借金は個人の信頼や財産を担保にしてお金を借りる制度です。将来返済するという約束のもとでお金を借り、それに利子をつけながら返済していきます。
借金という制度自体は非常に便利なものであり、この制度のおかげで私たちは若くしてマイホームを手に入れたり、マイカーを手に入れたりすることができます。
しかし、当然無制限に借金ができるわけではありません。貸付ける側はそもそも返してもらえそうな額しかかしつけませんし、借りる側も返せそうな額しか借りようとしません。この額を限度額といいます。では、個人が借りられる借金の限度額はどのくらいなのでしょうか。
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借金の限度額は個人によって異なる
借金の限度額は人によって異なります。たくさん借りてもそれを返せるだろうという信頼がある人はたくさん借りることができますし、そのような信頼がない人は少ししか借りることができません。
ここでいう信頼がある人とは、簡単にいえば収入が高かったり、金融資産をたくさん持っていたりする人のことを指します。例えば、あなたは今1000万円持っているとします。
年収が1億円あって東京の一等地に一棟マンションを5件、持っている人に1000万円を年利3%で貸して欲しいと言われたら、多分殆どの人は貸すのではないでしょうか。この人は借金を返せる可能性が極めて高いですしね。
でも、同じお願いを年収150万、金融資産一切なしのフリーターがお願いしてきたらどうでしょうか。この場合は貸出を躊躇する人がほとんどだと思います。返してもらえる可能性が低いからです。
総量規制の対象の借金は年収の3分の1まで
総量規制とは、個人ができる借金は原則として年収の3分の1までに抑えなければならないとする制度のことです。例えば、年収600万円の人は、原則として200万円までしか借りることができません。
以前は総量規制がなかったため、ついつい借りすぎてしまい返済が立ち行かなくなり、債務整理に追い込まれる人が少なくありませんでした。総量規制は借り過ぎを抑制するための規制であり、実際にこの規制が敷かれて移行債務整理者の数は大きく減少しているようです。
総量規制の対象になる借金とならない借金
しかし、すべての借金に総量規制がかかってくるわけではありません。もしすべての借金が総量規制の対象になってしまうと、殆どの人は住宅ローンやカーローンをまともに組めなくなってしまいます。
総量規制には数々の除外や例外があります。むしろ除外や例外の方が多いといえるでしょう。総量規制の対象となる借金は概ね以下の3つです。
- 消費者金融からの借金
- 信販会社からの借金
- クレジット会社でのショッピング
例えば、年収が600万の場合、消費者金融や信販会社からの借り入れ(カードローンやキャッシング)。クレジットカードのショッピング枠の利用は合計で200万円しかできないことになっています。
消費者金融から200万円借りていた場合、ショッピング枠を利用することはできません。
一方、総量規制の対象とならない借金には以下の様なものがあります。
- 自動車ローン
- 住宅ローン
- 緊急の医療費の借り入れ
- 不動産屋有価証券を担保とした借り入れ
- 個人事業主の借り入れ
こうした借金は全て総量規制の対象外であり、年収の3分の1を超えて借りることができます。ただし、だからといって必ずお金が借りられるわけではありません。総量規制に関係なく、審査に落ちるときは落ちます。
住宅ローンは年収の5倍までって本当?
住宅ローンは年収の5倍までがいいとか、いや7倍まで借りられるという話を耳にしたことがある方は少なくないかと思いますが、こうした議論にはあまり意味がありません。個々の事情というものを全く無視しているからです。
例えば、25歳のAさんと45歳のBさんがいるとします。年収はどちらも500万円です。この場合は当然、Aさんのほうが長期の住宅ローンを組むことができます。長期で住宅ローンを組むことができれば、それだけ年収に対して多くの額を借りられます。
一方、Bさんは定年まであと15年しかないので、あまり長期のローンは組めません。返済期間が短くなればそれだけ借りられる金額も少なくなります。
また、人によっては住宅ローン以外に借金があるかもしれません。例えば、35歳のCさんと35歳のDさんがいるとします。年収はどちらも500万円です。
しかし、Cさんには自動車ローンが100万円、消費者金融からの借金が50万円あります。一方、Dさんには借金は1円もありません。この場合、当然Dさんのほうがより年収に対して多くの額を借りられます。
このように住宅ローンの限度額を計算する際には個々の細かい事情が反映を反映させる必要があります。そのため、一概に「年収の何倍までなら借りてもOK」ということはできません。住宅ローンは年収の何倍まで、という話は信頼しないほうがいいでしょう。
また、そもそも年収の定義が人によって異なっていることもあります。年収を税込み(社会保険料や税金も含めた金額)で考えている人もいれば、手取り(社会保険料や税金を覗いた手元に残るお金)で計算している人もいます。これでは話が噛み合わないのも当然といえます。
では具体的にどうやって限度額を調べればいいのだ、と思われるかもしれませんが、最近は個々の事情を勘案して借入限度額を計算してくれるシミュレーターがウェブ上で多数公開されています。今回はフラット35のシミュレーターを使ってみましょう。
使い方は簡単で、シミュレーターに現在の年収、借入時の金利、返済期間、他の借金などを入れていくだけです。以下に結果をいくつか例示しておきます。
年収 | 融資金利 | 返済期間 | 返済方法 | 他の借入金 | 借入限度額 | 借入限度額÷年収 |
---|---|---|---|---|---|---|
1000万円 | 1.5% | 35年 | 元利均等方式 | なし | 8000万円 | 8.0 |
500万円 | 1.2% | 25年 | 元金均等方式 | なし | 3778万円 | 7.56 |
650万円 | 2.5% | 30年 | 元利均等方式 | 月5万円返済 | 3532万円 | 5.43 |
700万円 | 2.5% | 15年 | 元利均等方式 | なし | 3172万円 | 4.53 |
この結果を見ただけでも年収に対する借入限度額はまちまちであり、「住宅ローンの借り入れは年収の●倍まで」という目安がいかに役に立たないものであるかがご理解いただけたかと思います。
自動車ローンの限度額は年収の×倍?
自動車ローンの場合も、一概に年収の何倍までならOKとか、それ以上はNGとかいうことはできません。個々の事情を考える必要があるからです。
ただし、自動車ローンは住宅ローンと比べると借入額が少なく、それだけで債務整理になるというケースはあまりないため、住宅ローンほど細かく考える必要はありません。
銀行などの一般的な自動車ローンの場合、年間返済額の合計が年収500万円程度ならば35~40%、年収400万円程度ならば30~35%程度、年収300万円程度ならば25%程度が一つの目安となっています。
もちろん、自動車ローンの審査では勤続年数や勤務先、家族構成なども細かくチェックされるため一概にこの通りになるとはいえませんが、ここからあまりにもかけ離れた結果になることは少ないでしょう。
例えば、年収が400万円の場合、年間返済額は120万円~140万程度になるように調節されます。自動車ローンは最長で5年、最短で1年かけて返済します。仮に3年で返済する場合は、元金と利息の合計が360万円~420万円となる額まで借りることができます。
国の教育ローンの限度額は350万円まで!民間ならば1000万円以上も
国の教育ローン(教育一般貸付)の限度額は350万円と定められています。年収が500万円でも800万円でも、上限額は同じです。また、返済期間は15年、年利は1.9%と定められています。
一方、民間の金融機関から借りる場合、限度額はまちまちですが、無担保ローンの場合は500万円程度に設定されていることが最も多いようです。有担保ローンの場合は1000万円以上の借り入れも可能です。
いつでも限度額通りに借りられるわけではない
すべてのローンに言えることですが、いつでも限度額まで借金ができるわけではありません。例えば、住宅ローンシミュレーターで限度額は4000万円と表示された場合でも、必ず4000万円が借りられるわけではありません。
家族構成、職業、勤続年数などが原因で、そこまで借りられないこともあります。また、過去に債務整理を行っている場合は、そもそも借りられません。
借金は余裕を持って返せる範囲で
借金の返済中はどうしても体と心に負担がかかります。特に、必要最低限の暮らしで限界までお金を使わずに生活するのは非常に辛いものです。
いくら夢のマイホームを手に入れるためとはいえ、限度額いっぱいまで借りて爪に火をともすような生活を続けるというのが幸せとは思えません(それでも幸せを感じる人もいるのかもしれませんが)。
そんな苦しい生活をするくらいだったら、マイホームのランクを少し落としてでも借入額を少なくしたり、あるいはマイホームを購入は一旦待って頭金を作るのに励んだほうがよっぽどいいでしょう。借金に振り回される人生は最悪です。
借金をする際には限度額いっぱいまで借りるのではなく、余裕を持って返せる範囲で借りるようにしましょう。
いくらまで借りていいのかわからなくなったら、フィナンシャルプランナーに相談を
いろいろシミュレーションしたけれど、結局いくらまでなら借りても大丈夫なのかわからなくなってしまうこともあるかと思います。そうした場合は、フィナンシャルプランナーに相談するといいでしょう。
フィナンシャルプランナーはお金に関する知識に関してはプロであり、彼らに相談すれば適切な答えをもらえるはずです。
相談には費用がかかりますが、その後節約できる金額を考えれば安いものです。
借金で困ったら債務整理を
いくら注意深く借金をしていても、借金で首が回らなくなることはありえます。突然の失業、事故など、リスクはそこら中に転がっています。そのようなときは一刻も早く弁護士に相談し、債務整理を行うようにしましょう。