シェアハウス経営のメリットとデメリットは?資格や許可はいるの?

近年、都市部を中心にその数を増やしているシェアハウス。従来のアパートやマンションとと比べて賃料が安い物が多く、若い人たちに人気です。最近はただ安いだけではなく、独自のコンセプトのもとに作られた個性的なシェアハウスも増えてきており、比較的所得の高い層も顧客になりつつあります。

経営者の視点から見た場合、従来の賃貸アパートやマンションと比べて単位面積あたりの賃料が高くなりやすく、入居者も決まりやすい反面、住民同士の距離が近いことによるトラブルが発生しやすいなど、相応のリスクもあります。

今回はシェアハウス経営のメリット・デメリットや始め方を丁寧に紹介していきます。

シェアハウスは個室以外を共用するタイプの物件

シェアハウスとは、各入居者にはそれぞれ独立した個室が与えられる一方で、トイレや風呂、キッチンなどは共有するタイプの賃貸物件です。

一口にシェアハウスと言ってもその種類は様々で、女性専用物件やエンジニア専用物件、体験農業付きシェアハウスなど、そのコンセプトは非常に多岐にわたります。

シェアハウスとルームシェアの違い

シェアハウスは共用部分を共用するだけで、居室部分は互いに独立しています。各入居者は別々に大家と賃貸借契約を結びます。

シェアハウスに済む住人同士の距離は、通常のアパートやマンションの住人同士よりは近くなりますが、基本的には他人同士です。

一方、ルームシェアとは、一つの個室を複数人でシェアします。全く知らない他人と一つの個室をシェアすることはめったになく、大抵は友人や親族など、もともと関わりがあった人とシェアします。

契約はシェアメイトの代表者の一人が大家と契約をするのが一般的ですが、全員がそれぞれ大家と契約することもあります。ルームシェアを行う・行わないは原則として賃借人が決めます(ルームシェア不可の物件は除く)。

拡大するシェアハウス市場

シェアハウスは近年、急速にその数を増やしています。シェア住居専門メディア「ひつじ不動産」によれば、2005年にはわずか2000戸にしか過ぎなかったシェアハウスは、2013年には1万8000戸以上にまで増加しています。2016年には2万戸を突破し、その勢いは留まるところを知りません。

入居問い合わせの平均年齢は2008年に27.7歳だったのが2013年には28.9歳にまで増加しており、正社員の割合も16%拡大しました。

シェアハウスは普通の賃貸アパートやマンションに済むのが難しい人が住むものから、ある程度余裕がある人が自らの好みに合わせて能動的に住むものに変化しつつあるようです。

男女割合は2007年頃までは3:7ぐらいでしたが、その後は次第に女性の比率が高まり、2010年頃に2:8を突破しました。特に若い女性が、シェアハウスに対して興味を持っていることがわかります。

シェアハウス経営のメリット


シェアハウスは通常の賃貸アパートやマンションには見られない様々なメリットがあります。中でも特に大きなメリットは以下の5点です。

単位面積あたりの賃料が高くなる

賃貸物件というものは基本的に、広い住戸を1人に貸すよりも、狭い住戸を複数人に貸すときのほうが単位面積あたりの賃料は高くなります。

例えば、60m2のマンションの賃料相場が12万円の地域で、各個室の面積が20m2を貸し出す場合、単位面積あたりの賃料を揃えるならば4万円に設定することになります。

しかし、実際には賃料を5万、6万にしても入居者が集まることが多いです。安価なシェアハウスは需要が増加しているため、単位面積あたりの賃料を高く設定しても商売が成り立つことが多いのです。

戸数が多くなるため、収益が安定しやすい

1戸当たりの面積を小さくすれば、それだけ戸数が増えます。戸数が増えれば1戸当りのウェイトが小さくなるため、1人や2人住民が出ていってしまっても稼働率が極端に下がることはありません。

ある程度空き部屋があっても賃料を確保しやすいのは、特に不動産投資初心者にとっては大きな魅力であるといえます。

修繕コストが余りかからない

通常の賃貸マンションやアパートは、各住戸ごとにトイレ、風呂、キッチンなどの設備を設けます。仮に12戸のアパートを作るならば、12個のトイレと風呂とキッチンが必要になるわけです。設備の数が多ければそれだけ修繕にコストがかかります。

一方、シェアハウスはこれらの設備は共用するため、例えばトイレは3~4人に1個程度でも十分間に合います。仮に12戸のシェアハウスを作るならば、3~4つのトイレがあれば十分ということになります。設置する設備が少なければその分修繕コストを抑えることが出来ます。

多目的なニーズに対応できれば、賃料がさらに高くなる

シェアハウスみ住みたがる人の中には、普通の賃貸アパートやマンションでは体験できない、特別な暮らしを実現したいと考える人が少なくありません。

彼らは特別な暮らしのためならばある程度の賃料を払う意思があるため、彼らのニーズを上手く汲み取ることができれば、単位面積あたりの賃料はさらに高くなります。

世の中には自転車好きのためのシェアハウスやディズニーファン向けのシェアハウス、映画好きのためのシェアハウスなど、様々なコンセプトを持つシェアハウスがあり、人気を博しています。

例えば自転車好きのためのシェアハウス「ドミール花小金井Pedal(東京都小平市)」には、自転車のメンテナンスルームやウォッシュゾーンなどの設備があります。

自転車にこだわりがない人にとっては全く無意味な設備ですが、自転車好きにとっては垂涎モノの設備です。自転車にこだわりがある人はそこまで多いわけではありませんが、彼らのニーズを満たす物件はそれ以上に少ないため、需要が供給に勝って賃料は高くなります。

築古物件でも成功しやすい

通常の賃貸アパートや賃貸マンションは、シェアハウスのような特別な設備・コンセプトに対するこだわりが薄い人を対象にしたものです。そのため、設備の良し悪しや物件特有の個性が賃料に大きく影響をあたえることは余りありません。

これらの物件の賃料を決める要素は、ほぼ立地と築年数の2つに集約されると言っても過言ではないでしょう。築年数が古ければ、それだけで家賃は下落し、入居者は集まりにくくなってしまうのです。

一方、シェアハウスは設備やコンセプトを重視する人が多いため、築年数はさほど重視されません。古くても快適で、ニーズに合致していれば十分に人は集まります。

シェアハウス経営のデメリット

このようにメリットが大きいシェアハウスですが、一方でもちろんデメリットも存在しています。デメリットの殆どは管理に関することであるため、不動産会社に管理委託をすれば大幅に軽減することが出来ます。シェはハウスの代表的なデメリットは以下の2点です。

入居者同士のトラブルが発生しやすい

一般的な賃貸アパートやマンションでも騒音やゴミ出しなどでトラブルが発生することはありますが、その頻度はそれほど高いものではありません。基本的に入居者同士が独立しているからです。

一方、シェアハウスではトイレや風呂、キッチンなどを共有するため入居者同士の距離が近く、それ故にトラブルも頻繁に発生しがちです。トラブルを防ぐためには住民同士が守るべきルールなどについても考える必要がありますが、住民がそのルールを守ってくれるとも限りません。

管理委託費が高い

一般的な賃貸アパートや賃貸マンションの管理を管理会社に任せた場合、賃料の5%程度が管理委託費として差し引かれます。

一方、シェアハウスの場合は賃料の20%程度が管理委託費として差し引かれます。シェアハウスの管理は手間がかかるため、その分管理委託費も高めに設定されているのです。

シェアハウス経営のはじめ方

個々からは具体的なシェアハウスの経営方法を考えていきたいと思います。

シェアハウスの資格とパートナー

シェアハウス経営に特別な資格などは必要ありませんが、建築基準法は必ず守らなければいけません。建築基準法を素人が網羅するのは簡単なことではないため、建築時に信頼できるコーディネート会社をパートナーに選ぶのがいいでしょう。

コーディネート会社とは通常の賃貸マンションやアパートでいうところの不動産会社で、シェアハウスの経営を総合的にサポートしてくれる存在です。物件の作り方のアドバイスや改装業者の紹介、金融機関の紹介、入居者募集など、総合的にサポートしてくれるため、ぜひ利用してください。

立地は23区が圧倒的におすすめ

現在のシェアハウスの半数以上が東京23区に集中しています。シェアハウスは基本的に単身者向けの物件であるため、若い人が多い地域でないと成功が非常に難しいのです。できることならば23区内、最低でも政令指定都市クラスの大都市で始めたほうがいいでしょう。

コンセプトは大切な要素だが、アイデア偏重にならないように

シェアハウス経営の面白さはコンセプトにあります。前述の通り、シェアハウスは特別な暮らしを体験したい人たちのためのものです。明確なコンセプト、個性を持ったシェアハウスは、一部の人を強力にひきつけます。

ただし、個性を重視する余り、日常的な快適性、使いやすさなどを犠牲にしてしまっては本末転倒です。シェアハウスはそれなりに長く住むものですから、個性的なだけの物件にならないように気をつけましょう。

コンセプトが浮かばないという場合は、シェアハウスのポータルサイトをチェックして、面白そうなものを参考にするといいでしょう。

物件は一棟買いが基本

シェアハウスを経営する上で、最も大変なのが物件の確保です。世の中には多種多様なシェアハウスがありますが、経営は一棟買いで行うのが基本となります。

マンションの一室を使って経営するものは、採光や面積などの要件に違反する「違法物件」扱いされることが多く、いつ行政から指導が入るかわからないからです。賃貸物件を「又貸し」するのも、もともとの大家に忌避される可能性があるため避けたほうがいいでしょう。

新築と中古はどちらも一長一短ですが、コンセプトを実現して高い賃料を得たい場合は前者、初期費用を抑えたい場合は後者がおすすめです。中古物件を買う場合は、必要に応じてリフォームやリノベーションを行います。

お金をかければそれだけ物件の価値も上がりますが、費用も膨らみます。余りお金をかけすぎると、新築を買うより高く着くこともあるので気をつけましょう。

借入先はコーディネート会社を通じて紹介してもらうのがベスト

通常、不動産投資を行う場合は民間の銀行や信用金庫、あるいは日本政策金融公庫などの公的な金融機関からお金を借ります。

しかし、シェアハウスは不動産投資の対象としての認知度が高いとはいえず、通常の賃貸アパートやマンションと比べると融資を受けるのがやや困難になります。平均的な収入の会社員が個人として単身で融資を受けるのはなかなか難しいといえるでしょう。

金融機関はコーディネート会社から紹介してもらうのが一番いいでしょう。銀行員の態度が単身金融機関に乗り込んだときとは全く変わります。

個人で融資を受けるのが難しい場合は、法人として申し込んでもいいでしょう。所得が増えた場合は法人の方が支払う税金が少なくて住むので一石二鳥です。

家具や電化製品は原則オーナーが用意する

シェアハウスでは、入居者が使う家具や電化製品は原則オーナーが購入します。共有部分に置く電子レンジや洗濯機、冷蔵庫などは入居者の快適性を大きく左右するものですので、こだわったものを買ってもいいでしょう。

各住戸に設置する家具もオーナーが用意する事が多いですが、自分で用意したものを使いたいという入居者もいます。入居者が決まったら、その都度核が必要かを尋ねるのがいいでしょう。

間取りは戸数と共用部分が大切

シェアハウスは通常の賃貸マンションやアパートと比べて、各住戸の質は余り重視されません。それよりもトイレや洗面所、風呂などの共用部分のほうが重視されることが多いです。

共用部分は複数の入居者が使うため、数が少なかったり、使いづらかったりするとそれだけで入居者の気持ちは離れていきます。トイレ、洗面所、風呂は必ず互いに独立させ、数も十分に用意しましょう。

リビングは最低でも8畳はほしいところです。リビングは多くの入居者が集まり、騒音が生まれやすいため、なるべく各住戸とは隣接させないほうがいいでしょう。

戸数については最低でも10戸はほしいところです。これ以上小さくなると経営効率が下がり、1戸当たりのウェイトが大きくなりすぎます。

家賃設定について

家賃設定は同じエリアで似たような条件のワンルームマンションと同額が相場になります。安価なイメージが強いシェアハウスですが、毎月の家賃自体は通常の物件と余り変わりません。その代わり、敷金や礼金が少なく、家具が用意されているため、支払い総費用はシェアハウスのほうが少なくなることが多いです。

なお、電気代や水道代、ガス代など、共用部分にかかるお金は各住民が分担することになります。原則として共益費の合計を人数で割りますが、家賃を多めに回収しておいて余りを共益費としてプールする方法もあります。

入居者同士のルールは明確にする

入居者が集まったらいよいよシェアハウス経営が始まります。ここで大切なのは、入居者が守るべきルールをしっかりと策定・周知することです。ルールが曖昧だとなあなあな関係ができあがってしまい、共用部分が適切に管理されなくなったり、住民同士の対立が起きたりしてしまいます。

  • 掃除やゴミ出しはコーディネート会社に任せるか、入居者で当番制にするか
  • 共用部分の電化製品の使い方はどうするか
  • シェアハウス内を禁煙にするか、喫煙所を儲けるか
  • ルールを守れない入居者の処遇をどうするか

などは、しっかりと考えておきましょう。ルールを決めるだけでなく、オーナーが自ら物件に顔をだすことによって、入居者との信頼関係が構築され、各入居者にルールを守ろうという気持ちが芽生えやすくなります。

入居者募集はポータルサイトで行う

入居者募集はシェアハウスのポータルサイトで行います。募集の際に大切なのは、そこでの暮らしがどのようなものになるのかをしっかりと明確にすることです。そこに住むことによってどんなメリットがあるのかを、文章と写真でしっかりと伝えましょう。

まとめ

  • シェアハウスは独立した住戸と、トイレや風呂などの共用部分がある賃貸物件
  • シェアハウスは単位面積あたりの賃料が高くなり、入居率も高くなりやすい
  • 住民同士の距離が近いため、トラブルが起こりやすい面もある
  • 計画・管理をすすめるに当たってはコーディネート会社の協力が必要不可欠

シェアハウスは現代のニーズにマッチした、収益性の高い不動産投資です。まずはコンセプトをじっくりと考えるところから始めてみてください。