レバレッジ1倍のFXと外貨預金、お金を増やすならどちら?

最近人気のFX。投機性が高く、短期間で大きな利益を挙げられる反面、短期間で大きな損失を出してしまうこともあるため、全体的にハイリスクハイリターンな投資と見られがちなこの投資ですが、実はうまく使えば外貨預金代わりに使うこともできます。

外貨預金は国内金利と海外金利の差がある場合に、その差額だけ金利をもらったり払ったりするというシステムで、日本より金利の高い国の外貨を選べば金利が得られます。

では、FXを外貨預金がわりに使うのと、銀行の外貨預金を使うのではどちらがお得なのでしょうか。

FXは為替レートの変化で稼ぐ投機的手段

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FXの詳しいルールについては、以下の記事でも紹介しています(参考:FXで借金が生まれる仕組みとは?)が、この記事でも軽くおさらいしておきます。FXとは簡単に言えば、為替レートの変動を利用して儲ける取引です。

たとえば、1ドル100円の時に1ドルを買って、その後1ドル110円の時1ドルを売れば差し引き10円の利益を上げることができます。これが最も基本的なFXのルールです。

そして、FXでは少ない原資(証拠金)に借金を加えることによって、原資の何倍もの取引をすることができます。この仕組み、あるいは原資に対する資金全体の割合をレバレッジと言います。例えば、証拠金が100円、借金が900円、合計で1000円を使って投資する場合、レバレッジは10倍です。

レバレッジが高いと利益も損失も大きくなる

レバレッジが1倍だと、1ドル100円の時に原資が100円では1ドルしか買えないので、仮に1ドルが110円になっても10円しか利益が出ません。

しかし、レバレッジが10倍ならば原資が100円でも資金全体は1000円になるので10ドル買うことができ、1ドルが110円になれば100円の利益が出ます。レバレッジが10倍になると、利益も10倍になるのです。もちろん、逆に損失も10倍になるため、レバレッジを上げることは諸刃の剣であるといえます。

なお、レバレッジを上げると一時的に借金を背負うことになりますが、通常は原資がなくなりかけた段階でロスカットという強制決済システムが作動するため、原資は失っても借金を背負うことはありません。

ただし、ロスカットがうまく働かないケースは往々にしてあるので、絶対安全とはいえません。海外のFX業者は原則、そうしてできた借金を肩代わりしてくれますが、国内の業者は自分で払わなければならない場合が多いので注意が必要です。

レバレッジが1倍のFXは外貨預金とほぼ同じだが、より有利である

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レバレッジは国内業者なら最大で25倍、海外業者なら場合によっては1000倍以上にすることもできますが、もちろん小さくすることもできます。レバレッジの最小値は1倍で、この場合は借金をしないで原資だけで取引をする事になります。

自分のお金を使って外貨を買ったり、売ったりするのですから、基本的な仕組みは外貨預金と全く同じであるといえます。しかし、もちろん両者の間には差異もあります。全体的には、FXのほうが外貨預金よりも有利な仕組みになっています。

FXは証券会社やFX業者、外貨預金は銀行で買える

FXや外貨預金を始める場合、金融機関と契約をしなければなりません。FXは基本的に証券会社で始めます。ごく一部の銀行はFXも取り扱っていることがありますが、証券会社のそれと比べるとサービスが悪いわりに手数料も高いのでおすすめできません。一方、外貨預金は銀行で買うことになります。

FXは手数料が非常に安い!

為替取引をする際には、為替手数料と取引手数料という2つの手数料を支払う必要があります。

為替手数料とは、簡単に言えば外貨を買うときと外貨を売るときの価格差のことです。経済ニュースなどで「1ドル=120円30銭~32銭」という表記を見かけることがあるかと思いますが、これは1ドルを売る時は120円30銭、1ドルを買う時は120円32銭という意味です。

つまり、その場で買ってすぐに売ると2銭損をするわけで、その2銭が手数料です。為替手数料は通貨ペアによって異なり、マイナーな通貨ほど高くなります。

FXの為替手数料(1通貨あたりの手数料)は特にスプレッドということがありますが、最も基本的なドル円の場合、スプレッドは0.2銭~0.3銭程度です。

多くのFX会社は最低取引単位を1000通貨、もしくは10000通貨に定めています。最低取引単位が1000通貨なら、ドル円なら1000ドル単位、ユーロ円なら1000ユーロ単位でしか取引ができません。

仮にドル円のスプレッドが0.3銭、最低取引単位が1000通貨だった場合、1通貨あたりのスプレッドが0.3銭なので、1000通貨でのスプレッドは300銭=3円となります。

一方、外貨預金の為替手数料はもっと高く設定されていることが多いです。ドル円の場合、比較的安いとされているジャパンネット銀行でも5銭、ソニー銀行は15銭、みずほ銀行やりそな銀行に至っては100銭(1円)となっています。

仮に為替手数料が1円の銀行で1000通貨(1000ドル)を取引した場合、それだけで1000円もの手数料がかかってしまい、せっかく得た利息が手数料に消えていってしまいます。

一方、取引手数料はFXだけでかかる手数料ですが、最近は取引手数料が無料の証券会社がほとんどです。したがって、為替手数料+取引手数料の合計は、FXの方が外貨預金よりも低くなるということに鳴ります。

FXは資産のすべてが信託保全される

FXは証券会社を通じて取引を行いますが、仮にこの証券会社が取引中に破綻したらどうなるのでしょうか。結論から言えば、証券会社が倒産しても、投資家の資産には影響が出ません。

証券会社は投資家から預かった証拠金を信託銀行という別の金融機関に委託して、管理させています。要するに、証券会社の資産と投資家の出した資産は別々に管理されるわけです。

なので証券会社の資産がなくなり、負債が膨らんで破綻してしまったとしても、信託銀行にある方の資産は問題なく守られるのです。このような仕組みを信託保全と言います。

証券会社は投資家の資産を全額信託保全することとが義務付けられているので、そのルールを守っている証券会社を選べば、多少時間はかかりますが、信託管理人(弁護士など)を通じて帰ってきます。

なお、以上のルールは国内の証券会社の場合です。海外の場合は信託が義務付けられていないケースも有り、その場合は分別管理(FX会社が保有している資産と顧客から預かった証拠金を社内の別の金庫やよその銀行の口座に保管する。理論上はこれでも安全なはずだが、実際には分別管理がきちんとされていないケースが有る)か信託保全かをその証券会社が自ら選ぶことになります。

このあたりを調べるのは面倒なので、FXを外貨預金としてしか使わない場合は国内の証券会社を利用した方がいいでしょう。

ちなみに、信託銀行は財産を分別管理しているので、万が一信託銀行が破綻した場合もやはり財産は守られます。銀行預金と違い、信託銀行の場合は1000万円を超える分も保護されます。

一方、外貨預金は銀行預金ではありますが、預金保険制度(保護)の対象外となっています。そのため、外貨預金をしている際中に銀行が破綻してしまった場合、お金が帰ってこないことがあります。というか、現実的にはお金が帰ってこない可能性が極めて高いでしょう。

全額保護される決済性預金や、1000万円まで保護される普通預金・定期預金の支払いが優先されるからです。

もちろん、現時点でそれなりに名のある銀行がすぐに潰れる可能性はありませんが、そうはいっても世の中何が起こるかわかりません。

より安全に財産を保護したいのならば、証券会社を利用した方がいいでしょう。

FXは通貨ペアが多い

楽天銀行で提供されている外貨預金は米ドル、ユーロ、豪ドル、ポンド、NZドル、南アランド、中国元の7つです。今回は楽天銀行を例にしましたが、だいたいどこでも取り扱い通貨は似たようなものです。

一方、楽天証券で提供されているFXの通貨ペアは対円通貨ペアが13種類、外貨同士の通貨ペアが11種類です。今回は外貨預金との比較なので外貨同士の通貨ペアは無視しますが、それでも13種類です。FXならば、外貨預金では買えないようなマイナーな通貨に投資することもできます。

ただ、マイナー通貨は金利が高めに設定されている代わりに為替レートが変動しやすいので注意が必要です。

FXは毎日利息がもらえる

FXと外貨預金では、利息を受け取るタイミングが違います。FXの場合、ポジションを保有し続ける限り、毎日ポジションと金利差(スワップ金利と言います)に応じた利息を受け取ることができます。

逆に円よりも金利が低い外貨を買ってしまうと毎日スワップ金利に応じた利息を払うことに鳴りますが、現時点で円より金利が低い通貨は殆ど無いので気にしないでいいでしょう。

一方、外貨預金の場合は原則として、満期日もしくは解約日に利息を受け取ることになります。最近は毎月払い、あるいは年数回払いとしている所も多いようですが、いずれにしろ利息が払われる前に解約してしまうとその分の期間は無駄になってしまいます。利息を余さずもらえるという点でも、FXは有利です。

なお、スワップ金利は変動することがあります。スワップ金利は通貨ペアの金利差ですから、どちらか一方の金利が変わってしまえばそれだけスワップ金利も変動します。金利の変更はそれほど頻繁に行われるものではありませんが、時々変わることは念頭に置いておきましょう。

FXは円高になっても稼げる

海外の通貨を保有する場合、為替レートの変動を受けます。外貨預金は日本円を払って海外通貨を買うシステムですから、購入時と比べて満期時が円高になっていると、損失が出てしまいます。

例えば、1ドル=100円の時点で1万ドル=100万円文の外貨預金を始め、満期日に5%の利息を受け取るとします。

この場合、最初に100万円を払い、それを1万ドルに変えて、最後に1万ドルに利息の500ドルを加えた1万500ドルを受け取ることになります。仮に為替レートが1ドル=100円のままなら1万500ドルは105万円になるので、差し引き5万円の利益です。

しかし、満期日の時点で1ドル=95円になっていたとしたら、1万500ドルは99万7500円にしかならず、年利5%という高金利で運用していたにも関わらず、2500円の損失が出てしまうことになります。

一方、FXの場合は、外貨を先に売り、あとで買い戻すということもできるため、円高でも稼げる可能性があります。例えば、1ドル=100円の時点で1万ドルを売って100万円を手に入れ、1ドル=95万円になった時点で1万ドルを95万円で買い戻せば、100万円手に入れて95万円支払ったのですから差し引き5万円の利益になります。

円高でも利益が上げられるのが、FXの特徴です。ただし、先に外貨を売る場合はスワップ金利に応じた利息を払わなければならないケースが大半なので注意が必要です。

FXは中途解約ができる

FXの場合は中途解約、つまり保有しているポジションの売却は平日ならば24時間いつでも可能です。一方、外貨預金は原則として解約できないとしている銀行が多く、仮にできたとしても金利が下がってしまうというデメリットがあります。

FXと外貨預金は税率が異なる

FXと外貨預金では、適用される税制が異なります。FXで得た利益(スワップ金利による利息と確定した為替差益。含み益は利益とはみなしません)はどちらも雑所得という所得に区分されます。

一般的な預金のように源泉徴収する仕組みがないため、基本的には確定申告をしないといけません。ただし、以下の3つの条件の内どれかを満たす場合は、確定申告をしなくてもOKです。

  • 年収2000万円以下のサラリーマンで、給与所得以外の所得が20万円以下の人
  • 専業主婦や無職の方で所得が38万円以下の人
  • パート収入が65万円以下で、FXなどの所得が38万円以下の人

また、FXで得た利益にかかる所得税は、給与所得や事業所得などの所得税とは分けて計算します。本業の会社員や自営業でどれだけ稼いでいようが、FXで得た利益の所得税は、その利益の20.315%だけです。

また、FXで得た利益や損失は、商品先物取引、株価指数先物取引などと合算できます。FXで利益が出ていても、他で損失が出ていればそれと合算・相殺できるため、所得税が安くなります。

一方、外貨預金の場合は利息と為替差益で分けて考える必要があります。利息に関しては20.315%が源泉徴収されるのですが、為替差益が発生している場合は、原則として確定申告をしなければなりません。

但し、以下の条件に当てはまる場合は、確定申告をしなくても良いことになっています。

  • 年収2000万円以下のサラリーマンで、給与所得以外の所得が20万円以下の人

FXの難点はハイレバレッジの誘惑

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さて、ここまで見てきてくださった多くの方は、どちらかと言えばFXの方に魅力を感じているのではないでしょうか。

実際、私もレバレッジ1倍のFXのほうが遥かに魅力的な商品だと思います。ただし、FXには外貨預金にはない弱点が一つあります。それはレバレッジがかけられるということです。

レバレッジを掛けると、それだけ利益も大きくなりますが、損失も大きくなります。利益がなかなか上がらないからと行って熱くなってレバレッジを掛けてしまい結果大損……ということになってしまっては泣くに泣けません。

FXを外貨預金代わりに利用するつもりならば、何が合っても絶対にレバレッジは1倍から変更しないという強い意志を持たなくてはいけません。