住宅を購入する際には殆どの人が住宅ローンを組むことになるかと思います。住宅ローンはかつては民間の銀行や政府系金融機関から借りるのが当たり前でしたが、最近は長期固定金利のフラット35が人気を集めています。
ここではフラット35の特徴、メリット、デメリットなどを解説していきたいと思います。
目次
フラット35は長期固定金利・35年まで借りられる
細かいメリットやデメリットの説明は抜きにして、まずはフラット35の概要を説明します。フラット35は簡単にいえば返済期間が最大35年(特殊な条件を満たせば50年)で、なおかつ金利が最後まで固定される住宅ローンです。
毎月の返済額が一定になり、市場金利変動の影響を受けないことが大きなメリットです。保証人も必要ないなど、借りる側にとってはメリットが大きい制度と言えます。そしてこのフラット35の提供に大きく関わっているのが住宅金融支援機構です。
住宅金融支援機構って何?
住宅金融支援機構とは、住宅を購入するための資金の安定的な供給を行うために設立された独立行政法人で、国土交通省と財務省が所管しています。
同法人の前身である住宅金融公庫は自らが貸主となってローンを提供していましたが、現法人は直接個人にローンを提供していません。住宅ローンの債権を証券化するのが主な業務です(例外的に災害発生時などには貸主として直接融資を行うことがあります)。
フラット35は「顧客」「民間金融機関」「住宅金融支援機構」「信託銀行」「投資家」から成り立つ
前述の通り、住宅金融支援機構は直接個人(顧客)にローンを貸し出しているわけではありません。我々顧客は民間の金融機関(銀行など)の窓口から申し込みを行います。
仮に審査に合格した場合、民間の金融機関は融資後すぐに住宅ローン債権(その後ローンを返済してもらえる権利のこと)を住宅支援機構に売り渡してしまいます。
つまり、この時点で債権者が民間の金融機関から住宅金融支援機構に移るのです。実質的には住宅金融支援機構が貸し出しているようなものですね。
住宅金融支援機構は買い取った住宅ローン債権を、信託銀行に信託します。
信託とは、委託者(この場合は住宅金融支援機構)が一定の目的に従って、信託財産財産(この場合は住宅ローン債権)を専門家(この場合は信託銀行)に託す仕組みです。専門家(信託銀行)は信託財産(住宅ローン債権)を適切に運用・権利します。
住宅金融支援機構は、信託銀行に預け入れた住宅ローン債権を担保に、「貸付債権担保住宅金融支援機構債券」を発行します。債券とは毎年一定の割合で利子がもらえる証券のことです。
債券についてより詳しく知りたいという方は、以下の記事を参考にしていただければと思います(参考:あなたはどれに投資する?世の中の全投資と借金の仕組み)。
住宅支援機構は発行した債権を民間の金融機関を通じて投資家に販売します。発行された債権の利回りや格付けなどは、住宅金融支援機構の公式ホームページからチェックすることが可能です。
投資家はこのホームページの情報などをチェックして、債券を購入します。債券を購入した投資家は民間の金融機関に対してその代金を支払います。民間の金融機関はその代金を住宅金融支援機構に支払います。
その後ローンの返済が始まったら、顧客は民間の金融機関に対して返済を行います。民間の金融機関は本来の住宅ローン債権の所有者である住宅金融支援機構に回収金を支払います。
このように、フラット35は様々な当事者が複雑に関わりあって成り立っています。長期固定金利のリスクを背負っているのは住宅金融支援機構と債券を購入した投資家であり、ローンを組んだ人はそのリスクを追う必要はありません。
フラット35には買取型と保証型の2種類がある
フラット35には買取型と保証型の2種類があります。通常金融機関でフラット35と呼ばれているのは買取型です。「フラット35は「顧客」「民間金融機関」「住宅金融支援機構」「信託銀行」「投資家」から成り立つ」の見出しで説明されているのも買取型です。
世の中の殆どのフラット35は買取型なのでこっちさえ抑えておけばまず問題ありませんが、一応保証型についても説明しておきます。
保証型では、民間金融機関が住宅金融支援機構に対して住宅ローン債権の売り渡しを行いません。つまり、実質的な債権者は民間の金融機関です。
住宅ローンを顧客が返済できなくなった場合のみ、民間金融機関に対して住宅金融支援機構がローン残高を支払い、その後住宅金融支援機構が住宅ローン債権を取得します。
借りる側からすれば実質的な債権者が民間の金融機関だろうと住宅金融支援機構だろうとどっちでもいいようにも思えますが、両者には明確な違いがあります。一番の違いは団体信用生命保険です。
買取型では団体信用生命保険料は別払いとなっていますが、保証型では不要(予め金利に含まれている)となっているケースが大半です。ただし、その分金利は保証型のほうが高くなっています。
また、買取型は繰り上げ返済は原則100万円以上しかできないことになっていますが(ただし手数料は無料)、保証型はいくらでも可能(手数料は3150円)です。また、保証型の場合は借り換えローンを利用できることがあります。
結局どちらのほうがより顧客にとって有利なのかと聞かれると難しいところですが、買取型のほうが仕組みが成熟していて無駄なコストが掛からないように作られているため、特にこだわりがない場合は買取型で問題ないかと思います。
保証型は繰り上げ返済の柔軟性やお金には現れないニーズを汲んで作られた商品であり、それを得と感じるかどうかは人によって異なります。これより下の文章は全て買取型についての説明となっていますのでご注意ください。
フラット35のメリット
フラット35には様々なメリットが有ります。中でも代表的なメリットについて説明します。
長期固定金利である
フラット35の一番のメリットがこれです。フラット35は最初に金利が決まってしまうので、その後市場金利が上昇した場合でも資金受取時に確定した借入金利で返済を継続できます。
最初に毎月いくら返せばいいのかが確定するため、返済プランが非常に立てやすく返済が行き詰まりにくいです。
おまけに現在のフラット35の金利は非常に低く、21年~35年返済の場合は多くの民間金融機関で年利1.080%で借りることができます。これは一般的な銀行の住宅ローンと比べても遜色ありません。
優良住宅に住むと金利が下がる
フラット35で省エネルギー性、耐震性などに優れた住宅を取得した場合、借入金利が一定の期間引き下げられることがあります。この仕組を「フラット35S」と言います。
例えば、フラット35Sの金利Aプランが適用された場合、最初の10年の間金利が年間0.3%引き下げられます。フラット35Sの適用基準については、フラット35の公式ホームページをご参照ください。
保証人が不要
一般的な銀行などで住宅ローンを組む場合は、親族などに保証人になってもらうか、もしくは保証協会などに保証料を払って保証してもらうかする必要があります。
親族に保証人になってもらうなど言語道断ですが、住宅ローンを組むと保証料が高額になる傾向があるので、簡単に保証協会にお願いすることもできません。その点、フラット35は保証人不要なので、誰にも迷惑がかからず、なおかつ費用もかかりません。
70歳まで借りられる
フラット35では、原則として70歳まで申し込むことが可能です。ただし、親子リレー返済(子や孫をローンの後継者とするローン)の場合は、70歳以上でも申し込みが可能です。
借入期間は申込者もしくは連帯債務者が60歳以上の場合は10年以内、60歳未満の場合は15年以上35年以内となっています。50%を超える収入合算者がいる場合は、本人と収入合算者のうちより高い方の年齢が適用されます。
転職したばかりの人や自営業者でも借りやすい
民間の住宅ローンの審査では収入の安定性や勤務形態、勤続年数などが重視されるため、転職したばかりの人や自営業者だとなかなか受かりません。
一方、フラット35の審査では勤続年数などが問われないためそうした人でも比較的受かりやすいです。もちろん、誰でも受かるというわけではありませんが。
団体信用生命保険への加入が任意
民間で住宅ローンを組む場合原則として団体信用生命保険には強制的に加入させられます。言い換えれば、団体信用生命保険に入れる健康状態でなければ、住宅ローンが組めないわけです。
それに対してフラット35では団体信用生命保険は任意加入なので、健康に問題があっても借りることができます。ただし、団体信用生命保険に入らず借り入れをする場合は、万が一の際に生命保険だけでカバーできるかをしっかりと確認しておかなかればなりません。
繰上返済手数料が無料
フラット35は繰上返済手数料が無料です。民間でも最近はネット銀行を中心に繰上返済手数料の金融機関が増えてきていますが、メガバンクなどはまだ有料のケースが多いです。
フラット35のデメリット
このようにフラット35には様々なメリットが有りますが、世の中にメリットしかないローンはありません。フラット35の代表的なデメリットは以下のとおりです。
長期固定金利である
長期固定金利であることはメリットにもなり得ますが、デメリットにもなり得ます。仮に今後市場金利が下がっていった場合は、変動金利でローンを組んだほうが良かった、ということになります。
この先金利が下がるか上がるかどうかは誰にもわかりません。金利が変わらないことは必ずしもメリットとはいえないのです。ただ、現在は空前の低金利時代であり、これより大幅に金利が下がることは考えにくいです。
住宅に条件がある
フラット35で借り入れをするためには、住宅(建物)が一定の基準を満たす必要があります。例えば一戸建ての場合は70平米以上、マンションなどの場合は30平米以上で、さらに一定以上の耐久性、断熱性を持つなどの条件をすべて満たしている必要があります。
建物がこの条件を満たしているかの検査は検査機関が行いますが、その依頼料は顧客が支払わなければなりません。最近は検査を受けてから販売されている建売住宅も増えてきています。
融資額は住宅価格の90%/8000万円まで
フラット35は住宅価格の90%、もしくは8000万円までしか借り入れることができません。つまり、いくらか頭金を用意する必要があるというわけです。
ただ、最近は民間の金融機関がフラット35と併用できるローンを多数販売しており、それらを使えば頭金無しで住宅を購入することもできます。
申込時ではなく資金実行時の金利が適用される
申込時の金利が1.0%でも、資金実行時の金利が1.5%だった場合は金利は1.5%となります。申込時点より金利が下がってくれればラッキーですが、申込時より金利が上昇した場合、資金計画に狂いが生じる可能性があります。金利の動向には常に気を配っておきましょう。
100万円以上ないと繰り上げ返済ができない
フラット35の繰り上げ返済の最低額は100万円です。それ以下の場合はそもそも繰り上げ返済ができません。100万円ためている間に繰り上げ返済期間が遅れてしまい、結果として支払いが増えてしまうことがあります。
金融機関が積極的に勧めてくれない
フラット35は基本的に顧客に有利な作りになっています。顧客に有利になっているということは、言い換えれば金融機関に不利になっているということです。フラット35は金融機関にとっては利益が上がりにくいローンなのです。
無論借りられないということはないですが、態度にやる気が見られないこともあるかもしれません。
どの金融機関から借りればいいの?
フラット35は都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合など多くの金融機関が取り扱っています。どの金融機関から借りればいいのかわからないという場合は、フラット35の公式ホームページから検索してみましょう。
リンク先のページの「都道府県等から検索」を使えば、利用できる金融機関が一覧形式で表示されます。金利や総支払額の低い順にソートすることも可能なので、いろいろと比べてみてください。
最後に
フラット35にはデメリットも有りますが、それを補って余りあるメリットが有ります。住宅ローンを組もうかなと考えている人は、まずはフラット35の利用を検討してみてください。