借金を返済中に逮捕される可能性が全く無いとはいえません。本記事では、自分自身や家族が万が一借金の返済中に逮捕された場合はどうすればいいのかを解説していきたいと思います。
そもそも逮捕とは「身柄を拘束されること」
逮捕とは、被疑者の体を強制的に拘束して留置施設に連れていく処分のことを指します。逮捕の主な目的は証拠隠滅の防止、被疑者の逃亡防止です。逮捕は
- 通常逮捕
- 現行犯逮捕
- 緊急逮捕
の3種類があります。通常逮捕とは、逮捕令状を面前で示し、疑いがかけられている犯罪と、逮捕の理由を告げてから被疑者を逮捕する手続きのことです。通常逮捕は被害者の人権を制限するものであるため、間違って無罪の人間を逮捕しないような仕組みが作られています。
まず、警察はその人間が犯人である証拠を揃えて裁判所に対して逮捕状の発行を申請します。裁判所はその申請が正当なものであるかチェックし、警察の提出した証拠が信頼に足るものだと判断した時のみ、逮捕状を発行します。
警察はその逮捕状を手に、犯人のもとに向かいます。裁判所は24時間営業ではありませんが、犯人が高飛びしたり自殺したりすると困るので、逮捕状の発行は24時間受け付けています。
現行犯逮捕は、逮捕令状を発行せずに行う手続きです。逮捕状をいつでも発行することができればそれは非常に理想的ですが、今まさに目の前で犯罪が起きている時などはそうも言ってられません。
このような場合は犯罪が起きたことも、その犯人も明確ですので、警察は例外的に逮捕状無しでも犯人を逮捕することができます。
なお、現行犯逮捕は警察官ではない一般人も行うことができます。目の前で犯罪が起きており、警察官を呼ぶ時間もない場合は、一般人でも現行犯で逮捕できるのです。こうした逮捕を「私人逮捕」と言います。
ただし、私人逮捕は犯人の住所や指名がわかっている時にはできません。私人逮捕はドラマみたいなので憧れるかもしれませんが、万が一私人逮捕が誤認だった場合、責任を追求される可能性があるので気をつけましょう。
緊急逮捕は、被疑者が十分な犯罪を犯したと信じられる証拠が十分にあり、なおかつ緊急性がある場合に、逮捕状無しで行える手続きのことです。
ただし、この場合は緊急逮捕後に逮捕令状を申請しなければなりません。申請が通らなかった場合、警察は直ちに被疑者を釈放する必要があります。
「逮捕=有罪」ではない
被疑者と犯人は必ずしも一致するとは限りません。逮捕されたけどその後の裁判で無罪判決が出ることは往々にしてあります。しかし、一般的には逮捕=有罪のイメージが強いようです。
身内が逮捕されたと効いて焦ることはあるかもしれませんが、繰り返しになりますが逮捕と有罪は別物です。落ち着いて対処したいものです。
逮捕されたからといって、借金が増えたり減ったりすることは通常ない
原則的には、逮捕されたからといって借金が増えたり減ったりすることはありません。逮捕されたからといって借金を一括請求されることもないですし、逆に刑務所に入ることになったからといって借金がチャラになるわけでもありません。
ただし、逮捕されたことによって予定通りに借金の返済ができなくなってしまった場合は、一括返済や遅延損害金を求められることもあります。
また、家族が逮捕されたからといって、その借金を身内が肩代わりする必要はありません(連帯保証人になっている場合は除く)。
ただし、家族が借金を肩代わりしてはいけないというわけでもありません。建て替えることで強制執行を回避すれば、その後の生活が安定するかもしれません。
借金がある場合は必ず接見しよう
逮捕されてから72時間以内は警察署の留置場に拘留されることになります。この間面会が出来るのは原則として弁護士のみであり、家族が会うことはできません。72時間が経過すれば、家族も会えるようになります。これを接見といいます。
接見には拘置所の職員や警察官などが同席します。借金問題についておおっぴらに話せるような雰囲気ではないかと思いますが、だからといって黙っていると事態はどんどん悪化していくので、なるべく早急に解決を図るようにしましょう。
場合によっては接見が禁止されることもありますが、その場合は弁護士が代わりに借金問題の相談にのることもできます。一括返済請求などが来る前に、なるべく早期に相談するようにしましょう。
逮捕Q&A
借金問題以外にも様々な問題がついてまわる逮捕。代表的な疑問をQ&A形式でまとめてみました。
逮捕されたことは会社にバレる?
逮捕直後に会社に連絡が行くことは通常ありません(会社の金を横領していたりした場合は別ですが)。しかし、拘留期間が長引けば当然会社にも行けず、会社側は疑問に思います。
弁護士を通じて検察や裁判所に働きかければ、拘留期間を短くすることもできます。その間風邪を引いていたなどとごまかすことも不可能ではありません。
もし逮捕の事実がバレたとしても、それだけでクビになることはありません。逮捕は犯罪事実を確定させるものではないので、無罪の場合は解雇処分を受けても裁判で争えばまず無効になります。
有罪判決が出てしまった場合は話が別で、その犯罪の重さ、逮捕された人の会社での地位、経営方針によっては解雇されることもあります。
逮捕されたことは報道される?
報道されるかもしれないし、されないかもしれません、犯罪の内容が極めて重要で悪質なものであったり、その人の地位が高かった場合、報道される可能性が高くなります。
警察の広報担当窓口はマスコミ各社に対してFAXでどのような犯罪が起きたかを伝えます。マスコミはそのFAXのなかから、報道する犯罪を選びます。
警察の担当部署に意見書を提出することにより、ある程度まで報道を防ぐことが可能ですが、完璧に抑えこむのは不可能と思ったほうが良いでしょう。
弁護士はどうやって割り当てられるの?
逮捕された当人が弁護士を選ぶこともできますし、家族や友人などが弁護士を呼ぶこともできます。複数の弁護士に依頼してしまっても、後で調整が可能です。刑事事件の場合、弁護士費用は着手金、報酬合わせて50万円~80万前後に収まることが多いようです。
なお、弁護士が見つからない場合や、弁護士を雇うお金が用意できない場合は、裁判所に弁護人を紹介してもらうこともできます。これを「国選弁護人」と言います。国選弁護人の候補者の質はピンきりなので、できれば私選で弁護人を選びたいものです。
ペットがいる場合はどうする?
ペットを飼っていた飼い主が逮捕されて、なおかつ他に面倒が見てくれる人がいない場合は、他人にペットの世話を頼むことになります。
接見禁止にならなかった場合は面会に来てくれた家族や友人知人に頼むことができますし、接見禁止になった場合も弁護士に鍵を渡すことは可能です。
体調を崩した場合は医療行為を受けられる?
拘置所内では月に2回のペースで健康診断が行われるほか、体調を崩した時には医療を受けることができます。医師の判断により入院が必要とされた場合は、外部の病院に入院できることもあります。
逮捕される前から使っていた薬がある場合は、留置場の警察官と一緒に病院に行き、改めて診察を受けたうえで薬を処方してもらいます。拘留中の医療費は原則として公費から支払われます。
逮捕された人に差し入れは出来る?
身柄を拘留されている人に対して、差し入れが出来るものとできないものがあります。例えば服は原則として差し入れすることができますが、自殺防止の観点から紐付のスエットなどは差し入れができないようになっています。
差し入れに関してはかなり細かいルールが有るので、警察に行って確かめると良いでしょう。
書類送検と逮捕ってどう違うの?
逮捕された人は釈放されないかぎりは、検察に送られることになります。これを身柄付送検といいます。それに対して、身体の拘束を行わずに、書類だけを検察に送ることを書類送検といいます。
事件が軽微だったり、被疑者が入院中だったりする場合は書類送検が選ばれるのが通常です。
執行猶予って何?
執行猶予がついていない刑を実刑といいます。実刑が下された場合、ただちに刑が執行され、被告人は刑務所に入れられることになります。一方、執行猶予が付いている刑が下された場合は、判決が下されても刑務所に入れられることはありません。
裁判所が決めた一定の期間に犯罪を犯さなかった場合、下された刑の執行が効力を失い、刑務所に入れられることはなくなります。執行猶予期間中に犯罪を犯した場合は、直ちに刑務所に入れられます。
例えば、懲役1年、執行猶予3年の判決が下された場合は、一旦開放されます。その後3年間犯罪を犯さなければ、懲役1年の判決自体が無効になります。
しかし、犯罪を犯した場合は懲役1年が有効になり、直ちに刑務所に入れられてしまいです。執行猶予付き判決は無罪ではなく有罪の一種であり、前科も付きます。
逮捕されたらともかく一刻も早く弁護士に相談を
家族、もしくは自分自身が万が一逮捕されてしまった場合は、早急に弁護士に連絡を取るようにしましょう。最初の対応を誤らなければ、スムーズに社会復帰できる可能性が高いです(もちろん、犯した罪が大きい場合はその限りではないです)。
何はともあれ、まず弁護士に相談してください。