合もあるので、特殊な借金方法をしていた人は弁護士などの専門家に相談しましょう。
借金をしていた金融業者が倒産していた場合
該当の業者が倒産していた場合、当然のことながら過払い金請求を行うことができません。2010年前後からの過払い金請求のラッシュによって、多くの消費者金融などが経営危機に立たされました。
当時借金をしていた業者が今も存続しているかチェックしておきましょう。
借金の金利がグレーゾーン金利ではなかった場合
この場合ももちろん過払い金請求はできませんね。契約書などに金利が記されていますのでチェックしましょう。
契約書などを紛失してしまい、金利がわからない場合は弁護士などに相談しましょう。また、ネット上に金利計算のソフトがあるので、借金の額や毎月支払っていた利息を覚えている場合は、それらを活用してみるのも一手かもしれません。
過払い金請求の時効は近づいている
賃金法の改正は2010年ですが、2006年の最高裁判決を受けて、金利を法律内に戻した金融業者は多いです。
このままグレーゾーン金利で貸し付けていても、いずれ回収される可能性が高いのですから当然の措置ですね。
つまり実質、2006年以後の借金に対しては過払い金請求が出来ない可能性が高いのです。そして、2006年以前に借金をしていた人でも、ほとんどの人が完済から10年が経過しようとしているでしょう。
過払い金請求の時効は10年です。少しでも過払い金に心当たりのある人は弁護士などに相談してみましょう。