警視庁遺失物センターがまとめたところによりますと、東京都内で1年間に落とし物として届けられた現金の総額は約33億4000万円にも登るのだとか。これはあくまで届けられたお金だけを対象にしているので、実際にはもっと多くの金額が落とされていることになります。
落とした人は当然即座に警察に相談するべきですが、それを拾った人が取るべき適切な行動というのは意外と知られていません。そこで今回は、お金を拾ったときに取るべき正しい行動を解説したいと思います。
目次
お金を拾わなければいけない義務はない
当たり前の話ですが、路上にお金が落ちていたからと言って、それを必ず拾わなければいけない義務はありません。実際、落ちているお金が少額だと拾わない人も多いです。
少額のお金を拾ってそれを警察に届けてもそれほどメリットはありませんし、落とし主も対して困ってないことが多いでしょうから、面倒な場合は無視しても全く構いません。
しかし、落ちているお金がかなりの金額だと、やはり多くの人は拾うようです。そして拾ったお金をどうするかで、色々と葛藤するようです。
拾ったお金をネコババすると横領罪になる
もし拾ったお金を誰にも届け出ずに自分のものにしてしまった場合、遺失物横領罪に問われることがあります。刑法254条には、落とし物を勝手に自分のものにした場合、1年以下の懲役、もしくは10万円以内の罰金が課されると定められています。
つまり、落ちているお金をネコババするのは犯罪だということです。
現実的には10円や100円を拾って自分のものにしても罪に問われることは少ない、というかそもそも誰も気づかないことが大半だと思いますが、少額のお金をリスクを犯してまで手に入れる必要性はありません。当たり前の話ですが、お金を拾ったら必ず届けるべきです。
なお、話はちょっとずれますが、例えば自動販売機の釣り銭口に他人が残していってお金を自分のものにしたり、コンビニでもらったお釣りが多かったにも関わらず黙っていた場合なども厳密には横領になります。
自分のものではないお金を意図的に自分のものにしてはいけない、というわけですね。
なお、最近は偽札を作ってわざと路上に落としておき、それを使った人が捕まらないか(偽札が偽札であるとバレないか)を確認するような犯罪グループもいます。
偽札だと気づかずに使用した場合、犯罪の片棒を担がされる可能性もあります。やはり拾ったお金は自分で使わないようが良さげです。
届出先は必ず警察、というわけではない
では、拾ったお金はどこに届ければいいのでしょうか。基本的には警察に届けるべきですが、駅やスーパー、ショッピングモールなどの施設内で拾った場合は、その施設を管理しているところへ届ければ大丈夫です。
駅の場合は駅員、スーパーやショッピングモールの場合や店員に預けてしまえばいいでしょう。
それ以外の場所、例えば公園や路上などで拾った場合は、警察に届けることになります。
なお、届け出には期間があります。施設内で拾った場合は24時間以内に、路上などで拾った場合は1週間以内に届け出なければなりません。この期間を過ぎてしまった場合、たとえ悪意がなかったとしても横領罪が成立してしまいます。
届け出の際には身分証明書が必要
警察に落とし物を届ける際には、身分証明書が必要となります。届出に係る時間は、短ければ5分ぐらいで済みます。届け出をした際には「拾得物件預り書」という書類がもらえます。これは後々必要になりますので、必ず保管しておきましょう。
届け出ると落とし主からお礼がもらえる?
落ちていたお金を施設や警察に届け、落とし主が見つかった場合、警察から連絡が来ます。届け出の際に落とし主からお礼をもらうことを放棄すると宣言していない場合は、落とし主からお礼をもらうことができます。このお礼のお金を「報労金」と言います。
報労金は拾った金額の5~20%の範囲で、落とし主と拾った人が話し合って決めます(警察は関与しません)。施設内で拾った場合は、拾った人と施設の管理者で報労金を折半します。
また、落とし物を届けたときに要した費用(拾った場所から電車に乗って警察署に行った際の電車賃など)がある場合は、それも合わせて落とし主に請求することができます。
なお、これらのお金を請求する権利は、落とし主に返還されてから1箇月が経過した時点て消滅してしまいます。しっかりとお礼をもらいたい場合は、それまでにきちんと請求しましょう。
落とし主が3ヶ月間現れなかった場合は、その時点で拾った人に所有権が移ります。つまり、落ちていたお金は全額拾った人のものとなるわけです。
ただし、所有権を得てから2ヶ月以内に引き取りをしなかった場合は、権利が喪失します。お金を拾った場合は落とし主が現れないことも考慮して、警察に届けた日を記録しておいたほうがいいかもしれません。
なお、お金を保管するのにかかった費用がある場合は、その費用を所有権を取得して引き取る人(落とし主が見つかった場合は落とし主、見つからなかった場合は拾った人)が負担することになります。
権利はすべて放棄できる
なお、ここまで提示してきた権利はあくまでも権利ですので、必ず行使しないといけないわけではありません。
落とし主から報酬をもらわないことも可能ですし、落とし主が見つからなかった場合にそのお金をもらわないことも可能です。その場合、お金は都道府県のものとなります。
現金以外の落とし物を見つけた場合
では、落とし物が現金ではなく物、例えばスマートフォンや定期券などの場合はどうなるのでしょうか。この場合も、基本的には落としたものの5%~20%の報労金がもらえます。
例えばそのスマートフォンの実勢価格が3万円だった場合、報奨金は1500円~6000円となります。定期券の場合はいま定期を払い戻しをした金額の5~20%の報奨金がもらえます。
なお、クレジットカードやキャッシュカードの場合は、基本的にお礼は発生しません。。クレジットカードやキャッシュカード自体には価値がないからです。もちろん、だからと言って猫ばばしていいわけではありません。
多くのクレジットカード会社は、他人のクレジットカードを拾ったことを連絡した場合、謝礼がもらえるシステムを採用しています。正直に届け出ればきちんとお礼がもらえるわけです。
謝礼の内容はクレジットカード会社によってまちまちで、現金でもらえることもあれば、ギフトカードでもらえることもあります。金額は高いとことならば1万円くらいです。
クレジットカード会社としても、不正利用されるよりは謝礼の1万円を払ったほうが得ですし、拾った人も得をします。必ず届け出ましょう。
逆にお金を落とした場合はどうする?
なお、お金を拾ったのではなく、落とした場合は速やかに警察に相談し、遺失届を提出しましょう。遺失届は交番、警察署などでもらえます。
警察に届けられた落とし物に関する情報は警察のホームページで閲覧することができます。また、落とした場所が駅、スーパー等の場合は、施設管理者に落とし物の取扱がないか確認しましょう。
なお、財布を落とした場合、一番気をつけなければならないのがカード類の悪用です。クレジットカードや通帳などを落とした場合は、すぐに発行元のクレジットカード会社や銀行に連絡して、利用の停止手続きを行って下さい。
落とし物を拾った場合はとにかく届け出よう
ここまで落とし物を拾った場合の対処法について説明してきましたが、基本はとにかく「落とし物を拾ったら届け出る」です。小学生でもわかっているようなことですが、これをしっかりと実践するのが大切なのです。