借金から逃げる究極の方法、それが「夜逃げ」です。夜逃げをして、借金から逃れ続ければそのうち借金は帳消しになります。しかし、借金から逃れ続けるというのは簡単なことではありません。
金融機関の影にずっと怯えなければしなければならないわけですし、生活がめちゃくちゃになる恐れもあります。なので基本的には、夜逃げなどせずに債務整理をすることをおすすめします。
しかし、中にはそれでも夜逃げをしたいという方もいらっしゃることでしょう。今回はそんな方のために、夜逃げに成功するコツをお教えしたいと思います。
目次
夜逃げのメリットとデメリットを比較してみよう
まずは夜逃げすることにどんなメリットやデメリットが有るかを見ていきましょう。
成功すれば借金がチャラになる
夜逃げは借金からひたすら逃げ回ることによって、時効を迎えるのを狙う行為です。借金の時効が認められることを時効援用と言います。時効援用のためには、時効を迎えた上で所定の手続きをする必要があります。ただ時間が経てばいいというわけではないのです。
時効援用に成功すれば、今までの借金は全てチャラになります。つまり、夜逃げに成功すれば、借金はチャラになるわけです。
一方、債務整理には任意整理、特定調停、個人再生、自己破産がありますが、この内借金がチャラになるのは自己破産だけです。それ以外の債務整理はあくまでも借金の額が減るだけであって、チャラになるわけではありません。
自己破産をしたくない、けれど借金をなくしたいというときは夜逃げという選択肢もないわけではありません。
夜逃げに失敗すると却って借金が増える
夜逃げを成功させるためには、金融機関から逃げ回る必要があります。逃げ回るということは、借金を1円たりとも返済しないということです。
つまり、夜逃げをしている最中にも、借金は利息や遅延損害金でどんどん増えていくわけです。成功すれば全てがチャラになりますが、その反面失敗したときは余計に借金が大きくなってしまいます。
そこでいよいよ自己破産を選ぶくらいならば、最初から自己破産を選んだほうが時間を無駄にしなくていい、ということになります。
夜逃げをしても時効のカウントがストップすることがある
借金の時効は原則として5年です。しかし、、この時効のカウントは場合によっては中断することがあります。
時効の中断事由には「請求」「差押え・仮差押え又は仮処分」「債務の承認」があります。請求とは裁判上の請求、つまり裁判所に訴えることです。
債権者が請求を行った場合、裁判所から債務者に訴状が送付されてきます。この訴状を無視した場合、原告である債権者の主張が全面的に認められる判決が出てしまいます。それを防ぐためには答弁書という書類を作成する必要があります。
また、場合によっては裁判外の請求でも時効が中断することがあります。このような請求を「催告」と言います。催告は通常、証拠を残すために内容証明郵便を使って行われることが多いです。
差押え・仮差押え又は仮処分は財産を差し押さえることです。
債務の承認とは、債務者が債務の存在を認めることです。原則として、債務者が債務を少しでも返済した場合、それはすなわち債務の存在を認めたことと判断されます。債権者がせめて金利だけでもと言って支払わせようとするのは、債務の承認を狙ったものです。
夜逃げをすると生活基盤が壊れる
夜逃げをすると、当然今まで通りの生活は送れなくなります。職場から足がつかないようにするためには仕事を変える必要がありますが、今の御時世そう簡単に新しい就職先は見つかりません。夜逃げ中ならばなおさらのことです。
また、家も引っ越さなければならないことになるためまた新たに人間関係を気づいていかなければなりませんし、子供がいる場合は転校させることになります。
さらに、夜逃げは心労がたまります。債権者も貸したお金をとりっぱぐれるわけにも行かないので、出来る限りの手段を用いて時効を中断させようとします。それからずっと逃げ回るというのは、相当神経が太くないとできないでしょう。
仮に金融機関の追跡を逃れられたとしても、いつか居場所が掴まれるかもしれないという恐怖にはずっと怯え続けなければなりません。
夜逃げをすると一生ローンが組めなくなる
夜逃げをして仮に借金の時効を迎えた場合、その後基本的にローンは一生組めなくなります。借金を返済せずに踏み倒したという事実が、信用情報機関という民間企業のデータベースに登録されるからです。
一方、債務整理をした場合もそのことが信用情報機関に登録されますが、こちらの情報は通常5年~10年程度で削除されます。情報が削除された後は、また以前と同じようにローンが組めるようになります。
夜逃げをするくらいならば、自己破産をしたほうがまだましな事が多い
夜逃げは借金をチャラにしようとする行為ですが、うまくいくかは未知数であり、なおかつ失敗した場合は借金が増えることになります。
一方、自己破産も同じく借金をチャラにする行為ですが、こちらはうまくいく可能性が夜逃げよりも高く(免責不許可事由などのルールもあるので100%成功するわけではありませんが)、なおかつ失敗してもそれほどデメリットは大きくありません。
自己破産をすると20万円以上の財産を没収されてしまいますが、一般人が持っている20万円以上の財産なんて家と車ぐらいです。
そして、夜逃げをすることになれば結局家は手放すことになります。このことを考えれば、夜逃げするくらいならば自己破産をしたほうがまだマシ、ということになります。
それでも夜逃げをしたいならば、1人でやろう
夜逃げにはメリットよりもデメリットのほうが遥かに多いです。中にはそれでも夜逃げをしたい、自己破産は嫌だという方もいらっしゃるかもしれませんが、それならばせめて夜逃げは1人でやるべきです。
自分が原因で作った借金で家族を巻き込んで夜逃げをする、と言うのはハッキリいって最低の行為です。
家族がいるのならば、夜逃げをするべきではありません。プライドなどはかなぐり捨てて(借金を返済していない時点でプライドなんてものはなくなっているかと思いますが)、自己破産を選んで下さい。
完全夜逃げマニュアル(準備編)
前置きが長くなってしまいましたが、ここからはいよいよ夜逃げを成功させる方法を紹介していきたいと思います。
準備期間をたっぷり取ろう
夜逃げを成功させるにあたって必要なのは「準備」です。何の準備もなく夜逃げをしても、せいぜい1ヶ月で頓挫することは目に見えています。本気で逃げる気があるのならば、まずは準備期間を最低でも1ヶ月、できれば2ヶ月は取りましょう。
この準備期間にやるべきことは色々ありますが、最初にやるべきは不用品の整理です。夜逃げというのは目立たないように行わなければなりません。したがって、夜逃げ時の荷物は基本的に少なければ少ないほどいい、ということになります。
潜伏先に必要なさそうなものは、思い切ってすべて捨ててしまうのがいいでしょう。ただし、いきなりものを捨てまくると近隣の人間に妙に思われてしまいますので、少しずつ処分していきましょう。
一方、潜伏先でも必要なものについては、少しずつ梱包していきましょう。
生活の中で使用する頻度が低いものから少しずつダンボールにまとめて、押し入れの中に保存しておきましょう(頻繁に使うものを先に梱包すると夜逃げ実行日までの生活が成り立たなくなってしまうので注意しましょう)。
何を持っていくか決めよう
さて、問題は何が必要で、何が必要でないかということです。必要なものを捨ててしまっては困りますし、かと言って不要なものまでダンボールにまとめてしまうと荷物が増えてしまいます。
まず、必ず必要になるのは衣類です。最低でも2つ、できれば3つは用意しておきましょう。それから、お金も用意しなければなりません。最初に描いていたとおりに夜逃げが成功する保障はどこにもありません。
そんなときに時間稼ぎをするためにも、手持ちの現金は大いに越したことはありません。その程度の資金さえ用意できないという場合は、そもそも夜逃げが失敗する可能性が高いので、自己破産をしてから生活保護などを受けたほうがいいでしょう。
もう一つ忘れてはいけないのが身分証です。写真付きの身分証明書があればベストですが、ない場合は保険証などでもかまわないでしょう。それから、潜伏先での各種契約の際に必要になる印鑑も忘れずに持っておきましょう。
最低限用意しなければならない持ち物はこれくらいです。これだけ?と思われるかもしれませんが、夜逃げは周囲にバレないことが第一条件です。あれも欲しい、これも欲しいは通用しません。
きちんと退職しよう
現時点で会社勤めをしている場合は、きちんと辞める手続きを取りましょう。そのほうが夜逃げ後の生活をスムーズに再建することができます。会社を退職すると離職票という書類がもらえますが、これは雇用保険の失業手当を受け取るために必ず必要になります。
原則として退職から10日以内に送られてきます。退職したにも関わらず離職票が送られてこない場合は、会社を管轄するハローワークに連絡しましょう。
また、勤務年数が長い場合は、退職金がもらえる事があります。前述の通り、夜逃げの際に持っていく現金は大いに越したことはありません。もらえるものはきちんともらっておきましょう。
なお、夜逃げをするにも関わらず仕事先を変えない、と言うのは自殺行為のようなものなので絶対にやめましょう。会社を辞める度胸すら無いのならば、夜逃げなどするべきではないのです。
就職先に目星をつけておこう
詳しくは後述しますが、夜逃げは基本的に住民票を移さずに行うものです。ただ、住民票を変更しなければ、その分だけどうしても就職先の選択肢は狭くなってしまいます。今時、まともな会社が本人確認すら十分に行えない人間を雇うはずはないからです。
夜逃げをしたものの再就職先が見つからずにホームレスになってしまいました、では笑うに笑えません。夜逃げの前には必ず再就職先を探しておきましょう。
おすすめは住み込みで働ける職場です。昭和には明らかな夜逃げ者で、履歴書にもデタラメしか書いていないような人を雇ってくれる「懐が広い」ところも結構ありました。
最近はめっきり少なくなりましたが(もちろんそれは悪いことではないですが)、今でもそうした職場がないわけではありません。こうした職場はハッキリ言って給料も安いですし、労働条件もよくありませんが、背に腹は変えられません。
携帯電話を解約しよう
夜逃げ前には必ず、携帯電話を解約しておきましょう。携帯電話は最も足がつきやすい道具の一つだからです。
一度解約してしまうと次に作るのが難しくなるのではないか、と思われるかもしれませんが、携帯電話の新規契約に必要になるのは身分証明書だけで、住民票などは不要なため心配はいりません。
大家と不動産会社に連絡しよう
賃貸物件に住んでいる場合は、大家さんと不動産屋に連絡します。問題は引き渡しのときに生じる敷金の返済、あるいは補修費などです。夜逃げをするだけに、現場に軽はずみに後戻りもできません。知人や便利屋などに頼んで、手続位を代行してもらうのがいいでしょう。
荷物を持ち出す手段を考えよう
様々な手続きが終わったら、いよいよ夜逃げに向かって準備をすることになりますが、荷物はどうやって運べばいいのでしょうか。自分で運ぶのもいいですが、車を持っていない人が荷物を運び出すのはハッキリ言ってかなり大変です。
かと言って業者に頼むのにもお金がかかりますし、大人数で派手に荷物を運び出すと目立ちます。
基本的には、自分でできる場合は自分でしてしまったほうがいいでしょう。どうしてもできない場合は宅配業者を利用してもいいですが、その場合はできれば夜逃げをサポートしてくれる業者を通じて紹介してもらったほうがいいでしょう。いわゆる「夜逃げ屋」です。
夜逃げ派は借金をしている人のみならず、DVやストーカーなどの被害者も利用しています。こうした業者は住民票の移転相談や生活保護申請に関するサポートもしてくれることが多いので、味方が誰もいない状況で夜逃げをする人にとっては非常に心強いです。
完全夜逃げマニュアル(実行編)
夜逃げは昼にやろう
夜逃げは「夜」という文字が入っていますが、基本的には昼にやるべきものです。
周りに何もないような田舎に住んでいるのならばともかく、住宅街に住んでいる場合は、夜中にこっそり荷物を運び出そうとしても周囲の人間は必ず騒音で気づきます。夜中に荷物を運び出していたら明らかに怪しいですよね。
夜逃げはとにかく周りに怪しまれないことが肝心です。周りに健全な引っ越しをアピールするためにも、夜逃げは昼に堂々と、いかにも新天地で素敵な生活を送りますみたいな顔をしながら行うべきなのです。
潜伏先を確保しよう
夜逃げをする先はどこにすればいいのでしょうか。原則としては、前に住んでいた場所からはある程度距離がある場所の方がいいでしょう。
近所だと知り有りに合ってしまう可能性がありますし、何よりせっかく一度固めた夜逃げの決意が揺らいでしまう可能性もあります。逃げると決めた以上は、何があっても逃げなければならないのです。
一時的に身を隠すのに向いているのが、ビジネスホテルやカプセルホテルです。宿泊料が安く、なおかつプライバシーも確保できるため、1週間程度をやり過ごすには適切です。
また、最近は宿泊可能なネットカフェも増えてきています。ネットカフェのいいところはインターネットが使えることころです。
前述の通り、夜逃げ前には携帯電話を解約する必要があリます。携帯電話がなくなってしまうと、必要な情報を手に入れることすらままなりません。
もちろん、できれば夜逃げ前に様々な情報を仕入れておくべきなのですが、中にはそれができない人もいるでしょう。ネットカフェはそうした人たちの味方になってくれます。
ただ、当然いつまでもネットカフェやホテルを転々としているわけにもいきません。いずれは腰を据えて住む場所が必要になるでしょう。
ある程度資金に余裕がある場合は、夜逃げ前に夜逃げ屋に相談してみるといいでしょう。
多くの夜逃げ屋は不動産会社と提携しており、そこから安くてそれなりに住める賃貸物件を紹介してもらうことができます。もちろんそれほど快適ではありませんが、贅沢も言ってられません。
そうしたサービスを受けられない場合は、いわゆるマンスリーマンションを使うのがいいでしょう。マンスリーマンションとは、予め家具がついてくるマンションです。
敷金や礼金なども設定されていないことが多く、入退去の手続きもかなり簡単なため、夜逃げ生活にはぴったりです。その分家賃が少し高めに設定されているのが難点ですが、不動産会社に新居を紹介してもらうまでのつなぎの場としてはかなり優秀です。
なお、潜伏先はあまり田舎すぎる場所は避けて、ある程度人が多いところを選んだほうがいいでしょう。田舎は人がめったに入ってこないのでいきなり移ってくると目立ちますし、生活をする上でも不便です。
完全夜逃げマニュアル(生活安定編)
新居が見つかったからと言って安心してはいけません。安心からつい夜逃げ以前の情報を漏らしてしまったら、全てが水泡と化してしまいます。生活を安定させるためにもっとも重要なのが、とにかく夜逃げ以前の情報を外部に教えないことです。
携帯電話の契約をしよう
とりあえず新たな潜伏先が見つかったら、携帯電話の契約をしましょう。このとき、契約する携帯電話会社は、夜逃げ前とは別のところにした方がいいでしょう。もちろん、携帯電話会社がそう簡単に個人情報を漏らす可能性は限りなく低いですが、念のためです。
また、携帯電話も極力自分からはかけないようにしましょう。どうしても使う場合は非通知でかけて下さい。ダイヤルの前に「184」を付けると非通知になります。
携帯電話番号は信頼できる法人以外には極力教えないようにしましょう。寂しさのあまりいわゆる「親友」に携帯電話番号を教えてしまう人が少なくないようですが、それは危険です。
その親友は、悪気なく他人に電話番号を教えてしまうかもしれないからです。夜逃げをして新天地での生活を蔡家する以上、夜逃げ前の人間関係は全て諦めるくらいの気持ちで臨まなければなりません。
盗聴器の発見サービスを利用しよう
ちょっと考え過ぎでは?と思われるかもしれませんが、念のために盗聴器が家につけられていないかを確認しておいたほうがいいでしょう。
業者に依頼するのが難しいという場合は、自分で盗聴器探知機を使ってもいいでしょう。最近は2000円程度のものも少なくありません。もちろん、その分品質はそれなりですが、何も使わないよりはよっぽどマシです。
現金払いを徹底しよう
夜逃げ前に作っていたカードは、この際全て処分してしまいましょう。クレジットカードはもちろん、マイレージカードと言ったたぐいのものも全て処分すべきです。
お金が下ろせなくなってしまうと困るので銀行のキャッシュカードだけは残しておくべきですが、それも最低限にとどめておいたほうがいいでしょう。また、お金を下ろす際には、なるべく自宅から離れたATMや窓口を選びましょう。
お金を支払うときは、必ず現金、もしくは金券ショップなどで購入した金券など、足がつく可能性がない手段を選びましょう。
住民票を移すのは時間が経ってからにしよう
夜逃げをした人の居場所は、概ね住民票の移動からバレます。債権者は、正当な権利に基づいて戸籍の附票や住民票の除票を確認することができます。
したがって、夜逃げをする際には基本的に住民票を移してはいけません。しかし、住民票を移さないと、それはそれで様々なデメリットが発生します。
まず、住民票を移さないと正社員として就職するのが極めて難しくなります。まともな会社ならば、正社員には必ず住民票を提出させるからです。
たとえ採用になっても、住民票が出せないとなったらどうしても疑われるでしょう。日雇いの仕事ならば身分証明書でなんとかなる場合もありますが、そうした仕事の待遇はお察しレベルです。
また、運転免許証の更新は旧住所地でないとできません。はがきも旧住所地に届くことになります。どうしても免許証が必要な場合は県内の別の場所に夜逃げすることになりますが、これは夜逃げの鉄則である「なるべく遠いところに逃げる」と矛盾してしまいます。
確定申告も旧住所地でないとできません。書類自体は郵送や電子データでも遅れるのでそれほど困りませんが、一応注意は必要です。
また、あまり興味のない人も多いかもしれませんが、住民票を移さないと選挙権や被選挙権が行使できなくなってしまいます(権利自体がなくなってしまうわけではありません)。投票券は旧住所に届きますし、投票所も旧住所に基づいて決まるからです。
まあ、夜逃げで手一杯な人は選挙に興味など持っていられないかもしれませんが……。
その他、所得証明書や印鑑証明書などの各種書類も旧住所の役所でなければ発行できません。
このように、住民票を移さないことによるデメリットは数多くあります。1人で夜逃げをする場合はそれほど堪えるものでもありませんが、問題は家族で夜逃げをする場合です。
特に子供がいる場合、夜逃げに対するハードルは極めて高くなります。子供がいる場合の夜逃げは全くおすすめできません。
ただし、住民票は一生移せないというわけでもありません。時効を迎えて、時効援用の手続きをすれば債権者が債権者でなくなるためです。しかし、時効を迎えるためには最低でも5年待つ必要があります。5年間も耐えられる、という人は決して多くはないでしょう。
夜逃げにはどれくらいの費用が必要?
夜逃げにも当然お金がかかります。十分な資金を持たずに夜逃げをしても、失敗する可能性が高いです。では、いったいいくら用意しておけばいいのでしょうか。
まず、夜逃げ業者を利用する場合は、そこに支払う費用が必要です。
夜逃げ業者と一口に言ってもピンきりですが、最近は引っ越しのみならず転校手続き、引越し後の公的手続きの代行、就職先の紹介・相談などもしてくれる(代わりに料金が高い)業者が多いようです(詐欺業者もあるので依頼には十分気をつけましょう)。
この場合、業者に支払う費用は10万円~15万円程度が相場です。
一定期間自宅を持たずにホテルなどを転々とする場合は、その間の生活を支えるお金も必要になります。いくら必要になるかはわかりませんが、最低でも10万円、できれば20万円は用意したいところです。
生活再建にもお金がかかります。必要最低限の家具や家電がなければ、まともに暮らしていくことはできません。冷蔵庫、洗濯機、布団など、最低限必要なものだけでも10万円はかかると見込んでおいたほうがいいでしょう。
地獄の沙汰も金次第、とはよくいいますが、借金のための夜逃げが成功するかどうかも結局は金次第なのかもしれません。
夜逃げ以外の方法を考えよう
ここまで読んできてくださった方は、夜逃げのハードルの高さとデメリットの大きさを十分理解できたのではないかと思います。
しかし、いくら夜逃げを思いとどまったところで、現在抱えている問題=借金を解決できなければ苦しいことには代わりありません。では、夜逃げ以外にはどんな解決方法があるのでしょうか。
債務整理ならば合法的に借金がチャラになる
夜逃げの前に検討していただきたいのが、債務整理です。債務整理とは、合法的な手続きによって借金をチャラにしてしまう制度です。債務整理は大きく以下の4つに分けることができます。
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
任意整理とは、その名の通り任意、つまりは債権者と債務者の話し合いによって借金(主に将来払う利息)をカットしてもらうための手続きです。そんな話し合いに債権者が同意してくれるの?と思われるかもしれませんが、大抵の債権者は同意してくれます。
話し合いを拒否して、自己破産されても困るからです。債務者にされると原則として、債権者は本来取り戻せていたはずの債権を放棄することになります。それならば任意整理で元本だけでも回収しておいたほうがまだマシ、というわけですね。
特定調停は内容自体は任意整理と似ていますが、こちらは任意の話し合いではなく、簡易裁判所が仲介に入ってきます。専門家の力を借りなければ難しい任意整理と違って、こちらは比較的個人でも行いやすくなっています。
反面、支払いが滞ると強制執行にかけられるというデメリットもあります。
個人再生は、借金を原則として5分の1にまで圧縮し、それを3年~5年かけて返済していく制度です。任意整理や特定調停が将来支払う利息をカットするものであるのに対して、こちらは元本そのものが減るため、負担が大幅に少なくなります。
自己破産と違って借金をした理由を問われることもなく、整理する借金を選択できるため、住宅ローンを整理の対象から外せばマイホームも守れます。
反面、自己破産と違って支払い能力(定期的な収入)がなければ選択できず、借金総額が5000万円以上だと選べないというデメリットもあります。
自己破産は借金をチャラにする制度です。メリットは最も大きいですが、反面借金の理由や申請後の態度(資産を隠そうとする)等によっては免責が認められないことがある、時価20万円以上の資産は原則として没収され債権者に配分されるなどのデメリットもあります。
ただ、自己破産のデメリットと夜逃げのデメリット、どちらがマシかと言えば断然自己破産の方です。
自己破産は夜逃げと違って今後一生借金が組めなくなるわけではないですし(前述の通り、10年程度経過すれば事故情報が消えるためまた借金ができるようになります)、なにより見えない債権者の影に怯えて暮らす必要がなくなります。
債務整理についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、気になった方はこちらも参考にしていただければと思います。(参考:借金の債務整理の種類とそれぞれのメリット・デメリット)
福祉の世話になる
福祉の世話になるのはお世辞にもかっこいいこととはいえませんが、背に腹は変えられません。ずっと社会におんぶにだっこで生きていくのはまずいですが、生活再建のために一時的に世話になるのは決して恥ずかしいことではありません。
普段きちんと社会保険料を払っているのならば、堂々と制度を利用すればいいのです。
福祉制度と言えば生活保護を想像される方も多いかと思いますが、実は生活保護というのは他に頼るものがまったくないという人が選択するべき最後の手段です。他に選択する物がある場合は、そちらを優先的に選びます。
まず、失業してしまった場合は失業保険を受け取ることができます。失業保険とは正確に言えば、雇用保険の一部である基本手当のことです。
就職していたときに雇用保険料を支払っていて、就職する意思がある人ならば原則として誰でも利用できます(それ以外にも細かいルールがあるので断言はできませんが)。
失業保険の給付額や給付期間については、当サイト内の以下の記事が役立ちます(参考:カードローン利用中に無職になったら必ず金融機関に連絡しよう)。
病気や怪我で働けなくなってしまった場合は、傷病手当金という制度が使えます。傷病手当金は健康保険に組み込まれている制度で、仕事ができず、雇用主(会社)から十分な給付が受けられないときにもらえるものです。
怪我や病気の理由は問われません。家から近所のコンビニに自転車で向かっていたら転倒して怪我をしてしまった場合でも、ガンの治療を受ける場合でも等しく使えます。
なお、仕事中(通勤中含む)の行動が原因による怪我や病気の場合は労災(後述)を使うことになります。傷病手当金の支給額は、原則として標準報酬日額の3分の2です。
標準報酬日額とは言い換えれば1日あたりの収入のことです。つまり、傷病手当金は通常の収入の3分の2になる、ということです。支給期間は原則1年6ヶ月間です。
一方、労災とは仕事中の行動が原因で怪我や病気になった場合に申請するものです。例えば、仕事中に高所で作業をしていたら転落して怪我を追った場合や、仕事が原因でうつ病になった場合などは、こちらを申請します。
ただし、労災は傷病手当金と比べて認められるまでに時間がかかるため、労災の可能性が大きい場合でもまずは傷病手当金を申し込むのが通常です。その後労災が認められた場合は、労災が遡って支給され、その支給額の中からすでにもらっていた傷病手当金を変換します。
労災のメリットは、傷病手当金と比べて支給額が高いところです。傷病手当金の支給額は給料の3分の2(66.6%)でしたが、労災は80%です。また、労災の場合は医療費が全て無料になるというメリットもあります。
支給期間は原則1年6ヶ月間ですが、その後の審査でその病気や怪我が特定の状態を満たしていた場合は、傷病補償年金に切り替わります。条件を満たしていない場合は、その後も労災を受け取れます。(参考: うつ病で働けなくて借金があっても死ぬ必要はまったくない )
一家の大黒柱が亡くなってしまい、収入が大きく減ってしまった(もしくはなくなってしまった)場合は、遺族年金が利用できます。
遺族年金はその亡くなった人が国民年金や厚生年金に入っていた場合に受け取れるもので、支給額はその人の入っていた保険の種類や家族構成などによって異なります。
目安としては、18歳以下の子供が1人、亡くなった人がサラリーマンの場合、支給額は月額で約13万円程度になります。
この他にも様々な福祉制度がありますが、どれも当てはまらないという場合は生活保護を受けることになります。
ただし、生活保護は実は結構条件が厳しい(援助してくれる身内がいない、資産が全くない、働けないなど)があるので注意が必要です。(参考:生活保護の条件とは?借金が合っても大丈夫?)
最後にもう一度念押し
くどいと思われるかもしれませんが、最後にもう一度。夜逃げはできることならばすべきではありません。今の日本には様々なセーフティネットがありますし、債務整理で借金の負担は減らせるからです。