住宅ローンは、殆どの人にとって一生涯で組むローンの中で最も額が大きいものです。それゆえに商品は慎重に選ばなければなりませんが、慎重に選べば必ず良い商品にたどり着けるというわけではありません。
住宅ローン選びを間違えて後悔している人も少なくないかと思います。そんな方におすすめしたいのが住宅ローンの借り換えです。より金利が安く、サービスが良い住宅ローンに借り換えれば、毎月の支払額や総支払額を大きく減らすことができます。
しかし、すべての人にとって住宅ローン借り換えがおすすめというわけではありません。現在の状況によっては、借り換えを行わないほうが特になることもあります。
今回の記事では住宅ローン借り換えのコツを解説していきますので、住宅ローンの支払が苦しいという方は是非参考にしてください。
目次
そもそも住宅ローンの借り換えとは何か?
住宅ローンの借り換えとは、現在の住宅ローンよりもさらに有利な条件を提示している金融機関で、新しく住宅ローンを組むことです。
新たな金融機関から融資を受けて、そのお金で借り換え前の住宅ローンを返済します。借り換えには様々な諸費用がかかりますが、それ以上にローンの支払総額が少なくなる場合は、借り換えを検討した方がいいでしょう。
借り換えを同じ銀行内で行うことは基本的には不可能です(別の住宅ローン商品を選べばできることもありますが、あまりメリットはありません)。住宅ローンの借り換え=他の金融機関から借りる、という認識でまず問題ないでしょう。
住宅ローンの借り換えは金利差が大きくなるほど、あるいは返済期間が長いほど有利になります。この条件に当てはまっているという方は、借り換えを検討してみてください。
住宅ローン借り換えのメリットは3つ!
住宅ローン借り換えのメリットはいろいろ有りますが、中でも大きなものは以下の3つです。
返済額が削減できる
住宅ローン借り換えの一番のメリットは、もちろん返済額を減らせることです。このメリットは、現在の金利と新しい住宅ローンの金利差が大きければ大きいほど、あるいは残りの借入額が大きければ大きいほど大きくなります。
返済額をどれくらい圧縮できるかは、以下の計算式にで大雑把に計算できます。
返済額の減額幅=残りの借り入れ金額×金利差×残りの借り入れ期間(年)÷2
例えば、残りの借入金額が2000万円、金利差が1.0%、残りの借入期間が15年間の場合、返済額の減額幅は2000万円×1.0%×15年÷2=150万円となります(これは概算であり、細かい条件は省いてあります)。
より詳細な減額幅が知りたい場合は、各金融機関の借り換えシミュレータを利用してみてください。
みずほ銀行 住宅ローン借り換えシミュレーション
イオン銀行 お借り換えシミュレーション
固定金利と変動金利の変更ができる
住宅ローン借り換えのもう一つの大きなメリットは、金利のタイプを変更できることです。
例えば、最初は変動金利で借りていたものの、金利の上昇リスクが高まっているのでそれに備えて固定金利で借りるとか、あるいは固定金利で借りていたけど将来の金利低下リスクに合わせて変動金利で借りる、といったような工夫ができます。
もちろん、その読み通りに金利が動く保証はないのですが、うまく時代の流れを読むことができれば、毎月の返済額や総返済額を大きく減らすことができます。
特典がもらえることがある
住宅ローンの中には、特典がついてくるものがあります。この特典目当てで住宅ローンを借り換える人も少なくありません。
例えば、住信SBIネット銀行で住宅ローンを組むと、3つの特定疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)または5つの重度慢性疾患(高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)で就業ができなくなった場合、返済が免除されます。
ある程度歳を重ねて病気のリスクが高くなってきたら、こうした疾病保障がついてくる住宅ローンに借り換えるというのは一つの選択肢です。
住宅ローン借り換えのデメリットは2つ!
住宅ローン借り換えには上記のようなメリットも有りますが、一方でデメリットも無視できません。住宅ローン借り換えの主なデメリットは以下の2つです。
借り換えをすると諸費用がかかる
すでに住宅ローンを利用したことがある方ならばおわかりかと思いますが、住宅ローンを組むと事務手数料や保証料といった諸費用がかかります。住宅ローンを再び組む場合、こうした諸費用をもう一度支払わなければなりません。
諸費用が借り換えによる返済額圧縮幅を上回ってしまっては意味がありません。住宅ローンの借り換えを行う際には、なるべ諸費用が安く、なおかつ返済額圧縮幅が大きい金融機関を選ぶ必要があります。
固定金利と変動金利の変更ができる
固定金利と変動金利の変更ができるのはメリットでもありますが、デメリットでもあります。将来の金利がどうなるか、予想はできてもそれを完璧に的中させることはできません。
金利が今後低くなると思って変動金利に乗り換えたら、金利が上昇してしまい返って返済が苦しくなってしまった、というようなことも十分起こりえるのです。
住宅ローンを借り換える理由は?
住宅金融支援機構が以前、住宅ローン借り換え利用者に対してアンケート調査を行っています。そのアンケートによれば、みんなが借り換えをする理由は以下のようになっています。
- 金利が低くなるから:71.3%
- 返済額が少なくなるから:62.5%
- 適用金利が上昇、返済額が増加するから:18.7%
- 金利優遇の優遇幅拡大や返済修了までの通期適用が受けられるから:9.5%
- 後の金利上昇や毎月の返済額の増加が不安になったから:7.7%
- 変動金利に移行するのが不安だったから:2.6%
- それほど長く借りる必要がなくなったから:2.6%
- その他:5.3%
やはり「金利が低くなるから」「返済額が少なくなるから」という答えが圧倒的に多いですね。
住宅ローン借り換えをしてもいい条件は?
住宅ローンの借り換えを行う前には、必ずそれにより発生するコスト(諸費用)とメリット(返済額の減額幅)を比較しなければなりません。発生するコストよりもメリットのほうが大きければ、原則的に借り換えをした方がいいということになります。
ただし、コストよりもメリットのほうが大きくても、その額が小さい場合は必ずしも借り換えをする必要はありません。手続きに手間がかかるからです。その手間が大きいと感じた場合は、そのままにしてもいいでしょう。
さて、それではいよいよコストとメリットを計算していきましょう。まずはコストから考えていきます。住宅ローンの際に発生するコストには以下の様なものがあります。
借り換え前の金融機関に支払う手数料
住宅ローン借り換えでは、まず新しい金融機関からお金を借りて、そのお金を借り換え前の金融機関からの借金の支払いに充てますが、残債の一括支払いをすると手数料がかかります。手数料は金融機関によって異なりますが、多くの銀行では2万円~5万円と設定されています。
新しい金融機関に支払う手数料
住宅ローンを新しく組む場合は、その金融機関に対して手数料を支払わなければいけません。手数料は金融機関によって異なりますが、多くの銀行では3万1500円と設定されています。
保証料
保証料は借り換えのコストの中でも最も大きなものです。保証料とは保証人を用意する代わりに支払う手数料のことです。保証人がいる場合は不要ですが、保証人を用意できる人は少ないので実質的には殆どの人が支払うことになります。
計算式は非常に複雑で、元本や支払い年数に左右されます。「元本×2.0%」が一つの目安となります。
抵当権抹消費用
住宅ローンを借り換える場合は、借り換え前の金融機関に対して設定した抵当権を抹消する必要があります。抵当権の抹消費用は1万円程度です。
登録免許税
新しい金融機関に抵当権を設定するための費用です。登録免許税は基本的には「元本×0.4%」で設定されますが、現在は特例が用意されており、一定の条件を満たした場合は「元本×0.1%」となります。
司法書士報酬
抵当権の設定を自分で行うのは非常に難しいため、普通は司法書士に依頼します。司法書士報酬は5万円~10万円が相場です。
メリットの計算方法
続いてはメリットを計算します。メリットの計算は先ほど紹介した金融機関のシミュレーターを使えば一発で計算することができますが、以下の計算式でもだいたい計算できます。
メリット=元本×金利差×残りの借り入れ期間(年)÷2
実際にコストとメリットを計算してみよう
ここでは以下の過程に基づいて、コストとメリットを計算してみたいと思います。
借り換え前の金融機関に支払う手数料:3万円
新しい金融機関に支払う手数料:3万1500円
保証料:元本×2.0%
抵当権抹消費用:1万円
登録免許税:元本×0.4%
司法書士報酬:10万円
借り換え前金利:1.5%
借り換え後金利:1.0%
残りの借り換え期間:10年
3万+3万1500円+2000万円×2.0%+1万+2000万×0.4+10万=65万1500円
2000万円×(1.5%-1.0%)×20÷2=200万円
この場合、コストよりもメリットのほうが100万円以上大きいので、借り換えをした方がいいということになります。
住宅ローン借り換えの流れ
住宅ローン借り換えの流れは、基本的に新しく住宅ローンを組む時の流れとあまり変わりありません。
借り換え先を決める
まずは借り換え先を決めます。借り換え先の決め方は人それぞれなのでなんともいえませんが、基本的にはやはり金利が低いところを選ぶべきです。また、リスクを減らしたいのならば、固定金利を選んだほうが良いでしょう。
銀行のウェブサイト等に設置されている借り換えシミュレータはあくまでも概算を算出するためのものなので、諸費用を含めていくら得になるのか、正確に知りたい場合は、その金融機関に連絡をして実際に試算を依頼しましょう。
借り換え前の金融機関に連絡する
新しい金融機関に審査の申し込みをする前に、借り換え前の金融機関に連絡をしておきましょう。タイミングは借り換えを希望する融資実行時の2週間程度前がおすすめです。
あまりぎりぎりになってしまうとその後の手続がスムーズに行かないこともありえますので、必ず早めに連絡しておきましょう。
新しい金融機関の住宅ローンの審査を受ける
借り換えの際には必ず審査を受けなくてはなりません。審査の際には本人確認書類や銀行通帳の写しなど、様々な書類を請求されます。何が必要かは借り換え先の金融機関に指定されるはずですので、それを用意すればOKです。
契約
審査に通過したら、契約します。
借り換え前の金融機関に一括返済
契約をすると新しい金融機関から融資が行われるので、そのお金で一括返済を行います。
抵当権の抹消・登録
最後に、抵当権の末梢と登録を行います。手続きは司法書士が行ってくれます。
審査では何を見られるの?
住宅ローン借り換え審査の内容は、基本的に新規借入時の時と変わりありません。新規借入の際に審査に通過した場合は、借り換え時にも審査に通過する可能性が高いです。
しかし、新規借入時と現在で属性が大きく変わっている場合はそうとも限りません。審査では主に以下の項目がチェックされます。
個人信用情報
個人信用情報とは、簡単にいえば借金歴のことです。過去に返済事故を起こしていたり、あるいは債務整理を行っている場合は通常、審査に通らなくなります。
また、そうした重大なトラブルを起こしていなくても、住宅ローン以外の借金があるとそれだけで審査が不利になります。消費者金融からのカードローンなどは、早めに返済しておく必要があります。
勤続年数
住宅ローンを汲んでから一度も転職していないという場合は、それだけ勤続年数が伸びているので全く問題無いでしょう。転職した場合は一度勤続年数がリセットされてしまうので注意が必要です。
勤続年数は最低でも1年、できれば3年は欲しいところです。ただし、転職先が同じ業種や職種で、なおかつ以前と比べて年収が上がっている場合は、勤続年数が少なくても問題視されないことが多いです。
勤務先
住宅ローンを汲んでから一度も転職していないという場合は問題ありません。以前と比べて大きな企業や公務員などに転職した場合も問題ありません。
以前と比べて小さな企業に転職していたり、あるいは独立したりしている場合は審査で不利になることがあるので注意が必要です。
年収
年収は額も大切ですが、それ以上に安定性が重視されます。年収が安定した職業ならば、年収額は200万円~300万円程度でも問題ないことが多いようです。逆に年収が高くても不安定な職業の場合は審査で不利になることがあります。
担保評価
住宅ローンを組む際には自宅を担保にすることになりますが、新規借入時と借り換え時では担保の価値が違います。住宅の価値は普通、時が経つに連れて下がっていきます。
場合によってはそれ以上に土地の価格が上がっていることもありますが、そのようなケースは非常にまれです。
もちろん、住宅ローン借り換え時には元本も減っていますが、普通は元本の減りよりも担保評価の減りのほうが大きいです。
健康状態
住宅ローンを組む際には通常、団体信用生命保険への加入が必須です。当初の住宅ローンの融資を受ける際に加入していた団体信用生命保険を、借り換え後もそのまま継続して利用することはできません。
借り換えの場合は一度団体信用生命保険から脱退し、改めて加入する必要があります。
人間、年をとるに従って少なからず健康状態は悪化していきます。健康状態に不安があるという場合は、借り換えを控えるのも選択肢に入ってきます。
借り換えでも住宅ローンの返済ができない時は債務整理を
借り換えをしても住宅ローンが返済しきれないという場合は、債務整理を検討したほうがいいかもしれません。債務整理は借金を合法的に減らしたり、なくしたりすることができる制度です。
住宅ローンの支払いがあまりにも厳しいという場合は、いつまでも支払い続けるよりも早く債務整理をした方がいいこともあります。借金の返済が苦しくなったら、まずは弁護士に相談しましょう。