借金のストレスで病気になる!?その原因と対処法

お金があるからと言って、必ずしも幸せな人生を歩めるわけではありません。逆に、お金がないからと言って、必ずしも不幸になるわけではありません。

しかし、お金があるほうがないよりはいいというのもまた厳然たる事実です。アメリカで行われた研究によれば、借金があるという事実自体が我々の精神や肉体に少なからずストレスを与えることが明らかになっています。

今回はこうしたストレスが人体にどのように影響をあたるのか、そしてそのようなストレスはどのように解消していけばいいのかを考えていきたいと思います。

適度なストレスは健康の元、過度なストレスは不健康の元

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ストレスのもとになる原因を「ストレッサー」といいます。現代社会にはさまざまなストレッサーが存在しており、これらを完璧に避けて暮らすことは不可能といってもいいでしょう。

人里離れた場所でまったく人間関係を絶って仙人のような暮らしをしていけばいいのかもしれませんが、そんなことは普通の人間にはとてもできませんし、一人で生きていてもストレスは溜まります。

そもそも、ストレスを完璧に避けようとする必要はありません。適度なストレスは人間のパフォーマンスを上げ、自信のもとになるからです。

また、適度なストレスは人間の記憶力を向上させ、人を肉体的にも精神的にも強くする効果があることが、過去の研究から明らかになっています。

想像してみてください。ストレスが全くかかっていないということは、誰からもまったく頼りにされない、期待されない、相手にされないということと同じです。

そのような状況が長く続くと、かえって肉体や精神に悪影響を及ぼします。適度なストレスは生きていく上では欠かせないものなのです。

しかし、ストレスが適度を超えて過度にかかるようになってくると、今度は肉体や精神に様々な歪みが現れます。

最初のうちは無理すれば対応することができるかもしれませんが、無理を長く続けているとやがて燃え尽き症候群に似た症状を感じるようになり、それも過ぎるとパニック、うつ状態に陥ることになります。過度なストレスは万病のもとなのです。

ストレスの感じ方は人によって異なる

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何をストレスと感じるのかは人それぞれです。たとえば上司に叱責されることに対してとてもストレスを感じる人もいれば、あまりストレスを感じない人もいます。

人間関係にストレスを感じやすい人もいれば、勉強をすることにストレスを感じやすい人もいます。長期休暇やクリスマスといった、一見楽しそうなイベント、あるいは結婚や転居といったライフイベントにストレスを感じる人もいます。

これらは言ってみれば個性のようなものであり、簡単に変えることはできません。過度なストレッサーには、そもそも近づかないようにするのが自分の身を守る最大のコツといえます。

ストレスの大小を数値化した資料を見てみよう

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前述のとおり何をストレスと感じるかは人それぞれですが、それでも全体的な傾向というものがはあります。「配偶者の死」と「転居」では、明らかに前者のほうがストレッサーになりやすいことは容易に想像できるかと思います。

こうした傾向を数値化したのが、1968年に行われた調査「Holmes and Rahe stress scale」です。

これはアメリカの精神科医Thomas Holmes と Richard Raheが行った調査であり、「配偶者の死」のストレスを100としたとき、その他のライフイベントに対して平均でどれだけストレスを感じるかを数値化したものです。

調査結果は以下のようになっています(一部を抜粋しています)。

ライフイベント ストレス強度
配偶者の死 100
離婚 73
夫婦別居 65
刑務所への収容 63
大きなけがや病気 53
失業 47
妊娠 40
性生活の困難 39
 家族上の変化 38
親友の死 37
夫婦喧嘩の回数の変化 35
1万ドル以上の借金 31
借金やローンの抵当流れ 30
仕事上の地位の変化 29
親戚関係のトラブル 29
個人的な成功 28
妻の就職・退職 26
上司とのトラブル 23
転居 20
転校 20
レクリエーションの変化 19
宗教活動の変化 18
1万ドル以下の借金 17
家族の数の変化 15
長期休暇 13

借金はストレスのもとである

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こうしてみると、人間は実にいろいろなライフイベントに対してストレスを感じていることがわかりますね。そして注目してほしいのが「1万ドル以上の借金」です。

「1万ドル以上の借金」のストレス強度は31です。つまり、1万ドル以上の借金は、「親戚関係とのトラブル(ストレス強度29)」や「上司とのトラブル(ストレス強度23)」よりも強力なストレッサーなのです。

「1万ドル以下の借金」のストレス強度は17とそれと比べるとだいぶ低いですが、それでも「家族の数の変化(ストレス強度15)」や「長期休暇(ストレス強度13)」と比べると上です。借金はストレッサーそのものであるといっても過言ではないでしょう。

なお、1万ドルは大体120万円ぐらいです。住宅ローンを組んでいる人のほとんどは120万円以上の借金を抱えています。こうした人たちは知らず知らずのうちにストレス強度31が生活の中に上積みされているわけですね。

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借金は借金以外のストレッサーを招く

借金にはそれ以外のストレッサーも招き寄せる効果があります。

たとえば、上記の表の中に「夫婦喧嘩の回数の変化(ストレス強度35)」というものがあります。借金がある夫婦は当然、借金がない夫婦よりも夫婦喧嘩をしやすいものです。つまり、借金というストレッサーが夫婦喧嘩というストレッサーを招き寄せているわけですね。

それよりも上位のストレッサーに「離婚(ストレス強度73)」がありますが、これも借金と関係が深いものです。借金を原因にした離婚というのは少なくありません。借金というストレッサーが、離婚というストレッサーを招き寄せているのです。

借金がある人はうつ病や胃潰瘍などの病気になりやすい

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アメリカで行われた調査によって、借金によるストレスを感じている人は、以下のような症状が出やすいことが明らかになりました。

  1. 睡眠時間が短くなる傾向が、約13倍。睡眠時間が短くなれば当然、集中力は低下し仕事のパフォーマンスも下がる。
  2. 深刻な不安を抱える状態が約7倍。
  3. 他人に八つ当たりする傾向が約6倍。
  4. 深刻なうつ状態になる傾向が約6倍。
  5. 潰瘍や消化器官の病気になる傾向が、約4倍。
  6. 心臓病になる傾向が、約2倍。

もう少し具体的に言うと、借金があると、以下のような病気にかかりやすくなります。

不安障害

不安障害とは、過剰な不安を感じる病気のことです。人間の体は、危険に対して不安を感じるように作られています。そうしないと生きていくことができないからです。

しかし、不安障害になると危険でないことに対しても不安を感じるセンサーが過剰に反応してしまい、それまでできていたこと(電車に乗る、家から出る、職場に行く)などができなくなってしまいます。

うつ病

うつ病とは、うつ状態が継続的に続く病気です。以前は「心の風邪」などといわれることが多かったうつ病ですが、現代においてはむしろうつ病は脳の病気であると考えられています。

単にやる気が起きない、ということは誰にでもあるものですが、うつ病になるとその状態が継続し、社会生活が送れなくなってしまいます。

境界性人格障害

境界性人格障害とは、感情が極めて不安定で、イライラ感が抑えられなくなり他人に八つ当たりをしてしまう病気です。「境界性」とは「神経症」と「統合失調症」の境界にある、という意味です。

境界性人格障害には遺伝も関係するとされていますが、環境も大きく影響を与えます。過剰なストレスは境界性人格障害のもととされています。

境界性人格障害になると対人関係の変動が激しくなり、気分に振り回されかんしゃくを起こしたり、激しい怒りを抑えられなくなったりします。周りから人が離れていき、孤立しやすくなります。

燃え尽き症候群

燃え尽き症候群はアメリカの精神分析学者H・フロイデンバーガーが命名した病気です。今まで打ち込んできた仕事、生きかた、人間関係などが期待外れに終わったことによって、今まで打ち込んできたことに対して途端にやる気がなくなってしまう状態のことです。

胃潰瘍

胃潰瘍とは、胃酸が胃の粘膜を消化してしまう病気のことです。通常、胃は粘液を出して胃粘膜を守っているのですが、ストレスがかかり胃酸が過剰に分泌されるようになると胃酸が胃粘膜を消化して傷つけてしまいます。

胃潰瘍は胃粘膜組織が欠損する深さによって、「びらん」と「潰瘍」に分類されます。

心臓神経症

ストレスは心臓に負担をかけることが明らかになっています。ストレスを受けると、自律神経のうち交感神経が優位になり、動悸を感じたり、血圧が上昇したりします。ストレスが取り除かれれば副交感神経が優位になり、動悸は落ち着き血圧も下がって元に戻ります。

しかし、ストレスが長く続いていると常に交感神経が優位になり、動悸や血圧の上昇が続くことになります。必然的に心臓にかかる負担は大きくなり、心臓に異常がないにもかかわらず息切れや高血圧などの症状が出ることになります。

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借金のストレスとうまく付き合う方法

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借金はストレスのもとになることも、ストレスは様々な病気のもとになることもわかりました。では、現時点ですでに借金があるという人は、そのストレスとどのように付き合っていったらいいのでしょうか。

完済は早いに越したことはないが、無理は厳禁

まず、何より大切なのが借金をなるべく早く返そうという意思を持つことです。借金がなくなれば当然、借金によるストレスもなくなります。借金があるという事態に慣れてしまうと、知らず知らずのうちにストレスにさらされるようになってとっても危険です。

借金がストレス源であることは間違いないので、なるべく早く完済するようにしましょう。

ただし、早く返したいという思いが先行するあまり生活に無理が出てしまってはいけません。借金を返すためのカツカツの生活を続けると今度はそれが新たなストレスになりますし、そんな生活は長続きしません。反動で無駄遣いをしてしまうのは目に見えています。

完済はなるべく早く、でも無理のない範囲で。なかなか難しい話だと思います。自分一人で返済計画が立てられないという場合は、フィナンシャルプランナーなどに相談してみてもいいでしょう。

彼らはお金のプロなので、一人一人に合った無理のない、それでいて早く完済できる方法を提案してもらえるはずです。

借金以外のストレッサーを減らす

前述のとおり、世の中には借金以外にも様々なストレッサーがあります。こうしたストレッサーを減らすことができれば心身にかかる負担が少なくなるので病気になる可能性を下げることができます。

ストレッサーになりそうなものからは距離を取ることも大切です。人間関係や仕事より、自分がストレスを感じないことのほうが重要です。

お金のかからないストレス解消を心がける

借金がある限りは、ほかのストレッサーを減らしてもストレスが0になることはまずないでしょう。生活を続けていけば、徐々にストレスはたまっていくはずです。

ストレスがたまってきた場合は、散歩、スポーツ、読書など、お金のかからない方法でストレスを発散するように心がけましょう。

ストレスで体調がおかしくなったら病院へ

ストレスで体を壊した場合は、無理せず病院に行きましょう。治療費がもったいないという気持ちはわかりますが、放置して症状が悪化すればより多くの治療費がかかることになります。病気は小さなうちに直したほうが、治療費も治療にかかる時間も抑えることができます。

症状が多種多様にわたっているという場合は、まずは診療所の内科にかかりましょう。重大な病気が隠れていた場合は、大学病院などの大きな病院を紹介してもらってください。

「これ以上は無理!」そう思ったら債務整理を

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借金によるストレスで体調を崩し、まともに返済するのは不可能になったら、無理をせずに債務整理をされることをお勧めします。

債務整理と聞くと財産が没収され一家離散……というイメージを抱く方も少なくないかと思いますが、現実の債務整理はそんな残酷なものではありません。

もちろんデメリットが全くないわけではありませんが、債務整理自体は借金で首が回らなくなっても人生をやり直すことができる有用な制度です。

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