投資にチャレンジしてみたいけど、経験も知識もないから不安……という方は少なくないかと思います。
世の中にはたくさんの投資商品(金融商品)があり、リスク(不確実性)やリターン(平均利回り)は物によって違います。今回は投資初心者でも比較的手軽に取り組める、リスクが少なめの投資商品を幾つかご紹介したいと思います。
目次
投資を始める前に絶対に抑えておきたいこと
投資を始める前に知っておいて頂きたいことが幾つかあります。キチンと抑えておかないと市場で痛い目にあいかねない、極めて基本的な知識を幾つかまとめましたのでまずはこちらをご確認下さい。
投資は余裕資金で取り組む
投資は必ず余裕資金でやらなければなりません。余裕資金とは簡単に言えば、現在の生活費や将来必ず発生する教育費といった、絶対に必要なお金から独立した「失っても生きていけるお金」のことです。
余裕資金の範囲内で投資をすれば、最悪持っている投資商品が全て暴落してしまったとしても、借金を背負うことはありません。
万が一生活に必要な資金まで投資に突っ込みそれを失ってしまえば、自宅や自動車など大切な資産を失うことになります。それが原因で離婚、夜逃げ、一家離散などということになってしまっては大変です。投資は必ず余裕資金で取り組むようにしましょう。
投資における資本収益率は経済成長率を上回ることが多い
資本収益率とは資本を用いて得られる利益、ざっくり言えば投資によって得られる利益です。一方、経済成長率とは概ね労働によって得られる利益ということができます。
そして、自由市場経済の世界においては、通常資本収益率の方が経済成長率よりも高くなります。つまり、投資によって得られる利益のほうが、労働によって得られる利益よりも多いということです。
これは一時期日本でもてはやされた経済学者のトマ・ピケティが提唱した見解であり、彼はこれが格差の広がる原因だとしています。投資によって得られる利益のほうが大きければ、当然金持ちの投資家と貧しい労働者の格差は広がっていく、というわけですね。
しかし、仮に資本収益率よりも経済成長率のほうが高くなったら、つまり労働による利益のほうが大きくなったら投資をする人はだれもいなく鳴ってしまいます。
株式会社は株式を買ってもらえなければ資本金がなかなか増やせません。そもそも労働者は資本と違って資本金を出資するというリスクを負っていないのですから、その分得られる利益が少なくなるのは当然です。リスクが大きい投資ほどリターンも大きくなるのは世の常です。
現状に不平をいうよりは、自らも元手を溜めて投資をして投資家になることを私はおすすめします。幸い、今の世の中には身分制度はないので、本気で取り組めば誰でも投資中になれます――どの程度投資家として成功するかは別として。
投資は投機やギャンブルとは違う
投資と投機、ギャンブルはよく一緒に取り沙汰されることが多いものですが、実はこの3つには明確な違いがあります。参加者の総利益がプラスになるか、0になるか、マイナスになるか、と言うものです。
ゼロサムゲームとノンゼロサムゲーム
これについて理解するためには、まずゲーム理論の「ゼロサムゲーム」と「ノンゼロサムゲーム」という概念を理解する必要があります。ゼロサムゲームとは簡単に言えば、参加者全員の利益と損失を合計した時に0になるゲームです。
例えば、トランプの大富豪というゲームでは大富豪になると2点、富豪になると1点、平民になると0点、貧民になると-1点、大貧民になると-2点が与えられるというローカルルールがあります。
例えば6人で遊ぶ場合、大富豪が1人、富豪が1人、平民が2人、貧民が1人、大貧民が1人と割り当てられるため、総得点は2×1+1×1+0×2-1×1-1×2=0となります。つまり、ゲーム開始時と終了時で総得点が変わらないわけです。
その他、麻雀(オカなしの場合)などもゼロサムゲームの典型と言えます。
一方、ノンゼロサムゲームとは参加している人間の利益と損失を合計した時に0にならないゲームです。利益が損失を上回る場合はプラスサムゲーム、下回る場合はマイナスサムゲームと呼ばれます。
例えば人生ゲームはゲーム開始時と終了時で参加者全員の持ち金は変わるはずです(一致する場合もありますが極めてまれです)。そのため、人生ゲームはノンゼロサムゲームであるといえます。
投資はプラスサムゲーム、投機はゼロサムゲーム、ギャンブルはマイナスサムゲーム
一般的に投資はプラスサムゲームになります。ここでいう投資とは、長期間の株式投資や不動産投資、債券投資などのことをいいます。
例えば、東証1部上場企業の株式の時価総額を全部の銘柄で割ったTOPIXは、開始時(1968年4月1日)=100という基準値で計算されていますが、現在のTOPIXは1500程度です。
つまり、1968年と比べて株式の時価総額は15倍になったというわけですね。時価が大きくなっているのですから、株式投資はプラスサムゲームであるといえます。
一方、投機は原則ノンゼロサムゲームです。ここでいう投機とは、株式のデイトレードやFX(証拠金取引)などの短期的な取引のことです。例えばFXの場合、円安になれば買いから入っていた人は得をしますが、売りから入っていた人は損をします。
そしてその得と損、利益と損失の合計はほぼ0になるので、ゼロサムゲームと行っても差し支えないでしょう(正確に0になるわけではありませんが、ここでは無視します)。
そして、ギャンブルはマイナスサムゲームです。世の中にはパチンコ、競馬、競輪、宝くじ、スロット、ルーレットなど様々なギャンブルがありますが、そのいずれもマイナスサムゲームです。
例えば、パチンコの還元率は約75%と言われています。つまり、参加者は100円掛けると平均で75円もらえるわけです。残りの25円はどこに行ったのかといいますと主催者、つまりはパチンコ店の懐に入るわけです。
これだけを見ても、投資が投機やギャンブルと比べて優れていることがわかります。
最低限の知識だけは付けておこう
例えば、株式投資を始めるに当たって「株式」が何なのかわからないというのでは話になりません。
投資をするにあたっては、最低限知識を仕入れておくべきです。当サイトでも投資に関する情報を発信していますし(参考:初心者が投資先を決める指標を公開!まずは知ってる企業の株を変え、投資信託で安全にお金を運用する方法)、世の中にはたくさんの投資に関する本やウェブサイトがあります。色々と見比べて知識をつけていって下さい。
初心者に最もおすすめの投資は投資信託
さて、ここからはいよいよオススメの投資商品を紹介していきます。投資初心者に最もオススメの投資商品はズバリ投資信託です。
投資信託とは、複数の投資家が少しずつお金を出し合ってひとかたまりの大きな資金(ファンド)を作り、それをプロの投資家(ファンドマネージャー)が運用して、出た利益や損失を投資家が投資額に応じて分け合う仕組みのことです。
投資信託では高度な知識が求められない
投資信託は前述の通り、運用はファンドマネージャーが行うので、投資家には高度な知識が求められません。ファンドマネージャーはプロなので、素人よりも正しい判断をします。
投資信託は月数千円から始められる
投資信託の中でも最もメジャーな積立投資(毎月少しずつ資金を積み立てて投資信託を買っていく)は、月数千円から始められるため、投資経験が浅く資金も少ない人でも気軽に始められます。
投資信託では自由にポートフォリオが組める
ポートフォリオとは、金融商品の一覧、その組み合わせの内容などのことです。例えば株式が80%、債券が20%の場合、ポートフォリオは株式を中心に組まれている、ということができます。そして、投資信託ではこのポートフォリオを自由に組み合わせることができます。
投資信託で購入する商品を「ファンド」といいます(商品自体のことを「投資信託」ということもありますが、わかりづらいのでこの記事では以降ファンドで統一します)。
ファンドと一口に言っても様々で、証券会社によっては5000以上のファンドを取り扱っているところもあります。ここでは証券会社の中でも特に人気が高い楽天証券が取り扱っているファンドを一部紹介したいと思います。
- 三菱UFJ 米国債券インカムオープン:高格付の米ドル建ての公社債に投資します。
- 世界経済インデックスファンド:国内、先進国及び新興国の公社債及び株式(DR(預託証券を含む))に実質的に分散投資します。株式と債券の基本資産配分比率は、原則、株式50%、債券50%です。の基本組入比率は、地域別のGDP(国内総生産)を参考に決定します。
- ひふみプラス:国内外の上場株式に投資します。経済循環や経済構造の変化、経済の発展段階を総合的に勘案し、長期的に選別投資をします。
- ニッセイTOPIXインデックスファンド:国内の上場株式を主要投資対象とし、TOPIX(配当込み)の動きに連動する投資成果を目指します。
このように一口にファンドと言っても、海外の債券に投資するもの、国内の株式に投資するもの、国内外の株式と債券にバランスよく投資するものなど、投資先は様々です。
複数のファンドをポートフォリオに組み込むことによって、株式や債券、あるいはその他の金融資産の割合を容易に調整することができるのは、投資信託ならではの強みと言えます。
株式や貴金属など比較的リスクが高いファンド中心にポートフォリオを組めば、その分平均利回りも高くなります。
逆に債券や保険商品などの安全資産を中心にポートフォリオを組めば、元本割れの可能性が少なくなります。自身の実力に応じてポートフォリオを組んでみて下さい。
不動産投資は意外と初心者向け?
規模が大きいため上級者向けの投資と思われがちな不動産投資ですが、実は株式投資と比べるとリスクが少なく、意外と初心者向けの投資です。
不動産知識は複雑な経済の知識や投資法を知らなくてもできる
株式や貴金属で稼ぐには、経済に関する知識が必要不可欠です。日々の経済ニュースに目を光らせ、本をたくさん読んで投資法を学び、自分のお金を使いながら投資の場に慣れていくというのは、手間もお金も時間もかかります。
一方、不動産投資ではそこまで高度な知識は必要ありません。どの物件ならば人が入りそうかということさえ見抜ければOKです。
不動産投資は投資対象自体に価値がある
株式や債券というのは、その有価証券が持つ意味、お金に変えられるという機能に価値があるのであって、本体はただの紙切れです。仮にその株式や債券の発行元が倒産、破綻してしまった場合、その時点で価値は全くなくなってしまいます。
一方、不動産には本体自体に価値があります。施工会社が倒産しようが、管理会社が倒産しようが、不動産自体の価値がなくなることはありません。地震で建物がなくなってしまったとしても、土地は残ります。最悪の事態が起きてもある程度資金が回収できるという点で、不動産投資は低リスクと言えます。
会社員や公務員は不動産投資に有利
不動産投資のデメリットの一つとしてよく上げられるのが初期費用の多さです。区分所有ならば数百万円から始められることもありますが、一棟買いの場合は数千万円単位での資金が必須になります。当然、こんな大金を自分で用意することはできないので銀行から融資を受けることになるかと思います。
不動産投資のためのローンは審査が厳しいというイメージがありますが、実は意外とそうでもありません。不動産を担保に設定することができるからです。もちろん、誰でも通るようなものではありませんが、会社員(正社員)や公務員といった社会的立場があり、雇用が安定している人ならば通る可能性は高いです。
買うべき物件は都市部の中古ワンルーム1棟アパート
どの物件なら収益が上がるかは一概に言えませんが、現時点で収益が上がりやすいのは「都市部の」「中古」「ワンルーム」「1棟アパート」です。
まず、立地は都市部であることが必須です。地方から都市部に人が大量に流れているのは皆さんも御存知かと思います。
人が少なくなった地方でこれから収益を上げるのは難しいでしょう。賃貸物件需要は人口、もしくは人口増加率にほぼ比例するため、必ず都市部、できれば東京を選ぶようにしましょう。
築年数は10年を少し過ぎたあたりが理想です。新築はたしかに需要は高いのですが、その分物件価格も高いため利回りが低くなってしまいがちです。
おまけに、築後数年経つと新築との競争を強いられるため、どうしても家賃が下がってしまいがちです。築10年を過ぎた物件ならば新築物件は最早比較対象にはならないため、家賃の下がり幅を小さく抑えられます。
次に広さは、いわゆるワンルームが理想です。これから結婚しない人が増えれば、ワンルームの需要は高まります。ワンルームは入居者が退去した後の空室期間が短くなりやすい上、物件価格や面積に対して多くの家賃が取れるというメリットもあります。
所有方法は1棟買いが断然おすすめです。区分所有は物件の管理に手間がかかるため、おすすめできません。
小規模企業共済は自営業者や経営者だけができる低リスクな投資
小規模企業共済とは、その名の通り小規模な企業の経営者、もしくは個人事業者だけが取り組める投資です。毎月一定の掛け金を積み立てていき、退職・廃業した場合に積立額と積立期間に応じた共済金が受け取れます。
これだけ見るといわゆる個人年金と大差ないように見えますが、小規模企業共済は様々な点で個人年金よりも有利な仕組みになっています。
小規模企業共済は比較的高利回り
個人年金の利率は保険会社によりますが、高いところでも0.8~0.9%ぐらいです。それに対して、小規模企業共済の予定利率は1.0%です。わずかな差ではありますが、小規模企業共済のほうが高利回りになっています。
小規模企業共済は独立行政法人が運営している
小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構という独立行政法人が運営しています。独立行政法人とは、公共のために必要とされる事業を行うために設立された法人で、行政機関である省庁からは独立していますが、運営費や経費は国から支給されます。
国が経営に携わっているから必ず破綻しないとは言い切れませんが、少なくとも民間の保険会社よりは破綻する可能性は少ないでしょう。
小規模企業共済の運用は比較的安定している
小規模企業共済のポートフォリオは国内債券が約70%、株式や外国債券が約20%、その他が約10%という配分になっています。
安定性を重視した組み方ですが、ここ5年の運用利回りは平均2.97%と比較的高い水準で安定しており、予定利率よりも高いため近い将来に破綻するということはほぼ無いでしょう。
小規模企業共済は掛け金全額が控除もしくは経費になる
小規模企業共済で毎月支払う掛け金は、原則として全額が所得控除、もしくは経費の対象になります。例えば個人業主の場合、毎月2万円づつ掛け金を払っていれば、年間で24万円の所得控除を受けることができます。個人年金の控除よりも有利な仕組みになっているため、より効果的に税金の支払いを減らすことができます。
受け取り時には退職所得になるため大幅に税金が安くなる
小規模企業決済の場合、所得は退職所得扱いになるため、事業所得と比べて大幅に税金が安くなります。退職所得の場合は勤続年数に応じて以下の控除が受けられます。
- 勤続年数1年の場合:退職所得控除額=80万円
- 勤続年数2~20年の場合:退職所得控除額=勤続年数×40万円
- 勤続年数21年以上の場合:退職所得控除額=800万円+(勤続年数-20年)×70万円
例えば、勤続年数が30年の場合、退職所得控除額は800万円+(30年-20年)×70万円=1500万円となります。退職金額から控除額を引いた金額を更に半分にした額が課税所得と鳴ります。例えば、退職金額が2000万円、退職所得控除が1500万円の場合、課税所得は(2000万円-1500万円)÷2=250万円となります。
ただし、これは退職所得を一時金(まとまったお金)で受け取る場合であり、年金として毎月少しずつ受け取っていく場合は公的年金等の雑所得扱いとなります。この場合課税所得は以下のように決まります。
公的年金等収入金額の合計額 | 公的年金等所得金額 |
---|---|
70万円未満 | 0円 |
70万円以上130万円未満 | 収入金額-70万円 |
130万円以上410万円未満 | 収入金額×75%-37万5千円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×85%-78万5千円 |
770万円以上 | 収入金額×95%-155万5千円 |
公的年金等収入金額の合計額 | 公的年金等所得金額 |
---|---|
120万円未満 | 0円 |
120万円以上330万円未満 | 収入金額-120万円 |
330万円以上410万円未満 | 収入金額×75%-37万5千円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×85%-78万5千円 |
770万円以上 | 収入金額×95%-155万5千円 |
例えば、65歳以上で年金の年間受取額が150万円の場合、公的年金所得金額(課税所得)は150万円-120万円=30万円となり、この部分に課税されます。
どちらにしろ一般的な事業所得と比べると大いに優遇されていることには代わりありませんが、念のため税金には注意しましょう。
小規模企業共済では掛け金を自分で決められる
小規模企業共済では、掛け金を1000円~7万円の範囲で、500円単位で設定することができます。
かつては掛け金を減額する際には一定の要件を満たす必要があったのですが、2015年8月の法改正でこの制限が撤廃され、理由がなくても自由に掛け金を減らせるようになりました。そのため、事業の調子に応じて自由に掛け金を増やしたり、減らしたりすることができます。
小規模企業共済は貸付制度が存在する
小規模企業共済を契約すると、契約者貸付制度が付帯してきます。これは積み立てている金額の範囲内で共済からお金を借りられるシステムで、一般貸付の場合は下限額が10万円、上限額が2000万円となっています。利率は1.5%と住宅ローン並みに低いので、少額の資金が必要な際には心強い味方になります。
小規模企業共済には元本割れのリスクが有る
このように何かと有利な小規模企業共済ですが、実は元本割れの可能性が存在します。20年以内に解約した場合は、受け取れる解約手当金が元本を下回ってしまいます。前述の通り、掛け金は1000円まで減らすことができるので、たとえ支払いが苦しい場合でも解約はせずに1000円ずつでも積み立てていったほうがいいでしょう。
初心者にもできる投資で賢く資産形成!
このように、世の中には初心者でも気軽に取り組める投資が色々と存在しています。公的福祉制度には最早期待できないこの自体、自分の老後を救えるのは自分の資産です。投資は若いうちから始めるに越したことはありません。皆さんも今日から早速始めてみて下さい。