不動産取引には専門的な知識が要求されるため、通常は仲介業者を通じて取引を行います。しかし、不動産取引を仲介業者に頼めば、当然その分だけ仲介手数料が取られます。仲介手数料が惜しいから、自分で売却がしたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産売却を個人で行うこと自体は違法ではないため、普段は仲介業者が行ってくれている
- 買い手探し
- 契約書作成
- トラブル対応
3つの壁を乗り越えることができれば、不動産取引を個人で行うことは不可能ではありません。しかし、この3つの壁を乗り越えるのは、非常に難しいことです。当サイトでも、個人売却は余りおすすめしていません。しかし、個人売却をする方法がまったくないわけではありません。どうしても個人売却を成功させたい方は、ぜひ当サイトでその方法を学んでいただければと思います。
買い手探しはWebが基本
不動産の個人売却で最初に乗り越えなければならない壁が買い手探しです。仲介業者を利用すれば彼らにチラシやウェブサイトで集客をしてもらえますが、個人売買の場合はこれらの作業を自分で行わなければなりません。では、どうやれば買い手を効率的に見つけることができるのでしょうか。
必ず利用したいのが不動産情報サイトへの掲載です。紙媒体よりも広告掲載料が安く、効率的に買い手が探せます。個人間取引を対象とした不動産情報サイトは現状多くありませんが、まったくないわけではありません。ここでは特に使いやすい個人間取引を対象とした不動産情報サイトを紹介いたします。
e-物件情報
e-物件情報は、個人でも不動産情報が掲載できる不動産情報サイトです。仲介業者でないため、仲介手数料はかかりません。売主と買主は双方で自由に連絡を取り合えるうえ、直接取引が可能なため、囲い込みの心配もありません。個人情報は非公開にすることも可能です。
広告掲載料は以下のとおりです。いずれも支払いは1回限りです。
掲載コース | 掲載料(税込) | 画像数 |
---|---|---|
スタンダードコース | 3,240 円 | なし |
シルバーコース | 6,480 円 | 2点 |
ゴールドコース | 10,800 円 | 8点 |
広告掲載期間は「売れるまで」で、日本国内の物件であれば用途や種類、規模などに一切制限はかかりません。掲載する価格も自分自身で決められます。
契約書作成
法律上、契約というのはお互いが口頭で意思表示をしただけでも成立します。例えば、コンビニで買い物するのも契約の一つですが、いちいち契約書を交わし合ったりしませんよね。
しかし、不動産売買のような高額な契約の際には、あとで言った言わないで揉めるのを防ぐためにも、契約書を作成するべきです。数百円の取引と、数千万円の取引ではその重要度が全く異なるのです。
また、不動産売買の際には、契約書と合わせて重要事項説明書も合わせて作成するのが一般的です。重要事項説明書とは、その名の通り重要な事項を説明するための説明書です。
こちらもあとで言った言わないを防ぐために作成するもので、契約する前に買い手に見せて、お互いが納得した上で契約を交わします。
契約を取り巻く法律は複雑な上、度々改正されているので、素人が理解するのは簡単なことではありません。
Webで見つけた情報は信頼性に不安がありますし、書かれた当時は正しかったが今は間違っている知識が提供されている可能性もあります(それはこのサイトについても言えることですが)。契約書には決まった形式というのはなく、それがまた契約書作成を難しくしています。
そこでおすすめしたいのが、契約書作成代行サービスの利用です。仲介業者を利用するのは嫌だという場合でも、契約書作成代行サービスだけは利用することを強くおすすめします。
ここをケチってしまうと、後でその何倍も解決に費用がかかるトラブルが発生する確率が高くなってしまうからです。契約書作成代行サービスも色々ありますが、おすすめは不動産個人間売買サポートPROの契約書作成代行サービスです。最短で2日、2万9800円~、全国対応の高品質なサービスです。
それでも契約書を自分で作成したい場合
当サイトではおすすめしませんが、自分で契約書を作る場合は、最低でも以下のことを記入しておきましょう。
表題:いわゆる「タイトル」です。その契約書が何の契約に関するものなのかを記載します。不動産取引の場合は、「不動産売買契約書」などの表題をつけるのが一般的です。
前文:本文の前に記載する口上のようなものです。誰が、誰と、どのような内容の契約を結ぶかを記載します。契約者の名前は最初に書いたあとは「以下『乙』という」というように記載するのが一般的です。
本文:具体的な契約内容を記載します。通常は「第1条」「第2条」と順番に記載していきます。第1条には具体的な契約の内容、例えば「甲は乙に対して甲の所有する不動産を●●円で売り渡し、乙はこれを買い受ける」と言った感じで記載するのが一般的です。2条以降では売買代金の支払い方法、所有権移転や登記の方法、どちらかが契約に違反した時の対処法、隠れた瑕疵が発覚した時の対処などを記載します。
後文:作成した契約書をどのように保管するかを記載するのが一般的です。2通作成した上で、それぞれが1通ずつ保管するのが最もいいでしょう。
作成年月日:契約書を締結した年月日を記載します。
署名と押印:名前を書いて、印鑑を押します。住所も併せて記載することが多いです。
印紙:契約金額が法律で決められた金額を上回っている場合は、その金額に応じた収入印紙を貼ります。収入印紙は誰が負担しても問題ありませんが、それぞれが半額ずつ支払うのがいいでしょう。
トラブル対応
不動産取引は高額のお金が動く取引ですから、トラブルも発生しやすいです。契約書作成代行サービスを使えば契約書の内容で揉めることはほぼありませんが、購入後の「隠れた瑕疵」の発覚までは防げません。
瑕疵とは簡単に言えば欠点、短所のことです。つまり隠れた瑕疵とは隠れた欠点のことです。もう少し細かくいうと、相当の注意を払っても発見できない欠点のことです。素人でもすぐに分かるような瑕疵、売り主が買い主に対して説明した瑕疵は隠れた瑕疵とはありません。瑕疵には
- 物理的瑕疵:耐震強度不足、雨漏り、土壌汚染など、建物そのものの瑕疵
- 法律的瑕疵:建築制限など、法律上の瑕疵
- 心理的瑕疵:過去にその建物で起きた事件などの、心理的な瑕疵
- 環境瑕疵:異臭、騒音、振動など、環境に関する瑕疵
隠れた瑕疵が見つかった場合、買い主は売り主に対して損害賠償を請求することができます。また、隠れた瑕疵の度合いが大きく、買い主が建物を購入した目的を果たせなかった場合は、売り主の同意を得ずとも契約そのものを解除することも可能です。
これを売り主から見た場合、損害賠償を請求され、契約を解除されるリスクが有る、ということになります。
隠れた瑕疵によるトラブルを防ぐための一番のコツは、売買契約前に「隠れた瑕疵」を「隠れていない瑕疵」に変えること、つまり隠れた瑕疵を洗いざらい明らかにすることです。
しかし、素人が隠れた瑕疵を明らかにするのは簡単なことではありません。かと言って専門家に依頼すれば費用がかかってしまい、仲介業者を使わないメリットが薄れてしまいます。
仲介業者を介して販売した場合、そのあたりの対応はすべて仲介業者が行ってくれます。
中古物件の瑕疵担保責任の期間
個人が売主の場合、中古物件の瑕疵担保責任の期間については制限がありません。双方が合意していれば、5年でも、6ヶ月でも、1ヶ月でも、あるいは0日でもOKです。通常は3ヶ月程度の瑕疵担保期間が設けられます。
ただし、そのことを契約書に記載しなかった場合、瑕疵担保期間は「瑕疵を発見した時から1年」になります。これは実質的に無期限の責任を負わされるようなもので、必ず期間を定めて契約書に記入うしてください。
一方(今回の記事では関係ありませんが)、宅件業者が個人に物件を売却する場合は、最低でも2年間の瑕疵担保期間を求めなければならないと法律で定められています。
最近では中古売買を支援するために各種の「既存住宅売買瑕疵保険」が人気を集めています。検査と保証がセットになった保険で、隠れた瑕疵が見つかった場合も補修費用が保証されます。ただし、当然保険料はかかります。
多くの人が個人売買を諦めて仲介業者に依頼する理由
理由は簡単で、メリットの割にはデメリットが大きすぎるからです。仲介業者が仲介時にとってもいいとされている仲介手数料の上限は以下の通りになっています。
- 200万円未満の場合:売買金額の5%
- 200以上~400万円未満の場合:売買金額の4%+2万円
- 400万円以上の場合:売買金額の3%+6万円
なので例えば売買金額が1000万円の場合、仲介手数料は最大で1000万円×3%+6万円=36万円となります。これを払わなくていいというのが、個人売買の唯一にして最大のメリットです。結構高額にも見えますが、果たしてそうでしょうか。
個人売買を選択した場合、売り主は仲介手数料と引き換えに、時間を失います。本来は仲介業者がやってくれるはずの買い手探しや契約書の作成、あるいはトラブル対応などを自分で行わなければならないからです。
特に買い手探しは時間がかかり、時間が経てば経つほど建物の価値は下がってしまいます。せっかく時間をかけて契約書の作り方やトラブル対応の方法を学んでも、その知識は日常生活ではまず活かせません。
また、心理的な負担も少なくありません。瑕疵担保期間が終了するまでは、眠れない夜を過ごすことになるかも知れません。
かといって瑕疵担保期間を0日にしてしまうと、今度は買い手が付きづらくなってしまいます。買い手を探すには価格を下げるのが有効ですが、それでは仲介手数料が発生しないメリットが薄れてしまいます。
加えて、個人売買の場合でも専門家の力を借りることは多々あります。例えば契約書の作成には弁護士や司法書士の協力を仰いだほうがスムーズにいきますが、それには費用がかかりますし、保険も有料です。
これらのことを考えると、仲介手数料は決して高い金額とはいえません。より安全に不動産を売却したいならば、仲介業者を利用することを強くおすすめします。
まとめ
- 個人売却をする場合は「買い手探し」「契約書作成」「トラブル対応」の3つが大切
- 個人売却の場合でも契約書作成には専門家の力を借りたほうが良い
- 瑕疵担保期間は双方の合意があれば自由に設定できるが、個人売買の場合は3ヶ月程度にすることが多い
- 仲介手数料は決して高い金額とは言えず、時間を節約したいならば有効
個人売却はリスクが高く、誰にでも勧められる方法ではありません。リスクを受け入れてでも仲介手数料を節約したいという方のみが、挑むようにしてください。