衝動買いを重ねてしまい、いつまでたっても貯金ができない。それどころか消費者金融から借金までしている。という人は決して少なくありません。
こうした人は一見非常にだらしない人に見えますが、実はその裏に発達障害が隠れている可能性があります。いくら頑張ってもお金の管理ができないという人は、発達障害を疑ったほうがいいかもしれません。
目次
発達障害は先天的な脳機能障害
発達障害は、先天的な脳機能障害が原因で生じる発達の遅れです。知的障害を伴うこともありますが、伴わないことのほうが多いです。
発達障害者は他の人とコミュニケーションをとったり、集中力を長時間保ったり、ミスなくそつなく仕事をこなしたりすることが苦手なことが多く、それにより社会から孤立しがちです。
一方で身体障害や知的障害のように誰の目に見ても明らかなものではないため、本人も周囲の人間も発達障害を認識しづらく、それが周囲との軋轢を悪化させがちです。
発達障害の発生率は100人に1名~11名程度とされており、決して珍しい障害ではありません。
発達障害の原因は遺伝と環境?
なぜ脳機能障害が起こるのかについてはハッキリとはわかっていません。かつてはワクチンや親の愛情不足が原因と考えられていましたが、現在はどちらも明確に否定されています。
親の虐待や育児放棄によって似たような症状が見られることもありますが、その場合は愛着障害という別の診断名がつきます。
現在主流な学説は、遺伝要因と環境要因が組み合わさって発生する、というものです。発達障害に関連する遺伝子は200とも400とも言われていますが、例えば自閉症の兄弟がいる場合、もう一人も自閉症である可能性は通常よりも高くなることが確認されています。
ただし、遺伝子が全く同じ一卵性双生児の場合でも、兄弟の内1人だけが自閉症になることもあるため、遺伝だけで全てが決まるわけではありません。
環境要因としては親の年齢、出産時の合併症、妊娠時の食事などが挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合って、発達障害が起こります。
3つある発達障害
発達障害は大きく3つにわけられます。すなわち
- 自閉症スペクトラム(ASD)
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
です。
社会性やコミュニケーションに難が出る「自閉症スペクトラム(ASD)」
自閉症スペクトラムはかつてアスペルガー障害と呼ばれていたものです。自閉症スペクトラムの特徴として、曖昧なコミュニケーションが苦手なことがあげられます。
いわゆる「空気を読む」ことが苦手であり、相手の発言をそのまま受け取ってしまう傾向があります。そのため、皮肉や冗談、それとない助言から相手の本位を読み取る、ということができず、周囲から孤立してしまいがちです。
また、遠回しな発言ができずにストレートな物言いをしてしまいがちです。結果としてその発言内容が正しかったとしても周囲からは悪評を得ることが多く、しかも本人はなぜ自分の発言が受け入れられないのかが理解できません。
一方で、特定の興味を持ったことに対しては強くこだわり、常人離れした集中力を発揮することが多いです。
発達障害でない人間はたとえ集中しているつもりでもその実結構気が散っていることが多く、ちょっとした外部要因(騒音など)で集中が遮断されがちですが、自閉症スペクトラムの人の集中力はその程度では絶たれません。
その集中力を利用して、社会的に成功を治める人もいますが、単なる変人扱いされるだけに終わるということも多いです。
また、自閉症スペクトラム患者は、規則性や法則性があるものに対して執着します。例えば車のナンバーなど、多くの人にとって意味のないものを記憶するのが得意です。ルーティーンワークをこなすのも得意で、計画に従って行動するのは上手です。
一方でそのルーティーンが崩れてしまうと、適切な行動を取ることができないことがほとんどです。。
なお、自閉症スペクトラムは通常、知的障害とは関係がありません。自閉症スペクトラムでなおかつ知的障害という人ももちろんいますが、それはただ単に2つの障害が重なっただけのことです。
知的障害がないため、見た目や行動からはそのことがわかりづらく、おとなになってもそのことに全く気づかず生活している人も少なくありません。
それで生活に師匠がないのならば問題はないと考えることもできますが、多くの自閉症スペクトラム患者は自身と周囲の人間の感覚のズレに対して違和感やストレスを感じていることが多いです。
自閉症スペクトラムの診断
自閉症スペクトラムの診断を下すのは精神科医です。精神科医はアメリカ精神医学会が定めた「DSM-5」や世界保健機関(WHO)が定めた「ICD-10」などの診断基準を元に診断を下します。
現時点では自閉症スペクトラムを専門的に診断できる医療機関はまだ多くありません。自分で一から医師を探すのは時間がかかるので、「発達障害者支援センター」に相談をして、専門の医療機関を紹介してもらう方法をおすすめします。
自閉症スペクトラムの治療と緩和
なお、現時点では残念ながら自閉症スペクトラムを根本的に解消する薬はありませんが、症状を緩和する薬はいくつか出ています。また、自閉症スペクトラム患者は合わせてうつ病や強迫性障害などの精神的な病気を抱えていることが多く、その治療に薬が使われることもあります。
ちなみに現在、自閉症スペクトラムの症状を緩和するものとして、オキシトシンという物質が注目を浴びています。
オキシトシンは人の脳内の脳下垂体後葉から分泌されているホルモンで、筋肉を収縮させたり、恐怖心を和らげたり、他者に共感しやすくなったりする効果が確認されています。
オキトキシンを投与することによって、社会性が向上する可能性があるわけです。実際、動物実験レベルではオキトキシンを投与されたオスとメスが番を形成しやすくなったり、子供を養育する行動をする可能性が高くなったりすることが報告されています。
人間に投薬した場合も、相手への共感を高めたり、人と視線を合わせる機会が増えたり、社会性を高めたりすることがわかっています。ただし、その一方でオキトキシンを投与しても特に症状が改善されなかったとする報告も多数あります。
効果があるかもしれないけれど、ないかもしれない、というわけですね。
自閉症スペクトラムのお金管理術
自閉症スペクトラムの人は、そうでない人と比べて金銭トラブルを起こしやすい傾向にあります。前述の通り自閉症の人は特定のものに大して強くこだわる傾向があります。
一旦欲しいと思ってしまうと、たとえどんな障害があっても手にしようとするのです。お金がないにも関わらず借金をしてまで買ってしまい、それで困窮する人も少なくありません。お金の管理といったような細々としたことは総じて苦手であり、借金をしやすい傾向にあります。家計簿をつけようとしても挫折することが多く、長続きしません。
また、言葉の裏にある真意を読み取るのが苦手なため、相手の言葉を鵜呑みにして詐欺に引っかかったり、知らないうちに犯罪の片棒を担がされたり、保証人にされたりすることも少なくありません。
自閉症スペクトラムの人にとって有効なのは、予め1週間の生活費を銀行から引き出して、その使い見について予定を立てて、そのとおりに行動する、というものです。
前述の通り、自閉症スペクトラム患者は計画通りに行動するのは上手です。その特性を最大限に活かしてしまえばいいわけです。この方法は自閉症スペクトラムでない人にとっても有効です。
また、本人がどうしてもお金が管理できないという場合は、信頼できる他人にお金の管理を任せてもいいでしょう。どうしても本人がお金の管理をしなければならない場合は、その人をサポートする人を用意しておいたほうがいいでしょう。
また、家族はいたずらにお金を渡さず、必要最低限の買物しかできないようにした方が安心です。
飲み会などの会計を任されそうになったら、自分はそういうことができないと正直に話して断ったほうがいいでしょう。それで評価が下がることはあるかもしれませんが、できないことを請け負って評価を下げるよりはこちらのほうがよっぽどマシです。
おっちょこちょいでミスが多い「注意欠如多動性障害(ADHD)」
注意欠如多動性障害は、注意や関心が散漫だったり、体の多動が見られたりする障害です。
気が散りやすくちょっとしたミスをしやすい「不注意優勢型」と、思いつきですぐに行動したり、順番を待てなかったりする「多動/衝動性優勢型」に分類できます。現れる症状は自閉症スペクトラムに似ており、専門家でも両者を見極めるのは容易ではないとされています。
例えば、注意欠如多動性障害の人は作業を行う上でミスをしがちですが、自閉症スペクトラムの人もミスをしがちです。ミスをしやすいという表面的な症状だけでは、どちらなのか判断できません。
しかし、前者が注意力散漫からミスを犯すのに対して、後者は他人の指示を十分に理解できずにミスを犯すという違いがあります。結果は同じでも、その原因は全く別物なのです。
中には注意欠如多動性障害と自閉症スペクトラムの両方を兼ね備えている人もいるため、診断は非常に難しくなります。それでもそのまま放置するよりは、医師の診断を受けたほうが対策が立てやすくなります。
なお、大人の注意欠如多動性障害はほとんどが「多動/衝動性優勢型」です。この場合、体の多動は殆ど見られなくなる一方で、頭の多動は依然として残ります。頭の多動とは簡単に言えば考え方がこんがらがって、頭のなかで考えていることをうまく出力できない状態のことです。
通常、作業を行うときはまず計画を立てて、それに従って行動します。作業中にちょっとしたトラブル(電話が鳴る、誰かに簡単な質問をされる)があっても、対して気に留めることなく元の作業に戻ることができます。
しかし、注意欠如多動性障害の人は、このように一旦邪魔が入るとその後の作業が滞ってしまいがちです。問題を先送りにする傾向があり、それが後々大きなトラブルに発展することになります。
また、気持ちのON/OFFの切り替えも苦手で、考えなければいけないことを考えられなかったり、逆に考える必要はないことをいつまでも考えたりしてしまいます。
また、気分のむらが強く、感情の起伏が激しく衝動的に行動しやすいのも特徴の一つです。瞬間湯沸かし器のように突然激怒したり、衝動買いをしたりします。それは他者から見れば他人に対する配慮がないように見え、それが軋轢の原因となります。
こうした傾向は短期的にも見られますが、むしろ気をつけるべきは中長期的な衝動性です。仕事を転々としたり、クリニックを変えてしまったりと言ったような行動が現れるからです。
感情の起伏が激しいため、躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害(躁鬱病)と判断がしづらいこともしばしばあります。
それから、ミスをしやすいのも特徴の一つです。うっかり人との約束を忘れてしまったり、大切な書類をなくしてしまったり……こうした症状が見られる場合は、注意欠如多動性障害を疑ったほうがいいでしょう。
注意欠如多動性障害の診断
注意欠如多動性障害の診断は最終的には医師が行いますが、自己記入式症状チェックリストを使うことが多いです。チェックリストは「ASRS」とも呼ばれ、幾つかの質問に答えていくだけでスクリーニングが可能です。
なお、診断の際に合わせて知能検査を行う意思も少なくありません。知能検査では通常WAIS-3(ウェイス・スリー)といわれるテストが行われます。
注意欠如多動性障害の治療と緩和
注意欠如妥当性障害の不注意や衝動性は、薬で緩和することができます。現時点で仕様が認められている治療薬は「コンサータ」と「ステラトラ」の2種類です。これらの薬を服用するだけで、多くの症状が改善され、生きづらさが少なくなります。
コンサータは脳の神経に直接作用するタイプの薬で、集中力や注意力を高めて衝動性や多動性を軽減する効果があります。服用は通常1日1回で、効果は明確に現れます。
神経に直接働きかけるため、効果が出るのも早いですが、用法用量を間違えると依存性になるリスクもあります。そのため、日本では認定を受けたい医師しか処方できない決まりになっています。
一方、ストラテラは脳の神経には直接作用せず、不注意を改善したり、作業の優先順位を付けられたりするようになります。服用は1日2回です。効き目が現れるまでには通常2週間程度の時間がかかります。安定した効果を得るには、2ヶ月程度の期間がかかることもあります。
効果も穏やかで、明確に効いているという感じはしないことが多いです。その分副作用などのリスクは小さく、医師ならば誰でも処方することが出来るというメリットがあります。
両方の薬の効果は重なる部分もありますが、全く同じというわけでもありません。どちらを処方するかは医師が決めます。効果の出方によっては、途中で薬を切り替えたり、処方を中止したりすることもあります。
注意欠如多動性障害のお金管理術
注意欠如多動性障害の人も、自閉症スペクトラムの人と同様にお金の管理は苦手です。特に苦手なのは出ていくお金の管理です。家計簿をつけようとしても途中で挫折してしまうことが殆どです。
注意欠如多動性障害の人は、現金生活をした方がいいでしょう。カードだとどこでどれくらい支出をしたのかが理解しづらいからです。カードはポイントが付くのでお得という考え方もありますが、それよりもお金の管理をシンプルにするほうが大切です。
また、使う金融機関は1つにした方がいいでしょう。通帳が増えるとどこからどこにお金が入ってきて、どのように出ていくのかが理解しづらいからです。
注意欠如多動性障害と重なりやすい学習障害
学習障害とは、知能全般に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害です。
大雑把な言い方をすれば、特定の分野だけが非常に苦手な発達障害、と言ってもいいでしょう。学習障害はさらに
- 読字障害(読むのが困難)
- 書字表出障害(書くのが困難)
- 算数障害(計算や推論が困難)
の3つに分けることができます。読むのはできても書くのが苦手、読み書きはできるが算数ができない、あるいは全部できないなど、症状の重なり方は人それぞれです。
学習障害の中でも最も多く見られるのは読字障害です。欧米では10%~20%の人が独自障害であるという統計もあります。読字障害の人は見た文字を音にするのが苦手です。逆に聞いた音を文字にするのは問題なくできることが多いです。
また、文字がぼやけて見えたり、逆さまに見えたりすることもあります。音韻認識が弱く、カタカナやひらがなは理解できても、感じになると理解できないということもあります。
読字障害の人は似た形の文字、例えば「わ」と「ね」、「め」と「ぬ」などを認識するのが苦手です。
一方、書字表出障害は読むのは問題ありませんが、書くのが苦手です。但し実際には読字障害と書字表出障害の両方を持つ人も少なくありません。
こうした人は自分では正しい文字を書いているつもりなのになぜか字が鏡文字(左右反転した文字)になってしまったり、誤字脱字を繰り返したりします。また、原稿用紙に文字を書いているにも関わらずマス目から文字が大きく飛び出してしまうこともあります。
算数障害は数字や数式などの扱い、あるいは考えて答えにたどり着く推論が苦手な症状です。数の大きい、小さいという概念が理解できなかったり、図形やグラフから物事を判断するのが苦手だったりします。
これらの学習障害は、就学児童になってか明確になることが多いです。子供の成長速度は人それぞれであり、乳幼児期のうちはただ成長が遅いのか、学習障害があるのかが判断できないからです。
学習障害と自閉症スペクトラム、あるいは注意欠陥多動性障害などを一緒に抱えている場合は乳幼児期に特徴が現れることもありますが、そうでない場合は小学校に入ってからでないとわからないと考えたほうがいいでしょう。
学習障害の診断
学習障害の診断は、アメリカ精神医学会のDSM-5や世界保健機関のICD-10をもとに行います。また、医療機関によっては知能検査、認知能力検査などを行うこともあります。
これらの情報をもとに学習障害、あるいは自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害を発症していないかを確認します。
学習障害は専門家であっても判断するのが難しい障害です。学習障害ではないかと感じたからと言って、すぐに決めつけてしまうのは非常に危険です。まずは専門機関に相談するところから始めて下さい。
子供の場合は保健センター、子育て支援センター、大人の場合は障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所などに相談に行くといいでしょう。
もちろん、いきなり医療機関にいいってもいいのですが、それよりはまず専門機関で相談し、適切な医療機関を紹介してもらったほうがスムーズに事が進むはずです。
学習障害の治療と緩和
学習障害は手術や治療で根本的に直すことはできません。なので基本的には、その障害に合わせた環境を作り、支援するのが治療になります。学習障害の人が抱えている困難は人によって異なり、その困難を取り除くのが大切です。
例えば、読字障害の場合は文字を拡大して読ませたり、蛍光ペンで重要な部分に線を引いたりすることによって、読む情報量を調整できます。読字障害舎は耳からの情報は理解できることが多いため、文章題は音声にして聞かせると宿題がはかどりやすいです。
書字表出障害の場合は、感じを分解して、パーツごとに理解を促すという方法が効果的です。また、升目や形成ンを用意すると、それにそって文字がかけるようになるため書くことに対する苦手意識が軽減します。
算数障害の場合は計算する桁ごとに色を変えたり、おはじきなどを使って計算させたりするのがいいでしょう。
子供の場合は過程での対応も重要です。適切な対応が取れれば子供のやる気や自己肯定感を促進する一方で、誤った対処法を取ると意欲が低下したり、不登校やうつ病などと言った形で現れることもあります。
なお、学習障害は自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害などの発達障害と併発することが多い障害です。注意欠陥多動性障害を併発している場合は、前述のコンサータやストラテラで症状を緩和することができますが、副作用などには注意しなければなりません。
学習障害のお金管理術
学習障害の人は多くの場合自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害を併発していることが多いので、そちらに合わせた管理を行うのが基本となります。
学習障害の場合も、やはりクレジットカードは持たず、現金主義で行動した方がいいでしょう。預金口座もなるべく一つしか持たず、家計をシンプルにしたほうが管理はしやすくなります。
発達障害の人間に向いている仕事・向いていない仕事
発達障害の人は障害と引き換えに人間離れした才能を持っているというイメージをお持ちの方も少なくないとされています。例えばスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツは自閉症スペクトラムとされていますし、ケネディ大統領は注意欠陥多動性障害だったとされています。
しかし、発達障害でなおかつ特別な才能を持っている人は本の一握りだけです。殆どの発達障害の人は、特別な才能を持っていません。そうした人が社会人として生きていくためには、一体どんな仕事につけばいいのでしょうか。
障害者枠を利用すべきかどうか
現在、民間企業は2.0%以上、国や地方公共団体は2.3%以上障害者を雇用しなければならないと法律で定められています(雇用率を満たしていない場合、企業は行政から指導を受けたり、納付金を支払った知りなければなりません)。この雇用枠を障害者枠といいます。
障害者の人は障害者枠で就職することもできますし、一般枠で就職することもできます。
なお、ここでいう障害者とは身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者福祉保険手帳のいずれかを所有している人のことです。
発達障害であっても、上記のいずれの手帳も持っていなければ障害者枠での採用は望めませんが、発達障害の場合は精神障害者福祉保険手帳を取得できる可能性が高いです。
厚生労働省が「発達障害は精神保健福祉手帳の対象として明記されてはいないが、精神障害の範疇に入っている」という見解を取っていますし、大阪府など一部の自治体は発達障害の人は精神障害者保健福祉手帳の発行が可能であると明言しています。
一方で発行がスムーズでない自治体もまだあります。取得できない場合は、障害者枠を諦めて一般枠で応募することになります。
障害者枠を利用することのメリットは、支援を受けながら働けるということです。障害者枠で社員を採用しようとする企業は障害に対して一定の理解を持っていることが多く、そうした環境で働けるのは大きなメリットと言えます。
通院時間なども確保しやすいですし、何より自身の強みを活かして働けます。
一般枠で就職する場合、障害は隠さざるをえませんが、隠そうとしても隠しきれないのが障害ですし、何より隠そうとすることがストレスになります。
一方、デメリットとしては、障害者枠は一般枠と比べて求人数が少なく、また仕事内容の幅も狭いことが挙げられます。
また、障害者の雇用を積極的に行っている企業の多くは身体障害者を優先的に採用する傾向があり(障害が明確なので配慮がしやすくトラブルも起きにくいためです)、発達障害者にはなかなか仕事が回ってこないという面もあります。
障害者枠と一般枠のどちらで就職すべきとは一概には言えませんが、就職活動支援センター「ウェルビー」によれば、障害者枠で就職した人のほうが、一般枠で就職した人よりも職場定着率は高いそうです。
自閉症スペクトラムの人の適職
自閉症スペクトラムの人に向いている職業は、高度な専門知識を必要とし、なおかつ対人スキルやマルチタスクをあまり必要としない職業です。
例えば翻訳者、カメラマン、動物の訓練士、工芸家、ウェブデザイナーなどです。逆に営業、接客、経理、事務、飲食、金融などは不向きです。
注意欠陥多動性障害の人の適職
注意欠陥制多動性障害の人に向いている職業は、人間関係をあまり必要としない職業です。例えば研究者、学者、イラストレーター、漫画家、画家、建築関係、調理師、自動車整備士、図書館司書、電気技師などです。不向きな職業は自閉症スペクトラムの人とほぼ同じです。
学習障害の人の適職
学習障害の人に向いているのは、専門的な技術を必要とする仕事です。デザイナー、コンピュータプログラマー、調理師、消防士、警察官、作家などです。不向きな職業は自閉症スペクトラムの人とほぼ同じです。
自分の障害を理解することが最も大切
上記の向いている仕事・向いていない仕事はあくまでも全体の傾向であり、全員が当てはまるわけではありません。最終的には自分の強みを理解し、それにあった職業を自分で見つけなければいけません。