自己破産するお金がない時は法テラスの立替制度を利用しよう

自己破産をするにも何かと費用が必要になります。自己破産をしたいのにもかかわらず、その費用が用意できずに困っているという方も少なくないでしょう。今回はそんなお金がない方の心強い味方である、法テラスの使い方を解説したいと思います。

法テラスはお金がない人のための法律相談所

握手をする男女の手元

法テラスは正式名称を「日本司法支援センター」といい、一般の人の中でも通常の弁護士事務所に依頼するお金がない人を対象とした法律相談の総合窓口です。法テラスは日本政府が設立した法務省所管の法人で、つまりは国が運営しているものと思っていいでしょう。

法テラスには多数の弁護士が在籍していますが、その全てが常勤弁護士というわけではありません。現在の常勤弁護士は約230名で、残りは自前の弁護士事務所を持つか、弁護士事務所に所属しつつ、依頼があれば法テラス経由のものでも受けるスタンスの契約弁護士です。

法テラスの利用条件

法テラスは前述の通り、お金がない人のための法律相談所です。したがって、お金を十分に持っている人は利用できません。法テラスが利用できるのは、収入要件と資産要件の両方を満たした人だけです。

収入要件は申込者及び配偶者の収入が基準になります。金額の条件は扶養家族や住んでいる地域、家賃や住宅ローンの負担状況に左右されます。

例えば、扶養人数が1人で生活保護1級地と呼ばれる地域に住んでおらず、なおかつ住宅ローンや家賃を払っていない場合、上限額は手取り月額で18万2000円です。詳細については、以下の表を参考にして下さい。

収入要件

人数 手取月収額の基準 注1 家賃又は住宅ローンを負担している場合に
加算できる限度額 注2
1人 18万2,000円以下
(20万200円以下)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下)
2人 25万1,000円以下
(27万6,100円以下)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下)
3人 27万2,000円以下
(29万9,200円以下)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下)
4人 29万9,000円以下
(32万8,900円以下)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下)
注1:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
注2:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。

資産要件

一方、資産要件は申込者および配偶者の保有している現金、及び預貯金が基準となります。

人数 現金・預貯金合計額の基準 注1
1人 180万円以下
2人 250万円以下
3人 270万円以下
4人以上 300万円以下
注1:3ヶ月以内に医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。
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法テラスの所在地

法テラスは北海道から沖縄までのすべての都道府県に1つ以上あります。現在の事務所数は約110箇所で、どんな地域に住んでいる人でも利用できます。例えば、東京都の場合は新宿、池袋、上野、多摩、八王子の5箇所にあります。結構多いようにも見えますが、これは人口が多い東京だからそうなっているだけで、面積が広いにも関わらず1つしか設置されていないような都道府県も少なくありません。

どうやって相談すればいい?

法テラスは電話、メール、面談での相談を受け付けています。電話の場合は平日の9時から21時、もしくは土曜日の9時から17時まで相談が可能です。利用料金は0円ですが、通話料金は本人負担です。法的トラブルに関する相談は「0570-078374」から相談します。

なお、電話相談の場合、オペレーターは個別の法律相談や法的判断をすることはできません。制度や手続きを紹介して、法律相談所の窓口を紹介するだけです。

メールの場合は24時間365日いつでも相談できます。利用料金は0円ですが、通信費は本人負担になります。相談できる内容は電話相談とあまり変わりありません。

法テラスは安くて立替制度もあり!

1万円を持ったテディベア

法テラスの一番のメリットは、弁護士事務所よりも費用が安いことです。一般的に、債務整理で必要になるお金は弁護士に支払う着手金と報酬金、裁判所に支払う予納金、切手代や通信費などの実費に分類できます。

このうち、着手金と報酬金や弁護士が自由に決めていいことになっています。つまり、同じ依頼でも、弁護士事務所によって費用は変わってくるというわけです。

そして、法テラスで働いている弁護士の殆どは、そうでない弁護士と比べて着手金や報酬金を安く設定しています。所得が低い人のための法テラスなので、当然といえば当然ですね。

また、法テラスには立替制度もあります。これは弁護士に支払う報酬を一旦法テラスに立て替えてもらう制度です。この制度を「民事法律扶助制度」と言います。立て替えてもらったお金は、その後毎月約5000円~1万円ずつ返済していくことになります。

弁護士に依頼する絵で最もネックとなるのが弁護士費用、特に最初に用意しなければならない着手金ですが、民事法律扶助制度を利用すれば、一度に大きなお金を用意する必要がなくなります。

さらに、事件解決時点で生活保護を受給していた場合は、建て替え金の支払いも免除されます。つまり、実質的に無料でトラブルが解決できるわけです。

但し、事件の相手方からお金が回収できた場合(過払い金が帰ってきた場合など)は、法テラスに対してそのお金を差し出さなければいけません。

事件解決時点では生活保護を受給していなかったけど、解決後に受給を開始したという場合は、その時点で支払を猶予してもらったり、あるいは免除してもらったりできます。受給が決定したら、早急に法テラスに問い合わせをしましょう。

法テラス利用の流れ

電話する女性

ここからは法テラスの具体的な利用方法を解説していきます。

予約を入れる

法テラスを利用するに当たっては、まずは事前に予約を入れる必要があります。予約方法は電話で、メールでの予約はできません。

法テラスの事務所は日本各地にありますが、業務内容はどこでも同じなので、どこに予約を入れても問題ありません。但しあまり遠いところを選ぶと行くのが億劫になるので、自宅に近いところを選ぶのが一番いいでしょう。

法テラスサポートダイヤルの電話番号は「0570-078374」、受付時間は平日9時~21時、土曜日9時~17時です。この予約の際に、あわせて利用基準のチェックなども行われます。利用基準を満たしている場合は、弁護士との無料面談がセッティングされます。

必要書類を用意する

電話で予約をしたときに、オペレーターから当日必要書類を持ってくるように言われるはずです。相談で必要になるのものは人によって多少異なりますが、通常は給与明細と納税証明書が必要になります。

自営業者の場合は給与明細の代わりに確定申告書を、生活保護受給者の場合は受給証明書を、年金受給者は年金証書を持っていきましょう。

無料面談に出席する

予約に従って弁護士との無料面談に出席します。通常、法テラスでは平日しか無料面談を受け付けていませんが、東京や大阪など一部の地域では土日に無料面談が行われることもあります。

まずは窓口で受付を済ませてから、相手がセッティングした弁護士と面談をします。こちらから弁護士を選ぶことはできません。

無料面談の時間は30分で、1つの問題について3回まで無料で相談できます。1回目の相談と2回目の相談は同じ弁護士にしてもいいですが、変えることもできます。

1回目の弁護士が頼りなさそうだと思ったときは変えてもいいですが、弁護士を変えると今自分が何に困っているのかについてまた最初から説明することになります。

その弁護士が信頼に値すると感じた場合は、その場で依頼をしてもいいですし、一度家に帰って考えたから契約を結んでも問題ありません。

弁護士を紹介して契約した時点で法テラスの役割は終了しますので、後は担当になった弁護士と話し合いながら債務整理を勧めていくことになります。

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法テラスの弁護士のレベルは低い?

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法テラスの弁護士にも街中の弁護士事務所の弁護士にも結局は当たりハズレがありますが、法テラスの弁護士のレベルが法律事務所の弁護士と比べて劣る傾向がある可能性は極めて高いです。

そもそも、放って置いても客の方から来てくれるような優秀な弁護士は、法テラスと契約する必要が全くありません。法テラスにやってくるお金がない人の相手をするより、弁護士事務所にやってくるお金がある人を相手にしたほうが稼げるからです。

一般的に法テラス経由の仕事の報酬は一般的な弁護士報酬よりもかなり低く、「仕事がないよりもマシ」程度の稼ぎにしかなりません。

必然的に集まるのは、弁護士事務所を開いても全くお客が来ない弁護士か、弁護士事務所に就職できない弁護士、つまりは能力が低い弁護士ばかりになります。

無論中にはお金がない人を救いたいという使命感に燃えている優秀な弁護士もいるかもしれませんが、数はそう多くないでしょう。良いサービスを受けるためには、それに見合ったお金を支払わなければならないのが資本主義の仕組みです。

ただ、法テラスで腕のいい弁護士を見つける方法がないわけではありません。まず、前述の通り無料相談は3回までできるので、それをフルに活用すれば3人の弁護士と話すことができます。

たまたま最初に割り当てられた1人と契約するよりは、3人の中から選ぶほうがあたりの弁護士を見つけられる可能性は高まります。

また、それとは別に裏技的な方法もあります。弁護士会のHPや各弁護士事務所のHPに「法テラスを通じての依頼OK」と記載している場合は、その弁護士に法テラスを通じて依頼できる可能性があります。

その場合はまず、法テラスに連絡し「この弁護士に相談したい」とはっきりと伝えます。このお願いがいつも通るとは限りませんが、通ることもあります。

その場合は、実質的に自分で弁護士を選びながら、なおかつ依頼料金は法テラス基準で済ませられます。

法テラスで債務整理をした時の費用は?

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一般的な弁護士事務所の場合、債務整理の費用は弁護士側が事由に決めることができますが、法テラスの場合は料金の規定があり、どこの法テラスを通じて依頼しても必ず同じ額が請求されることになっています。法テラスを通じた債務整理の費用は以下のとおりです。

費用の詳細

任意整理 1社 42,400円
2社 63,600円
3社 84,800円
4社 106,400円
5社 133,000円
6~10社 176,200円
11~20社 202,800円
20社以上 229,400円
個人再生 1~10社 197,000円
11~20社 218,600円
20社以上 251,000円
自己破産 1~10社 152,600円
11~20社 174,200円
20社以上 206,600円
管財事件ならもう少し金額が高くなり、更に予納金20万円~50万円も必要。
※予納金は民事法律扶助制度の対象外

ただし、これはあくまでも目安であり、処理に時間がかかる案件の場合はもうちょっと費用が上下することもあります。費用が不安なときは、弁護士にそのことを伝えてみて下さい。

まずは相談してみよう

携帯電話の操作をする男性

自己破産に限った話ではないですが、債務整理をしたい場合はまずはとにかく法テラスに相談してみて下さい。必ず解決するとは限りまませんが、それでも素人が1人で悩んでいるよりは遥かに解決できる可能性は高くなるはずです。

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