カードローンがある親族の死亡時の手続きは?借金は払う?払わない?

人間はいずれ必ず死ぬものです。たとえどんな人生を歩もうとも、最後に死ぬことは確定しています。それでも生きている間はせめていい人生を送りたいと思うのは人間の性です。

さて、人が亡くなった後に問題になりやすいのが債務の相続、つまりはローンの引継ぎです。ローンを組んだ人がなくなったら、その返済義務はいったい誰が相続することになるのでしょうか?

相続人は必ず何らかの手続きをしなければならない

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相続と聞くと亡くなった人の資産(プラスの財産)を引き継ぐものであるというイメージをお持ちの方が多いかと思いますが、実は相続をする場合は基本的に負債(マイナス財産)も一緒に引き継ぐ必要があります。

カードローンで借り入れを行った債務者が、債務を残したまま何らかの原因で死亡してしまった場合、基本的にはその債務は相続人が引き継ぐことになるのです。

相続人とは、人の財産を受け継ぐ権利及び義務がある人のことをいいます。相続は権利であると同時に、義務でもあります。

そのため、相続人となる人間は、財産や債務を引き継ぐ意思のあるなしにかかわらず、何らかの形で相続、若しくは相続放棄などの手続きをしなければならないのです。

住宅ローンは債務者が死亡すればチャラになるケースが大半だが、カードローンの借金はそのまま残る

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住宅ローンは基本的に、債務者が死亡した場合はチャラになります。住宅ローンを組む際にはたいていの場合「団体信用生命保険」に加入することになるからです。

団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人が死亡したり、あるいは高度障害になったりして、返済が難しくなった場合に、住宅ローンの残りの分だけ保険金が下りる生命保険の一種です。

団体信用生命保険にさえ加入していれば、万が一のことがあっても相続人に借金を残すことにはなりません。

住宅ローンを組む際には団体信用生命保険に加入することが義務付けられているケースが大半です。金融機関としても、保険に入ってもらわないと万が一のことがあった際に困りますからね。最近は団体信用生命保険に医療保険が付いた、お得な保険も登場しています。

しかし、カードローンには団体信用生命保険のような仕組みがないため、債務者が死亡してもどこからも保険金がおりません。したがって、相続人に債務が移動することになります。

さて、法律で決められた相続人を法定相続人といいます。民法の定めている相続人は配偶者と血族の2本立てになっています。まず、配偶者がいる場合、その配偶者は法定相続人になります。

ここでいう配偶者とは法律上の婚姻関係にある者のことを指しています。いわゆる事実婚状態であっても、婚姻届を提出していなければ配偶者とは認められません。

相続人の優先順位

一方、配偶者とは別に相続人が発生することもあります。その場合の相続順位は以下のようになっています。

第1順位:直系卑属
第2順位:直系尊属
第3順位:兄弟姉妹・姪甥

直系卑属(第1順位)とは、本人よりも下の世代の血族のことです。子供がいる場合はそれが最も優先となります。なお、ここでいう子供には、胎児、非嫡出子、養子なども含まれます。養子縁組を結んでいない連れ子は対象外です。

子供はいたけれどすでに死亡しているという場合は孫、孫も全員死亡している場合はひ孫……と相続人がスライドしていきます。

直系尊属(第2順位)とは、本人よりも上の世代の血族のことです。直系卑属に該当する人間が一人もいない場合は、直系尊属が法定相続人となります。父母が存命の場合は彼らが最も優先されます。父母がすでに亡くなっている場合は、祖父、祖母が法定相続人となります。

直系尊属や直系卑属がいない場合は、兄弟姉妹・姪甥(第3順位)が存続人となります。兄弟姉妹がいる場合は、彼らが相続人となります。兄弟が死亡、もしくは相続権を失っている場合は、姪甥が法相続人となります。

かなり複雑なので、いくつかパターンを考えてみましょう。以下の場合、相続人は誰になるのでしょうか。

1.配偶者と子供がいる場合
2.配偶者がすでに死亡していて、子供と孫がいる場合
3.配偶者がいて、子供がすでに死亡しているが父親と兄がいる場合
4.配偶者がすでに死亡していて、子供も死亡しているが孫と妹がいる場合
5.独身で、両親、祖父母もおらず、兄弟や姪甥に該当する人間もいない場合

1は配偶者と子供がそのまま相続人になります。これは簡単なので、特に解説する必要もないですね。

2は配偶者がすでに死亡しているので、彼/彼女は相続人から除外されます。それとは別に第1順位の子供と孫がいますが、子供の方が優先順位が上なので相続人は子供となります。

3は配偶者がいるので、彼/彼女が相続人となります。また、それとは別に第2順位の父親と、第3順位の兄がいます。したがって、この中で最も優先順位の高い父親が相続人となります。

4は配偶者がすでに死亡しているので、彼/彼女は相続人から除外されます。第1順位の子供もすでに死亡していますが、第1順位の孫と第3順位の妹は存在しています。したがって、この中で最も優先順位の高い孫が相続人となります。

5に関しては、相続人が全くいないことになります。相続人が全くいないケースを「相続人不存在」といいます。この場合、相続財産を管理する管理人(相続財産管理人)が選任され、本当に相続人がいないのかチェックする作業が行われます。

その作業が13か月以上行われて、それでも相続人が見つからなかったという場合は、最終的に資産/債務は国のものとなります。

相続人が複数いる場合の配分割合

相続人が複数いる場合は、財産を決められた割合に応じて分割しなければなりません。相続人が一人しかいない場合はその人が100%受け継ぐことになるので簡単ですが、複数いる場合はちょっと面倒です。相続の配分割合は以下のように定められています。

相続人 相続する割合
配偶者のみ 100%
配偶者と第1順位者 配偶者2分の1、第1順位者2分の1
配偶者と第2順位者 配偶者3分の2、第2順位者3分の1
配偶者と第3順位者 配偶者4分の3、第3順位者4分の1

ちょっとわかりにくいので、いくつかパターンを考えてみましょう。

1.相続人が配偶者のみの場合
2.相続人が配偶者と子供3人の場合
3.相続人が配偶者と父親と母親の場合
4.相続人が配偶者と兄と姉と弟の場合
5.相続人が子供3人の場合

1については配偶者が100%相続することになります。これについては特に解説することもないですね。

2については配偶者と第1順位者の相続なので、配偶者が2分の1、第1順位者が2分の1を引き継ぐことになります。ただし、第1順位者である子供は3人いるので、一人当たりの取り分は2分の1のさらに3分の1、つまり6分の1となります。

3については配偶者と第2順位者の相続なので、配偶者が3分の2、第1順位者が3分の1を引き継ぐことになります。ただし、第2順位者である親は2人いるので、一人当たりの取り分は3分の1のさらに2分の1、つまり6分の1となります。

4については配偶者と第3順位者の相続なので、配偶者が4分の3、第1順位者が4分の1を引き継ぐことになります。ただし、第3順位者である兄弟姉妹は3人いるので、一人当たりの取り分は4分の1のさらに3分の1、つまり12分の1となります。

5については配偶者がいないので、子供3人がそれぞれ3分の1ずつ相続をします。

財産を相続したくない場合は

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亡くなった人が残した債務(マイナスの財産)が資産(プラスの財産)よりも多かった場合は、相続するとかえって損をすることになります。そのような場合は、所定の手続きを踏んで相続放棄を行います。

相続財産を放棄する前に相続財産調査を

相続放棄をする前に確認しておきたいのは、資産の確認です。債務を相続するのが嫌で相続放棄をしたものの、後々調べてみたら資産の方がはるかに大きく全体としてはプラスだったというのでは後々困ります。

できれば、亡くなる前から遺産の確認をしておくことが大切です。弁護士事務所に特に多く寄せられる相談に「亡くなった人の使っていた預金口座がわからない」というものがあります。そのような事態を防ぐためにも、生前からきちんと確認を行っておくことが大切です。

預貯金の債権には10年の時効があります。この期間を過ぎた場合、銀行は相続人に対して預貯金を渡さなくてもよくなります。

相続財産漏れは相続人の人生に大きな損害をもたらす(最後まで気が付かなければ損害が発生したようには思えないかもしれませんが)ので、相続財産調査は必ず行いましょう。

相続財産調査を相続財産管理人として行えるのは司法書士と弁護士だけです。彼らに任せておけば安心です。

相続税の計算をしてみよう

相続放棄のまえにもう一つやるべきことがあります。それは相続税の計算です。相続税とは、亡くなった人の財産が生きている人に移転すること、つまりは相続によって発生する税金です。

資産の方が負債より大きかったものの、相続税が高かったせいで実質的な利益がマイナスになってしまっては困ります。相続税の計算は非常に複雑なのでここでは軽く触れるにとどまりますが、相続税の基礎控除額は

3000万円+法定相続人の人数×600万円

と定められています。相続財産の額がこの額を上回った場合は、その財産の額に応じて相続税を支払う必要があります。相続税の計算は非常に面倒なので、これも弁護士などの専門家にお任せすることをお勧めします。

相続放棄の方法

さて、相続するとマイナスが大きくなることがわかったら、いよいよ相続放棄を行いましょう。相続放棄は基本的に、その人が亡くなってから3か月以内に行わなければならないというルールがあります。

相続する立場にあることが分かったのが亡くなってから3か月以上たった後だったという場合は、期限を過ぎていても相続放棄が認められることがありますが、これはあくまでも特殊な例です。基本的には、相続放棄は死亡から3か月以内に行うと覚えておきましょう。

相続放棄を行うにあたっては、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を送付する必要があります。相続放棄が認められた場合は、その後家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。

3か月以内に相続放棄するかしないかの判断ができなそうという場合は、「相続放棄のための申述期間延長」を家庭裁判所に提出すると、期間を延長してもらえることがあります。

また、相続放棄と似た手続きに、限定承認があります。限定承認とは、プラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐことです。これは簡単に言えば、債務よりも資産の方が多かった場合に限り相続するというものです。

この手続きをしておけば、財産がプラスならば相続できますし、財産がマイナスならば相続が放棄できます。

限定承認の手続きは基本的には相続放棄と一緒で、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。限定承認は相続放棄と違って相続人全員の合否が必要になるので注意しましょう。

相続放棄や限定承認は手続きを間違えると大変なことになりますので、やはり専門家の力を借りたほうがいいでしょう。

最後に

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相続時のトラブルをなくす一番のコツは、生前によく話し合いをしておくことです。家族の中が悪ければ悪いほど、のちの相続でもめるものです。特に高齢の家族がいるという場合は、よく話し合っておきましょう。