借金問題というのは健全な人間関係に影を落とします。たとえあなた自身に借金がなくても、家族、親せき、同僚などの他人が借金をしているせいで、あなたが不利益を被ることもないとは限りません。
というわけで今回は、家族を含めた他人の借金に関するトラブルに巻き込まれそうになった時に見るべきQ&Aについてまとめました。
目次
家族や親せきの借金を返す義務はあるの?
結論から言えば、基本的に家族や親せきの借金はあなたが返済する必要はありません。
民法にはお金の貸し借りに関する債務者と債権者それぞれの義務が細かく規定されていますが、その中で基本的に借金は「債務者と債権者の問題」であり、家族などの他者は無関係であると定められています。
つまり、ただ単に家族であるというだけで、借金を返済しなければならない義務は発生しないのです。
このようなルールがあることは金融機関も知っているので、まともな金融機関ならば借金をしている本人以外に借金を返済するように迫ることはありません。ただし、いわゆる闇金はそんなことはお構いなしなので、ルールを守らず請求してくることが多々あります。
そのような場合も決して支払いを行ってはいけません。こちらも弁護士を立てて、警察にも相談するなどして毅然とした対応をしましょう。
家族の借金は一切支払う必要がないの?
例外的に、家族全員の為の借金は主債務者のみならず、その配偶者にも支払い義務が発生します。生活費、医療費、教育費などはあくまでも夫婦の出費とみなされるため、どちらか一方の名義で借金をしていたとしても、配偶者にも返済義務が生まれるわけです。
その借り入れが夫婦の出費であるかどうかを証明する義務があるのは金融機関側ですが、「生活費」との名目で借り入れを行っていた場合は配偶者にも請求が行くことがあるので注意が必要です。
このような法律上の規定に関係なく、夫婦で作った借金は夫婦で返すのが一般的な倫理観だといえますが……
保証人になっている場合はどうなるの?
家族の借金の保証人になっている場合も、その借金を返済しなければならない義務が発生します。もちろん、家族以外の人(親戚、友人など)の保証人になっている場合も同様です。
ここで問題になってくるのは、保証人にも2種類あるということです。すなわち、「保証人」と「連帯保証人」です。
日常会話レベルでは連帯保証人になることも「保証人になる」ということが多いため何かと混乱してしまいがちですが、両者は全く異なるものなので気を付けましょう。
保証人と連帯保証人の違いは?
保証人と連帯保証人は、どちらも主債務者が返済できなくなった場合に代わりに返済する義務を負うという点では変わりありませんが、以下の3つの点で違いがあります。
すなわち、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「複数の連帯保証人が要る場合の扱い」です。
催告の抗弁権とは、主債務者が自己破産をしておらず、なおかつ行方不明にもなっておらず、債権者が取り立てることが可能な場合はまずは本人から取り立てるように言える権利のことです。
保証人には催告の抗弁権が与えられますが、連帯保証人には与えられません。つまり、連帯保証人は主債務者と同じように、いきなり返済を迫られる可能性があるということです。
検索の抗弁権とは、主債務者に返済能力があるにもかかわらずそれを拒んだ場合、貸金業者に対して主債務者の財産に強制執行をするように主張できる権利のことです。
保証人には催告の抗弁権が与えられますが、連帯保証人には与えられません。つまり、連帯保証人はたとえ主債務者に返済能力があったとしても、返済を迫られる可能性があるということです。
複数の連帯保証人が要る場合の扱いについては、保証人の場合は主債務者の債務額を保証人の数で割ったものが1人当たりの背負わされる可能性のある上限となります。
たとえば、債務が300万円で、保証人が3人いる場合は、1人あたりの保証人が背負わされる可能性のある債務の上限は100万円です。たとえ保証人3人のうち2人が失踪してしまっても、残された1人は100万円だけ支払えばOKというわけです。
しかし、連帯保証人の場合は主債務者の債務額がそのまま1人当たりの背負わされる可能性のある上限となります。
たとえば、債務が300万円で、連帯保証人が3人いる場合は、1人あたりの連帯保証人が背負わされる可能性のある債務の上限は300万円です。連帯保証人3人のうち2人が失踪してしまった場合、残された1人は300万円を支払わなければなりません。
このように連帯保証人は通常の保証人と比べてもさらに大きな義務が課されます。連帯保証人にだけは絶対なるなと言われることが多々ありますが、それは全く持って正しいといえます。
保証人になってほしいと友人からしつこく頼まれたらどうすればいい?
断りましょう。お茶を濁した言い方をするのではなく、明確に「保証人には絶対にならない」と明示してください。どうしても保証人が必要という場合は、保証会社を勧めてみて下さい。
保証会社とは、債務の返済が遅れた際に、一時的に債務の返済を肩代わりしてくれる会社のことです。保証会社に加入すれば借金もできるはずです。
それでも保証人になってほしいと言ってきかない場合は、その人との付き合い方を根本から見直したほうがいいかもしれません。前述のとおり、保証人制度は極めて保証人自身に対して不利な制度です。
保証人はまだしも連帯保証人は主債務者とほぼ同等の責任を負わされるものであり、真に友人の身を案じるものならば連帯保証人になってほしいなど頼むはずがありません。
あなたは相手のことを親友だと思っていても、相手はただ単にあなたを利用しているだけということもあり得ます。場合によっては縁を切ることも承知の上で、断ったほうがいいでしょう。
知らないところで勝手に保証人にされていたらどうすればいい?
現代においては、契約というものは双方の合意があれば、口頭でも成立するというのが原則です。
ただし、口頭での約束というのは後で言った言わないのトラブルになるため、保証契約については書面で解約しなければ効力は発生しません。では、勝手に「保証人になる」という旨の書面を作られてしまった場合はどうすればいいのでしょうか。
結論からいえば、この場合は当然契約書があっても保証人契約は成立していないことになります。債権者に対して「この書面は勝手に作られたものであり、私は契約に同意していません。保証人から外してください」と主張する必要してください。
何もしないと黙認したとみなされてしまうケースもあるので、なるべくすぐに動きましょう。
ただ、形式上の書類はとりあえずそろっているため、債権者が必ず納得して保証人から外してくれるとは限りません。その場合、「保証債務不存在確認請求」という裁判を起こす必要があります。
裁判は長丁場になることが予想されますので、必ず弁護士に相談してサポートを受けてください。
保証人って辞められるの?
同意の上で保証人になった場合は、基本的に辞めることはできません。債権者が「あなたは保証人をやめてもいいですよ」と言ってくれれば話は別ですが、債権者がそのような自分にとって一方的に不利になることをするはずがありません。
ただし、ある程度の金銭を債権者に払えば、保証人をやめることができないわけでもありません。この債権者に対して支払った金額は、後で主債務者に対して請求することも可能です。
ただし、主債務者に支払い能力がない場合は当然支払ってもらうことができませんので、主債務者の支払い能力があるうちに請求するようにしましょう。
また、このような請求を行えば、主債務者との間の人間関係に大きなひびが入ることは覚悟しておきましょう。
連帯保証人と連帯債務者の違いは?
住宅ローンなどで多額の借り入れをする際には、夫の年収だけでは希望通りの金額に届かない場合があります。この場合、妻にも稼ぎがあれば、それを合算して借入を行うことになるでしょう。
このような場合、妻は夫の「連帯保証人」もしくは「連帯債務者」になる必要があります。
連帯保証人と連帯債務者の違いは、支払いを請求されるタイミングです。連帯保証人は前述のとおり、主債務者が返済できなくなった場合に初めて返済の義務が発生します。
それに対して、連帯債務者は主債務者が返済をしているしていないにかかわらず、返済の義務が発生します。本人と一緒に債務を返していく、というイメージですね。
連帯債務者は連帯保証人と比べてさらに大きな義務を背負っているので、なるにあたっては慎重な判断が求められます。
ただし、連帯債務者は住宅ローン控除が受けられる、団体信用生命保険に加入できるなどのメリットもあります。
連帯債務者になるのも、連帯保証人になるのもハイリスクであることには変わりありません。返済しきる自身があるのならば、連帯債務者のほうがかえって有利になるケースもあります。
家族の借金を代わりに債務整理することはできる?
借金というのは個人的なものなので、債務者本人以外が債務整理を行うことはできません。仮に委任状を書いてもらったとしても、代理人として債務整理を行うことは不可能です。
家族に借金があって、ぜひ債務整理をしてもらいたいという場合は、どうにかして本人を説得し、弁護士事務所まで連れていくくらいしか方法がありません。
債務者本人に内緒で弁護士事務所に相談して、どうすればいいのか判断を仰ぐという手もありますが、後でそのことがばれると余計に債務者に意固地になられる可能性もあるのでお勧めできません。
家族が債務整理をしたらどんな影響が出る?
家族が債務整理をしたことは、個人信用情報には掲載されません。したがって、家族が債務整理をしていても、その家族に影響が行くことはなく、通常と同じようにローンが組める……というのはあくまでも建前であり、実際は影響が出ることが多々あります。
金融機関側の本音は「債務整理を行った家族がいる場合は貸したくない」です。子供の名義で借金をして、実際にお金を使うのは親、というようなケースも考えられるからです。
個人信用情報では住所を検索することが可能です。申込者と同じ苗字、同じ住所の人がすでに債務整理をしている場合は、それが家族である可能性が非常に高いです。
そのような場合、金融機関は貸し出しに消極的になります。「疑わしきは貸さない」が金融機関の原則なのです。家族が債務整理をしていた場合は、別居したほうがいいかもしれません。
また、夫が自己破産をした場合、夫名義の財産のうち高額なもの(自動車や住宅など)は原則的に没収となります。そうなれば、当然妻や子供にも影響が出ます。
家族が借金を残したまま死亡したらどうなる?
たとえば夫が死亡した場合、その財産は配偶者、子供、孫、親、兄弟などが相続することになります。妻1人、子2人の場合は妻が全体の2分の1、子供がそれぞれ4分の1ずつを相続します。
相続の際には土地、預金などのプラスの資産だけでなく、住宅ローンなどのマイナスの資産も相続することになります。したがって、夫が借金を残したまま死亡した場合は、原則的に相続人が支払い義務を負うことになります。
ただし、借金が預貯金より多いなどの事情がある場合は、相続を放棄することもできます。相続を放棄するとプラスの資産も相続できませんが、マイナスの資産も相続せずに済みます。
相続の放棄に関する手続きは非常に複雑なうえ、家族が死亡したことを知ってから3か月以内に手続きをしないといけないなどのルールがあります。独力で行うのは難しいので、弁護士などの力を借りることをお勧めします。
質問受付について
このほかにもお聞きになりたいことがございましたら、お気軽にご相談ください。随時記事にQ&Aを追加いたします。