ブラック企業が多いと言われているハローワーク。
確かにハローワークに求人を出しているような企業の中にブラック企業の割合が多いのは事実ですが、一方で埋もれているホワイト企業も少なからず存在します。
今回の記事ではハローワークを通じてホワイト企業を発掘する方法を解説いたします。
目次
ハローワークの求人に「当たり」が少ない2つの理由
ハローワークに求人を出している企業がブラック企業だらけな理由はいくつかありますが、その中でも特に大きなものは以下の2点です。
- どんな企業でも求人が出せる
- ホワイト企業はあまり求人を出さない
ハローワークの掲載費用は無料
一般的な求人サイト、例えばリクナビやタウンワークなどに求人広告を掲載する場合、当然それに応じた費用がかかります。
例えばリクナビの新卒採用サイトに広告を掲載する場合、東京や大阪などの都市部が本社所在地の場合は40万円~、それ以外の地域は30万円~の費用がかかります。
掲載期間は最大13ヶ月なので、月々の費用は3万円ですが、これでも中小企業にとっては結構大きな額です。
一方、ハローワークは公的機関なので求人の掲載費用は無料です。人材にお金をかけたくないと考えるブラック企業がハローワークになだれ込むのは当然といえます。
ハローワークに求人を掲載できるのならばホワイト企業もハローワークに広告を掲載するので民間の有料求人広告など誰も使わなくなるのでは、と思われるかもしれません。
確かにその場合もあるのですが、ホワイト企業はいい人材を効率的に確保するために有料求人広告を利用することがままあります。
ハローワークからの応募者はそれ以外の媒体の応募者と比べてスキルが低い、もしくはやる気がない人材の割合が多いからです(実際にそういうデータがあるわけではないのですが、多くの採用担当者の実感としてそうなっています)。
失業保険のためにハローワークから申し込みをする人たち
失業保険を受け取るためには、就職する能力と意志があると認められる必要があります。就職する意志がなければ失業保険は受け取れないのです。ではどうやって就職する意志があることを証明するのかといいますと、就職活動をすることによって証明します。
そして、ハローワークで求人検索をして、実際に応募するというのは、最も簡単な就職意志の証明方法です(民間の求人広告からの応募も証明になりますが、面倒なので失業保険目当ての人はあまり利用しません)。
本当は就職意志がないのに、失業保険をもらうためにハローワークで応募する似非求職者が少なくないことを、ホワイト企業はよく知っています。
そんな人達のために時間を割いて採用活動をしてもお金の無駄なので、わざわざ有料の求人サイトを利用するのです(もちろん有料の求人サイトからの応募者の質にもばらつきはありますが……)。
ならば長期的な利益のためにブラック企業も有料の求人サイトを利用すべきなのでは、と思われるかもしれませんが、ブラック企業の大半は求人にお金を賭ける余裕が無いか、余裕があっても人を育てる気がないか(辞めたらまた別の人間をすぐに補充すればいいと考えている)のどちらか、もしくは両方です。
ホワイト企業は人が辞めていかない
ホワイト企業は待遇が良いので、あまり人が辞めていきません。あまり人が辞めていかないので、求人もたまにしか出しません(事業を拡大したいと考えている場合は別ですが)。
一方、ブラック企業は待遇が悪いので人がどんどん辞めていきます。人がどんどん辞めていくので、頻繁に求人を出して補充する必要があります。必然的にハローワークの求人はブラック企業まみれになります。
技術者など特殊なスキルを持つ人は絶対数に限りがあるため簡単に補充できませんが、特殊なスキルが必要ない職種はすぐに補充できます。飲食業界にブラック企業が多いと言われている理由の一つに、現場で働く人材にスキルが必要でなく、簡単に補充できることが挙げられます。
ハローワークで仕事を探すメリット
ハローワークにブラック企業の求人が多いのならば、民間の求人サイトを利用した方がいいのでは、と思われるかもしれません。(民間の求人サイトの利用料金を支払うのは企業側なので、応募者の金銭的負担はありません)。
その考え方は正しいのですが、一方でハローワークで仕事を探すメリットも少なからず存在します。主なメリットは以下の3点です。
- 地元の仕事が探しやすい
- 職員が相談や面接対策に対応してくれる
- 採否が必ず通知される
- 採用率が高い
- ライバルのレベルが低い
地元の仕事が探しやすい
ハローワークは各都道府県の主要な市区町村に設置されており、各ハローワークに掲載されている求人の殆どが地元企業のものです。大企業の求人はほぼないので、転勤などの心配も殆どありません。自宅の近辺で就職先を探しているという人にとっては利用価値があります。
職員が相談や面接対策に対応してくれる
ハローワークでは、そこで働く相談員に相談しながら求人を探すことができます。また、求人票に書いてあることだけでは判断できないことを、ハローワークの職員に聞いてもらうこともできます。
場合によっては面接対策に付き合ってもらえたり、ハローワークが主催する各種セミナーを紹介してもらえることもあります。
原則として申し込むだけの求人サイトと比べると、できることは多いです。ただし、相談員の質に左右される面もあります。その場合は変えてもらうことも可能です。
採否が必ず通知される
求人サイトなどを通じて申込んだ場合、応募はしたもののその後企業からの連絡が何もない、ということがたまにあります。一方、ハローワークを通じて申込んだ場合は必ず採否が伝えられるので、気持ちは切り替えやすいです。
未経験でも採用率が高い
求人の絶対数が多いため、経験の有無にかかわらず、採用率は総じて高めです。採用率が高いのとその企業の対応の善し悪しはまた別の問題ですが。
ライバルのレベルが低い
前述の通り、ハローワークからの応募者の中には、実は就職する意志がない、失業保険目当ての人も少なくありません。そうでなくても全体的に能力の低い人が多いです。
もしあなたが平均程度の能力しかなくても、周りが平均未満だらけなのので、あなたが相対的に優秀に見えます。一方、求人サイトはライバルも就職意欲が高く、能力も平均程度はあることが多いため、競争は熾烈になります。
ハローワークでホワイト企業を見つける7つのチェックポイント
ハローワークでは通常、大手のホワイト企業を探すことは出来ません。大手は資金力がありますので有料の求人広告も余裕で出せますし、それだけで優秀な人材が集まってくるからです。
しかし、中小の企業のホワイト企業は意外とたくさん埋もれています。求人の絶対数が多く、優良な求人を探すのは難しそうに思えますが、実は以下の7つの点をチェックするだけでだいたい見分けられます。
- 求人の頻度
- 求人を出す理由
- 就業時間
- 休日数
- 賃金形態
- 通勤手当
- 会社のWebサイト
求人の頻度が低い企業はホワイト企業の可能性大
ハローワークの求人で最初にチェックすべき点は、求人を出している頻度です。前述の通り、ホワイト企業はあまり人が減らないので頻繁に求人を出しません。逆にブラック企業は人がどんどんやめていくので頻繁に求人を出します。
つまり、求人を出す頻度が低いほどホワイト企業寄りである、という図式が成り立ちます。
求人の頻度が求人票に記載されているわけではありませんが、ハローワークの職員に尋ねればすぐに教えてもらえます。この企業は頻繁に求人を出している、という回答が帰ってきた場合は、別の企業の求人を探すことをおすすめします。ハローワークの求人数はかなり多いので、一つの求人に固執する必要はありません。
新しい営業所・支部を作った企業はホワイト企業の可能性大
企業の経営状態と社員の待遇には密接な関係があります。当然、経営状態がいい企業ほど社員の待遇は良いです。
そして、経営状態が良好な企業がやることと言えば、事業の拡大です。人がやめていくことがめったにないホワイト企業であっても、新しく営業部や支部を作る際には必要な労働力が増えるため、事業を拡大する際には人員を増やさざるを得ません。
そうした企業は優秀な人材の確保をすることに非常に積極的なので、有料求人広告だけでなく、ハローワークでも求人を出すことが多いです。
従って、新たな営業所・支部を設立しようとしている企業はホワイト企業である可能性が高いです。おまけに人材の確保を急いでいるため、ある種早い者勝ちのような展開になります。
就業時間が「フレックス制」の企業は要注意
各企業が出す求人票は非常に大切な資料です。ここに書かれていることは全部重要と言っても過言ではありませんが、特に重視すべきは就業時間です。就業時間が「フレックス制」となっている場合、その企業に応募するのは少し待ってからの方がいいでしょう(フレックス制自体が悪いのではなく、フレックス制を採用している企業に問題があるケースが多いです)。
そもそもフレックス制とは、労使協定に基づいて労働者が各自の始業時刻と終業時刻を自由に決められる制度です。
現状、多くの企業はすべての、あるいは殆どの労働者が9時~5時まで働くという形態を取っていますが、これは非効率な一面があります。
皆が同じ時間に出退勤するので電車は混みますし、個々人のライフスタイルが尊重できませんし、時間ごとに必要とされる労働量が変化してもそれに対応できません。フレックス制はこのような欠点を解消する制度として導入されました。
フレックス制の概要
フレックス制では、1日の勤務時間をフレキシブルタイムとコアタイムに設定します。フレキシブルタイムは出退勤を労働者が自由に決められる時間、コアタイムは必ず勤務していなければいけない時間です。
例えば、8時~11時と15時~19時がフレキシブルタイム、11時~15時がコアタイムとなっている場合、労働者は11時~15時のあいだは勤務していなければなりません。
しかし、8時~11時のいつ出勤するか、あるいは15時~19時のいつ退勤するかは労働者の自由です。
コアタイムは必ずしも設ける必要はありませんが、社内の意思伝達をスムーズにするために設定しているところが多いです。また、フレキシブルタイムはコアタイムの前後に設置しなければなりません。
必ずしも会社全体でフレックス制を取り入れる必要はなく、特定の部署のみフレックス制で、あとはいつもどおり9時~5時とすることも可能です。
フレックス制と残業代
フレックス制でも残業代未払いを防ぐために、清算期間を設定します。清算期間とは通常1週間、もしくは1ヶ月(28~31日)です。
次に、清算期間あたりの総労働時間を決めます。清算期間あたりの労働時間が総労働時間を超過した場合、企業は労働者に対して残業代を支払います。具体的には、以下の式を満たさなかった場合、残業代を支払います。
総労働時間 ≦ 清算期間(日数) ÷ 7日 × 40時間
例えば清算期間が1ヶ月(30日)の場合、残業代支払いの基準となる総労働時間は171.4時間となります。逆にフレックス制で労働時間が極端に短くなっている労働者に対しては、労働時間を翌月以降に繰り越したり、賃金をカットしたり出来ます。
フレックス制の現実
フレックス制は本来、経営者にとっても労働者にとっても有益な制度のはずなのですが、実際にはうまく動作しないことも少なくありません。
フレックス制を導入すると、例えば上司の承認が必要なのに上司がすでに退勤していたりといったような、意思疎通がうまくいかないことがままあります。考えなしにフレックス制を導入しても時間あたりの生産効率が低下します。
生産効率が低下する中で以前と同じ生産量を維持するためには、労働時間を伸ばすしかありません。そんな非効率的な経営は今すぐやめるべきなのですが、それを理解していない経営者も少なくありません。
というか、そういう企業が非常に多いです。よほど業務や賃金が魅力的な場合を除いては、フレックス制を掲げている企業は避け、普通に9時~5時の企業を選ぶことをおすすめします。
休日数は120日が最低ライン
求人票で就業時間の次にチェックすべきところは年間休日数です。休日数は120日以上が1つの目安となります。例えば完全週休2日制(毎週2日休み)+夏冬にそれぞれ5日分の休暇+祝日で簡単に120日を超えます。
これを超えていない企業はブラック企業の可能性が非常に高いので、そもそも近づかない方がいいでしょう。130日を超えている場合はなかなかの優良企業です。
基本給の下が低い企業は要注意
賃金については、まずは基本給をチェックします。基本給とは残業手当や通勤手当、歩合給などの部分を覗いた、基本となる賃金です。基本給は年齢や勤続年数、職種やその人の技能などをもとに決められます。日給、週給、月給、年俸のいずれの体制を取っている場合でも、基本給は非常に大切です。
この基本給は通常、「21万円~24万円」のようにある程度幅を持たせて書かれています。前述の通り基本給はその人の技能などにも左右されるため、どのような人が来るかわからない状態では企業も確定した数字を乗せられないからです。
この基本給の幅が大きく取られている場合(例えば18万円~35万円など)となっている場合、大抵は下限かそれに近い基本給が採用されます。上限が高くても下限が低い場合は避けたほうがいいでしょう。
通勤手当
通勤手当には
- 実費(上限なし):通勤にかかった費用を必ず全額支給
- 実費(上限あり):上限額の範囲で通勤にかかった費用を全額支給
- なし:通勤手当なし
の3つがあります。通勤手当なしのところだけは絶対に選んではいけません(たとえ自分が徒歩通勤の場合でもです)。通勤手当すらまともに出せないような企業には未来がありません。勝手に潰れるのを待ちましょう。
会社のWebサイト
ハローワークの求人票では求人の条件を確認できますが、実際にその会社がどのような事業を行っているのかはざっくりとしかわかりません。面接対策にもなりますので、必ず会社のWebサイトをチェックしましょう。
会社のWebサイトで一番最初に見るべきところは主な取引先です。大手企業の企業が主な取引先に含まれていた場合、その会社の財政基盤は安定している可能性が高いです。
大手企業が相手でなくとも、BtoB企業(企業を主な顧客としている企業)は取引が安定的かつ長期的で、参入障壁が高く競争も少ないのでおすすめです。
逆にBtoC企業(消費者を主な顧客としている企業)は取引が短期的で、価格競争に巻き込まれやすいのであまりおすすめしません。
もう一つチェックすべきなのが会社役員の顔ぶれです。会社役員の名字がほぼ全員同じという場合、その企業は家族経営の可能性が高いです。家族経営の会社はブラック企業率が高いので基本的におすすめしません。
ハローワークを使ったほうがいい人・使ったほうがいい人
ハローワークでもホワイト企業を探すことは十分に可能ですが、それでもハローワークは使わず、求人サイトや転職エージェントを使ったほうがいい人もいます。それはズバリ若い人です。
雇用情勢が以前と比べればかなり改善された昨今において、若いということはそれだけで価値があります。求人サイトや転職エージェントを通じての転職は条件がいいぶん、競争も激しいですが、若ければそれだけである程度有利に立てます。若さという武器がある人はそれをフルに活用すべきです。
逆に、その武器がもう使えない中年以上の年齢層にとって、求人サイトや転職エージェントの利用はあまりおすすめできません。自分と同じくらい、場合によってはそれ以上に優秀な若い人との激しい競争が待っているからです。今の若い人は思った以上に優秀で、彼らに競り勝つのは容易ではありません。勝てない土俵には最初から上がらずに、ハローワークでホワイト企業を狙ったほうが効率的です。
まとめ
- ハローワークにブラック企業が多い主な理由は「誰でも無料で求人を掲載できるから」
- ハローワークにもホワイト企業の求人は存在し、探し方を工夫すれば見つけられる
- 求人の頻度と求人を出す理由は最重要チェックポイント
- BtoB企業は全体的にホワイト企業の割合が大きい
- 若い人はハローワークよりも求人サイトや転職エージェントを使ったほうが良い
ハローワークも使い方次第でホワイト企業を探せます。はじめからダメだと決めてかからずに、まずは求人を探すところから始めてみましょう。