400坪の土地というと、通常の居住用住宅を建てるのに使うならば、かなりの広さになります。一戸建てであれば「豪邸」と呼ばれるような家の敷地面積の平均値が300坪といわれており、それよりもさらに3割以上広いことになるわけですから、まさに「どんな建物でも建てられる」というイメージです。
しかし、土地活用を考えるとなると話が変わってきます。土地活用では、必ずしも土地が広ければ成功しやすいわけではありません。
土地が大きければできることの枠は広がりますが、所有者のリスクは大きくなります。初期投資や固定資産税の額も大きくなるため慎重に計画を立てないと失敗したときの損失が大ダメージとなってしまいます。
400坪の広さで土地活用を行うときは、一体どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?また、どんな土地活用の方法が適しているのでしょうか?
400坪を土地活用する際の注意点
最初に、400坪の広さで土地活用を行う際の注意点をいくつかご説明したいと思います。
より狭い土地の場合より、活用方法のバリエーションが広がる
400坪ほどの広さがあると、それ未満の広さでは実現できなかったホテル、病院経営といった選択肢を選ぶことも可能です。具体的な方法は後ほどご説明しますが、この段階では「面積が広い分、できることの幅が広がる」という点を覚えておいてください。
この点は通常、土地のオーナーにとってはメリットですが、同時に注意点でもあります。すでに述べたように、建設する施設が大きくなればなるほど建設費がかさむため、うまく利益が上げられなければ大きな損失を抱えてしまう可能性もあるので注意しましょう。
同じ活用方法でも、施設の規模で差別化できる
土地の広さが400坪あるからといって、あえて「その広さでしかできない土地活用方法」にこだわる必要もありません。賃貸経営や商業施設など、もっと狭い土地でも可能な活用方法をあえて選択する、という方法もあるからです。
このやり方には、「近くに競合する施設があったとき、規模の大きさで優位に立てる」というメリットがあります。
しかし、土地活用は単純に「建物面積の大きい施設をつくれば成功する」といえるほど簡単なものではありません。規模が大きい施設ほど、運営にかかる費用も上げなければいけない利益の額も大きくなります。
「土地の広さは、競合に対して優位に立てるポイントにはなるものの、成功するためにはそれだけでは不十分」だということを覚えておいてください。
すべての土地を丸ごと施設にできるわけではない
いくら400坪の土地を持っていると言っても、「床面積400坪の施設を建てられる」わけではありません。建ぺい率など、法律上の制限があることはもちろんですが、自動車などの駐車スペースもある程度は確保しなければいけないからです。
駐車スペースにどの程度の面積を割く必要があるかは、その土地が置かれた環境によって大きく異なります。
主な移動手段が自動車となる郊外や地方であれば、広めの駐車スペースが必要でしょうし、都市部や駅の近くなど公共交通機関のアクセスが良いところであれば、それほど広いスペースは必要ないでしょう。
もちろん、駐車スペースを確保する上では建物を2階建て、3階建てにして1階部分を駐車場、2階以上を施設用のスペースとするなどの方法も考えられます。
ですが、どのような方法を選ぶにせよ、「主な利用者がどのような方法でアクセスしてくるか?」を正確に予測できなければ、ただ大きいだけで「利用しにくい施設」ができあがってしまうことにもなりかねません。
400坪におすすめの土地活用
ここからは、具体的に400坪の土地ではどのような土地活用がおすすめなのか、代表的な例をご紹介したいと思います。
賃貸住宅(アパート・マンション・社宅・寮)
土地活用の「王道」ともいえる賃貸住宅、400坪の土地でもやはりおすすめできる活用方法のひとつです。賃貸住宅を経営する場合、「賃貸アパートを建てるか、賃貸マンションを建てるか」という点がひとつの分岐点となります。400坪もの土地を持っているのであれば、一般的にはマンションを選ぶ方が多いでしょう。
アパートは学生や単身者を始め、主に住宅にそれほどお金をかけたくない人々をターゲットにした施設です。
それに対して、マンションはある程度広い土地が必要になるものの、賃料収入はアパートよりも多くなります。土地の広さに余裕があるのであれば、得られる利益が多くなる賃貸マンション経営を選択する人が多いのも当然です。
例えば入居者ニーズを満たし、差別化も図ることができるデザイナーズマンションもひとつの選択肢といえるでしょう。
このほかにも、企業や団体と協力して社宅や寮といった施設を運営する選択肢もあります。この方法のメリットは、空室リスクを抑えることができる、そして常に安定した収入が期待できることです。マンション経営ほどの高い利益は得られませんが、安定志向の強い方には向いているやり方と言えます。
このように賃貸経営は、入居者さえ確保できれば安定して高い利益が見込まれる土地活用方法になります。利益率は場所によって異なるため一概にはいえませんが、住宅需要が旺盛な都市部だと10~15%、郊外だと7~10%程度とされています。
ただし、400坪ともなると施設の建設資金も数千万~数億円と高額になってしまうので、初期投資のリスクは決して小さくはありません。一度賃貸物件を建てると、ほかの活用方法への転用が難しくなることからも、慎重に建設計画を立てなくてはいけません。
まとめると、賃貸経営は常に安定を重視する人に向いている土地活用の方法だといえるでしょう。賃料相場の高い場所や地価の高い場所に土地を持っている人にも適しています。
また、相続税対策のために土地活用を考えているという方にとっても一度は検討して欲しい方法だといえるでしょう。土地の上に賃貸住宅が立つと、相続税評価額が減少し、税制の上でも優遇を受けられるため負担が小さくなるのです。
ホテル
「ホテル経営」と聞くと、ノウハウのない素人には難しいのではないかとイメージされる方もいるでしょう。しかし、心配はいりません。土地活用でホテル経営を行う場合は、基本的にノウハウを持った専門業者と契約して運営を委託することになります。
主な方式はオーナーが自身の所有地にホテルを建設し、それを業者に一括借上で提供する「リースバック方式」と、オーナーは土地だけを貸し出し、業者がそこにホテルを建設、運営する「事業用定期借地方式」の2種類。
どちらのケースでもオーナーは毎月固定の収入を受け取れますが、リースバック方式の場合は「賃料」を、事業用定期借地方式の場合は「地代」を受け取るという点が異なっています。
オーナー自らが施設建設費を負担するというリスクを負ったほうが、得られる収益は大きくなるという仕組みです。
ただし、新築でのホテル建設は初期費用も大変高額になってしまいます。ホテル経営を生業とする専門業者と常に協力して事業を運営することになるので、比較的安定性が高いのも魅力です。
しかし、いい加減な業者と契約してしまったり、初期の見積りが甘かったりする場合、数年で業者が撤退し、ただホテルだけが残されるというケースもあります。ホテルはほかの目的に転用するのが難しいため、新たな事業者が見つけられなければ大きな損失を抱えることになります
ホテル経営は、立地や周辺環境によってその成否が大きく左右されます。したがって、アクセスの良い場所や、近くに商業施設などがある利便性の高い場所に土地を持っている人に向いている活用方法だといえるでしょう。
また、当然ながら観光地や有名な娯楽施設のそばなど、多くの観光客が集まるスポットに土地を持っている人にとっても有力な選択肢です。
オフィスビル
オフィスビルもまた、400坪の土地に適した活用方法だといえるでしょう。専用のビルを建設し、企業や団体にオフィススペースを貸し出すことで賃料収入を得ることになります。
ホテル経営と同じく、10~20%程度と安定して高い利益率が見込まれるのが魅力。一般的にオフィスの賃貸借契約は住宅よりも高い年間賃料が設定されるケースが多いとされています。
しかも企業は契約期間が長い傾向にあり、よほど特別な事情がない限り短期間で場所を移すことは考えにくいです。
しかし、オフィスビルに適した用地はなかなかありません。ビジネスのために用いるという目的から、「都市部、かつ大きな駅の周辺にある土地」に限られるなど、かなり厳しい条件をクリアしなければ実現するのが難しいからです。
とはいえ、このような条件に該当しそうな土地を持っている方にとっては、魅力的な選択肢だといえるでしょう。
病院
「立地は限定されるが、高い利回りが見込まれる方法」として、病院経営もご紹介したいと思います。医療法人や開業医などと協力し、病院を建設・運営する方法です。病院経営と言っても、オーナーの役割はほかの方法と変わりません。土地と建物を貸す代わりに毎月決まった利益を受け取ることになります。
「立地が限定される」というのは、そもそも開業医や医療法人が「この辺りの地域に病院を建てたい」と考えて土地探しを行っている場所でないと土地活用できない、という意味です。
また、すでに周辺に十分な数の医療機関が存在し、たとえ建設しても利益を確保するのが難しいような場合も、この方法を選ぶのは難しいといえるでしょう。
しかし、病院建設には「社会に貢献できる」というほかの方法にはない大きなメリットがあります。単に利益を上げるだけでなく「誰かの役に立ちたい」と考えている方は検討してみてはいかがでしょうか?
介護施設(老人ホーム、グループホーム、高サ住)
医療との関連で、老人ホームなど「介護施設」についても解説しておきましょう。介護施設には複数の種類があり、土地の広さなどによって建設できる施設が変わってきます。
400坪のときに選択肢に入ってくるのが、「通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、小規模多機能型居宅介護、グループホーム」の4つです。
通所介護(デイサービス)は、在宅高齢者向けの日帰り介護サービスです。短期入所生活介護(ショートステイ)は、数日~最長30日の短期間だけ入所して介護を受けられる施設。どちらも被介護者のサポートと家族の負担軽減を目的とした施設です。
小規模多機能型居宅介護では、デイサービスにショートステイ、さらに訪問介護を組み合わせたサービスを提供します。最後のグループホームとは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る施設。数人で介護を受けながら暮らすことで症状の改善が期待されます。
これらの施設は、どれも「最低必要延床面積」が定められており、建物に一定以上の床面積がないと施設を建設することができません。400坪だとこの条件をクリアできるため、これらの施設経営が選択肢に入ってくるわけです。
以上4種類の施設だと、デイサービス(小規模なもののみ)、小規模多機能型居宅介護、グループホームが総量規制の対象になるため、自治体の募集状況をよく確認しておく必要があるでしょう。
これら介護施設の利益率は8~15%。介護の需要はこれからも高まっていくと考えられるため、安定した経営が見込まれますが、施設の建設費が数億円と高額になってしまうことも珍しくありません。ただし、自治体からの補助が受けられる場合もあるので、こちらも合わせて確認しておいてください。
高齢者の割合が21%を超える超高齢社会になったことで、高齢者用住宅は空室率を抑えるには有効な選択肢のひとつです。
「300坪の土地におすすめの土地活用」が良い場合もある
400坪の広さにおすすめの土地活用は以上ですが、「周辺に十分な需要が見込まれない」、「土地がいびつな形をしている」などの事情を抱えている場合は、もう一回り小さい「300坪におすすめの土地活用」が適している場合もあります。気になる方は以下の記事を参考にしてください。
>>300坪をフル活用!おすすめの土地活用とは?
400坪を土地活用する際のポイント
今回ご紹介した内容から、400坪の土地活用をする際のポイントを簡単にまとめてみました。
活用したい土地周辺の需要を見極める
400坪の土地活用では、利益率が高く、しかも安定した活用方法が数多くあります。ですから、あえて自分の土地にそぐわない方法を選ぶ必要はありません。周辺の需要にマッチした、利益が得られる見込みが高い方法を選びましょう。
許容できる初期投資の額を見積もる
土地が広い分、400坪の土地活用では建物の建設費=初期投資の額が高額になりがちです。投資額が自身の許容できる範囲に収まるか、事前に見積りを立てておかなければいけません。
独自の「強み」を発揮できる方法を探す
400坪の土地活用方法は、ホテル・オフィスビル・病院など「場所は選ぶが、独自性を発揮しやすい」ものが多くあります。
したがって、「どの方法なら、周囲から埋もれず独自の強みを発揮できるか?」という視点で情報収集をし、具体的なプランを考えてみるのも良いですし、不動産業者などの専門家に相談する機会も積極的に設けて知識を蓄えていきましょう。
今回ご紹介したような基本的な注意点やポイントを守れば、土地活用は必ず成功するはずです。今悩んでいる方も勇気を出してぜひ最初に一歩を踏み出してみてください!