就活で国家公務員を目指すメリット・デメリットと試験の仕組み

景気変動の影響を受けづらく、安定した身分保障があることが魅力の国家公務員。ですが国家公務員になることにはもちろんメリットだけではなくデメリットもあり、そのあたりを考えないで就職すると後々後悔することになります。

今回は民間企業や地方公務員ではなく国家公務員として就職することのメリット・デメリットと、公務員試験の仕組みについて解説いたします。

国家公務員と地方公務員の違い

公務員は大きく、国家公務員と地方公務員に分けられます。

国家公務員とは

国家公務員は中央省庁やその外局、国会、裁判所などの国家機関に勤務する公務員です。国家の運営に携わるスケールの大きな仕事、例えば政策立案や予算編成、法令整備など、国家の運営に携われるのが大きな特徴です。

国家公務員はさらに、国会議員、内閣総理大臣、国務大臣、防衛省職員、裁判官、裁判所職員などの「特別職」と、それ以外、ほとんどの省庁やその出先機関などに務める「一般職」に分けられます。現在、日本には約58万人の国家公務員が存在しています。

地方公務員とは

地方公務員は都道府県や市町村を始めとする自治体、あるいはその他地方公共団体に勤務する公務員です。

国家公務員と比べると仕事のスケールは小さいですが、地元住民の意見を直接吸い上げてそれを形にするという地域密着型の仕事ができることが大きな特徴です。現在、日本には約273万人の公務員が存在しています。

国の出先機関と地方自治体の違い

出先機関とは、国や中央官庁などが地方に設置する機関です。民間企業で言えば中央省庁が本社、出先機関が支店と考えるとわかりやすいです。企画立案は中央省庁で行い、その企画を実現、あるいは監視するのが出先機関の役割です。住所的には東京から遠くはなれていても、あくまでも国の機関ですから、そこで働く人は国家公務員です。

省庁ごとに出先機関の種類や数は異なります。国税庁の場合は国税庁や税務署などが出先機関に当たりますし、厚生労働省の場合は労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)が出先機関に該当します。

一方、地方自治体は国の中にあり、ある程度の自治権を行使できる立場にある団体です。地方自治体にも色々あるのですが、その中でも代表的なものは都道府県と市区町村です。地方自治体で働く公務員は地方公務員です。

国家公務員のキャリアとノンキャリアとは?

国家公務員として働く上で必ず知って置かなければならないのが、キャリア・ノンキャリアという区分です。

法律などで明確に区分されているわけではありませんが、キャリアとは「国家公務員総合職の採用試験」で採用された人、ノンキャリアとは「国家公務員一般職の採用試験」で採用された人と思っていただければ概ね間違いないでしょう。

国家公務員の試験は大きく

  • 国家総合職(大卒程度試験)・国家総合職(院卒者試験)
  • 国家一般職(大卒程度試験)
  • 国家一般職(高卒者試験)

一番上がキャリア、それ以外がノンキャリアになるための試験です。

キャリアとノンキャリアの一番の違いは出世スピードです。ノンキャリアの場合、どんなに出世しても本省の課長補佐程度で止まることが多く、定年までに課長まで出世すれば大出世としてそれなりに省庁内で話題になるはずです。

一方、キャリアの場合はほぼ横並びで課長まで昇進した後、事務次官を目指して出世争いをします。

出世争いに敗れた場合はいわゆる「天下り」をしたり、政治家に転身したり、あるいは天下りをせずとも民間企業に引き抜かれたりして辞めていきます。ある程度まで横並びで出世し、その後熾烈な出世争いをするのが、キャリア官僚の特徴です。

事務官と技官

国家公務員試験の試験区分には法律、行政、経済、土木、機械、農学などがあります。法律、行政、経済の区分に合格し採用されたものを事務官、それ以外の試験に合格し採用されたものを技官と言います。

事務官はゼネラリストとして広範な知識を持ち、予算や法律などの作成を行います。一方、技官はスペシャリストとして専門的な知識を持ち、それを活かす公務に当たります。

事務官と技官は本来どちらが上とか、どちらが下とかそういうことはないのですが、本省の事務次官になるのは殆どが事務官です。国土交通省などは例外的に技官が事務次官になることもあるのですが、逆に言えばそれ以外の殆どの省庁は事務官が事務次官になります。

予算や法律と行った根幹的なルールを掌握している立場人間は強いということですね。

キャリア官僚になるメリット

キャリア官僚になることによって得られる主なメリットは以下の3つです。

  • 国家の政策決定に関与できる
  • 事務次官まで出世できる可能性がある
  • 福利厚生が充実しており、立場が安定している

国家の政策決定に関与できる

キャリア官僚になる一番のメリットは、やはり国家の政策決定に関与できることでしょう。

入省2年目ぐらいまではキャリアもノンキャリアも似たような仕事を任されますが、3年目以降は次第に扱いに差が出てきます。キャリアは政策立案や国会質問への対応など、より中心的な業務に携われます。

これはノンキャリア官僚や地方公務員などにはない大きなメリットです。こうした重大な意思決定に携われるのを魅力だと思えるのならば、キャリア官僚は素晴らしい就職先と言えるでしょう。

事務次官まで出世できる可能性がある

前述の通り、キャリア官僚とノンキャリア官僚では出世できる上限に大きな差があります。国家公務員のトップである事務次官まで出世できる可能性があるのはキャリア官僚のみです。ただし、事務次官になれるのは同期で1名だけなので、出世争いは非常に苛烈です。

なお、事務次官はあくまでも国家公務員のトップであり、省庁のトップではありません。組織図だけ見れば大臣や副大臣、大臣政務官などの方が上、事務次官はその指示の下に動く存在です。

しかし、大臣、副大臣、大臣政務官はいずれも選挙で選ばれた政治家、あるいは民間人の中から選ばれます。選ばれただけの彼らの知識・能力・経験は、ずっと省庁で勤務してきた事務次官に遥かに劣ります。実質的には事務次官が上位の政治家をコントロールする、ということも多いです。

福利厚生が充実しており、立場が安定している

国家公務員の福利厚生は非常に充実しています。実は給料だけ見るとそれほどでもないのですが、住宅手当や扶養手当、通勤手当などが非常に充実しています。

また、寒冷地で働くと寒冷地手当が出たり、長い距離の異動が行われると広域異動手当が出たりします。

育児休暇も取りやすく、年功序列で給料が上がっていくため安心して働けます。犯罪に手を染めない限りクビになることも殆どありません。社会的にも信頼される職業であり、住宅ローンなどの審査でも有利になります。

キャリア官僚になるデメリット

キャリア官僚になる主なデメリットは以下の4つです。

  • 給料自体は同程度の学歴の民間企業就職者よりもかなり低い
  • 仕事がきつい
  • 転勤の回数や範囲が多い
  • 高学歴でないと事実上なれない

給料自体は同程度の学歴の民間企業就職者よりもかなり低い

キャリア官僚は高給取り、というイメージをお持ちの方も少なくないかと思います。確かにキャリア官僚自体の給料が悪いわけではないのですが、彼らと同程度の学歴を持つ民間企業就職者と比べると給料水準はかなり低いです。

かなりの難関試験である国家公務員特別職の採用試験に合格できるくらいの能力があるのならば、(安定性などを無視すれば)民間に行ったほうが生涯賃金は高くなりやすいです。

仕事がきつい

キャリア官僚は仕事をしない、というイメージを漠然とお持ちの方もいらっしゃることかと思いますが、それは大いなる誤解です。むしろキャリア官僚はかなりの激務です。特に国会の会期中、予算案通過待ちのときなどは家に帰るヒマすらないほど忙しいです。

激務のあまり精神的に追い詰められて、精神をやんだり退職したりする人も少なくありません。にも関わらずメディアには悪者扱いされることが多く、何かと報われない職業でもあります。

異動・転勤の回数や範囲が多い

国家公務員は日本全国が異動・転勤の範囲となるうえ、その範囲も非常に広いです。

また、国家公務員は転勤命令に服する義務があり、異動を拒否した場合は昇進が遅れたり、処分の対象になったりします。転勤場所を選ぶこともできません。そのため家庭を持ちづらいです。

学歴が高くないと事実上なれない

国家公務員総合別職の採用試験のうち、大卒程度の方は学歴要件がありません(院卒者試験は大学院を卒業している必要があります)。年齢さえ満たしていれば、受けること自体は誰でもできるのです。

しかし、受けられることと合格することは全くの別物です。実際に大卒程度試験を大卒でないものが合格し、採用されるのは極めて困難、と言うか事実上不可能です。それどころか、並程度の大学でもまず無理でしょう。実際に採用されているのはほとんどが東大卒です。

ノンキャリア官僚になるメリット

ノンキャリア官僚になる主なメリットは以下の3つです。

  • キャリア官僚と比べれば転勤の範囲が狭く、回数も少ない
  • 定年まで勤め上げやすい
  • キャリア同様に立場や福利厚生は安定している

キャリア官僚と比べれば転勤の範囲が狭く、回数も少ない

ノンキャリア官僚の一番のメリットは、転勤の範囲や回数が限られていることです。キャリア環境ともなれば若いうちは日本全国を飛び回ることになるケースが非常に多いですが、ノンキャリア官僚の場合は同じところで働きやすいです。

とは言えあくまでも比較の話であり、転勤をより確実に避けたいのならば地方公務員のほうがおすすめです。

定年まで勤め上げやすい

キャリア官僚は40歳までは横並びに昇進した後は否応なしに出世レースの海に放り込まれ、それに負けたものはたとえ残りたくても辞めざるを得ない状況になりますが、ノンキャリア官僚の場合は出世できずとも定年まで勤め上げられることが多いです。

キャリア同様に立場や福利厚生は安定している

ノンキャリア官僚の待遇はキャリア官僚のそれと比べるとよくありませんが、それでも民間企業よりは良いです。

給料水準はそれほどでもなくても、いろいろな手当がつくのが国家公務員の良いところです。

ノンキャリア官僚になるデメリット

ノンキャリア官僚になる主なデメリットは以下の3つです。

  • 本省の課長まで出世することはほぼ不可能
  • キャリア官僚ほどではないが激務なことも多い
  • やはりある程度の学歴は必要

本省の課長まで出世することはほぼ不可能

前述の通り、ノンキャリアは最初から出世の道が閉ざされています。本省課長補佐ならば十分、本省課長まで昇進すれば異例と言われるほどです。

ただ、逆に言えば最初から出世レースを強要されることもないため、そこまでの野心がない人にとってはむしろプラスであるともいえます。

キャリア官僚ほどではないが激務なことも多い

ノンキャリア官僚もキャリア官僚ほどではありませんが激務なことも多いです。特に本省勤務の場合はその傾向が顕著です。忙しい時期はキャリア官僚のそれに準じます。

やはりある程度の学歴は必要

ノンキャリア官僚でも、ある程度の学歴は必要です。キャリア官僚のように東大以外は難しいというようなことはありませんが、大卒程度試験を高卒者が合格し、採用されるのはほぼ不可能と考えたほうがいいでしょう。

省庁の仕組みと役割

日本では、行政権は内閣に属します。内閣は内閣総理大臣、国務大臣から成り立っており、各国務大臣は省庁の最高責任者となります。

例えば外務大臣は外務省の最高責任者ですし、国土交通大臣は国土交通省の最高責任者です。実質的にはともかく、形式的には国務大臣が官僚の上に立ちます。

庁や委員会は形式上は府や省の下部組織だが、実質は同程度の地位を持つ

庁や委員会は特殊な事務、独立性の強い業務などを行うための機関のことです。形式上は府や省の下部組織に当たる機関ですが、実質的には府や省と同程度の地位があります。庁や委員会のような存在は「外局」といいます。

中央省庁の種類

中央省庁とだけ書いてある場合、通常は以下の1府11省1庁を差すことが多いです。

  • 内閣府
  • 総務省
  • 法務省
  • 外務省
  • 財務省
  • 文部科学省
  • 厚生労働省
  • 農林水産省
  • 経済産業省
  • 国土交通省
  • 環境省
  • 国家公安委員会
  • 防衛省

国家公安委員会は省でも庁でもない内閣府の外局ですが、警察庁を管理するという極めて重大な役割を担っているために中央省庁に含めることが多いです。また、この場合国家公安委員会は庁として扱われます。

府および省、国家公安委員会の最高責任者には国務大臣が当てられます。国家公安委員会のように、国務大臣が最高責任者の委員会を大臣委員会と言います。

内閣府

内閣府は、内閣総理大臣をサポートするための機関です。最高責任者は内閣総理大臣です。主に1省庁では対応しきれない案件を担当し、各省の連絡調整を行いながら内閣の戦略を立案・実現していきます。内閣総理大臣が最高責任者であることからもわかるように、立場上は他の省庁と比べて上位にあります。

外局には公正取引委員会、金融庁、国家公安委員会などがあります。

総務省

総務省は極めて幅広い仕事を受け持つ機関です。最高責任者は総務大臣です。仕事をあげると霧がありませんが、その中でも特に大きいのは行政評価です。

各省庁の仕事を評価し、問題があれば改善を促します。その他にも公務員制度の整備、放送事業の政策立案などを行います。

現在総務省が推進する取り組みの一つに地方分権があります。地方分権は現在地方が持っている権限や財源一部を自治体に譲渡することによって、各自治体が行える行政の自由度を高める取り組みです。

道州制などの議論も少しずつ行われるようになってきていますが、各自治体の自由度が高まることにより都市部と山間部の格差が広がるという懸念もあります。

外局には公害等調整委員会、消防庁などがあります。

法務省

法務省は日本の様々な法律を管理・改善するための機関です。最高責任者は法務大臣です。法律を実際に制定する場所は国会ですが、現実的には法務省のサポートなくして法律の制定はできません。その他にも刑務所や少年院などの管理、日本司法センター(法テラス)の運営などを行っています。

比較的身近なところでは、戸籍の管理や法人の登記、DVや児童虐待などの防止にも取り組んでいます。2002年からは裁判員制度も始まりましたが、素人を裁判に参加させることに対する批判も少なくありません。

外局には公安調査庁と公安審査委員会があります。

外務省

外務省は日本の外交を担う機関です。最高責任者は外務大臣です。職員数は約5700人ほどで、その内約6割が海外の在外公館で働いています。在外公館とは大使館、領事館などのことです。

主な仕事は日本が外交上で優位に立つための情報収集や連絡調整、発展途上国への援助などです(発展途上国への援助も外交上優位に立つための戦略の一つです)。

ちなみに、外務省は省庁の中では珍しく、事務次官が事実上のキャリア官僚の「あがり」とされません。出世頭は事務次官を担当したのち、アメリカを筆頭とする重要な国の駐在大使となります。

財務省

財務省は日本の財政を担う機関です。数ある省庁の中でもエリート中のエリートが集まる「最強の省庁」です。国家予算の割り振りや税制の作成が主な仕事です。各省庁の予算を決められるという立場はやはり強いです。

それ以外にも国債や日本銀行券などの発行、財政投融資、国有資産の管理などを行っています。

外局には国税庁があります。

文部科学省

文部科学省は日本の教育や科学振興、文化保全、スポーツ振興などを担う機関です。最高責任者は文部科学大臣です。その中でも特に大きなウェイトを占めているのが教育です。例えば小学校から高校で何を教えるかという「学習指導要領」を作成するのも文部科学省ですし、大学の研究の支援なども行います。

近年は公立と私立の教育格差の拡大が問題となっており、そこを是正するのも文部科学省の役割です。

外局には文化庁があります。

厚生労働省

厚生労働省は医療や福祉などを担う機関です。最高責任者は厚生労働大臣です。健康保険制度や年金制度の維持管理・改善、失業者や学生などの就労支援、セーフティネットの整備などを手がけています。少子高齢化が進む現代日本においては、高度経済成長時代に作られた各種制度は限界との指摘もあり、ベーシックインカムの導入なども議論されています。

近年問題となりつつあるブラック企業の根絶も重要な役割ですが、一方で厚生労働省はブラック企業が多いとされる中小企業の求人をハローワークに掲載しなければならず、板挟みとなっているのが現状です。

農林水産省

農林水産省は日本の農業、畜産業、林業、水産業などのいわゆる第一次産業を支える機関です。最高責任者は農林水産大臣です。

これらの産業の振興、関係者の雇用状況や福祉の改善、食料の安定供給などが主な仕事です。その中でも特に重視されているのが食料自給率の改善です。現在、日本の食料自給率はカロリーベースで約40%と先進国の中ではかなり低く、改善が急務とされています。

外局には林野庁、水産庁があります。

経済産業省

経済産業省は産業の振興と経済の発展を担う機関です。最高責任者は経済産業大臣です。日本の主力産業である石油、電力、自動車、鉄鋼などを担当しています。

状況に応じて産業を育てるための規制強化を行ったり、新規企業の参入を促し雇用を確保するための規制緩和を行ったりします。

近年、経済産業省が力を入れているのが知的財産ビジネスです。映画やアニメ、楽曲などを販売したり、貸与したりすることによって稼ぐこのビジネスは、製造業に取って代わる新ビジネスとして期待されています。

外局には資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁があります。

国土交通省

国土交通省は日本のインフラを整備し、領土を守る機関です。最高責任者は国土交通大臣です。道路や学校、橋などの整備の他に、国土の測量や気象観測、会場警備なども行います。現在のもっぱらの急務は東日本大震災からの復興と、新たに発生するであろう災害に対する対策です。

外局には海上保安庁、観光庁、気象庁、運輸安全委員会があります。

環境省

環境省は日本、あるいは世界の環境を保護・保全するための機関です。最高責任者は環境大臣です。

土壌汚染や水質汚染といった比較的ローカルな問題から、地球温暖化など世界レベルの問題にまで対処します。2001年の中央省庁再編で丁から省に格上げされた機関の一つで、これによって名目上は他の省と同じ立場になりました。

外局には原子力規制委員会があります。

国家公安委員会

国家公安委員会は、内閣府の外局であり、警察庁を管理する委員会です。最高責任者は国家公安委員会委員長です。警察庁という極めて大きな力を持つ組織を管理し、警察の民主的運営と政治的中立性を確保する役割があります。

防衛省

防衛省は外国からの侵略や災害などから国民と領土を守るための機関です。最高責任者は防衛大臣です。

2007年に庁から省に格上げされた機関で、これにより権限が強化され、内閣府の外局でなくなることにより指揮命令系統も簡略化されました。

防衛省の職員は実は防衛大臣を覗いて全員が「自衛隊員」です。自衛隊員はさらに実働を担う「制服組」と、事務を担う「背広組」に分けられます。自衛隊のトップは統合幕僚長で、そのしたに陸海空の幕僚長が存在します。幕僚長は防衛大臣の補佐を行います。

省庁間の格差問題について

この13の省庁は互いに完全に対等というわけではありません。形式上も内閣府は上位に位置していますし、実質的な権力の強さもまちまちです。

人によって序列の感じ方に差はあるかと思いますが、大まかに分けると以下のような感じです。

  • 最強省庁:財務省
  • 上位省庁:内閣府、外務省、経済産業省、国家公安委員会(警察庁)
  • 中位省庁:総務省、国土交通省、防衛省
  • 下位省庁:文部科学省、厚生労働省、農林水産省、法務省
  • 最下位省庁:環境省

文句なしに最強の省庁・財務省

各省庁の中でも最上位と呼び声高いのが財務省です。財務省は他の省庁の予算を決める立場にあります。どの省庁も予算がなければ仕事ができません。

すべての省庁の生殺与奪を財務省が握っていると言っても過言ではありません。就職先としての人気も非常に高いのですが、それゆえにエリート中のエリート以外は門前払いされることが珍しくありません。

二番手闘いを繰り広げる上位省庁

二番手争いは熾烈ですが、この争いに参加できているのは内閣府外務省経済産業省国家公安委員会(警察庁)の4つです。

内閣府は形式上トップであるため、序列も高いです。担当している仕事も幅広く、省庁を横断するような業務も多いことから、設立直後から仕事が集中し、それにより人やお金も集まってきています。

外務省は日本の外交という重要なポストを握っているためかなり上位に位置します。

経済産業省は大企業との関係性が強いため、最強の省庁である財務省が最も気にかける存在です。お金との関連が強い省庁はやはり強いです。

国家公安委員会は警察、ひいては司法がバックにあるため組織としての力は強大です。

侮れない中堅省庁

上位省庁ほどではないものの一定の存在感があるのが、総務省国土交通省防衛省の3つです。

総務省は中央省庁再編直後は数十万人の職員がいる超大所帯で上位省庁だったのですが、最近は民営化や地方分権の進展によって相対的に力が弱まりました。

とは言え依然として多くの分野に広く携わっており、軽んじられる存在ではありません。

国土交通省は公共事業が無駄遣い扱いされる風潮に伴い権力がかなり弱まりましたが、最近はインフラの老朽化が問題となっていることから立場が良化しつつあります。

防衛省はかつては重要な割に評価が低かったのですが、東日本大震災の活動などで評価を上げ、それに伴い立場も強くなりました。

肩身が狭い下位省庁

現在の省庁の中ではかなり弱い立場にあるのが、文部科学省厚生労働省農林水産省法務省の4つです。文部科学省は現場を仕切る日教組の声が強く、文部科学省の意見はあまり通りません。

厚生労働省は国民の生活に深く関連している省庁ですが、厚生労働省が仕事をすると国家財政が悪化する(社会保障費が膨らみ、企業活動にも影響が出る)ため、他省との関係があまり良くありません。

農林水産省は非効率な国内の農林水産漁業自体が軽んじられていることから、軽視されがちです。

法務省は法律を司るという点では重要にも見えますが、実際の法案は各省庁から出されるものであり、実際に法案が成立するのは法務省ではなく国会であるため、意外とその立場は弱いです。

最弱省庁・環境省

財務省と対極に位置する最弱省庁が環境省です。何しろ極めて予算が貧弱であり、予算がないので優秀な人材も集まらずいい仕事もできず、それが更に人離れを生むという負のスパイラルに陥っています。

産業の発展を担当する上位省庁である経済産業省とは対立することが多く、対立した場合にはより力のある経済産業省の意見が通ることが多いです。

国家公務員になるまでの道のり

国家公務員と一口に言っても様々な種類の仕事があります。前述の総合職、一般職の他、専門職や経験者採用といった選択肢もあります。試験ごとにスケジュールや試験内容はまちまちですが、大まかにいえば

  • 人事院試験(筆記試験・面接試験)
  • 官庁訪問(面接試験)
  • 採用

という流れになっています。

合格と採用の違い

人事院試験はその名の通り人事院が行う試験で、筆記試験もしくは面接試験です。人事院試験で好成績を納めれば「合格」となりますが、合格しただけでは内定は得られません。

合格した際にもらえるのは内定そのものではなく、各省庁に官庁訪問を行う権利だけです。人事院試験に合格した受験者は各省庁に官庁訪問を行って「採用」されなければなりません。

人事院試験の内容と対策(総合職)

総合職の人事院試験は

  • 一次試験(筆記試験)
  • 二次試験(筆記試験・面接)

から成り立っています。一次試験はマークシート試験で、教養試験と専門試験で、それぞれ足切りポイントが定められています。試験範囲は広く浅い傾向があるので、苦手分野も含めて様々な範囲について勉強しなければなりません。

二次試験は筆記試験と面接です。特に重要で、なおかつ難易度が高いのは筆記試験です。難易度的には全公務員試験の中でも最上級に位置すると言われています。

内容はたくさんある大門のうちから3つを選択する記述式試験です。大問ごとに傾向があるため、あらかじめ試験で選ぶ物を決めておいたほうがいいでしょう。

面接試験は比較的比重が小さく、よほど問題がない限りは弾かれることはないでしょう。院卒者試験の場合は面接ではなくグループによる政策討論がなされます。こちらは比較的点数配分が高いのでそれなりの対策が必要です。

人事院試験の内容と対策(一般職)

総合職の人事院試験は

  • 一次試験(筆記試験)
  • 二次試験(面接)

から成り立っています。

一般試験は基礎能力や専門分野の知識を見るもので、マークシートと論述から成り立っています。二次試験は人物試験という名称がついていますが要する面接で、人柄や対人能力が審査の対象となります。

官庁訪問の内容と対策(総合職)

めでたく人事院試験に合格したら、官庁訪問を行えるようになります。官庁訪問は総合職・一般職ともに本省を訪問することができます。総合職受験者は本省に訪問することがほとんどですが、一般職の場合は地方の出先機関を訪問することが多いです。

どの省庁を回るかは受験者の自由ですが、基本的には官庁訪問が解禁された直後に行くほうが熱意をアピールできます。

また、官庁訪問にはかなりの時間等労力がかかるので、あまりむやみに訪問する省庁を増やすのもよくありません。どんなに多くても3省までにとどめておいたほうが安全です。

官庁訪問の内容は省庁によって異なりますが、基本は面接です。面接の形式は個人だったり集団だったりまちまちですが、回数はかなり多いです。

地方公務員だと面接の回数が1回、2回ということも珍しくありませんが、国家公務員では4回、5回ということも珍しくありません。

官庁によってはグループディスカッションが行われたり、官庁で働いている職員への質問タイムが取られたりします。自分が死亡する省庁ではどのような選考が行われているについて、情報を事前に収集しておくといいでしょう。

官庁訪問の内容と対策(一般職)

基本的な仕組みは総合職のそれと代わりありませんが、一つ注意点が有ります。

総合職の場合は人事院試験合格者が発表された後に官庁訪問が解禁されるのに対して、一般職の場合は最終合格者が発表されないまま官庁訪問が解禁されるという点についてです。

つまり、一般職受験者は、自分が人事院試験に通っているかどうかわからないまま官庁訪問をすることになり、場合によっては官庁訪問に通ったのに人事院試験に落ちることもあり得るわけです。

当然、官庁訪問にとっても、人事院試験に落ちれば採用はされません。

経験者採用試験について

経験者採用試験は民間企業などでの実務経験がある人を対象とした試験です。調査研究や企画立案などの事務を担当する係長級(事務)と、それ以外の職務を行うものとで区分されています。

まとめ

  • 国家公務員は国の中央省庁、外局、出先機関などで働く公務員
  • 国家公務員にはキャリアとノンキャリアがいる
  • 国家公務員のトップである事務次官を目指せるのは事実上キャリアのみ
  • ほとんどの省庁では事務官が事務次官になる
  • 国家公務員は安定していて福利厚生も充実しているが、意外と激務で転勤も多い
  • 国家公務員になるには人事院試験に合格した上で、各省庁の官庁訪問を行う必要がある
  • 人事院試験に合格しても、官庁訪問で採用されないと内定は得られない

国家公務員は色々と大変な仕事ではありますが、一方で福利厚生が充実しており、立場も安定しているなどメリットも少なくありません。公務員への就職を考えている方は、地方のみならず国家公務員についても視野に入れておくといいでしょう。