世の中のお金の流れや仕組みを学べば、お金のことで苦しむ機会が減ります。というわけで、今日は趣向を変えてちょっと経済の勉強をかじってみたいと思います。
といっても、特に難しい話はしません。簡単な計算さえできれば、誰でも理解できます。いい頭の体操にもなりますので、しばらくの間お付き合いください。
目次
デフレとインフレの違いは「物価が下がるか上がるか」
「日本経済は長らく停滞し、デフレが蔓延している……」なんて感じに語るとちょっと経済に詳しい人という雰囲気を出すことができますね。ところで、このデフレってなんなんでしょうか。デフレとは簡単に言えば、物価が下がってお金の価値が上がることです。
たとえば、今の物価が突然100分の1になったとします。5000万円だった家が50万円になり、50万円だった給料が5000円になる、とイメージしてください。
物価が下がれば当然現金の価値が上がります。金融資産の額は変わらなくても、実質的には金融資産が増えた(買えるものが増えた)ことになります。逆に、不動産などの金融資産以外の価値は下がります。
デフレのメリットは物価が下がることです。また、通貨の価値が上がるので、輸入が有利になります。しかし、物価が下がれば当然企業の収益も減ってしまいます。企業の収益が減れば労働者の収入が減ります。
給料が下がっても物価が下がれば問題ないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、デフレが深刻化すると、最悪の場合、リストラが常態化することもあり得ます。この状態を放置しておくと経済規模はどんどん縮んでいき、日本全体の景気が冷え込んでしまいます。
一方、インフレとはデフレの逆で、物価が下がってお金の価値が上がることです。たとえば、突然物価が今の100倍になったとします。100円だった卵が1万円になり、50万円だった給料が5000万円になる、とイメージしてください。
物価が上がれば当然現金の価値が下がります。金融資産の額は変わらなくても、実質的には金融資産が減った(買えるものが減った)ことになります。逆に、不動産などの金融資産以外の価値は上がります。
インフレのメリットは少なくとも名目上の給料が増えるので人々がお金をよく使うことになり、好景気になることです。景気が良くなれば株価も上昇し、投資に対する意欲も高まります。
反面、今までにため込んできた金融資産の価値は下がってしまいます。毎月決まった額面を受け取っている年金生活者には大きな打撃となります。
また、インフレは物価と給料を両方押し上げる効果がありますが、物価の方がより上昇率が高い場合、実質的には収入が減ってしまったことになります。また、いき過ぎたインフレはハイパーインフレや格差の拡大にもつながります。
日本がデフレになった理由は一つではない?
経済学は非常にあやふやな学問であり、正しい答えが導き出せないものですが(もし経済学に明確な答えがあるならば、貧困で困る人はもっと少ないでしょう)、一般的には日本のデフレの理由は円高やサービス業の賃金の低下、需要不足などにあるといわれています。
円が高くなれば景気は抑制されるので消費が減り、物価が下がります。賃金が低下すれば消費が減り、物価が下がります。需要が不足すれば当然、物価が下がります。
実際にはもっと複雑な事情が絡み合っているのでしょうが、ともかく日本経済が長いことデフレ続きであることはほぼ間違いありません。
理想の経済状態は「緩やかなインフレ」
デフレもインフレもあまり極端に生き過ぎるとよくありません。人間は急激な経済事情の変化に耐えられません。適切な経済状態については諸説ありますが、一般的には「緩やかなインフレ」が最も望ましいとされています。
緩やかなインフレでゆっくりと景気を向上させて、少しずつ物価も給料も上げていくというのが理想である、と言われています。
ここでいう緩やかなインフレとは、毎年のインフレ率が2~3%程度の状態をいいます。仮にインフレ率2.5%が30年続いた場合、物価は約2.1倍になります。
ちなみに、インフレには実質的な借金を少なくする効果もあります。たとえば、毎月の給料が100万円の時に、1億円を借りてマンションを買ったとします。仮に給料の全額を返済に充てるとしても、完済には100か月=8年4か月かかります。
しかし、買った次の瞬間にインフレが起き、物価も給料も100倍になったらどうなるでしょうか。毎月の給料は1億円になるため、わずか1か月の給料だけで借金を完済できます。
もちろん、現実にはこのようなことはまず起こらないでしょうが、緩やかなインフレは借金の返済を楽にする効果があることは覚えておいたほうがいいでしょう。
ただし、変動金利は景気の動向によって金利が変わります。より安全に着たいのならば、固定金利を選んだほうがいいでしょう。
ゼロ金利政策は「行き過ぎたデフレをインフレに転換させるための政策」
今までの日本は長期的にデフレだったこと、理想的な状態は緩やかなインフレであること。この二つが真実だった場合、日本は当然デフレを緩やかなインフレに切り替えるための努力をしなければなりません。
こうした努力は大きく「財政政策」と「金融政策」に分けることができます。
財政政策は政府が主体となって行う政策で、「お金を得やすく(もしくは得にくく)」する政策です。たとえばデフレ時には政府は財政支出を行い公共事業を増やします。そうすれば当然雇用は生まれ、人々はお金を得やすくなります。
みんなが稼げるようになれば消費が増え、店は儲かり、給料も上がり……という循環が生まれ、デフレから脱却することができます。インフレが行きすぎそうなときはこれとは逆の政策を行って抑制します。
一方、金融政策は日本銀行が行う政策で「お金を借りやすく(もしくは借りにくく)」する政策です。ゼロ金利政策もその一環です。
ゼロ金利政策とは簡単に言えば、短期金利=政策金利(コール市場で、借りた翌日に返す際にかかる翌日物金利)を実質的に0にまで下げて、デフレを抑制してインフレへの転換を目指す政策のことです。インフレが過熱しそうなときは利上げを行って抑制します。
金利を下げれば当然、みんながお金を借りやすくなります。みんながお金を借りるようになれば雇用が生まれ、消費が生まれ、物価が上がり、給料が上がり、デフレは解消します。
以前の日本ならばここまで金利を下げる前に景気が回復しデフレから脱却できていたのですが、現在の日本は金利を0にまで下げてもなかなか景気が回復しませんでした。そこで新たに取られた政策が「量的緩和政策」です。
量的緩和政策も日本銀行の政策の一つで、金融市場に大量に資金を投下することによってデフレを抑制し、インフレへの転換を目指す政策です。
日本銀行が大量に資金を投下すれば、民間企業にお金が十分にいきわたります。そうなれば当然雇用が生まれ、消費が生まれ、物価が上がり、給料が上がり、デフレは解消します。
日本では2001年から2006年まで量的緩和が行われていました。また、アメリカでは2014年まで量的緩和が行われていました。
世界の政策金利
政策金利は景気回復・加熱時には上昇し、そうでないときには低下する傾向があります。そのため、景気が好調な新興国では高く、経済的に成熟した先進国では低くなりやすいです。2015年12月時点での政策金利は以下のようになっています。
国名 | 政策金利 |
日本 | 0.10 |
米国 | 0.50 |
カナダ | 0.50 |
南アフリカ | 6.25 |
中国 | 4.35 |
メキシコ | 3.25 |
スウェーデン | -0.35 |
EU | 0.50 |
ここで注目すべきはスウェーデンの-0.35%です。ゼロ金利政策を行ってもなお景気が十分に過熱しないため、ついに金利がマイナスになってしまったのです。
となると当然預金者としては預け損になりますが、それでもなお安全のために中央銀行にお金を預ける金融機関は少なくないようです。
経済を学べば債務整理から遠ざかる
経済について学ぶことは決して無駄なことではありません。学んで理論武装すれば、それだけ債務整理から遠ざかることができます。知識のない人間が騙されるのは世の常であり、そのことに対して他人は責任を取ってはくれません。
自ら学ぶ姿勢を持ち続けて、お金にコントロールされず、お金をコントロールする人生を目指しましょう。