空き家を解体して更地にすると固定資産税が上がる!活用方法は?

近年、日本全国で、特に地方都市で空き家が急増しています。国勢調査「平成25年住宅・土地統計調査」によれば、平成23年時点での全国の空き家数は約816.9万戸で、全国の住宅総数6062.9万戸に対する比率は13.5%となっています。

概ね7.5戸に1戸が空き家になっている計算になります。昭和33年では2.0%だった空き家率は一貫して増加しており、全国的な問題となっています。

空き家が増加した原因は人口減少や都市部への人口流出等色々ありますが、独特な固定資産税制度も空き家の増加に拍車をかけています。今回は日本で適用される固定資産税に関するルールと、空き家のある土地を活用する方法について考えてみたいと思います。

土地を持っていると固定資産税がかかる

固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地、家屋、償却資産などを所有している人が支払わなければならない税金です。固定資産税額はその固定資産の評価額をもとに決定されるため、高価な土地や家屋などを所有している人ほど多くの固定資産を支払うことになります。固定資産税の価格は以下の式で計算します。

固定資産税=固定資産税評価額×1.4%

固定資産税評価額とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて、市区町村が決定した評価額のことです。あくまでも評価額なので、実際に固定資産がその価格で売れるわけではありません。実勢価格が1億円でも、固定資産評価額は7000万円になる、といったようなことはよくあります。

また、その土地や家屋が市街化区域内にある場合は、これとは別に都市計画税もかかります。都市計画税は以下の式で計算します。

都市計画税=固定資産税評価額×0.0~0.3%(市区町村により異なる。大体の市区町村は0.3%)

土地の固定資産税評価額は路線価によって決まる

土地の固定資産税評価額は、路線価をもとに計算されます。路線価とは簡単に言えば、道路に付けられた価格のことです。道路に接している土地がある場合、固定資産税評価額は基本的にその道路の路線価に土地面積を掛けたものになります。

固定資産税評価額=路線価×土地面積

例えば、ある土地が路線価が10万円の道路に接しており、土地面積が100m2の場合、その土地の固定資産税評価額は10万円×100=1000万円となります。

2本の道路に接している土地(角地など)の場合は、その中で最も路線価が高いほうが「正面」、そうでないほうが「側方」と呼ばれます。

こうした土地の評価額は、正面の路線価に、側方の路線価の一分を加えたものが固定資産税評価額となります。加算する側方路線価の割合は、普通住宅地区の場合は5%です。

例えば、路線価が10万円の道路と9万円の道路に接しており、土地面積が100平米の場合、固定資産税評価額は(10万円+9万円×5%)×100=1045万円となります。2路線に接しているぶん、評価額が高くなってしまうのです。

路線価が設定されていない土地の場合は標準宅地比準方式で決まる

路線価はすべての道路に設定されているわけではありません。細い私道などには路線価は設定されないことが多いです。そのような道路にのみ接している土地を評価する場合は、標準宅地比準方式という計算方法で求めます。

これは対象となる土地の近くにある標準宅地(市区町村が定めます)の単価をベースに、標準宅地との差異を考慮して決めるというものです。標準宅地の価格の基準は地価公示価格や不動産鑑定士の評価などによって決まります。

例えば、標準宅地の価格が1平米につき10万円だとします。仮にその近くに100平米の土地を持っている場合、固定資産税評価額は10万円×100m2=1000万円となります。

ただし、標準宅地と大きな差異がある場合は補正が掛けられます。例えば、道路と接している部分が一定より少ない部分は0.7、不整形地である場合は0.7の補正がそれぞれかけられます。仮に対象地が道路と接している部分が少なく尚且つ不整形地だった場合、固定資産税評価額は10万円×100m2×0.7×0.7=490万円となります。

固定資産税評価額は実勢価格の70%程度になることが多い

このような方法で計算される固定資産税評価額は、大抵の場合実勢価格の70%前後になります。実勢価格の70%前後になるように路線価や標準宅地の価格が調整されるのです。逆に考えれば、固定資産税評価額の10/7≒1.4倍が実勢価格になるとも言えるわけです。

家屋が建っている土地は固定資産税が安くなる

固定資産税には様々な減免措置があります。その中でも特に減免の割合が大きく、なおかつ我々と関連が深いのが、住宅用地の特例です。

住宅用地の特例とは、住宅用地(住宅の用に供されている土地)の固定資産税が安くなる措置のことです。住宅用地は土地面積が200m2以下の小規模住宅用地と、それを超える部分の一般住宅用地に分けることが出来ます。土地面積が300m2の場合、200m2が小規模住宅地、残りの100m2が一般住宅用地となります。

小規模住宅用地に該当する部分は、固定資産税の価格が6分の1、都市計画税が3分の1になります。一般住宅用地に該当する部分は、固定資産税の価格が3分の1、都市計画税が3分の2になります。

具体的に計算してみましょう。例えば、固定資産税評価額が1200万円、面積が100m2の土地があるとします。この土地が更地の場合、固定資産税は1200万円×1.4%=16.8万円、都市計画税は1200万円×0.3%=3.6万円、合計で20.2万円となります。

一方、この土地が住宅用地の場合、固定資産税は1200万円×1.4%×1/6=2.8万円、都市計画税は1200万円×0.3%×1/3=1.2万円、合計で4.0万円となります。土地を住宅用地として使うだけで、毎年の税額が5分の1以下に圧縮されるわけです。

土地面積が広い場合はどうなるでしょうか。例えば、固定資産税評価額が6000万円、面積が600m2の土地があるとします。この土地が更地の場合、固定資産税は6000万円×1.4%=84.0万円、都市計画税は6000万円×0.3%=18.0万円、合計で102.0万円となります。

一方、この土地が住宅用地の場合、固定資産税は6000万円×(200/600)×1.4%×1/6+6000万円×(400/600)×1.4%×1/3=23.3333…万円、都市計画税は6000万円×(200/600)×0.3%×1/3+6000万円×(400/600)×0.3%×2/3=10万円、合計で33.3333…万円となります。土地を住宅用地として使うだけで、毎年の税額が3分の1以下に圧縮されるわけです。

このようなルールが有るため、多くの空き家のオーナーが建物をそのままにするわけです。見込みの活用がない土地は家をそのまま建てておいたほうが、解体するよりも税制上有利ですからね(家がある場合はそちらにも固定資産税がかかりますが、それを考慮しても建てておいたままのほうが税制上有利です)。

空き家が増加するというのは周辺環境にとって望ましいことではありませんが、土地のオーナーにとっては周辺環境よりも自分の固定資産税が減ることのほうが大切なので、空き家が増え続けているわけです。

政府も相続で得た空き家を売却したときに得た利益に限り3000万円の特別控除を認めたり、国土交通省が定めたガイドラインに該当する空き家「特定空き家」のある土地を住宅用地の特例から外すなどして空き家対策に乗り出していますが、依然として空き家の処分は進んでいません。

空き家のある土地を上手に活用する方法は?

土地活用の方法が見つからないから空き家を建てたままにするというのは、決して得策とはいえません。確かに固定資産税や都市計画税は更地より安くなりますがいずれにせよ毎年税金を払わなければいけないことには代わりありませんし、せっかくの土地を眠らせたままにするというのはどう考えても得策ではありません。

瓦が落下してきたり、壁が剥がれたりしてそれが他者の財産などを破壊した場合は損害賠償を求められることもありますし、不良や犯罪組織のたまり場となることも考えられます。

そんなこと言われても誰も住みたがらないような空き家や土地を活用するなんて不可能だ、と思われるかもしれませんが、それは諦めが早すぎです。所有者にとっては価値のない空き家や土地であっても、田舎暮らしをしたい人にとっては十分な価値があります。

そうした人に貸し出せば、住む人は満足しますし、貸す方は賃料が手に入ります。また、貸すのではなく売ることも可能です。売ってしまえばもう固定資産税は払わなくて済みますし、売却代金も手に入ります。

空き家バンクで借り手・書いてを見つける

空き家をそのまま活用したい場合は、空き家バンクに登録するのがおすすめです。空き家バンクとは市区町村やNPO法人などが運営している、空き家を貸したい人と借りたい人のためのマッチングサービスです。

貸したい人が空き家バンクに自分の物件を登録し、借りたい人はそのウェブサイトを見て良さそうな空き家を探し、地方自治体に連絡を入れます。地方自治体は借りたい人と貸したい人を合わせます。

なお、空き家バンクは借りたい人と貸したい人を合わせてくれるだけで、仲介業務などは行ってくれません。契約条件などについては両者が直接話し合って決めるか、不動産仲介業者を別途雇う必要があります。

シェアハウスにすれば賃料が増える

空き家をそのまま貸すのではなく、リフォームしてシェアハウスにして貸し出すという方法も考えられます。シェアハウスとはその名の通りシェアして住む住宅のことで、通常は1つの建物に3人~4人の他人が共同で住むことになります。

空き家があるような田舎の物件は建物面積がかなり大きいため、複数人が住めるように区切っても問題ないことが多いです。シェアハウスにすればその分多くの賃料が入ってきますし、1人出ていってしまってもいきなり賃料収入が0になるというようなこともありません。

事業用物件として貸し出せば滞納トラブルが少なくなる

住宅ではなく、事業用物件として貸し出すという手も考えられます。古民家風カフェや店舗、サークル活動用の施設として貸し出せば、安定した賃料が得られます。相手が個人ではなく事業者になるので家賃滞納などのトラブルが発生しづらく、賃料自体も高めに設定できます。

しかし、空き家があるような田舎で事業をしたがる事業者は余りいないので、立地条件がシビアになりやすいというデメリットもあります。

解体すれば維持管理の手間が省ける

空き家を解体するとその分固定資産税や都市計画税は高くなってしまいますが、そのかわり建物を維持管理するわ浦和示唆から開放されます。空き家をのそまま活用するのが難しい場合は、解体して駐車場などとして貸し出すという手段も十分に考えられます。

ただし、解体にはかなりの費用がかかります。総費用は物件の規模や構造によって異なりますが、木造の場合でも延床面積1平米に対して1万円、鉄筋コンクリートならば1万5000円程度はかかると思ったほうがいいでしょう。税金も増えるため、無計画に解体してしまうとただ税金が増えるだけという結果になりかねません。

売却すれば固定資産税の支払いはなくなる

活用がどうしても難しいという場合は、安くてもかまわないので売却してしまったほうがいいでしょう。売却すれば固定資産税や都市計画税の支払いはなくなりますし、管理の手間も省けます。

少なくともなにもしないままずっと放置しておくよりはいい結果が得られるでしょう。不動産仲介業者に売却を依頼すれば、空き家があるような土地でも比較的スムーうに売却が進むはずです。

まとめ

  • 近年、日本全国で空き家が増えている
  • 土地や家屋などの資産には固定資産税・都市計画税という税金がかかる
  • 土地の上に住宅が建っていると固定資産税が安くなるため、土地を更地にしたくても出来ないことが多い
  • 田舎の土地でも活用方法次第では十分に利益を上げることが可能
  • 通常の賃貸物件として貸し出すだけでなく、シェアハウスや駐車場などとしての活用も視野に入れる

田舎の土地といえども、需要がないわけではありません。需要を適切に掘り起こすことができれば、あなたが持て余している空き家は収益を生む物件に変わることでしょう。現時点で物件を持て余しているという方は、早速活用方法を考えてみてください。