慰謝料や養育費が払えない!借金してでも払うべき?

日本では、3組に1組のカップルが離婚をすると言われています。これは、その年に結婚をしたカップルと、その年に離婚をしたカップルを比較しているだけなので、実際には3分の1の確率で離婚をしているわけではないようです。

その年に結婚をしたカップルの数が300とすれば、その年に離婚をしたカップルは100くらい存在するということです。「3組に1組が離婚」というのは大げさであるにしても、離婚率はそれなりに高いことがわかります。

離婚をするときに問題となりやすいのが、慰謝料と養育費です。この記事では、離婚をするときに慰謝料や養育費を請求されたが払えないという時に、借金をしてでも支払うべきかという問題について考えてみたいと思います。

この記事では母親が子供を引き取ったケースで考えていますが、逆のケースでは母親と父親を置き換えてみてください。

慰謝料とはなにか?

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慰謝料というのは、精神的な苦痛を与えたときに、加害者が被害者に対して支払う損害賠償です。離婚のときに問題となる慰謝料には、DVによる慰謝料、不倫による慰謝料などがあります。

よく誤解をしている人がいますが、離婚をすると必ず慰謝料の請求権が発生するわけではありません。夫婦の一方に不法行為があって、それによって一方が損害を被ったときに、被害者の側に慰謝料の請求権が発生します。

損害を被ったという条件について深く考える必要はありません。一般的に損害が発生していると考えられればそれで十分です。

例えば、妻が不倫をした場合に、夫がどれだけの精神的な損害を被るのかは人それぞれです。妻に不倫をされてもなにも感じないという夫もいるかもしれませんし、逆にひどく落ち込んで精神病になってしまう男性もいます。

しかし、夫が何も感じていないから不倫をしたけど慰謝料を支払わないと主張しても、裁判では認められない可能性が高いです。常識的に考えると、妻が不倫をしたら、夫は精神的なショックを受けるからです。夫がただ単に感情を表に出さないタイプというだけなのかもしれません。

慰謝料請求で必要になる証拠とは

慰謝料を請求するときにハードルとなりやすいのが、証拠の有無です。DV被害にあっていたケースなら、暴力を受けていたという証拠が必要になります。

暴力を受けたときに警察に相談をして、傷跡の写真をとってもらっていれば、それが証拠となります。病院で診断を受けたなら、医師の診断書も証拠となります。

精神的DVであるモラハラのケースでは、それを証明するのが難しくなるかもしれません。相手の暴言を録音したボイスレコーダー、その場にいた第三者の証言などが証拠となります。

不倫をされていた場合なら、不貞行為の事実を証明する必要があります。不貞行為というのは、「配偶者以外の男性と継続して性交渉を行うこと」を指すので、キスをしている写真などでは不貞行為の証拠とはなりません。

「性交渉の現場の写真」、「ラブホテルに2人で出入りする写真」などが必要になりますが、こういった証拠を素人が入手するのは難しく、探偵に浮気調査の依頼をすることが一般的です。違法な手段で入手した証拠は裁判では使えないということも重要です。

もちろん、証拠がなくても相手が素直に認めているなら慰謝料の請求ができます。しかし、裁判になると相手が証言を変えてくる可能性もあるので、安心はできまぜん。いずれにしても、早い段階で離婚弁護士に相談をしておくことがおすすめです。

慰謝料の金額は?

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DVによる慰謝料の相場は、50万円~300万円程度、不倫が原因で離婚をした場合の慰謝料の相場は、100万円~500万円程度と言われています。相手の社会的地位、年収、婚姻期間、不倫や暴力の悪質度合いなどによって異なってきます。

もちろん、これよりも低くなることもありますし、高くなることもあります。相手が無職の場合でも、諦めずに慰謝料を請求する価値はあります。50万円程度でも認められる可能性があります。逆に、相手が社会的地位のある人なら、高額な慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。

慰謝料請求権は、3年の時効にかかります。「損害および加害者を知った時」から3年なので、離婚をしてから3年ではなく、DVや不貞行為の事実を知ったときから3年であることには注意が必要です。不貞行為の場合には、不倫相手の特定も必要になります。

養育費とはなにか?

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養育費とは、親の扶養義務を根拠とするものです。親の扶養義務が根拠となっているので、慰謝料のように証拠は必要ありません。子供の親であるという事実があれば十分で、別れて暮らしている親には養育費の支払い義務があります。

日本では、母親が子供を引き取り、元夫が養育費を支払うというケースが多いようです。しかし、逆に父親が子供を引き取った場合には、別れて暮らしている母親に養育費の支払い義務があります。

夫と妻との関係は、離婚をすればなくなり、戸籍上は他人同士になります。しかし、母親が子供を引き取り、父親は別れて暮らしているとしても、子供と父親との関係はずっと続きます。

すなわち、子供が自立をするまでは、養育費の支払い義務を負い続けます。子供が自立をする時点としては、高校を卒業して働き始めるまで、20歳になるまで、大学を卒業するまでなど、ケースバイケースとなります。

別れた妻が再婚をしたら

別れた妻が再婚をした場合には、子供には新しい父親ができることになりますが、戸籍上は子供と新しい父親は他人同士という関係です。そのため、別れて暮らしている父親には、変わらず扶養義務があります。

新しい父親との間で養子縁組をした場合には、新しい父親も子供の父親となるので、扶養義務者となります。しかし、養子縁組をしても前の父親との関係は切れませんので、やはり養育費は支払い続けなければなりません。

ただし、養子縁組をして、扶養義務者を持つ父親が2人になった場合には、新しい父親にも負担をしてもらえると考えられるので、養育費の減額請求をすることができます。

養育費の減額請求が認められるのは、元妻もしくは元夫が再婚したときだけではありません。転職をして収入が下がった場合、失業をした場合、病気になった場合などにも認められます。これらの条件にあてはまる場合には、減額請求を検討してみましょう。

養育費の金額は、夫婦の話し合いによって決定します。話し合いで決まらない場合には、裁判所が公開している養育費算定表が参考になるでしょう。お互いの年収、子供の年齢、子供の人数という3つの項目によって、だいたいの養育費の相場を算定することができます。

養育費の時効は?

養育費には、時効はありません。時効がないので、過去に未請求だった養育費もすべて請求できます。しかし、裁判になると、よほど経済力のある相手でもない限り、過去の養育費をすべて請求することは難しいようです。

よく誤解されていますが、養育費に時効がないというのは、あくまで離婚のときに取り決めをしなかったケースでの場合です。離婚協議書や公正証書によって養育費の取り決めをした場合には、時効にかかります。

「毎月5万円支払う」というような内容を離婚協議書や公正証書によって作成した場合には、5年の時効にかかります。裁判をして確定した養育費債権については、時効までの期間は10年です。5年もしくは10年が経過していても、元夫が時効の援用をしていないならば、請求可能です。

慰謝料が払えないときは借金をするべきか?

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さて、ここからが本題です。慰謝料や養育費を支払えないときには、借金をしてでも支払うべきなのでしょうか?

慰謝料とは、損害賠償のことなので、原則として一括で支払うべきものです。例えば、事故にあって車を壊してしまい、修理代として100万円がかかったらなら、100万円をすぐに支払ってもらわないと損害をすべて賠償してもらうことにはなりません。

支払いが遅れた場合には、一定の遅延損害金を上乗せして請求されてしまいます。遅延損害金の利率は、特に取り決めをしていなければ、年5%となります。年5%というと低いと感じるかもしれませんが、金額が100万円というように高額になる場合には、それなりの金額になります。

遅延損害金が年5%なら、放置しておいても問題ないと考える人がいるかもしれません。しかし、放置していると裁判を起こされて、強制徴収がされてしまいます。マイホームが差し押さえられて家が売られてしまったり、給料を差し押さえられて会社に迷惑をかけることになったりします。必ずなんらかの対策をとるようにしましょう。

慰謝料の分割払いについて

慰謝料の支払いができない場合には、分割にしてもらうように交渉することもできますが、一定の手数料が上乗せされることになります。借金をして支払った場合と手数料を比較してみましょう。

仮に、慰謝料の金額が300万円であったとして、手数料として年10%の利率がかかったとします。この場合、銀行のカードローンやフリーローンを利用して、300万円を金利10%未満で借りることができたなら、そのほうが得をします。

手数料が年5%であった場合なら、消費者金融はもちろん、銀行のカードローンやフリーローンでも年5%よりも金利が低いものはそうないので、分割払いで支払ったほうが得をします。
しかし、土地などの不動産を所有しているなら、不動産担保ローンを利用して、年1%~4%程度のローンを組めば、そちらのほうが得をします。

このように、慰謝料が払えないときに借金をするべきかという問題では、ケースバイケースで最適な方法を考えることが重要になります。

養育費が払えない場合にはどうする?

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養育費は子供の養育にかかる費用を分担するものですから、原則として毎月支払うのが通常です。養育費についても、支払いが遅れると遅延損害金が発生します。遅延損害金の利率は、特に取り決めをしていなければ年5%ですが、利息制限法の上限を超えない範囲で約定をすることもできます。

仮に、「養育費を毎月5万円支払い、遅延損害金の利率は20%とする」という取り決めをしていた場合で考えてみます。支払いが1ヶ月遅れた場合なら、5万円に対して年20%の遅延損害金(およそ833円)がかかるという計算になります。

当然ですが、延滞期間が長くなると、金額は大きくなっていきます。例えば、20ヶ月放置していた場合、その月は合計100万円に対して20%の遅延損害金がかかるということになってしまいます。銀行カードローンはもちろん、消費者金融で借りたほうがはるかにマシですね。

後で説明しますが、養育費は債務整理をしても減額・免除されない債権なので、自己破産という最後の手段も使えず、放置していると大変な負担になってしまいます。
元妻が本気なら、裁判をして強制徴収されてしまうので、マイホームの差し押さえ、給料の差し押さえなどは避けられなくなるでしょう。

結論として、1ヶ月くらいなら元妻に連絡をして待ってもらうのもアリかもしれませんが、長期の延滞になるとリスクが大きすぎるので、なるべく借金をしてでも支払うべきです。銀行カードローンを1枚作成しておくと、いざという時にも対応できて便利です。

慰謝料や養育費は債務整理できる?

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慰謝料や養育費は、民事的な契約なので、相手が同意してくれたら、減額できます。しかし、元妻が慰謝料や養育費の減額に応じてくれる可能性はかなり低いでしょう。

慰謝料については、個人再生や自己破産をすることで減額もしくは免除される可能性があります。個人再生や自己破産において、非減免債権や非免責債権とされているのは、「悪質度合いが高い不法行為による慰謝料」です。

悪質度合いが高いというのは、例えば交通事故で飲酒運転をしてひき逃げをしたというようなケースであり、かなり限定されています。不倫が原因となる慰謝料なら、免責される可能性が高いです。DVの場合には、悪意による暴力なので、悪質度合いが高いと判定されてしまう可能性が高くなります。

一方、養育費については、どんな場合でも免責の対象とはなりません。個人再生や自己破産をしても、減額や免除されることはないということです。元妻や子供の生活がかかっているという事情もあるので、養育費は最優先で支払うべき債権であると言えます。