借金の返済が苦しい!自己破産したほうがいいの、しないほうがいいの?

借金が返済不能になったからと言って、すぐに自己破産の手続きをしてしまうのは正しい選択とは言えません。自己破産には相応のデメリットがあり、立場によっては大きく不利益を被る可能性があるからです。

この記事ではどのような立場の人が自己破産をすべきで、どのような立場の人は自己破産をすべきでないかを考えていきたいと思います。

※自己破産以外で借金を減らす方法もあります。

そもそも自己破産ってなんだ?

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自己破産は借金が0円になる制度と漠然と把握していらっしゃる方も少なくないかと思いますが、そのとらえ方は正確ではありません。自己破産はあくまでも借金の支払いが不可能になったことを宣言するだけであり、それだけで借金が0円になるというわけではありません。

自己破産をして借金を0円にするためには、その後免責を受ける必要があります。免責とは文字通り責任を免れることです。債務者を免責すべきか否かの判断は、裁判所が行います。つまり、裁判所に免責が認めてもらえなければ、借金は帳消しにならないのですね。

現在の法律では免責不許可自由というものが定められており、たとえば以下の条件にあてはまる場合は基本的に免責が認められません。

1.申立者が過去10年以内に免責を受けていた場合
2.浪費やギャンブルなどにより財産を著しく減少させた、もしくは債務を著しく増大せさせた場合
3.申立人が財産を隠したり、財産価値を減少させたりしている場合
4.すでに返済が不可能になっているにもかかわらず、債権者からさらに借り入れをしていた場合
5.裁判所に対して嘘の申告をした場合

ただし、免責不許可自由にあてはまったからと言って、必ず免責が受けられないわけではありません。免責不許可自由にあてはまっているにもかかわらず、裁判所の判断で免責を認めることを裁量免責といいます。実際には浪費やギャンブルで作った借金でも、裁量免責が認められるケースが大半です。

これだけ見ると自己破産は素晴らしい制度に思えるけれど……

浪費やギャンブルでこさえた借金であっても裁量免責が認められるのならば、借金で苦しくなったらどんどん自己破産をすべきだと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、残念ながら世の中は債務者そこまで甘いわけではありません。自己破産にもそれ相応のデメリットが設けられており、下手に自己破産をしてしまうと大きく損をする可能性があるのです。

自己破産をすると一部の財産を失う!

自己破産をすると、高額な財産は債務の返済に充てるために没収されてしまいます。具体的には、20万円以上の財産については原則として没収となります。

この場合の20万円というのは購入時の金額ではなく、自己破産時の時価です。たとえば50万円で買った中古車でも、自己破産時の時価が10万円しかないという場合は、基本的には没収されません。

20万円以下の時価しかない住宅というのはまず考えられないので、原則として自宅は没収になります。ただし、没収されるのは自己破産をする本人名義の住宅のみで、両親や配偶者、子供の家などに居候している場合は没収とはなりません(保証人になっている場合は除く)。

と聞くと、自己破産直前に名義を家族に移せばいいのかというとそうとも言えません。家を失いたくないからと言って自己破産の直前に名義を他人に移すと、財産隠しと認識され免責が認められなくなる可能性が出てくるからです。

持ち家があってどうしても失いたくない、という場合は、自己破産以外の解決方法を考えたほうがいいでしょう。

自己破産をすると資格に制限がかかる

自己破産をすると、所有している資格の一部が制限されてしまい、破産手続き中はその資格を使った職業に就けなくなってしまいます。資格が制限される職業にはたとえば以下のようなものがあります。

弁護士
行政書士
司法書士
税理士
社会保険労務士(社労士)
公証人
不動産鑑定士
公正取引委員会の委員長・委員
生命保険募集員・損害保険代理店
風俗営業者・風俗営業所管理者
国家公安委員会の委員
教育委員会の委員
日本中央競馬会の委員
住宅金融公庫の役員

このような職業に就いている場合、自己破産の手続き中はその職業に就くことができないので注意しましょう。手続きが終わればまた元の仕事に戻れます。

自己破産をすると保証人にも迷惑がかかる

自己破産をすると保証人に請求が行くことがあります。自己破産の効力はあくまでも債務者本人に限定されており、その保証人は対象外だからです。

自己破産をした場合、原則として保証人に一括での返済が行くことになります。保証人が債務を一括返済できないという場合、最悪保証人も自己破産をするということになりかねません。そうなったら保証人との関係がこじれるのは目に見えています。

なお、保証人には求償権という権利が認められており、債務者に代わって借金を返済した場合、債務者に対してその分のお金を払うように求めることができます。

ただし、現実的には債務者にはそのような支払能力はないので、権利があってもお金を回収することは実際に極めて難しいといえるでしょう。

万が一の際に友人との中に亀裂が入ることになると困るので、保証人が必要だという場合は保証会社を利用しましょう。

保証会社はお金を払う代わりに保証人になってくれる会社で、債務者がローンを返せなくなった場合は保証会社がいったん肩代わりしてくれます。親しい人に借金を背負わせ手は大変なので、必ず保証会社と契約しましょう。

※自己破産以外で借金を減らす方法もあります。

自己破産による噂を検証

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自己破産には悪いイメージが付きまといますが。たとえば、よく、自己破産をすると公民権が停止されて選挙に行けなくなるという噂を耳にしますが、それはデマです。

自己破産をしても選挙には行けますし、その後供託金を用意できるまで復活できれば選挙に立候補することもできます。

自己破産しても選挙に行けるし選挙に出れる

2009年8月30日の衆議院議員選挙(比例近畿ブロック)で民主党から立候補した渡辺義彦氏は自己破産の経験があるにもかかわらず立候補し、見事当選を果たしています(その後2012年の衆議院議員選挙では日本未来の党から出馬するも落選)。

まあ、そこまでする人はめったにいないかと思いますが、とにかく自己破産をしても公民権は停止されないので安心してください。

自己破産しても一部の財産は残る

前述のとおり、自己破産をすると高額な財産については原則没収となりますが、20万円以下の家財や99万円以下の預貯金は残されます。生活再建のためのお金がないと困りますからね。また、児童手当、母子手当、国民年金なども引き続き受給することができます。

自己破産をしても職場にはまずばれない

自己破産をすると、官報破産者名簿に名前が掲載されます。官報とは政府が発行している機関紙のようなものであり、官報販売所で購入することができますが、官報を見る人はめったに居ません。

一方破産者名簿は市区町村役所で管理する名簿であり、こちらは一般に公開されることはありません。また、破産者名簿に掲載された名前は数か月程度で抹消されます。

従って、周りに官報を定期的に購読している人や、市区町村役所勤めの人がいない限りは周りに自己破産されたことがばれる可能性はまずありません。

ただし、いつもと違う行動(弁護士事務所に相談するためにたびたび相対するなど)をとったことにより自己破産がばれるケースはそれなりにありますので気を付けたほうがいいでしょう。

自己破産をしても仕事を辞める必要はない

前述のとおり、自己破産をすると一定の職業については制限されます。ただし、職業が制限されるのは破産手続き中の数か月間程度であり、免責が認められれば再び仕事に復帰することができます。制限がない職業については、手続き中も仕事をすることができます。

自己破産を避けたほうがいい人はどんな人か?

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以下のような条件に多くあてはまるときは、自己破産は踏みとどまったほうがいいでしょう。

持ち家や自動車などを手放したくない人

自己破産をすると20万円以上の財産、および99万円以上の預貯金については原則として没収となります。こうした財産を手放したくないという人は、なるべく自己破産以外の方法を模索したほうがいいでしょう。

逆に、失っても困るような財産がほとんどないという場合は、自己破産が第一の選択肢になるかと思います。

資格制限のある職業についている人

弁護士や司法書士、行政書士など資格制限がある職業ついている人は自己破産の手続き中に本来の業務が行えなくなるため生活に困る可能性があります。そのような人は、別の解決手段を探ってください。

友人が保証人になっている人

あなたが友人がいくらこまろうが気にしない人間ならば話は別ですが(それを果たして友人と言ってしまっていいのかはともかく)、そうでない場合は自己破産以外の道を模索しましょう。

借金の額があまり多くない人

借金が少ない場合は、ほかの解決手段でも問題なく返済していけるケースが大半です。

いくら借金があったら自己破産すべきかという点については意見が分かれるところですが、基本的には借金の額が毎月の手取り収入の15倍以上あるときは自己破産を検討したほうがいいでしょう(本人や同居者の経済状況にも左右されますが)。

自己破産以外の解決方法

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自己破産以外の問題の解決方法としては、任意整理特定調停個人再生が考えられます。

任意整理は話し合いで借金を減額する制度

任意整理は債権者と債務者が話し合いによって借金を整理する解決方法です。話し合いなので必ず借金が圧縮できるとは限らないうえ、圧縮幅もあまり大きくはなりませんが、財産も失わず保証人にも迷惑がかからないため多くの人に選択されています。

困窮度合いがそれほど高くないという場合は、任意整理がおすすめです。

特定調停は特定債務者を対象とした制度

特定調停とは、債務の返済が滞りつつある債務者の申し立てにより、簡易裁判所が債務者と借主の間に入り、返済の軽減などの合意が成立するように働きかける制度です。

任意整理の場合と同様に話し合いによる解決ですが、最終的な仲裁を簡易裁判所がするという点で異なります。任意整理と同じく手続き後も借金は残るので、継続して収入が得られる人向けの方法といえます。

個人再生は裁判所を通して債務を5分の1にする制度

個人再生は任意整理と自己破産の中間にあるような手続きです。裁判所を通すという点では自己破産と同じですが、自己破産と違って借金は0にはなりません。

原則として5分の1の借金が残ることになり、残った借金は長期で分割払いをしていきます。減額幅は、任意整理よりは大きくなります。ただし、将来の収入が見込めない人は、この手続きを取ることができません。

自己破産を選ばないことによるメリット

異常の3つの手続きにもそれぞれメリットとデメリットがありますが、いずれの手段でも資格制限や財産の没収はありません。任意整理は借金を選んで整理することが可能なので、保証人がいる債務を対象から外せば保証人に迷惑がかかることもありません。

額がそれほど大きくない借金については、まずはこれらの制度の利用を考えたほうがいいでしょう。

借金問題は弁護士に相談!

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借金問題で迷ったときは、とにもかくにも弁護士に相談するのが一番です。度の手続きを選んだらいいかわからないという場合は、まずはそれを相談するところから始めてみてください。

※自己破産以外で借金を減らす方法もあります。