実例で学ぶ!友人に貸した50万円を簡易裁判で取り立てる方法

訴状

人にお金を貸したら、きちんと返済してもらえるかが不安です。実際に返済を受けられなくなってしまったら、裁判が必要になることがあります。

一般には裁判などなじみがないので、どのように進んでいくのかが不安であったり裁判手続きの進み方を知りたいと思っていたりする方が多いでしょう。

私は、過去10年程度弁護士をしていた元弁護士ですが、その間、多くの借金回収業務をしてきました。

そこで今回は、友人に貸した50万円の借金返済が受けられなくなったAさんの事例をもとに、簡易裁判所で借金を取り立てる方法を解説します。

1.弁護士に依頼するまでの経緯

kyaba

Aさんは、50代の女性で主婦だったのですが、過去に水商売をしていた頃からの付き合いのある友人がいました。

あるとき、その友人から、「月末までに必ず返すから、50万円貸してほしい」と言われました。

Aさんは、もともとその友人がお金のトラブルが多かったこと、水商売をしていて借金をあまり重く捉えていないことや、金銭感覚も一般より大きいことから、本当にお金が返ってくるのか不安になりました。

いったんは断ろうとしましたが、もともと腐れ縁なのと、「本当に困っているの」「助けて」などと言われるので、「仕方がないな」と思って貸してあげることにしました。

ただ、相手のことを完全に信用出来なかったので、借用書はきちんと作ってもらいました。

ところが、月末になっても友人は支払をしてくれず、Aさんが何度督促をしても無視されてしまいました。

そこで、Aさんは、昔お世話になったことのある弁護士に依頼して借金を回収してもらうことにしました。

2.裁判でどのような手続きが行われたのか

裁判所

弁護士に依頼すると、早速簡易裁判所で裁判を起こすことになりました。

弁護士との間で「委任契約書」という書類を作り、「委任状」に署名押印をして渡しました。そして、裁判の証拠になる借用書も預けました。

しばらくすると弁護士から連絡があり「簡易裁判所で審理が行われる日が決まった。来るなら来てもかまわないけれど、弁護士だけでもいいからどちらでもいいですよ。」と言われました。

Aさんは、相手とも顔を合わせたくないので、行かないことにしました。

弁護士からは「期日までに相手から答弁書という反論の書面が提出されるかもしれません。送られてきたら、ご連絡します。」と言われました。

ただ、期日までに答弁書が提出されることはありませんでした。

当日、Aさんは裁判所に行かず、弁護士が1人で出頭しました。すると、相手は1人で来ていたということでした。

裁判の場で、相手は借金について争うことはなく、「返す」と言っていました。そこで、裁判は和解に持ち込まれることになりました。

その日はAさんの意見を聞くこともできなかったので合意内容を決めることができず、話合いは次回の期日に持ち越されました。

次の期日までにAさんは弁護士事務所に呼出を受けて、弁護士と対応を相談しました。そこで、「相手が払うと言っているのだから、支払いを受ける内容で和解してはどうか」ということになりました。

ただ、Aさんは相手を信用出来ないので、支払を裁判が終わった後に持ち越すのが嫌でした。

そのことを弁護士に言うと、弁護士は、「じゃあ、次回期日にお金を持ってきてもらってその場で払ってもらって和解しましょう」と言いました。Aさんも「それなら」と思って納得しました。

具体的な手続きは、弁護士がすすめてくれるということでした。

3.裁判はどのように終わったのか

弁護士

次回期日までに、弁護士が相手に連絡を入れて、こちらの提案を伝えてくれました。

相手は、裁判になっていること自体がプレッシャーでうっとおしくもあり、一刻も早く終わらせたいと考えている様子で、「わかったから、早く裁判を終わらせてほしい」と言っていたそうです。

次回期日には、Aさんも一緒に行くことにしました。

弁護士とAさんが一緒に裁判所に行くと、相手は実際に50万円を持ってきていたので、その場で支払いを受けて和解しようと言うことになりました。

ただ、相手は「遅延損害金はカットしてほしい」と言いました。Aさんも、数百円の遅延損害金なら免除しても良いと思ったので、和解で解決するということもあり、遅延損害金をカットしたジャスト50万円の支払で和解しました。

4.お金は返ってきたのか

50万円

Aさんの事例では、相手が裁判期日に直接50万円を持ってきたので、その場で支払いを受けることができ、お金が返ってきています。このように、和解によって直接お金の支払いを受ける方法は、借金回収のもっとも効果的な方法です。

判決になっても、命令を無視して支払をしない人もいますが、和解で回収してしまったら、そのようなリスクもなくなります。

5.裁判にかかった期間は?

本と砂時計

Aさんは、弁護士に依頼してから1週間程度で裁判を起こしてもらいました。裁判は、申立後1ヶ月くらいで第1回期日が入り、第2回期日がその1ヶ月後くらいでした。

そこで、裁判を始めてから2ヶ月くらいでお金が回収できたことになります。

6.弁護士費用は?

一万円札と小銭

Aさんは、弁護士に依頼するとき、着手金として10万円支払いました。また、申立のための印紙代が5,000円、郵便切手代が5,000円かかりました。

弁護士の報酬金は50万円の10%の5万円で良いと言うことでした。

そこで、全体として16万円程度を弁護士に支払いました。結果として、Aさんの手元には34万円が返ってきたことになります。

7.もし借用書がなかった場合は?

借用書

今回Aさんは借用書があったので裁判を有利に進めることができましたが、もし借用書がなかったら、裁判はもっと難しくなっていたことが予測されます。

その場合には、手帳、メモやメール、相手に貸した50万円の出金記録や振込送金をした記録(預貯金通帳や振込証)など、別の証拠でお金を貸したことを立証しなければなりません。

充分な証拠がなければ負けていた可能性もあり、その場合にはAさんのようにスムーズに貸付金を回収することはできなかったでしょう。

このように、裁判では「証拠」がとても重要になるので、覚えておきましょう。

以上のように、Aさんの場合には、とても上手に裁判を利用して貸金を回収することができました。

今、人にお金を貸して返ってこないことに悩んでいる場合には、一度弁護士に依頼するなどして裁判を検討してみても良いのではないでしょうか?

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