投資初心者でも比較的取り組みやすいことから今人気を集めている投資信託。しかしながら、当然投資信託に取り組んでいる人全員が勝ち続けているわけではありません。
投資信託でお金を増やすためには運も必要ですが、適切なファンドを選ぶことができれば勝つ確率を上げることができます。今回は投資信託で買わない方がいいファンドと、勝ったほうが良いファンドの見分け方を紹介したいと思います。
目次
投資信託は投資家のお金をファンドマネージャーが運用する仕組み
まず、投資信託について詳しくご存じない方のために、仕組みを簡単に説明させていただきます。投資信託とは、複数の投資家が拠出したお金を一つの大きな塊として扱い、運用の専門家(ファンドマネージャー)が投資・運用して、その利益が投資家に分配されるシステムのことです。
資金の細かい運用方法は投資家が決定しますが、どのファンド(投資信託の多少となる金融商品)を購入するかは投資家が決めます。
一度運用指図を出してしまえば後はファンドマネージャーが運用してくれるので、高度な知識がなくても取り組みやすいのが特徴です。
また、原則として毎月一定の額を拠出するため、自動的にファンドが安いときにはたくさん買い、ファンドが高いときには少しだけ買うことになります。平均単価が勝手に下がっていくので、利益が比較的上がりやすいのもポイントです。
反面、ファンドの殆どは元本保証型ではないため、運用次第では赤字になることもあります。投資信託には一定のリスクがあることを必ず理解しなければいけません。
ファンドによって利益が出やすかったり出にくかったりする
投資信託では複数あるファンドの中から幾つかを選んで資金を振り分けます。取り扱われているファンドの数は証券会社によって異なりますが、大手の証券会社だと5000を超えることもあります。そして、当然全てのファンドで利益が出るわけではありません。
ファンドによって利益が出にくかったり、出やすかったりします。当然買うべきファンドは後者ですが、では一体どうやれば利益が出やすいファンドを見分けることができるのでしょうか。
利益が出にくいファンドの特徴
投資信託で利益を出すためには、利益が出にくいファンドを知る必要があります。利益が出にくいファンドを避けることができれば、必然的に利益が出やすいファンドを選ぶことになるからです。では、利益が出にくいファンドとは一体どのようなものなのでしょうか。
信託報酬が1.5%以上のアクティブファンド
投資信託で買えるファンドは、大まかにインデックスファンドとアクティブファンドに分けることができます。インデックスファンドとは、日経平均、TOPIX,ダウ平均などの特定の指標に沿うような値動きを目指すファンドのことです。一方、アクティブファンドとは、そうした指標よりも高い利益を出そうとするものです。
これだけを見ると、より高いところを目指すアクティブファンドのほうが有利に見えますが、実はそうとも言えません。アクティブファンドは信託報酬(運用にあたって支払わなければならない費用)が高いためです。
信託報酬は日割りで純資産から減っていきます。例えば、信託報酬が0.365%の場合は、1日に月0.001%が純資産から取り崩されていきます。
アクティブファンドは平均以上の結果を出すために、様々な調査を行います。そのため、インデックスファンドよりも信託報酬が高くなってしまうのです。
日経新聞社の記事によれば、日経平均及びTOPIXに連動するインデックスファンドの信託報酬が年間で0.7%程度であるのに対して、アクティブファンドは1.6%程度です。つまり、アクティブファンドの方が2倍以上も信託報酬が高いわけです。
最近は比較的低コストなアクティブファンドも登場してきていますが、それでもインデックスファンドより高いことには代わりありません。
アクティブファンドの7割はインデックスファンドを実績で下回る
また、アクティブファンドはあくまでも指標よりも高い利益を出そうとするものであって、平均以上の利益が出ることが約束されたものではありません。
高い信託報酬を払わされた上、インデックスファンド以下の利益しか上がらない(もしくは損失が出る)ことも十分にありえるのです。統計上は、日本で買えるアクティブファンドの7割はインデックスファンドを下回る運用実績しか挙げれていません。
それでも平均を上回れるアクティブファンドが選べれば問題ないのですが、それは投資初心者にとっては非常に難しい話です。そもそも投資上級者と呼ばれる人がアクティブファンドで成功していても、それが実力によるものなのか、それとも偶然の産物なのかを見極める方法もありません。
インデックスファンドは全体的に信託報酬が低く、大損もしにくいため投資信託初心者にはこちらのほうがおすすめです。
買付手数料が高いファンド
投資信託には前述の信託報酬とは別に、買付手数料(販売手数料)という費用もかかります。これは証券会社で投資信託を購入する際に支払う手数料のことです。
買付手数料はファンドごとに違いますが、高いものだと4%程度に達することもあります。特にアクティブファンドは手数料が高いものも多く、それだけで不利になってしまいます。
一方、インデックスファンドは手数料が1~2%のものが多く、また最近は買付手数料が無料の物も増えてきています。買付手数料が無料のファンドをノーロートファンドということがあります。手数料が低ければそれだけ利益が出やすいので、基本的にはノーロードファンドをおすすめします。
ちなみに、同じファンドであっても証券会社によって買付手数料が異なることがあります。
例えば、「グローバルソブリン・オープン(毎月分配型)」というファンドは、カブドットコム証券や楽天証券では買付手数料は無料(ノーロードファンド)となっていますが、マネックス証券は1.575%となっています。ネット証券は買付手数料が安く設定されていることが多いですが、店舗を持つ証券会社は高めに設定されていることもあるので要注意です。
信託財産留保額が高いファンド
買付手数料、信託報酬に次ぐ、最後の投資信託の費用が信託財産留保額です。信託財産留保額とは、ファンドを売る時の手数料のことです。
ファンドの売却には場合は手数料がかかります。その手数料を全投資家で均等に負担するとなると、ほとんど売却をしない投資家は手数料だけを余計に支払わされることになって不公平です。その不公平を解消するのが信託財産留保額です。
信託財産留保額は売却するファンドの時価総額の0.1%程度となることが多いです。例えば、10万円分のファンドを売る場合、10万円×0.1%=100円が手数料となります。長期間保有したファンドを売却する場合は、信託財産留保額が0円になるファンドも珍しくありません。
ファンドによって信託財産留保額はまちまちですが、買付手数料や信託報酬と比べるとその利率は高いものではないため、前者の2つほど気にする必要はありません。しかし、売却の際にはいくらか手数料がかかるということは、覚えておいたほうがいいでしょう。
純資産が10億円未満、もしくは減り続けている
ファンドの時価総額を純資産と言います。それに対して、純資産を一定の口数(通常は1万口)で割ったものを基準価額と言います。投資信託では通常、純資産のほうが重要です。
基準価額だけでは、そのファンドが割安であるか、割高であるかを判断することはできないからです。
例えば、日経平均連動型のインデックスファンドの場合、日経平均が高い時に始まったファンドは基準価額が低くなりますし、そうでないものは高くなります。
異なるファンドの基準価額同士を比べても、大した意味はありません。それよりは直近の基準価額が増えているか減っているかのほうが重要ですが、純資産はさらに重要です。
純資産が小さいファンドは、値動きの変動が激しいため、おすすめできません。短期売買を狙うのならば値動きの激しいファンドもそれなりに有益なのですが、投資信託は基本的に長期投資をするためのものなので、値動きが激しいものは避けるべきです。
目安としては最低でも10億円、できれば30億円のものを買うようにしたいものです。
また、純資産が減少しているということは、解約が相次いでいたり、あるいは利益が上がっていなかったりするファンドである可能性が高いです。
特に市場が活況を呈しているにも関わらず純資産が減り続けている場合は、そもそもそのファンドが粗悪である可能性が高いです。そうしたファンドは選ばないようにしましょう。
まとめると、純資産が少ないか減り続けているファンドは避けた方がいい、逆に言えば純資産が多く増え続けているファンドを選んだほうがいい、ということになります。
信託期間が短いファンド
ファンドの中には、信託期間が定められているものがあります。例えば、信託期間が3年とか5年とか定められている場合、その期間が過ぎるとファンドは満期を迎えることになります。満期を迎えると、ファンドは強制的に売却され、保有口数に応じてお金を受け取ることになります。つまりは償還されるわけです。
投資信託は長期的に行うべきものですから、信託期間があまりにも短すぎるファンドはなるべく避けたほうがいいでしょう。
最低でも信託期間は10年以上、できれば無制限のものを選ぶようにしたいものです。最近は無制限のものが増えてきていますので、選ぶこと自体はそれほど難しくありません。
なお、ファンドの純資産や口数が著しく減少し、効率的な運用が難しくなった場合は、信託期間に関係なく強制的に償還されることがあります。こうした手続を繰り上げ償還と言います。
ファンドの約款には「純資産や口数が行く追加になった場合は繰り上げ償還を行います」と書いて有ることが大半です。純資産や口数が増え続けている場合は暫らくは問題ないかと思いますが、念のために確認しておきましょう。
分配型のファンド
ファンドの中には、お金が分配されるものがあります。分配とは、投資信託で得た利益の一部を投資家に分配することを目指すファンドです。あくまでも分配を目指すファンドなので、必ずお金がもらえるわけではありません。運用益が出なくても分配金が出ることがありますが、それは元本を取り崩して配られるものです。
分配の間隔は月1回だったり、年2回だったり、年6回だったりと様々です。一方、分配金が配られないファンドは、運用益を再投資に回します。
分最近は配金ファンドの中でも毎月分配型ファンドが人気を集めているようですが、分配金がもらえるファンドは原則としておすすめできません。分配金が配られるぶん、純資産が減少し複利効果が得られなくなってしまうからです。
分配金を受け取ると総資産が減る
仮に100万円を年利5%で運用するとした場合、1年目終了時点でのファンドは105万円になります。
分配金を配分する場合、運用益の5万円が取り崩され、投資家に配られます。残った100万円を再投資するので2年目終了時点では再び105万円になり、運用益の5万円は再び投資家に配られます。
これを30年間繰り返すと、受け取れる分配金の合計額は5万円×20年=150万円、元本は100万円なので、資産合計額は250万円となります。
一方、分配金を分配しない場合、1年目終了時点で運用益の5万円を取り崩さず、2年目は105万円を再投資します。105万円に年5%がかかるので、2年目終了時点での資産合計額は105万円×(1+5%)=110.25万円となります。
3年目はこの110.25万円を再投資するので、3年め終了時点での資産合計額は110.25万円×(1+5%)=115.7625万円になります。
これを30年間繰り返すと、資産合計額は約432万2000円になります。分配金を受け取らなかったことによって、資産合計額が180万円以上も増えました。
分配金を受け取らず運用益を再投資すると、利息にさらに利息が付くため資産が加速度的に増えていくのです。分配金がもらえるファンドは一見魅力的に見えますが、このような事情があるため基本的には買わないほうがいいでしょう。
テーマ型ファンド
テーマ型ファンドとは、ITやバイオ、エコなどの特定の分野に関連した企業の株式を詰め合わせたファンドのことです。
テーマ型ファンドは特定の分野に集中投資することになるため、値動きの変動幅が大きくなりやすく、初心者の方にはあまりお勧めできません。
短期投資ならばこうした投資先を選ぶのも一つの手ではあるのですが、投資信託のような長期投資にはあまり向いていません。投資信託は長期投資・分散投資が原則になるため、特定の分野に資金を突っ込むテーマ型ファンドとは相性が悪いのです。
また、そもそも一つのテーマが長続きすることはほぼありません。どんな分野も次第に飽きられていきます。長期的なテーマに見えても結局は数年程度で廃れることが多いです。
元本確保型ファンド
投資信託で買えるファンドはほとんどが元本確保されていない株式や債券、不動産投資信託、あるいはそれらを組み合わせたバランス型ファンドですが、中には預金や保険商品などの元本確保型のファンドもあります。元本確保とは、満期まで待てば必ず元本が確保されるファンドです。元本保証の定期預金などと違い、途中で解約した場合は元本が保証されるとは限りません。
とはいて待てば元本は取り戻せるのですから、一見低リスクで優れたファンドにも思えますが、長期投資が減速の投資信託ではあまりお勧めできません。
投資というのは基本的に、長期間やればやるほど年間の平均利回りが安定してきます。なので長期間で投資をする場合は、ある程度リスクを取ってでも平均利回りが高いファンドに投資すべきです。
しかし、元本確保型のファンドはいずれも利回りが非常に低いため、長期投資には向いていません。また、元本保証型ファンドは最初に利回りが決まっていることが多く、インフレに弱いという欠点もあります。
とにかくリスクを取りたくないという場合は、投資信託で預金や保険商品のファンドを買うよりも、銀行で定期預金をしたり、民間の保険会社で保険に入ったほうがいいでしょう。
こちらはいずれも原則元本保証型なので、途中で解約しても元本は確保されます。また、投資信託ではないので信託報酬などの手数料もかかりません。
為替ヘッジファンド
投資信託で買えるファンドの中には、外国の株式や債券、不動産などを対象としたものがあります。こうしたファンドは円安、あるいは円高の影響を受けます。円安になると利益が増えますが、円高になると利益が減ります。このようなリスクを為替リスクといいます。
為替ヘッジファンドは、そのようなリスクが出ないように設計されたファンドです。ヘッジとは「避ける」という意味を持つ英単語です。
為替ヘッジの方法はファンドにより異なりますが、外貨建て資産へ投資すると同時に、一定の為替レートで外貨と円を将来交換する契約をあらかじめ結んでおくという方法を取ることが多いです。
たとえば、1ドル=120円の時に100ドル分(1万2000円分)ファンドを買い、それと同時に将来1ドル=120円でドルを売るという契約を結びます。
その後、そのファンドが110ドルに値上がりして、なおかつ1ドル=100円というレートになったとします。この場合、為替ヘッジをしていなければ、110ドルのファンドを1ドル=100円のレートで売るので、売却金額は1万1000円となり、差し引き1000円の損失が出てしまいます。
しかし、為替ヘッジを行っておけば、1ドル=120円で買い取ってもらえるので、売却金額は1万3200円となり、差し引き1200円の利益が出ます。為替ヘッジをしておけば、円高時の利益の減少を回避できるのです。
為替ヘッジは手数料がかかり、円安でも利益が上がらないという欠点がある
しかし、為替ヘッジには欠点もあります。まず、為替ヘッジでにはコストがかかります。1ドル=120円で買い取ってもらう契約を結ぶ際に、費用がとられるのです。
また、為替ヘッジをすると、円高時の利益減少を防げる反面、円安時の利益伸長もできなくなってしまいます。
たとえば前述の例で1ドル=140円になった場合、為替ヘッジをしていなければ110ドルを1ドル=140円で売るので、売却金額は1万5400円となり、差し引き3400円の利益が出ます。しかし、為替ヘッジをしていると、差し引き1200円の利益しか出ません。
問題は将来円高になるか円安になるかということですが、これは正直誰にもわかりません。近い将来に1ドル=60円ぐらいになると予想する人もいれば、1ドル=160円程度になると予想する人もいます。
円高になるか円安になるかわからない以上は為替ヘッジをするもしないも一長一短ですが、為替ヘッジをするとその分手数料がかかるので、仮に円高になった場合に二重に損をすることになります。そのようなことを考えると、あまりお勧めはできません。
ターゲットイヤーファンド
投資をする際の大原則として、年齢を重ねるにつれて株式などのリスクの高い債券の比率を下げる、というものがあります。
20代や30代のうちは株式が全ポートフォリオの60%以上を占めていても許容できることが多いですが、60代、70代を過ぎてそのようなポートフォリオを組むのは危険です。
株式中心のポートフォリオは長期的に見れば利回りが高くなりますが、短期間の間に損失を出す確率も高まります。
若い人は長期投資ができるので一時的に損失が出てもその後時間でカバーできることが多いですが、高齢者はそれができません。だから、年を取ったらハイリスクな株式を減らしてローリスクな債券を増やしたほうがいいのです。
しかし、頻繁にポートフォリオを見直すのは面倒です。そこで見直しを代わりにやってくれるのがターゲットイヤーファンドです。ターゲットイヤーファンドを買うと、自動的に資産配分が調整されていきます。こちらから特に何か手続きを行わなくても、自動的に株式の比率が下がり、債権の比率が上がっていくわけです。
これは一見とても便利に見えますが、結論から言えば、現代ではあまりお勧めできないファンドです。
ターゲットイヤーファンドはお金持ち向け
現在販売されているターゲットイヤーファンドのほとんどは2020年、2030年、2040年、2050年のいずれかを「ある時期」に設定しています。
たとえば「三菱UFJ ターゲット・イヤーファンド 2030」の場合、当初は国内債券32%、国内株式35%、外国債券10%、外国株式20%という割合で運用されますが、2030年を迎えた後はほとんどの資産が低リスクな債券や定期預金にうつります。
そのため、老後の資産を守るのには向いていますが、老後も資産を増やすのには向いていません。老後が短い昔はそれでもよかったのかもしれませんが、老後が長い現代においては、これでは守りを固めすぎです。
運用益が出ない分を別の資産や所得などでカバーできるお金持ちはターゲットイヤー型を選んでも問題ないかもしれませんが、そうでない人は別のファンドを選んだほうがいいでしょう。
また、ターゲットイヤーファンドはリスク資産を減らしていくだけのバランス型ファンドとも言えます。そして一般的なバランスファンドより、信託報酬は高めに設定されています。
ここに書いてある通りに投資しても勝てないこともある!?
ここまで読んでくださった皆さんには大変申し訳ないのですが、これらの理論はすべて一般論であり、実際にこれらのファンドを避ければ必ず利益が上げられるわけでもありませんし、逆にこれらのファンドを買うと必ず損をするわけでもありません。あくまでもここで紹介したファンドは利益があまり得られない可能性が高い、というだけです。
投資の世界というのは非常に理不尽なものですから、ベストを尽くしても勝てるという保証は全くどこにもありません。逆に適当にやって敗けるとも限りません。投資の世界に足を踏み入れる上では、そのことを十分理解する必要があります。